注:本作品には
「オリジナルウマ娘」
「二次創作」
「誤字脱字の可能性」
「まデ死」
などが含まれています。
以上に不快感を示される方はブラウザバックを推奨致します。
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「1着は、ユーエングリ!」
ワァァ、と大きな歓声が雨の中響き渡る。彼女は初の重賞勝利であり、同レースにいたウマ娘はオグリキャップやスペシャルウィーク、サイレンススズカにミホノブルボン。ともかく、超がつくほどの強豪を抜き去り、劇的な勝利をもぎ取ったのだ。
…だが、誰かの勝利ということは誰かの敗北でもある。
それは、自分が担当するウマ娘である「マンハッタンカフェ」にも、先の強豪にも、同じことだった。
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「…トレーナーさん。今戻りました。」
レースも終わり、トレセン学園に帰ってきてからシャワーを浴びに行った彼女は、既に私服となりトレーナー室に入ってきた。
「おう、ちゃんと温まったか?」
「ええ、まぁ。」
…さすがに雨に濡れたまま過ごさせる訳にも行かず、シャワーに向かわせたのだが、シャワーではなく湯船に浸からせるべきだったか、と思いつつも彼女の様子を見る。
「…どうしたんですか?」
「いや、あまり気落ちしてないんだな、って。」
「今更1度2度負けたって、落ち込むような事は無いですよ。
それより、次のレースはいつでしたっけ。」
「2ヶ月後だ。それまでにしっかり練習しておかないとな。」
「分かりました。
ではしつれ…くちっ…」
彼女が部屋を出ようとした時、可愛らしいくしゃみの声が聞こえた。
「…コーヒー、飲むか?」
「……お言葉に甘えて。」
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しくじった。
コーヒーの粉を切らしていた。
たしか昨日、コーヒーを飲んでその時にもう無いな、と思ってそのままにしてしまったのだ。
「…どうかしたんですか?」
「いや、その…
…コーヒーの粉、切らしてた。」
「えぇ……」
管理不足じゃないか、という目線を向けられるも、それに対して反論など何一つ出来ずに目線を逸らすだけになる。
「…はぁ、私の部屋から持ってきますよ…」
「…あ、いや、ちょっと待っててくれる?」
コーヒーの粉が無くても、たしか缶コーヒーはあった。
安くて買ったはいいけど結局飲んでいなかったものだ。
…冷たいまま飲ませる訳にも行かず、かと言ってコンビニにあるような温めるためのものもなく、苦肉の策として湯煎し始める。
相変わらずカフェからは冷たい…というより何か殺意めいたものを感じる気がするが、温めたコーヒーをカフェに渡す。
「…いただきます」
少し不満そうにも見えるが、彼女はプルトップを開け、コーヒーを少しづつ飲み始める。
その様子を見つつ、自分の分を温めていると、彼女から声をかけられた。
「…トレーナーさん。ごめんなさい。」
小さく、だが何かを堪えるように震えた声が聞こえる。
「負けてしまいました…もう少し、もう少しで届いた距離を…掴めずに。」
「本当に、ごめんなさい…」
…そこまで気にしているとは思わなかった。
確かに勝って欲しい、という気持ちはあったが負ける時は負けるのだ。それは仕方ないものとしか割り切れない。
「気にしなくていい。外は雨も降ってたし条件が悪かった。」
「ッ、でも…でも…!」
ふと、カフェの方を見ると頬からぽたり、ぽたりと透明な雫が見えた。
…きっと、それ程までに悔しかったのだろう。
「仕方ないさ。勝負の世界はそういうもんだ。」
「だっ…て…っ」
雨は止まず、静かに、静かに降り続ける。
勝利を掴めず、未だ残る熱を静かに冷ますように。
自分が出来ることは何も無い。
傷は誰かに移すこともできないし、すぐに治るような魔法もない。
ただ、その傷を癒そうとするくらいなら、きっと許してくれるだろうか。
「ト…レー…ナ…」
「……落ち着くまで、こうしてるよ。」
ただ、静かに彼女の頭を撫でる。
魔法でも奇跡でもない。ほんの少しの気休めだ。
それでも、彼女にはそれで十分だったのだろう。
少しの間、静かに嗚咽を漏らして、そしてゆっくりと顔を上げる。
「…ありがとうございます。
それと、その…ごめんなさい。」
「気にしなくていいって。
さ、今日はもう休んで、明日からトレーニングだ。」
「……その、トレーニング、今日じゃダメですか?」
彼女の中でなにかが吹っ切れたのか、珍しくそんなことを言ってきた。
…レースの疲れも残っているだろう、と思って今日は休みにしようと思っていたのだが、存外にタフなようで。
「じゃ、今から軽くトレーニングしよっか。」
「よろしくお願いし…へくちっ」
…前言撤回。
「…やっぱり、もっかい温まって、今日はゆっくり休む日にしよっか。」
顔を赤くしている目の前の彼女を見ながら、楽しそうにケラケラと笑いつつ、今日の予定を終えることにした。
明日も雨だと言っていた。きっとこの分じゃしばらく天気は良くならないだろう。
だが、今日を忘れないという意味なら、「良い」天気にはなるだろう。