永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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頭の中には全部入っているのに、文章を起こすのってすごく大変ですね。まともな文章を書いたのは、高校の反省文以来ですので初投稿です。どうぞよろしくお願いします。


01R 彼女はムーンレイカー
飛び立つは流星のように


「本当に、後悔していないのか?」

 

赤信号での停車中、ハンドルを握るトレーナーが私に静かに問いかけた。

普段の態度からはかけ離れた声色に、私は手に持った漫画雑誌から目を離し、運転席に座る彼を見る。

 

あら今更そんなことを聞くなんて・・・決心が鈍りましたか?

 

彼とはそこまで長い付き合いではない。だが共に夢に向かって駆け抜けた深い仲でもある。そんな無二の戦友らしくない言葉に、揶揄うようにそう返す。

 

当時は書類仕事しか取り柄のない、能力では凡百と言われていた。そんな新人トレーナーと言われていた彼は、わたくしと共に二人三脚でトゥインクルシリーズを走り抜いたのだ。

 

「いや、その・・・そう言うわけではないんだが」

 

問いかけた筈のトレーナーは言い澱むように口をもにょもにょしていた。おそらく、望んでいた返答ではなかったからだろう。多分、聞いたのは自分なのにな・・・とか考えているのだとは思うが、わたくしはトレーナーに望み通りの返答を返すつもりはさらさらありませんの!

 

何度聞かれても返答が変わらない質問をするのは、男らしくありませんわよ

 

わたくしには、間違いなく才能があった。他者よりも速く走れる自慢の脚を持って生まれた。地元では負けなしで、全国から強豪が集う中央トレセンですら一握りの上澄みと言えるだけのものがありました。

 

 

トレーナーの責任ではない。そんなわたくしが、クラシックで連敗し、ろくな実績を作ることができず、こうして中央トレセン学園を離れることになったのは。

 

どんな結果であれ全部受け入れる。勝っても負けても。そう言う話になってたでしょう?

 

全部事前に決めたことなのだ。最後のレースに出たことも、こうして車に乗っていることも含めて。二度とあの中央トレセン学園には帰ることはないということも。

そんな割り切った回答に、トレーナーは人が変わったかのように叫ぶ。

 

「・・・勝ったじゃないか、君は!誰にも出来なかった事を成し遂げたんだぞ!上に掛け合えばなんとか出来たかも知れないんだ!」

 

普段割と静かに話すトレーナーらしくない、毅然とした言葉にわたくしは少し驚いた。自称小心者であるトレーナーが、怒りすらこもった大声を出しているのを見るのは初めてだった。

 

いきなり大声を出さないで欲しいですわ。耳がキーンってなりましたわ。

 

私の責めるような、なだめるような言葉に、トレーナーは慌てながら謝った。先ほどまでの態度とはうって変わって、再びいつものトレーナーに戻っていた。

密室空間での大声はやめてほしい。ウマ娘の耳は繊細なのだ。あと青信号になったから前を向きなさいトレーナー。

 

 

アクセルを踏み前進を始めた車の中で、再び漫画雑誌を読む気にはならなかった。そんな空気ではなかったからだ。

いまだ冷めきらぬ怒りを堪えるように、ハンドルを強く握りしめるトレーナーは呟くように言った。

 

「君は残るべきだった。あそこには君が必要な筈なんだ。結果は出したんだから、なんとか出来たかも知れないんだ」

 

何を今更な事を。とわたくしはうんざりした気持ちになりましたわ。トレーナーの気持ちは嬉しいがどうしようもない事なのだ。結果を出せたかどうかは、トレセン学園を辞める事とは関係ない。彼にはわかり切っているはずなのに。

 

それを言うためについて来ましたの?だったら車から叩き出しますわよ?と言いつつわたくしはトレーナーを見る。ここからはわたくしが運転しますから、貴方は歩いてトレセン学園まで帰りなさい。

 

「君は免許を持ってないだろう・・・わかった悪かった、悪かったから腹をペチペチするのはやめなさい」

 

謝るトレーナーの腹をペチペチしながら、わたくしは物思いにふける。おお、出会った当初はトトロみたいなおデブ体型だったのに、筋トレのおかげでまるでプロレスラー体型ですわ!筋肉は増えて、でも脂肪はけっこう残ってますのね!コメばっか食ってるからですわ!

 

「これでも結構落としたんだぞ。言わないでくれ・・・頼むから」

 

気にしているのだろう、すこし凹みながら返事をする。決して口には出さないがわたくしは結構気に入っている。出会ったときは自己管理もできないトレーナーかと思ったものだ。わたくしに(無理矢理)付き合わされて、一緒にトレーニングをしていた姿は、トレセンではそこそこ有名なのだ。

 

そのおかげか、中央トレセンのトレーナーになれるくらいの能力はあるのに、自己管理できないと言う悪評は立ち消え、今やなかなか根性のある有望な若手扱いをされているトレーナーなのだ。

 

いや、正確には有望な若手扱いされていたと言うべきですわね。私の退学に合わせて、まさか自分も辞表を出すなんて、とんだバ鹿野郎ですわ。しかも付いてきますし。

 

・・・貴方は、貴方の方こそ後悔していませんの?

 

声は震えてはいなかったと思う。もしもトレーナーが一時の下らないセンチリズムのために仕事を辞めたのなら、今すぐ車をトレセン学園に引き返させて撤回させなければならない。辞めなくてはならないわたくしとは事情が違うのだ。

 

「いや、よく考えて自分で決めたんだ。皆にはもう話は通してるよ」

 

ちょうどいいタイミングだったしね、とこちらの心配を気にも留めずに話す。

やりたいことでも見つかったのでしょうか?まあトレーナー業は無理矢理やらされてたようなものだから、それなら問題ないですわよね?多分。

 

「今でもトレーナー業は向いてないと思う。でもすごい楽しかった。やるべきことは全てできたと思う。だから後悔はないさ」

 

「何度も助けてくれた理事長と理事長秘書、あと同僚達には申し訳ないけど、まあそれは仕方がない」

 

ちょっとバツの悪そうな顔をしながらも、その声は晴れやかだった。こっちが心配してるのに人の気も知らずに呑気なものですわ。

 

でも、中央トレセンのトレーナーって高給取りなんでしょう?しがみつくのが普通だとは思いますけど・・・

 

「それは君だってそうだろう?あんまりにも楽しかったから満足してしまったんだよ」

 

ははぁ・・・やっぱり貴方はバ鹿、いえとんだ大バ鹿野郎でしたのね。一体誰に似たのかしら。

 

呆れたように呟くわたくしを、同じようにトレーナーは呆れたように反応を返す。

 

「そりぁ・・・決まってるだろう?俺の愛バのせいさ」

 

言いやがりますわね、似合いませんわよわたくしのトレーナー。

 

「「はははは」」

 

いつもの空気だ。たとえ環境は変われど変わらないものはある。先は見えないが、きっとうまくいくだろう。

 

踏み込まれたアクセルにより車は前に進む。今までの古巣に背を向けて。

 

それでも続いていく道の先へ。




*小話*

先に言っておきますと、この2人に恋愛感情はありません。ただ得難いパートナーだとは思っています。この話はラブコメではなくコメディなので甘酸っぱい話はないんじゃよ
あと、この話はいわゆる最終回の話です。次回からは(書けたのなら)過去に戻りトレセン学園入学からです
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