たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
書き出しと、途中からの雰囲気が随分と異なります。
強いて言うなら、「連邦外の異星人から見た風景」かな?
「あのね、ススム……ユリーシャ、ススムにお願いがあるの」
「なんだい? 言ってごらん」
「ユリーシャね、『ススムの”
そう言いながら、ユリーシャはウリバタケ謹製の蝶々を模ったボディピアスを差し出した。
そして、
「この卑しいイスカンダル人を、どうか貴方様の奴隷にしてください」
裸土下座……
ユリーシャ・イスカンダルとて奴隷などという前時代的な身分制度が地球連邦にもイスカンダルにも残ってないことは百も承知だ。
だが、そこが問題ではない。
考慮すべきは、奴隷などという階級が残ってないのに、その名を誰もが覚えている。どういう存在なのか覚えている。
つまり、用途にこだわらなければ「
その”立ち位置”こそが、ユリーシャの望みだ。
公式に存在しない身分だからこそ、「第三王女である自分」が”
いや、正確には「その発言や行動を縛る法が、連邦にもイスカンダルにもない」のだ。
だが、人々の心象、とりわけ政治的影響はどうだろうか?
もし、これが地球連邦が貴族制度や奴隷制度が残っている国ならば、
『奴隷の所有物であるイスカンダルの一部領有を連邦は宣言し、古代進を辺境伯として置く』
などという強引な手段も取れただろう。
もし、そういう話になればユリーシャ的には万々歳だ。その時はイスカンダルが種族的に抱える『慢性的な男日照り』を一気に解消し、未来への明るい展望が開ける。そうなれば、自分は”救国の英雄”として崇められるだろう。
だが当然、地球連邦がそんな”甘くて緩くてちょろい相手”だとはユリーシャも考えていない。
もしそうなら、あんなに「身の丈に合った堅実な国家運営」はしていないだろう。
石橋を叩いて渡る慎重さが無ければ、とっくの昔に無邪気により大規模に覇権主義に乗り出しているはずだ。
***
そもそもユリーシャが実の姉であるサーシャ・イスカンダルから順番を奪い、強引に「地球への最初の使者」の座を奪取したのは、地球への純粋な興味からだ。
ユリーシャは確かに二人の姉と比べても好奇心が強い。
だが、彼女が惹かれたのはガミラスからの定時報告であがる「対地球の戦況報告」を熟読してからだ。
ガミラスでいうところの”テロン人”は間違いなく強い。常に自分たちの先祖が技術を与えた「あのガミラス相手」に、”圧勝”しているのだ。
にもかかわらず、以後の調査(おそらく「小康状態の2年間」の時期)によれば、
これはイスカンダルを名乗る前の先祖や、ガミラスの基準に当てはめると明らかにおかしい。
考えてみてほしいのだが、地球連邦に連敗し、ガトランティスに領土侵犯され続けているガミラスに強い印象はないかもしれないが、だが現実的に彼らは大マゼラン星雲も小マゼラン星雲も天下統一を成し遂げているのだ。
確かに二つのマゼラン星雲に強敵は居なかった。
いや、かつては今のガミラスでも苦戦しそうな相手が居るにはいたが、自分達の先祖がライバルと認識する勢力やその兆候がある勢力に波動砲を撃ち込み星ごと破砕し続けた結果、消滅した。
また、最終的に自分たちの先祖を逃亡させた”結託した残存勢力(=イスカンダル被害者の会)”も、そのほとんどがその後の主導権争いや内紛で自滅し、勢力を大きく衰退させたのだ。
だが、マゼランで細々と文明を維持していた諸勢力は、曲がりなりにも「光速を超えたのがたった200年前(厳密にはもっと最近)の地球連邦」より遥かに老舗の宇宙文明の残滓であり、それらをガミラスは倒してきたのだ。
『たかが1000年前まで先の見えない戦争難民だった流浪の民が、イスカンダルの技術協力を得て1000年後には二つのマゼラン星雲を統一できる覇者となった』
こんな事例が文字通り目の前にあるのに、それより強力な勢力である地球連邦が、なぜ宇宙の覇権を目指さないのか、ひどく気になったのだ。
そして同時にこう考えてしまった。
「テロン人にイスカンダルの技術を渡したら、どんな
***
地球連邦と接触し、調査を進めるうちに驚愕の事実が判明した。
ガミラスの覇権の確立は、正しく侵略戦争のそれであり、「軍事力による屈服と、その後の恫喝と威圧と恐怖を担保とした恭順」だ。
ガミラスの戦争目的は、建前はイスカンダル主義の拡大による平定、内情は元貴族のガス抜き(と間引き)、真なる目的は引っ越し先の発見と移住なのだが……
基本的には恭順の意思を示した星の住人には、二等臣民なる怪しげな位を作り与え、最後まで抵抗の意思を示す者には殲滅が基本方針だった。
これは別にガミラス独自の物ではなく、地球単独時代の覇権主義華やかかりし頃、規模は違えど幾つもの国家が通った道である。
実は、ユリーシャが知る「イスカンダルを名乗る前のイスカンダル人」の所業は、更に苛烈だったようだ。
こちらも正しく、「文明化した
残存する数少ないその時代の資料を読み解く限り、やってたこと自体は、比較相手としてどうかと思うが……ガトランティスの大差ないような気もする。
見方を変えれば、科学奴隷とやらが男になってただけと言えなくもない。
(でも、イスカンダルやガミラスと同じ古代アケーリアス文明に”
テロン人、いや地球連邦の根幹をなす”アーシアン”という種族は、自分たちと比べると明らかな差異……特異性と異常性と呼べる民族資質があった。
平和主義を標榜するとか、力による覇権の否定を行うような民族では断じてない。
例えば、(今の彼女はその存在を知らないかもしれないが)ガルマン人のような
そして実は、「力による覇権」も否定していない。
ユリーシャに言わせれば地球連邦は、
(連邦は武力を用いることを非効率と考えて好まないだけで、広義な意味では連邦の宇宙進出って”
実は、「武力による安易な併合」は地球連邦の最も嫌う行為だ。
理由は言うまでもない。地球上の覇権主義が国是として蔓延っていた時代……多くの国が併合戦争の戦費と植民地化した領土の維持費の累積赤字に耐えきれず、経済を破綻した挙句、植民地を手放すことになったのだ。
今のガミラスが積極的に行っているような、「武力で原住民の頭を押さえつけるやり方」は、かつて自分達が通ってきた道であり、国家運営の失敗例の累積でもあった。
だが、宇宙進出と他星の連邦への”加盟”を促すとき、まったく力を使わなかったかと言えばそうでもない。
初期の獣人系異星人との接触がわかりやすいが、誤解や認識の相違から小規模な、それこそ個人レベルのそれも含め小規模な衝突はあったし、あるいは力を証明しなければならないケースもあった。
だが、どのようなケースを通しても”軍事衝突”まで発展することはなかった。
現時点で後期にあたる時期に入ってきたジレル人こそ宇宙文明規模の科学力を持っていたが、初期に接触した
テレサは……あれは参考にならない。
獣人系は特に第五種接近遭遇(異星人同士が直接対話・通信を行う事)のサンプルとしてわかりやすい。
地球連邦は当時の「野蛮さや野性味を多分に残していた」彼ら彼女らに最初に持ち掛けたのは、無論、併合などではなく、連邦での加盟でもなく”交易”だ。
一方的な施しは歪んだ関係を生むことをアーシアンはよく理解していた。それは相手の民族の矜持を汚し、軋轢を生みだす土壌となる。
それに片方だけが施すというのは、文明レベルの劣る彼らに対する「憐み」や「侮り」と捉えかねられない。
それに意外なほど「共通通貨がないが、物々交換でも通用する交易品」を獣人系は持っていたのだ。
例えば、である。
容積が限られる宇宙船において、主食が合成食材が主流になるのは当然のことだ。当然、当時のオムシスの先祖に当たる食料合成器では再現にも限度がある。当時の船乗りたちに言わせれば、「不味くはないが代用品だと一口でわかる」程度のものだったらしい。
そのような状況で、「新鮮な天然食材や水資源が宇宙で入手できる」事が、どれほど励みになるか想像に難くない。
また、彼らが食用に適さないと思ってる者でもアーシアンには御馳走だったり、最悪、合成素材になるたんぱく質やミネラル、ビタミンや各種有機物が入手できれば、急場はしのげる。
何とも牧歌的に聞こえる話かもしれないが、ユリーシャには別の側面がより強く見えてしまう。
船が惑星文明の地上に降りるということは、そこに交易拠点、貿易をメインとする街ができる。そこには新たな労働市場が生まれ、地球連邦の資本も少しづつ落ちてくるだろう。そうなっても「一方的な経済搾取や略取」にならぬよう連邦は細心の注意を払ったはずだ。
そして、交易を継続するなら必然的に経済フォーマットの共通化が双方から出てくる。いきなり地球連邦の水準は無理でも、経済に対する概念自体が未熟な獣人たちにとり、「本格的な電子取引化がされる前の貨幣経済」の導入が本格化するのは確かに福音になっただろう。
そして、近代経済の初歩的あるいは基礎的概念が広まったところで、こう持ちかけるのだ。
『金や資材は地球連邦が出すから、貿易港と宇宙船の簡易整備ドックを兼ねた本格的な宇宙港を作ってみないか?』
と。
そして、それが完成し稼働し始めた頃に、それとなく連邦への加盟を打診する。
その頃には地球連邦外務省による現地調査も終わってるだろうから(というかそれが終わらぬうちは政府は決して積極的なアクションを起こさない)、「効果的な複数ルートを使い打診。ストレートに持ち掛けた方がよいと判断された方がよい場合はそうする」という詰めの一手に出る。
さて、こうなってしまっては色々手遅れだ。
何しろついこの間まで惑星一つで完結していた自分達の目の前で、中世の風格が残る街並みの上で宇宙船が星々の海を往来しているのだ。
その時の指導者は、既に宇宙港から拡散される宇宙の広さと膨大な利益、何よりモダーンナイズされた価値観に浸食され、色々と麻痺している頃合いだ。
加盟への交渉が本格化したとき、最重要と地球連邦が留意するのは”加盟による予想されるデメリット”だ。
加盟した後に、「こんなはずじゃなかった」と反乱を起こされるのは、連邦としても甚だ不本意だ。
だから、絶対に強制しないし、「原住民の総意」である体をとることを最優先とする。
そして、必ず説明するのは……
『地球連邦は、被支配民や属国が欲しいわけじゃない。連邦というフォーマットや共通のルールで共存できる”
と宣言する。凄まじいまでの口説き文句であり、同時に宇宙に夢を託したい種族にとり、猛毒にもなり得る甘言でもある。
恐ろしいのは、そのセリフに本質的に”噓がない”ことだ。
例えば、獣人系のわずか1世紀の間の爆発的な宇宙進出と勢力拡大を見れば、嫌でもわかる。
「これが、力による覇権の確立じゃなければ、他になんて言えば良いんだろうねー♪」
***
だが、同時にイスカンダルやガミラスには、逆立ちしたって使える手ではない。
”自治権や民族ごとの独自性や特色を残したまま異星人を受け入れ、その差異すらも容認し許容する”
それは、本質的に”
自分達は、身体能力で遥かに上回り、簡単に自分たちを素手で殺せる種族を仲間として受け入れられるか? 答えは否だ。
かつて銀河系を炎で包んだ戦闘民族の末裔を自称する者たちを受け入れられるか? 答えは否だ。
人の心を読む異能を持つ存在を、同じ人間として受け入れられるか? 断じて否。それができるならジレル人の故郷で「滅ぼされた」なんて伝承は残っていない。
ましてや、高次元要素を持つ精神生命体なんて意味不明な者を受け入れるなんて……
だから、ユリーシャは賭けた。
地球人の、その中でも”地球人の特異性を煮詰めたような”、
「いいよ。それをユリーシャが望むのなら」
彼女の願い、野望、野心……どんな言葉を使おうと祈りにも似たその成就に向けた第一歩が、ここに成立した。
ユリーシャはイスカンダルでも元々ヤベー娘です。
だけど、今のヤバさの半分は実は「地球連邦の影響」だったり。
力は使っても武力を用いず、無自覚なまま覇業を為さんとする地球連邦という組織は、ユリーシャ・イスカンダルにとっても「甘美な猛毒」だったみたいです。
ただ、元々イスカンダルきっての毒婦の資質を持つユリーシャには、それも精神的栄養剤だった気がw
次回は、少しだけ古代の視点とあと地球側の周囲の反応などを。
ガミラスと接触する前だというのにやらかしてくれやがりますが、まあユリーシャにしてみれば「停戦の仲介だけなんて論外」なのでしょうねー。
女王の姉が「