たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
異文化コミュニケーションというのは、話す前から実は始まってたり。
さて、ガミラス側のエスコート艦隊の旗艦”ミランガル”に繋がった通信は、「さも当然のように」常時開放されてる軍用チャンネルで繋げてきた。
高画質に立体投影される画像に映っているのは、左右を「銀髪と金色の瞳を持つ、姉妹のような色白の少女」に挟まれた、艦長席に座る、髭が豊かな壮年の男だった。
そして、
『ガミラスの皆さん、まず最初に出迎えありがとうございます。心よりの感謝を』
……実に
翻訳機はONになっていない。
というか
現在の完成度だと、「無茶苦茶な翻訳=グーグ○翻訳で日本語→英語→日本語の二重変換したとき並の怪文書」になる可能性があったからだ。
『私は、今回の外交使節団団長とこの特務艦”ヤマト”の艦長を兼任しています”沖田十三”大将と申します』
ハイデルンを始めとした軍人達は、テロン人たちがいつの頃から「正調ガミラス語」で停船勧告や降伏勧告をオープン・チャンネルで行うようになったことを報告で聞いていたし、なんならバーガーは参戦時期的に戦場にて生でそれを聞いているのでさほど驚くことはない。
ガミラスと違ってふんだんに捕虜もいるだろうから(ただし、その数は彼ら予想している最大人数より、比喩でなく”桁違い”に多いが)、言葉を習うなり翻訳エンジンを作るなりはできるのだろうと感覚的に理解していた。
「これはご丁寧に。階級が上の方に先に名乗らせてしまって申し訳ない。私は今回のエスコート任務の責任者で提督の”ヴェム・ハイデルン”と申します。お見知りおきを。相応に長い航海となりますが、よろしくお願いします」
流石に互いに敬礼はなかったが、
(このオヤジ、目上の者に丁寧な言葉遣いとかできたのか)
と妙なことに驚くバーガー。
だが、別の意味で表情に出さぬように驚いたのは、ローレン・バレル特使とクラウス・キーマン少佐だった。
外交の場において、「相手国の言語を十全に理解していても、”うまく理解してないように振る舞う”」のも立派な
相手が自分たちの言葉を十分に理解してないと上手く思いこめば、わりと簡単に”相手に聞こえちゃいけないこと”をボロっと出してくれるものだ。
ただし、「完全にわからないフリ」をするのは悪手。外交官としては「相手の言語を全く研究しないのは不自然」だし、そもそも外交相手としてみなされない。
だから、「研究はしたけど十分な理解に至ってはいない」と思い込ませることが重要なのだ。
ガミラスが覇権主義国家として駆け出し国家だった頃、「最終的に倒すべき相手」でも様々な理由から「まず外交から初めて様子見」する必要があると判断した相手に散々使った手だ。
その頃のガミラスは、まだ丁寧に”政治の一手段としての戦争”をしていたらしい。
だが、外交には言語に関して真逆のやり方もある。
(これは、『お前たちの事は全て知っている。お前たちはどうなんだ?』という宣言でしょうな……)
そうバレルは結論づけた。
そして、いくつかの言葉をかわした後の次の沖田十三の言葉で確信に変わる。
『ガミラスの皆さんには、おそらく我々の連邦標準語の翻訳エンジンの用意はないでしょうから、皆さんの翻訳機に合わせたプラグインを僭越ながら用意させていただきました。オープン・チャンネルでコードを送信しますので、”危険なプログラム”が紛れてないかご確認ください』
これはつまり、テロン人が「ガミラスがテロン人の捕虜を満足に確保できてない」ことを知っており、こちらがまともに言語解析
そして入ってくるオープンソースで書かれた翻訳プロトコル……後でソフトウェアに明るい技官に確認させる必要はあるが、サブホログラムに流れる文字の羅列は、見慣れた「ガミラス式プログラム言語」で書かれていた。
さて、このときのバレルの心情を今の日本に合わせた表現をしよう。
”見ず知らずではないが、敵対関係にある宇宙人が「お前ら、俺達の言葉わからないだろ? それじゃあ話にならんから翻訳アプリくれてやる」と
という気分だ。
隣でプログラムが流れていた画面を凝視していたキーマンが小さく呻いていた。
その反応から、ぱっと見る限り悪意のあるプラグインの類は発見できなかったのだろう。
『この回線は常時開いておきますので、準備ができたらいつでもお声をかけていただきたい。迎えの小型船を出しますので』
つまり、「迎えの車は出してやるお前たちから来い」と言ってるのだ。
だが、それを断れる判断を下せる者は、この場にはいなかった。
その後いくつかの言葉を交わし、通信が切れると……
”ふぅ~”
と珍しくハイデルンが珍しく大きくため息をついた。
「あの声、聞き覚えがある……多分だけどよ、ありゃおそらく前に俺っちとウチの大将がいた艦隊を半殺しの目に合わせた奴だ」
耳も記憶力も衰えてないハイデルンのセリフに、思わず「うげっ!」という顔をするバーガー。
しかし、この短い邂逅で苦虫を噛み潰したような顔をした男がいた。
誰でもない、クラウス・キーマンだった。
「初手では完全に遅れを取りました」
彼は断定するように続ける。
「小さな一手ではありますが、これは我々の完全な、かつ明確な”
「おいおい、キーマン少佐……いくらなんでも、大げさすぎやしないか?」
だが、キーマンは小さく頭を振り、
「”
キーマンはシニカルに、あるいは自嘲的に嗤い、
「これが外交的敗北と言わず、なんと言うんです?」
その言葉は、地球連邦との外交交渉が非常にタフになることを嫌が上でも今回の主要メンバーに自覚させた。
「気を引き締めていきましょう。これ以上の失点を、交渉の第一歩目から重ねる訳にはいかない」
「相違ないな」
そうバレルは相槌を打った。
だが、残念な言葉を言わねばならない。
この敗北は、この先数限りなく重ねることになる「大きな意味での外交的あるいは政治的敗北」の中の一敗に過ぎないということを。
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(やっぱホテルシップじゃねぇか……)
自軍ならSDG61-Lに相当すると思われる地球連邦の
そしてなんというか……”豪華客船として建造されたものを改装した”というなら納得いく、”ヤマト”と呼ばれるらしい船にいよいよ乗り込むと、戦闘艦とは明らかにコンセプトの異なる華美ではないが瀟洒な造りの廊下を、白い制服……体のラインに張り付くような、簡易宇宙服としても使えるコスモジャケットではなく、ブレザーと膝丈のスカートを基本とする所謂
バーガー的に気になったのは、数名いた肌色から見るとザルツ人に近い感じがする
どうにもガミラス人にはありえないそれらの自然な動きを見る限り、作り物っぽい感じがしない。
(まさかケモノと人間の混血か……?)
それともう一つ気になるといえば、隣を歩く情報部の少佐がやけに熱い視線で耳や尻尾を凝視していることだろうか?
情報将校らしくつぶさに観察している……のと少し違う気がする。
なんというか、温度と湿度が普通の意味での観察眼と異なる。
そして来客とミーティングなどを行うレセプション・ルームに案内された時の感想が上記である。
上質なクロスで覆われたテーブルと座り心地の良い椅子、壁には彼らの母星と思わしき風景が描かれた絵画が金色の額縁に入れられて飾られ、給仕役らしい女性従兵により、白磁にガミラス人好みの綺麗な青色でデザインが入れられた、いかにも高級そうなカップに注がれた紅茶はあくまで香り高い。
ここが外国の高級ホテルの一室だと言われても、思わず信じてしまいそうな自分がいた。
今回、ヤマトに乗り込んできたのは自分を含め7人。自分とネレディア、ハイデルンが第6機甲艦隊からの出航組で、これにバレル特使と情報部のキーマン少佐、そして別枠扱いのメルダ・ディッツと親衛隊の名代という立ち位置のミレーネル・リンケもついてきていた。
特に最後の二人は階級的にも人選的にも問題大有りのような気がするが、ハイデルンとバレルが話し合って決定したことなので基本、口出しはできない。
座席順は一番奥が艦隊最高責任者でもあるハイデルン、次が本交渉に向けた準備交渉や事前打ち合わせを行う予定の特使であるバレルであり、階級的にネレディアと自分、そしてキーマンと並ぶ。そして、ミレーネルと続き末席がメルダだ。
「こういう僅かな待ちの場面ですら、文化格差を見せつけてくるのか……」
左隣で呟くキーマンの言葉が、やけに印象的だった。
作中に出てきた来客用ティーセットは、マイセンの”ブルーオニオン”シリーズをイメージ。
白磁に青の模様が入る、シンプルなデザインだけど綺麗なカップです。
お高いですがw
マイセンにはまんま”
沖田艦長はロイヤル・コペンハーゲン派っぽい。
古代進とその一味は、ウェッジウッドを好んでそうです。