たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
しかし、これまであえて曖昧にしてきた「地球連邦内のガミラス捕虜」の姿の一部、あるいは片鱗がみえてくるかもしれません。
槇原が翅川を羽川と呼ぶ問題はともかく、
「んで、ガミラスに開示する情報ってのは?」
「……ガミラス語で書かれた外務省広報部責任編集の”
翅川が見れば、沖田も小さくうなずいていた。
国防総省的にも問題のないアプリのようだ。というか、出すタイミングは予定より大幅に狂ったが、元々ガミラスに渡す資料だったのかもしれない。
そして、槙原もポンと手を打ち、
「ああ。あの捕虜の懐柔……じゃなかった、啓蒙用に作った紹介アプリね。いいんじゃね? 元々は接触した異星人に対するPR用に作ったもんだしさ」
少し解説させて欲しい。
捕虜にしたガミラス人にすべきことは、相手が犯罪者ではない以上「最低限の健康的で文化的な生活」が営める程度の衣食住の確保だ。
最初はニューホワイトサンズ星系のすぐそばにある軍が軍規違反者の収監所、軍法違反者を投獄する軍刑務所を建設したが、実際には牢獄はガラガラで閑古鳥が鳴く開店休業に近かった惑星”ニュー・グアンタナモ”に収監するが、施設規模的にすぐに手狭になると判断されたため、以下のような意見が出たのだ。
『いっそ、人を住めるけど、まだ入植してない……というか入植予定の立ってない居住可能惑星、丸々一個収容所にしたら? ほら、犯罪者じゃないから連邦的な価値観では罪人扱いはできないけど、曲がりにも敵国人に延々と
『あー、確かに。”敵国人にタダで食わせるぐらいなら、我々にタダ飯食わせろ”とか言い出しそうな連中には、すんげー心当たりあるな』
『まあ、「他人の金や税金で食う飯は美味い」ってのは昔から言われてることだしな。その手の連中に”捕虜の政治的な意義”の話をしたところで、”馬の耳に念仏”だぜ? ならいっそ』
『惑星初期開拓民の真似事でもしてもらおうってか? それやるなら、徹底的にやった方がいいな。軍の輸送船で延々と食糧やら必要物資運ぶのも不健全だし、いっそ収容所の周辺に街でも作って、ある程度の”惑星内自給自足体制”を作った方が、効率も見栄えもいい』
まあ、『惑星一つを収容所にするだけでなく、”収容所のある街”を作ろう』なんて考えるあたり、わりと地球連邦もすっ飛んでるのだが……
これも、やたらと在庫がある「住めるけど住んでない星」の有効利用を常々考えている連邦らしい結論と言えた。
えっ? 資源採取? 「人が住めない星」に腐るほどあります。
実は地球連邦の”現居住惑星”の多くが、同じ星系にある惑星の資源採集基地ならびに集積所、加工ポイントとして入植と開発が勧められているのだ。言うならば、地球連邦の居住惑星の多くは「鉱山の街兼工業地帯」っぽいのである。
とはいえ、現状では居住可能惑星の半分は、わずかな監視員や観測員がいるだけの事実上の無人で、おまけにガミラスとの開戦からの国防識別圏の拡大でまた増えた。
正直、地球連邦の内政(産業とか国土開発)担当者は、
『総人口260億しかいないのに、どないせいちゅーんじゃいっ!!』
と常に頭の痛い問題だった。なんせ人口分布というのはばらけすぎても人的リソースの収斂度が下がり、国力が落ちるのだ。
人は寄り集まってこそ力になるとはよく言ったものである。
なので降ってわいたようなガミラス軍捕虜の受け皿としては、大規模収容所の建設にかこつけた惑星の開拓はうってつけだった。
ちなみに彼らの住むことになった惑星は、元々は「○○星系第○番惑星のような数字や記号を用いた」味気ない名前だったが、収容所が作られるにあたり新たに命名される事になった。
その名は、
”ネオ・バンドー”
おそらく実話に基づく映画”バルトの
なんとなくだが……地球人が、久方ぶりに発生した戦時捕虜に何を願ったのかがわかる気がする。
***
だが、ここで問題となったことがある。
ガミラス人は、「どんな国の誰と戦った」のか、ほとんど知らなかったのだ。
いや、ガミラス人が持っていた翻訳機の解析やら何やらを始め、色々と努力した結果、開戦から2年過ぎた頃にはとりあえず意思疎通ができるようになったが……そうなった矢先に判明したのが上記の事実だった。
彼らのデータベースに地球連邦の情報はほとんどなく、比較的階級の高い者から下まで尋問した結果、
”地球連邦の規模も技術力もほとんど知らない状態で戦争を吹っかけてきた”
という驚愕の事実が判明したのだ。
だが、そこはそれなりに異星人を取り込んできた実績のある地球連邦、こんな時の為に『地球連邦を知らない異星人と接触する時に手渡すプロモーションアプリ』を用意していたのだ。
とはいえ、まずガミラス語対応のプラグインを作らなければならなかったし、一応は捕虜なので内容を吟味し、削除や追加を行わねばならなかった。
更には、ガミラス捕虜が敵対する地球連邦の端末を『何か仕掛けてあるんじゃないか?』と疑い、使うことを嫌うことを予想した為にガミラスの端末でも動く”軽量版”まで作成したのだ。
今回、翅川が持ち込んだアプリの原型がこれである。
ただし、当時の地球連邦の懸念は、結果的に杞憂に終わる。
地球連邦が貸し出した情報端末を新しいオモチャを貰った子供のように喜び、地球連邦の紹介アプリだけでなく、様々なゲームや映像コンテンツを思い思いに楽しみ始めたのだ。
どうやら、彼らは元々が大変な娯楽欠乏にかかってたらしい。
いや、もちろん彼らは宇宙時代に復活したインターネット、超光速通信を用いた地球連邦の社会インフラである”フェデレーション・インフォメーション・ネットワーク(通称”フェデネット”)”にはアクセスできない、軍が運用する惑星内イントラネットにしかアクセスできないし、提供されるコンテンツは、いずれも「洗脳じみた懐柔プロパガンダ」の意図をあまり隠せてない物ばかりだ。
戦争を連想させるものや、里心がつきそうなものは外され、代表的なものは……
・連邦各地を旅して、実在しない者まで含めたあちこちの”
・自ら星の代表となり戦争ではなく交易で星を豊かにしてゆく”ソラリスティア”
・自らホーシアンのパートナーとなり、惑星一つを丸々舞台とした超長距離レースの優勝を狙う”スティ-ルボール・ダービー”
・純粋な宇宙都市開発/運営ゲームである”ズムシティ”
などなど。何やら特に1番目と3番目にどこぞの
正直に言えば、地球連邦は自分達が軽い懐柔のつもりでばら撒いた娯楽が持つ中毒性、それもガミラス軍人には猛毒となりうるそれを未だ理解していない。
まあ、その顛末がわかるのは、もう少し未来の話だ。
今は、「そこまで大きな話」としては顕在化していない……ということになっている。少なくても表向きは。
それに翅川が提供しようと言ってるのは、連邦の主観では毒性もへったくれもないプロモーション・アプリだ。
そんな大騒ぎになんてなるはずがない。多分。
***
「すみません。少しお聞きしたいのですが」
バレルが翅川と槙原のやり取りで気になるところがあったのか、発言の許可を求める。
「なんなりと」
翅川が受けると、
「その、やはりテロン、いえ”地球連邦”には、ガミラス人の捕虜が居るのですか?」
まずはそこからだというのも頭が痛いが、
「いますよ? 純粋なガミラス人も、貴方達が二等臣民と称する被支配民も。ざっと300万人ほど」
「さ、さんびゃ!?」
どうやら外交は、新たなステージに入ったようだ。
ともあれ、異文化コミュニケーションが難しいのは世の常、人の業だ。
生まれた星が遠く離れているのなら、尚更なのだろう。
それをここに居る面々は、嫌というほど思い知ることになるかもしれないが。
いよいよ、捕虜の話が少しだけ出てきました。
というか、地球連邦上層部、無自覚で酷い”捕虜虐待”をw
というか、捕虜にしちゃいけないこととか、与えちゃいけない物を与えたり、色々やらかしてる模様。
まあ、これも長らく戦争捕虜が居なかった弊害ということでw