たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
いや、確かにエロ要素は入ってるんですが……思ったより、黒いというかなんかドロッとした”重い”話になってしまってw
なんか、地球連邦あるいはネルガルが無自覚に抱えている「仄暗さ」が滲んでるような?
ユリーシャ・イスカンダルには、自分が望む未来に行きつけなくなる故に、選べぬ道がある。
だが、それでもそれは一つ”理想”であった。
それは、自分がたどり着けない故の理想……
「ウリバタケ、いる?」
「ああ。いるぜ」
もっとも、今日が”彼”のオフであることはユリーシャは事前に確認済みだ。そして休日の彼は、十中八九部屋から出てこない。
ヤマトには、基本的に軍人と軍属が乗り込んでいる。
そして、軍人も個性的な者が多いが、軍属も負けてはいない。
この部屋の主は”瓜畑誠也(うりばたけ・せいや)”。
彼がこの世界線において”最初のウリバタケ”なのか、あるいは名を継いだ者なのか、あるいは偶然同姓同名なのか……存外、オリジナルの強化クローンというのもありかもしれない。だが、ここでそれは問題ではない。
彼がネルガルから出向してきた異能とも呼べるほどの凄腕の技師であり、技術アドバイザーとしてヤマトに乗り込み、また異常なほど手先が器用ということに意味がある。
この世界線のこの時代に生きるウリバタケ、瓜畑誠也という人物を語るうえでもう一人、いやもう”一体”欠かすことのできない存在がある。
「あはぁ♪」
椅子に座り、周囲に立体投影ディスプレイを浮遊させ何やら考えているウリバタケの両足の間に四つん這いで顔をうずめ、嬉しそうにむしゃぶりつく眼鏡の少女……
いや、少女と呼ぶのは少々不適切だ。
”それ”はかつては少女と分類され、”天野ヒカル”という名で呼ばれた……今は”別の
全裸であることは勿論、”ヒカル”とだけ刻まれた手製のペットタグがぶら下がった首輪は鎖で繋がれ、豊かな胸と言わず眼鏡と言わず白濁で汚し、滴り落ちるそれを指先で絡めとり弄んでいる。
レンズの奥の瞳には知性も理性もなく、ただただ濁った淫欲のみが沈殿していた。
冤罪を防ぐ意味も含め一つ言っておきたい。
彼女は、彼が壊したわけでは無い。
これは、ある意味において火星古代遺跡の関わる者の”宿命”、その一端だった。
ある実験に参加していた天野ヒカルの身にに起きた、悲劇とも喜劇ともとれる出来事……それは、”火星症候群(ネルガル・シンドローム)”と呼称される一連の”遺跡よりの侵食現象”だった。
その時起きたのは、”精神汚染”の一種だと推測されているが、当時彼女にインプラントされていたデータ計測用に調整されたI-IFSナノマシンのデータが、今の技術では”読み取り不能”となってしまっている為に詳細は不明だ。
だが、状況から察するに『遺跡から体内のナノマシンに対しての
なら、リスクのあるナノマシンを”投与しない者”を被検体に使えばと思うかもしれないが、それは逆に無理なのだ。
ナノマシンの中でも屈指にメジャーなI-IFSナノマシン、”インタラクティブ・イメージ・フィードバック・システム”が示す通り、”機会と人の「双方を」繋ぐ”機材であり、これがなければ人は遺跡……その心臓部である”ザ・キューブ”とは直接的あるいは間接的をとわず、いかなる意味でもアクセスできない。
そもそもI-IFSの原型は、便利なマン・マシン・インターフェースなどではなくかつて天河明人博士が”公式に生きていた(=ネルガルに在籍していた)”時代に、彼自身が『”ザ・キューブ”と対話するため』に火星に積層している休眠状態の「まだ何物でもない」ナノマシンをベースに作り上げたものだ。
***
その実験に助手として参加していたウリバタケは、天野ヒカルが壊れてゆく様を目撃した。
最初は恐怖、そしてやがて訪れる恍惚……
何が彼女の身に起きたのか、否、遺跡とわずかながらにリンクした彼女が『何を見たのか?』は誰にもわからない。
それこそ知っているのは、”ザ・キューブ”だけだろう。
だが、結果は明白だった。
天野ヒカルはこの時、形而上学的な解釈では”死んだ”。
いや、書類上、あるいは記録上でも”そうなっている”。
精神崩壊を誘発し、人格は消失し、ただ生物学的三大欲求に従順に依存する……記憶を司る過去も現在も未来もない無垢な素体と成り果てていた。
だが、その会話すらできない姿を見てウリバタケは「美しい……」、そう思ってしまったのだ。
だからこそ、彼は「かつて天野ヒカルと呼ばれた存在」を欲しいと願ってしまった。自分で独占し、所有したいと。
周囲からは止められた。曰く、
『前例がある。ああなってしまうと治療の方法はない』
『いくら医療用ナノマシンを投与しても
『老化することも、外的要因で死ぬこともないが、その分、寿命は短い。おそらく君の残りの人生よりずっと』
『良いのか? あれは既に栄養を摂取し、排泄し、睡眠し、自慰するだけの存在だぞ?』
『そして、ナノマシン・スタンピードの影響で受精も受胎もできん。君の命は先にはつながらんぞ? 才能が遺伝学的に継承されず断たれるのは、惜しいとは思わないのかね?』
将来を嘱望される若き技術者に対する、破滅へ向かう身を案じた先輩研究者たちの優しい言葉だった。
だが、それはウリバタケには届かない。
彼は、既に覚悟を決めていたのだ。
『”これ”の為に残りの人生を使い潰す……フフン。上等じゃねぇか。悪くない取引だ。後にも先にもつながらない命? 刹那的で大いに結構。まさに
ウリバタケはネルガル上層部に直訴し、「この娘を所有できるなら、望みの対価を払おう」と啖呵を切った。
実質的な「ネルガルに生涯をささげる」身売り宣言に等しかった。
そして、その宣言通りに結婚もしないまま、ウリバタケはネルガルでその才能をふるう。
その結果……今、”ネルガルからの出向組”の一人として、『ディストーション・ブロック』の開発主任、あるいはヴァルキリー用外装式真空相転移機関の開発チーフという実績を引っ提げて、ヤマトに乗り込んでいた。
ヤマトにヒカルと生活するだけの十分な私室が与えられた彼は、実に優秀な技術者である。
だが、同時に「誰からも理解されなくても構わない」とも思っていた。
しかし、その状況はあっさりと破られた。
どこで自分のような他者が関わりたくなくなりそうな”変人(注意:現在の地球連邦の社会通念では、彼は変人程度の扱いで済まされてしまう)”のことを聞きつけたのか知らないが、唐突にイスカンダルの姫君が時折顔を出すようにになったのだ。
だが、理由は分かっている……
「やっぱり”綺麗”……」
ユリーシャは、うっとりした表情で、白濁を肢体に塗り込むヒカルを見ていた。
***
ユリーシャ・イスカンダルにとり、かつて天野ヒカルと呼ばれた少女は、「イスカンダル人にとり究極の理想の一つ」を叶えた羨望すべき存在だった。
余計なものをすべて捨て去り、女として……いや、牝としての部分だけを残し、牡に望まれるまま我欲に生きる。
これほどの純粋な「勝者」が他にいるだろうか?
知性も理性も捨て去り、ただススムに望まれ肉欲にまみれて残りの時間を生きる……なるほど。確かに魅力的な人生設計だ。
だが、それを選択できないことも他の誰でもない、自分自身がよくわかっていた。
ユリーシャには、夢がある。野心もある。叶えたい望みがある。
それには古代進と共に生きるのがベストだが、彼にすべて依存すると牝としての幸せと引き換えに、それらは全てご破算になってしまう。
それはできなかった。
牝として堕ちきれない自分が少し哀しくなった。
だから、気分だけでも味わいたいと思ったのがきっかけ。
そして、直ぐに”使いようによって”は、政治的切り札になることも気が付いた。
「ウリバタケ、頼んでいたものはできてる?」
「ああ。これで良いか?」
ウリバタケが取り出したのは、彼お手製の”
無論、ピアス職人ではないウリバタケに発注したのだから、”ただの”ではない。
素材は銀のように見えるが明らかに光沢が異なる。おそらくは一般的なアクセサリーにはまず使われない、何らかの特殊金属なのだろう。
モチーフは”蝶々”。よくある割とリアルに蝶を模ったデザインではなく、ネイティブアメリカンのホピ族に伝わる幾何学的なオーバーレイ細工が施された本体に、所々ズニ族の伝統技法である細緻な
ただ王族のアクセサリーとしては、むしろ素朴というか、ファークロア的すぎる気もするが……進のデータベースにあったアクセサリーを見て一目で気に入ったらしい。まあ、好きな男と似たようなものを身に着けたいという乙女心が仕事をしてるかもしれないが、ユリーシャの場合はそう素直に受け取ってよいものか迷う。
何しろヤマトにも一応、商店街を模した区画にアクセサリーショップはあるが、ユリーシャが欲したのは、この世に一点しかない”特別”。
だからこそ、自分と心の琴線が通じる匠、ウリバタケに無理を承知で頼んだのだ。
「うん♪ 想像以上に良い出来だよ♡ さすがウリバタケだね♪」
無論、合計三つのピアスは、胸の先端と陰部の一番敏感な場所へ
それを想像するだけでジュクジュクと中から潤んできそうだが、
「それにしてもお前さん、自称”奴隷”を目指すんだろ? なのに自由の象徴である飛ぶ生き物、蝶をモチーフに選ぶってのは、一体どういうセンスだ? いや、確かに蝶は美しさの象徴でもあるが、まさか”身体はあなたの物でも、心は自由”なんてつまんねーこと……」
「そんなわけないじゃない。ユリーシャは、とっくに身も心もススムの物だよ?」
ネイティブアメリカンにはモチーフに対し、独自の異なる解釈と意味があるのだ。
例えば、進が好み私物でも持っている羽をモチーフにしたものだが……
”フェザー”が象徴するのは、「歓迎と友情、そして平和」。これはネイティブアメリカンで友情を深めた印として羽を贈る風習があったことに由来するらしい。実に進らしいチョイスと言える。
そして、蝶が象徴するのは幼虫からサナギへ、そして蝶へと次々と姿を変える……
『
古代アケーリアス文明の全てではなくとも継承者であり、
というわけで、ウリバタケ・セイヤと元アマノ・ヒカルちゃんが華麗(?)に登場です。
実は原作より「闇に触れた」結果、シリアスになってしまったウリバタケ君でした。
んー、もしかしたら彼の生まれって劇ナデのハリー君とかと同じ出自とかでも不思議じゃありませんね。
少なくとも、若い頃(普通なら学生時代くらい?)には、もうネルガルでヒカルが関わった「トップシークレットの実験(おそらくは”ザ・キューブ”への接触に関係する何か)」に、参加を許されるぐらいですし。
次回、ちょっとユリーシャの内面でも、触り程度に探ってみようかと。