たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
「地球連邦はそれを既定の概念として熟知しているが、ガミラスの理解度は未知数である」
ってとこですかね?
こんかいはそんな感じの話で、政治がらみなのでぶっちゃけ長いです。
そして、紅茶が冷める間もなく……地球側の面々がレセプション・ルームに入ってくる。
それは外交という、”静かな戦争”の幕開けだった。
「お待たせしてしまい、申し訳ありませんな」
そう先頭を切って入ってきたフロックコート風の艦長服に身を包んだ男、通信で”沖田十三”と名乗った大将は、先ずは
安易な謝罪は相手に侮りを与えるものだが、この壮年の男の持つ空気感がそれを許さない。
「謝罪には及びません。大将閣下。それとここはテロンの船。我々が翻訳機を使いますので、以後はテロン語でお願いします」
起立して迎えたガミラス勢の中で、代表してヴェム・ハイデルンがそう発言する。
事前のローレン・バレル特使とのミーティングの成果であった。
「これはこれは。お気遣い感謝します」
そう微笑む沖田。
沖田に続いたのは二人の大佐、戦術長兼副長の古代守と技術長兼参謀の真田志郎。続いて出航前の昇進で中佐にさりげなく昇進していた古代薫カウンセラー兼情報統括官。
ちなみにこの三人はそれぞれ、副長/参謀/統括官の立場での出席となる。要するに”ヤマト”の沖田を含め最高意思決定人員というところだ。
同じ中佐のカーク(操舵長)が出席していないのは、南部砲雷長や森船務長、徳川機関長と同じく「船を直接運用するスタッフ」だからだろう。
ガミラス側に三人も女性が同行しているので、いきなり色目使って問題起こしそうだという理由でハブにされた訳では決してない。
その流れでいうが、当然の理由ではあるが森雪の会議不参加は、地球側のナイス判断と言える。
万が一にもガミラス側がイスカンダル人、それも某王族と勘違いして「ガーレ・イスカンダル!」とか敬礼しようものなら、この場で形容しがたい悲劇的喜劇が巻き起こったかもしれない。あるいは喜劇的悲劇かもしれないが。
今の森雪にとって、ユリーシャ・イスカンダルは「
これも世界線の違いで、古代進と森雪がくっつかなかった弊害かもしれないが……
ともかく、最近は乳房と性器と肛門を放り出した珍妙な格好で艦内をウロウロしてるせいで、なまじ似ている自分まで男性乗組員に時折、妙な目で見られるようになってしまった。
性的な目で見られるなら、まだ女として誇らしい部分もあるが、そのほとんどが奇異の目、ぶっちゃけ珍獣を見る目で見られているような気がしてしょうがない。
加えて短いツインテとネコ耳と尻尾がトレードマークのキャーティアン系後輩から、
『先輩もああいう趣味があるんですか?』
と悪意のない瞳で聞かれて地味に堪えた。
ちなみにキャーティアン的にはあの格好は全然有りらしく、
『私もたまに野生の血が騒ぐって言うんですか? 全裸で走り回りたくなる時があるんですよー♪ あっ、リードをつけてもらってお散歩プレイとかもいいなー』
と笑顔で言われてしまった。
その後輩には古代進の部屋には近づかないように注意はしておいたようだが。特にキャーティアンには人によりけりだが、特に性欲が強くなる発情期がある者もいるらしいし。
蛇足だが、『お散歩プレイが好きなのは、ニャン
ともかく、南部にはしばらく目線が合うだけで顔を真っ赤にされるし(自分のボンテ姿を想像したことは予想したが、「ちょっと
要するに森雪に対し、「ユリーシャと勘違いする」のは特大の核地雷である。
なんせ、「痴女系変人と思われた」のと同義語なのだから。
***
話は戻すが……会議に参加する佐官三人とも原作2199でイスカンダルに降りた時と同じ艦長のそれより丈の短いPコート風の第一種軍装をまとっている。
何とも古式ゆかしい風格というか雰囲気があるが……もう、この時点で色々ガミラスが負けてる気がしないでもない。
まあ、ガミラスの詰襟タイプのそれも正規の軍服だし、礼儀から外れているわけでは無いが……地球の第一種や第二種は、式典や公式の場などにも出席する際、礼服としても使えるようにデザインされている。
大日本帝国海軍では陸戦隊用の第三種軍装という名は実はこの時代にも残っていて、機密ヘルメットと組み合わせる簡易宇宙服にもなる、お馴染みの”
つまり、交渉事に関する心構えが服装からもわかる通り最初から違うのだ。
はっきり言えば、現代のガミラスにおいて外交交渉は「戦争の余技」と認識される場合も多いが、地球連邦にとって外交交渉は事前交渉だろうが予備交渉だろうが、どんな小さな会談でさえ「立派に戦場」なのだ。
これは致し方無い。この認識の差異は、地球連邦が未だ「戦争は政治の一形態に過ぎない」という基本中の基本、本質中の本質を忘れてないということを物語っている。
それは政治家や軍の上層部から、末端の兵まで同じだろう。
軍人として生きるなら、その認識が狂えば色々とおかしくなる。
敵味方関係なく「戦争になるのは政治が悪い」と自然に思えることこそ、教練/教育の賜物なのだ。
はっきり言えば、そういう国家は本質的に強い。
即ち、
・政治家が戦争という状況が齎す「一時的な利益」に目が眩み無駄に賛美することはせず、冷静に現実を把握している。きちんと戦争は「国家の状態異常」だということを認識している。
・軍が既得権益に固執せず、権力や権益を必要以上に求めず「その本質は市民軍(国民軍)であり、同じ連邦市民の生命と財産を守ることを第一義とする”プロフェッショナルな国防軍”」としての在り方を受け入れている。
なんか、ガミラスにはそこはかとなく厳しい条件であった。
更に加え、
「今回は交渉役の一人として参加させてもらう、地球連邦議員で国防委員会所属の槙原康介だっ!」
抑え役の伊東君がいないことをいいことに、上等なツィード・スーツを着こんで勇者王ボイスでノリノリな
「地球連邦外務省特使、翅川巽です。こうしてガミラスの皆さんと同じテーブルに着けて光栄です」
とニコリと微笑む、お耳ピコピコ、尻尾ゆれゆらの黒猫きょぬーなスクール・ユニフォーム風のオーダーレディース・スーツ姿のお姉さん。
というか、キーマンの瞳が大きく見開かれ、熱量が一気に増大した。なんか今にも「目から陽電子ビーム」を撃ちそうである。ガミラス人にそんな愉快な機能はついてないが。
ちなみに口からバズーカも撃てない。たまに血を噴出するぐらいだ。それは地球人も同じだが。弟絡みの事案を聞いた古代兄とか。
***
ガミラスにない地球連邦の強みの一つは、「二人の非軍人が
この発想の有無により、本気で国家としての強さが変わってくる。
実は、21世紀の日本において「シビリアンコントロール」というのは、ネガティブなイメージで語られることが割とある。
例えば、銀英伝に代表される軍事行動全般に政治家が介入しようとする同盟側の「行き過ぎたリベラリズムとシビリアンコントロール」の描写があるからかもしれない。
だが、シビリアンコントロールというのは、本来そういう物では当然なく、逆にとても大事なことなのだ。
何故か?
先ほどの話と重複するが、「戦争は政治の一形態」であり、文民統制の示す文民とは即ち政治家のことだ。
何が言いたいかと言えば、結局は機能分与の話。「餅は餅屋」という極めて単純な話だ。
軍人の仕事は地球連邦においては広義な意味も含めた”国防”であり、具体的には戦場で戦うこと、その準備をすること、国防という理由の破壊と殺戮を専門とする軍という組織の管理と運営だ。、
だが、戦争を始めることも終わらせることも、現代国家においては軍隊の仕事ではないのだ。
開戦も終戦も原則として連邦市民の”同意と合意”が必要であり、それを取り付け取りまとめるのが政治家という存在だ。
戦争に付随する戦略を考えるのも軍人の仕事だが、「戦後を見据えた」国家戦略を考えるのは政治家の領分であり、同じく国家を運営するのは軍隊ではない。
そのあたりをはき違えるとどうなるか?
”政治の素人である軍人が、国防業務に加えて国家運営まで背負わねばならなくなる”
完全に組織学的オーバーワークだ。多くの軍事国家が国家運営に失敗して良くて困窮悪ければ破綻してしまうのは、この辺りも原因だろう。
更に哀しい現実がある。軍人が政治家をやる以上、「国家国民より軍隊の維持」をやらなければならなくなる。
自分の権力の担保が軍である以上、それをないがしろにすればどうなるかくらい誰でもわかる。
「国家を維持するために軍がある」のに本末転倒になることは、地球史を紐解いても決して珍しい話じゃない。
そもそも軍とは「生産性のない組織」だ。
いくら大きくしても国が潤うことも無ければ、大きくなった分だけ金食い虫になる。
その現実を糊塗する為に他国に侵攻し、支配下とすることで軍の存在意義を示し、収奪した富や支配民たちへの重課税で国庫を補填しようとするのも常套手段(基本的に覇権主義やら植民地政策は、その類型に過ぎない)だが……ビジネスモデルと考えると、この行為は極めてプラス収支を出すのが難しい「ハイリスク/ローリターンの
戦費というのは恐ろしくかかるのが常だ。
加えてよしんば戦争に勝ったとしても占領地の維持管理に別途料金がかかる。
占領地民から収奪したり重税をかければ叛乱祭り。それを鎮圧する経費だって安くはない。
そして、占領地を本格的に植民地にしようとすれば「本国と連携できるレベル」に持っていくためにインフラ整備などにも投資が必要だろう。
はっきり言うが、地球で覇権主義やら植民地やらが廃れた根本的な理由は『
最終的に……一時的には羽振りがよくなっても、やがて国家に損失と不利益と頭痛の種しかもたらさないのがわかっていて、戦争を仕掛けるバカは居ない。
それを嫌というほど歴史の積み重ねの中で思い知ったのが、地球人類という種族だった。
だから、第二次世界大戦では「戦争(の趣旨)が変わった」のだ。
この世界線において、覇権主義の総決算は事実上第一次世界大戦であり、第二次世界大戦は欧州方面はともかくアメリカが太平洋方面で南アタリア島の宇宙船を欲して日本に戦争を仕掛けて奪い取ったのは、「他国に先駆け宇宙開発を独占し、その利益をアメリカに集中させたい」という意図があったからだ。
だから、ライバルになりうるソ連を戦後を見越してベルリン陥落前に裏切り、エルベの誓いを破棄したのだ。
つまり、当時のアメリカは「儲けの出ない地球上の覇権主義や植民地経営に見切りをつけ、宇宙開発に投資したい」と考えた。
だが、アメリカ単独の富の占有を他国が、他民族が許すわけがなかった
その結果が、短い冷戦の果ての第三次世界大戦であり、地球人類が滅亡の瀬戸際までいった第四次世界大戦だ。
この膨大な流血の果てに来た重みを、ガミラスは未だ知らない。
地球連邦が、いや地球人が積み重ねた失敗の歴史を、この宇宙人たちは知らな過ぎた。
***
簡単な自己紹介を終えた後、
「まずは紅茶を楽しみませんか? 我が国でも中々に逸品だと自負しております。冷めきってしまうのを待つのは少々惜しい」
と切り出したのは、勿論普段から紅茶を愛飲する沖田十三だ。
紅茶は、飲むのに少々熱すぎる温度で入れるのが基本とされている。
というのも、お茶が飲み頃の温度になるまで会話を楽しむというのが、本来の英国式茶会の作法だ。
そして、今がちょうど飲み頃という訳だ。
「あら。美味しい」
思わずそう呟くネレディア・リッケ。
第6機甲艦隊組(+ディッツの娘)は暢気なものだが、バレルとキーマンは気づいてしまう。
確かにこの紅茶は美味い。もしかして、これまで飲んできた紅茶の中で一番美味いかもしれない。
だが、それを意味してるのは……
((ガミラス人の味覚という些末情報までも、完全に把握されているというのか……))
またしても、まだ交渉のこの字も始まってもいないのに、”情報学的敗北”をしたことに気づいてしまったのだ。
そして彼、沖田は「自国の紅茶」だといった。
つまり、彼らはガミラス人が摂取できる食品を自国で生産してると断言した。
その意味は、とても大きいものだ。
(これは、本気で戦争をしてる場合ではないな……)
ネコ耳と尻尾、オーバーサイズの胸を見るとはなしに見ながら、キーマンはガミラスの未来を憂うのだった。
地球の”外交”における蹂躙戦が静かに開幕しました。
なお、ガミラスにはイスカンダルが(地球の情報を流すという意味において)味方していましたが、ユリーシャ・イスカンダルの意図的な「
ただし、これはガミラスにとり「圧倒的な不公平あるいは不幸」という訳ではありません。
なぜなら……ユリーシャがもし、「知り得た地球連邦の情報全て」を包み隠さずスターシャ女王に伝え、純度を落とさないままガミラスに伝わっていたならば、
「ガミラスは”怖くて外交なんてできない”未来」
が待ち受けてたでしょうからw