たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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今回は、ちょっとだけ槇原議員が味を出す話かも?
他にも、空間騎兵隊や親衛隊の隠された秘話も出てきます。

果たして、ガミラスの反応は……






第97話:”戦場のドラマ”

 

 

 

「とりあえず、ガミラスの方々の疑問から解消するか」

 

 とヤン・ウェンリーばりに頭を掻く槙原。現時点では「貴族の処分場」について踏み込む気は無いようだ。

 ところで自分で茶々入れて焚きつけておきながら、事態の鎮静化を図る……これはマッチポンプというのではないだろうか?

 とはいえ槙原康介という男も、無駄に二度目の人生を送っているわけでは無いようで、

 

「沖田大将、軍の重鎮として”地球連邦における戦場での捕虜の扱い”について、端的にお願いします」

 

 ここで翅川巽特使ではなく、沖田十三艦長に持っていくあたりが実に槙原だった。

 

”戦”(いくさ)がひとたび終われば、助けられる命は助ける。それが、連邦軍人としての矜持であり、船乗りとしての心意気というものだと儂は考えている」

 

 槙原は沖田に敬意をこめて一礼する。

 この言葉は、実際に翅川から引き出すには難しい言葉だろう。外交官としては正しいが、彼女はデータしての戦争は知っていても、戦場という現実の重さは感覚として理解していない。

 

 それを言うなら槙原も同じだろうが……彼は胡散臭くても転生者であり、前世という物が存在していた。

 そして、この言葉の裏側には、二つの国の様々なドラマがあることを槙原は知っていた。

 

 例えば、この世界線ではメタ的に言えばリメイク版第1作目の「2199」から斎藤たち空間騎兵隊が”ヤマト”に乗り込んでいるように、空間騎兵隊、更に言えばその母体である”宇宙海兵隊”の発言権は軍部全体でも原作より高めだ。

 

 原作では”火消し役”などと呼ばれていたが、この世界線では地球連邦はガミラスに対して負けてないどころか、数少ない例外を除いてほぼほぼ大勝している。

 なので理屈的には”火消し役”は、そうそう出番がないはずだ。

 しかし、軍部での発言権というのは往々として活躍具合、「戦争(勝利)への貢献度」によって高まる。

 では、宇宙海兵隊や空間騎兵隊はどこで活躍したのか?

 

 ガミラスが連邦攻略の橋頭保とする為にえっちらおっちらと大マゼラン星雲から天の川銀河まで牽引して持ち込んだ、”浮遊大陸”を攻略した?

 いや、確かにそういう事例もあるが、残念ながらそのような戦闘は8年間/112回の戦闘の中でわずか2回だけだ。

 しかもそのうち1回は、応力集中点を相転移砲で射貫く(そこだけを破壊する)という戦術で、波動砲を使わなくとも浮遊大陸を分解に追い込んだという戦い(つまり、殊勲はYユニットを装備したナデシコE型の1隻)となった。

 

 流石にこれだけでは発言権云々は難しいだろう。

 では?

 それはある意味、艦隊でのドンパチより危険な任務……「降伏艦からの捕虜の確保」と損傷して身動き取れない「敵艦からの救助任務」だ。

 

 さて、これまで公開した連邦艦艇の設定でも、エステバリスや本来の歴史ならこの時代あり得ない空間機動甲冑(驚くべきことに90式の名が示すように現行型が正式採用されたのはガミラスとの開戦1年前だ)を連邦艦が搭載していることは地味に記していた。

 これらの装備の管轄は、実は宇宙海兵隊や空間騎兵隊だ。

 

 本来の彼らの艦隊での役割は多くの船外作業だったり、激戦時には砲戦フレームを担いで防空戦の補助だったりするのだが、ガミラスとの戦争が始まってから重要度が増したのが、前出の2つの任務だ。

 

 その危険度は降伏艦の搭乗員確保なら乗員皆殺し覚悟の”偽装降伏”で手痛い反撃を受ける可能性もあるし、損傷艦に乗り込めばダメージによっては常に爆散の危険が付きまとう。

 

 口が裂けてもそれらの任務を平然とこなしたとは言わないが、彼らの勇気と度胸は賞賛されてしかるべきものだった。

 もっとも当人たちに言わせれば「慣れの問題」らしい。

 だが、彼らの言い分はもっともで、実際にガミラスとの開戦前は、宇宙海兵隊や空間騎兵隊の主な任務は、宇宙海賊や星間テロリスト、密輸船などなどのあらゆる非合法武装集団の公海上における船の臨検やら制圧、身柄の確保というまさに「似たような危険な任務」をこなしてきたのだ。

 実はエステバリスが配備されていたり、空間機動甲冑がいち早く開発されていた理由は、このせいである。

 

 作戦に従事したものによれば、降伏したガミラス艦の乗組員は「気合と根性が入った海賊やテロリスト」よりよほど安全な相手だったらしい。

 というのも、実際に偽装降伏なんて事例はほとんどなく、あったのは精神の均衡を崩し、逆ギレの半狂乱で銃を向けてくる高級将校とかだったのだ。

 

 

 

 そして、そういうシチュエーションにはガミラスにもドラマがあった。

 原作を見ると、如何にも偽装降伏とかやりそうな”親衛隊”だが、この世界では真逆で、同じ船に乗り生き残ってた場合、「降伏を台無しにしようとする者」を真っ先に実力行使(しゃさつ)したのは”親衛隊”だったのだ。

 

 彼らは語る。『自分たちは生き残り、虜囚となっても生き残り、いつか本国に情報を持ち帰らなければならない。それが敗北したからには、最重要の任務』だと。

 また、降伏した船に冷静に対応するように率先して呼びかけた(内容は、「降伏を反故にしようとするものあらば、階級/立場を考慮せず直ちに射殺せよ。それは国家への反逆であり、親衛隊の名において許可する」なんて物騒な文言を含んだアレな物だったが)のも親衛隊だった。

 

 つまり、彼らは正しく親衛隊であることを自らの行動で示し、地球連邦軍はそのプロ意識の高さと国家への忠誠心の高さにいたく感服した。

 そのせいか、戦後しばらくして開示された情報だったが……親衛隊と地球連邦の間でささやかな密約があったのだ。

 親衛隊はこう頼んだと伝えられている。

 

 『自分達は国内の弾圧を担当する汚れ役。他の捕虜が委縮するし、精神衛生上よろしくない。また国内での立場もある。なので普通の捕虜とは別の施設に収監してほしい。環境は劣悪でも構わない』

 

 と。地球連邦はそれを快諾。

 ”ネオ・バンドー”が開かれた後も、親衛隊は”ニュー・グアンタナモ”に残留することになる。

 彼らは勤勉で、そして相対的に未来の話になるが、ガミラスへの帰還率が最も高かったのも親衛隊だった。(それでも100%ではなかったようだが)

 ちなみに戦後の親衛隊の証言によると、「収容所(?)では部屋数に余裕があるという理由で個室(独房ではない)が与えられ、監視はあるがその辺の安ホテルよりよほど快適だった」ということらしい。

 

 

 

***

 

 

 

 槙原は親衛隊の扱いはさておき、槙原は戦場での捕虜の扱いを沖田の言葉を補足する形でかいつまんで話した。

 

「バカな……」

 

 呻くように呟いたのはキーマンだ。

 

「この辺りは背景となる文化や歴史、もしくは意識や価値観の違いとして納得してもらうしかないわな」

 

「何故、そこまで捕虜を厚遇する……? 敵国の軍人だぞ?」

 

「敵国の軍人”だからこそ”です。少なくても地球連邦(われわれ)は、捕虜にそれだけの価値があると認識しています」

 

 そう答えたのは翅川だった。

 外務省にしてみれば、捕虜というのは歴史を紐解いてもわかるように「強力な外交カード」になるうるものだ。

 まあ、軍部や政府は「口が裂けても消極的とは言えない懐柔策」を実施中なので、他に何も無いとは言わないが。。

 

「とりあえずその辺を含め、羽川サンが渡したアプリで地球連邦の概要は確認してくれや。だが、どうする? こうまで認識や知識量の違いがあれば、まともな会談にはならんぞ?」

 

 槙原の意見はもっともであり、だから翅川は……

 

「データの確認で一日、初歩的な検証と本国(ガミラス)への連絡と報告を入れて……三日後あたりで再会談はどうです?」

 

「俺に異論はないよ。沖田大将はどうです?」

 

 沖田はうなずき、

 

「特に何を犠牲にしても急がねばならぬ旅ではない。それに政治的齟齬を残したまま二つの陣営が艦隊行動などできんだろ?」

 

 槙原は頷き返し、

 

「地球側からの提案は以上だが、ガミラスの皆さんはどうだい?」

 

「これは、素直な好意として受け取るしかないでしょうな。少なくとも、地球連邦(あなたがた)は、ガミラスと停戦交渉を続ける意思があるという現れでしょうし」

 

「それが私達の仕事ですので」

 

 と返す翅川巽特使。

 実際的な今回のイスカンダル行の本来の目的は、公式的には「事前交渉に向けた予備会合」であり、本質的には「ガミラス側に”()()()()()()()()()()()()()”の確認」である。

 

 沖田の言う通り、何かを犠牲にして締結を急がねばならぬ案件ではないし、失敗したからといって直ちに大きく国益が損なわれるような調停でもない。

 ただ、地球連邦としては『戦費が逼迫してるわけでも、遺族年金が国庫の大きな負担になるほどの戦死者が出ているわけでもないが、戦時経済の恒常化は健全な国家運営とは言えず、将来にどんな瑕瑾を残すかわからないので早期に止めたい』というのが本音だ。

 

 確かに戦争というのは技術促進の触媒ともなるし、他にもメリットがないわけじゃないが……人道的理由なんて語らなくとも、総合的に見て「平和が一番」なのだ。当たり前だが、国家というのは本質的に平時にこそ発展する。戦争なんて生産性のない物に国力リソース割くくらいなら、別の分野に投資したいのが本音だろう。

 

 もっとも、ガミラスの領域をガトランティスが荒らしまわってる現状、地球連邦が「平和の配当」を受け取れる日は、ガミラスとの停戦が成っても相当に未来の事象になりそうではあるが……

 

「とりあえず、難しい話は三日後ってとこが本日の合意ってことで。あー、それと済まないんだが……」

 

 槙原は珍しく困ったような表情になり、

 

「皆さんの時間、もうちょっともらえないか?」

 

「それは構いませんが……何故?」

 

 そう質問するバレル特使に、

 

「皆さんのちょっとした来艦記念パーティーを開きたいって言い出した者がいるんですよ」

 

 そして、槙原は”絶対にガミラス人が断れない単語”を口にする。

 

「主催は、地球連邦(われわれ)ではなく”イスカンダル”なんですが、ね」

 

 

 

 その時、翅川が苦虫を嚙み潰したような顔がひどく印象的だったと、後にクラウス・キーマン少佐は語ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




槙原はチクチク刺しますが、決してこの時点では深く刃を突きこみません。
無論、意味がないからですw

あと”転生者”なら当然かもしれませんが、この世界線では実は「軍の中では大物だけど変人枠」の沖田十三に、一定の敬意を払ってる模様。

さて、次回からは……素直にパーティーに接続できるとは思いませんが、何やらややこしいフラグ立ったかも?

イスカンダル(ユリーシャ)主催の歓迎パーティー”……嫌な予感しかしないw



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