永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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最近更新遅れています。かわりに文字数増やしているから許し亭。寒いのでからだにきをつけてね!


上辺は頂点にはなれない

ひゃかひゃっふぇひょんひゃひょくひひゃふぁわーひぇまふぇんわふぉ。

 

「なに言ってるかさっぱりわからん。ちゃんと飲み込んでから話せよ」

 

もぐもぐ。ごくん。

 

わたくしはトレーナーと一緒にお昼ご飯を食べていた。普段ならクラスメイトと学食で食べるのですが、急ぎ伝えたい事があると連絡を受けたのです。だから購買で買ったサンドイッチ片手にわたくしはトレーナーの仕事場へと訪れたわけです。

 

そこで見たのはトレーナーが水と粉っぽいものを混ぜ込んだ・・・なんというかキャベツ抜きお好み焼きのタネみたいなものを飲んでいたのです。

 

トレーナーがジャンクフードを食べなくなったのはまあ良いとして、食事にここまで気を使わない人だとは思いませんでした。そもそもなんですのそれ?プロテインパウダーですか?

 

ダイエットはいいのですけどそれはどうかと思いますわよ。その・・・そんなのがご飯の代わりになるとは思えませんわ。せめてお米を食べなさい!

 

「サンドイッチ片手に言うことじゃないな。白米は糖質の塊だから私のようなデスクワーカーには過剰すぎるのさ。それにこいつは完全栄養食だ」

 

こいつさえ取っておけば栄養学的には問題ないと言いながらその不味そうな液体を、トレーナーは実に不味そうに飲み干す。うわぁ本当に飲んでますわ。

 

なんていうか・・・そんなもの飲んでたら心が荒みそうですわね。食事というよりは燃料補給。まさにレギュラー満タンって感じですわ。

 

「あの味噌汁よりはマシだろう?ジャリジャリの」

 

ジャ、ジャリジャリの味噌汁の話はいいじゃないですか!誰だって失敗はありますわ!それに今度こそ砂糖と味噌でパーフェクト味噌汁を作って見せますわよ!

 

そんなことより・・・ほら!わざわざ呼び出したのですから大切な話があるのでしょう?!

 

「君は話題転換が下手だなぁ」

 

まぁいいと言いながらトレーナーはわたくしに見えるように一枚の書類を机の上に置く。わたくしはその紙切れを手に取り書かれた内容を読み進める。このくらいなら態々呼び出す必要は・・・!

 

気怠げに文章を読み進めるのを中断して、わたくしは最初から読み直す。今度は一文字として見落とさないように真剣に、これって・・・もしかしてそういうことなんですか!?

 

「書いている通りだ・・・おめでとう。君のメイクデビューの許可が降りた」

 

メイクデビュー。

 

トレセン学園に所属する全てのウマ娘が最初に走るレース。学園のウマ娘はメイクデビューから本格的にメディアに顔が売れ出す。学園の看板を背負う以上問題がないか審査があるのです。

 

基礎的なレース技能や身体能力。普段の態度や人柄、ライブパフォーマンス等が水準を満たされないものはメイクデビューを後回しにされる事があるそうですわ。

 

だからそれら全てを満たさないとデビューできない・・・訳ではないです。ある一点が欠けていてもその他でカバーできるのなら問題ないそうです。面接一点突破もあり得るとのこと。

 

まあ編入の場合そこら辺は免除されることもあるそうですけどね!でも編入の場合ライブとかどうするのでしょう?中央の課題曲と地方の課題曲って一緒なのでしょうか?

 

もしかしてなにも知らなくても編入ならレースに出られるのでしょうか?ははは・・・まさかね?

 

こほん!とにかくメイクデビューはわたくしもルドルフもブルーも必ずくぐらなくてはならない最初の関門。ここで勝ったものだけがプレオープン以上のレースに挑むことができる。

 

その許可が降りたと言うことは、つまりわたくしの偉大なる旅路の第一歩と言うこと。待ちに待った栄光への道が始まったのです。

 

勿論ここで負ければ未勝利戦にしか行くことはできない。メイクデビュー戦の2着以下は未勝利戦で勝つまでは先に進むことはできないので、最初のふるいと言っていい。

 

出走数の上では順調には進めない子の方が多いくらいなのでしょうけど・・・ここで勝っておきたいのとは誰もが考えて当然のことです。

 

わたくしも今後のレースに向けての弾みをつけておきたい。来るべきクラシック戦線・・・皐月賞、日本ダービー、菊花賞の為にも。

 

「順調に行けば日本ダービーならスタミナ的にも戦えるだろう。ただ菊花賞は別だがな。3000mはかなり分が悪いと言わざるを得ない」

 

トレーナーは何か言いたげな顔をしています。言っておきますけどティアラ路線には行きませんからね!クラシックではルドルフが待っていますから!今度こそ決着をつけてやりますとも!

 

この前はわたくしが勝ったのですが、あいつのことだから超スーパーパワーアップしてるに決まってますから!この世代をミカド世代と名付ける為にも負けるわけには行かないのです!

 

「なんだその目標は・・・あの勝負は引き分けだろう。というよりも実質的には負けだからな。シルバーコレクターと呼ばれたくないのなら今後は必死に励むことだ」

 

か・ち・で・す!わたくしが勝ったのです誰がなんと言おうとわたくしが前でした!トレーナーなら私の言うことを信じたらどうですか!?

 

「私もあのレースは監視カメラで見てたに決まっているだろう。生憎なことに設置箇所の関係上、ゴールライン真横からは見えなかったがな。ただまあシンボリルドルフと横並びにしか見えなかったぞ」

 

わたくしの言葉にトレーナーは肩をすくめる。ぐぬぬみんなと同じ事を!こんにゃろめ!こんにゃろめ!

 

わたくしの拳がトレーナーの腹をぽすぽすと小突く。トレーナーは物凄くめんどくさそうな顔をしながらわたくしのメイクデビューの書類を回収する。

 

「ともかくメイクデビューまでの間はトレーニングにしっかりと励む事だ。余計な問題を起こすなよ・・・何故だかわからんがこの時期に問題を起こす生徒は多いんだ」

 

わたくしは問題なんて起こしませんわよ!失礼な!えいえい!

 

「どうだかな。前のファンクラブ騒動しかり何故か君は問題の中心になりがちだ。例年ならヒシスピードが問題児を纏めているんだが今年はそうもいかないからな」

 

トラブルに巻き込まれるのはわたくしに言われても困りますわよ!ていうよりヒシスピードって誰ですか?そんな人知らないんですが。

 

「バンダナを付けた君の先輩だ」

 

ああ!バンダナ先輩って確かそんな感じの名前だったような気がします。バンダナ先輩で覚えているのですぐには名前が出てこないんですわよねぇ。

 

 

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今日も楽しくウッドチップコース!トレーニングの終わりにわたくしの併走相手のバンダナ先輩にトレーナーとの出来事を話す。いやぁメイクデビュー前に衝撃の新事実って感じですわよね!

 

そんなわけで先輩の名前をうっかり覚えていないと口を滑らせたわたくしは・・・それはもうぐぇぇな状態なわけです。くるしい!タップタップ!

 

「お前の記憶力が残念な事は知ってるからあんまり気にしてないさ。だけどタップが足らねぇとこのままだぞ」

 

わたくしが嫌になる程タップを繰り返した結果、バンダナ先輩の魔の手から解放される。問題児纏め役としての怠慢の理由を聞いただけでこの仕打ち!可愛い後輩に対して酷くないですかね!

 

「酷くねぇ」

 

酷いと思います!

 

「先輩が酷くねぇって言ったら酷くねぇんだ」

 

なんという横暴でしょうか。とはいえ体育会系が幅を利かせるこの学園では先輩の言うことはある意味絶対と言ってもいい。わたくしはこのまま泣き寝入りという訳です。しくしく。

 

「それにしてもお前がメイクデビューか・・・あんまりイメージ湧かねぇな。全く成長した感じがしねぇんだわ」

 

失礼な!わたくしは未来のスーパースターですわ!三日会わねばなんとやら。既に過去のわたくしとは別物ですわ!感じるでしょう・・・わたくしの体から溢れるこの一流のオーラを!

 

「三流芸人のオーラしか感じねぇな」

 

三流芸人にオーラなんてある訳ないでしょう!わたくしは一流芸人ですわよ!

 

芸人であるのは認めるのかとバンダナ先輩は呆れ顔。それは言葉の綾ですわ。でもバンダナ先輩もマルゼンスキー先輩という一流ウマ娘とバチバチにやりあったのならわかるでしょう。あのなんとも言えないオーラを!

 

「・・・言っておくがなマルゼンスキーは一流じゃねぇんだ。'超'一流だ。そこは間違えるなよ」

 

わたくしの冗談にも取り合わずらしくもなくマジ顔のバンダナ先輩。鋭い目から真剣さを感じる。この人はマルゼンスキー先輩の話題になると急にマジになるのです。心臓に悪いからわたくしとしてはやめて欲しいのですが!

 

というより前から思っていたのですがバンダナ先輩はマルゼンスキー先輩の事が嫌いなのですか?あの人すごいいい人なのに・・・プリンでも奪われたのですか?同期なら仲良くしないといけませんわよ?

 

「そんな理由で嫌う訳ねぇだろ。それに別にあいつのことが嫌いな訳じゃねぇし、俺様の同期だって・・・そうだお前に一つ聞いていいか?」

 

わたくしに質問なんてバンダナ先輩にしては珍しい。一体なんでしょう?

 

「お前はあのシンボリルドルフとやり合う訳だ。あれはマルゼンスキーと同じ本物、超一流の才能がある・・・お前は怖くないのか?」

 

怖い訳ないでしょう!勝つのはわたくしですから!

 

先輩はわたくしの言葉を聞いて複雑そうな顔をしたかと思うと、背を向けて手をひらひらさせながらウッドチップコースから歩き去っていく。

 

「そうかよ。じゃあ精々気張るんだな」

 

そう捨てゼリフみたいに言わないでください。あと荷物くらい自分で片付けてください!なんでわたくしが先輩の荷物を持たないといけないんですか!

 

 

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いよいよあいつもメイクデビューか。俺様のデビューはもう何年前だ。まったくもって懐かしいと年寄りのようなことを考える。

 

相手はあのシンボリルドルフ・・・シンボリ家の最高傑作だ。容易く勝てる相手ではないのにあのバカはやけに自信満々だ。少しくらいはビビれよ危機感が足らねぇぞ。

 

腹が立つくらい能天気。昔の自分を見ているみたいで腹が立つ。間違いなくあの時の俺様は・・・今みたいにひねた考えはしなかっただろう。勝負の世界で過ごしていると心が荒んで行くのがわかる。

 

勝つのは自分。そうさあの時の俺様もそう思っていたさ。

 

努力は結ばれる。そうあの時の俺様も信じていたさ。

 

勝てるのは1人。それはあの時の俺様だと確信していたさ。

 

同期の誰も彼もが自分こそが頂点と信じていた。自分こそが1番を獲ると信じない奴なんていなかった。実力も才能も他の時代にも劣らない一流揃いだった。

 

足りない才能は努力で補い、それでも足らないのなら策を練る。

 

だけど結局勝つのは自分ではなかった。努力は結ばなかった。栄光を手に入れたのは自分ではなくアイツだった。アイツより先にゴールテープを切れるやつはいなかった。誰一人として。

 

マルゼンスキー。一流の中にいる超一流のウマ娘。日本一を名乗るに足ると'思われている'ウマ娘。

 

ダービーにさえアイツが出ていれば諦めもついたんだがな。アイツだけのけものにして祭りが終わり、消化不良のまま格付けは終わった。

 

あれ以降いくら勝ってもアイツのいない場所で白星を漁っているとしか思われない最弱の世代。それが世論って奴らしい。

 

そんなふざけた世論をぶち壊すべく全員が戦った。でも今は誰もアイツに挑まなくなった。1人また1人と欠けていく。櫛の歯が欠けるかのように順番に。もう同期で挑戦する者は誰もいないし、次は俺様の番なんだろう。

 

1人だけになってしまった。俺様はアイツに挑む最後の同期。勝算もないのに意地を張っているだけなのはわかっている。俺様の意地の張り合いには付き合えないとトレーナーも逃げちまった。

 

トレーナーなしでやれるほど俺様は器用じゃないのは自覚している。だが思わぬ所にチャンスは転がっていた。この後輩のトレーナーだ。

 

あれほどの名トレーナーが学園に在籍しているのは知らなかったがその腕前は人伝に聞いていた。なにせ俺様の先輩から直接聞いていたからだ。勝てなくて企業レースに行ってから目まぐるしく活躍した遅咲きの先輩。

 

そして最後には脚をやっちまった。その担当として腕を奮っていたのは知っていた。

 

先輩経由でコンタクトを取り意地の為だけに俺様はあのバカ後輩のトレーナーに自分を売り込んだ。自分がミカドランサーの仮想敵を務める。だからマルゼンスキーを倒すのを手伝えと。

 

最初は嫌がったが先輩の話をダシにして無理やり首を縦に振らせた。大方俺様の脚をぶっ潰すのを嫌がっていたんだろうが、事前に逃げ道なんぞ潰しているに決まっているだろ。最後には元担当ウマ娘からの援護射撃が決め手になった。

 

結果を言えば互いの利益のために利用し合うという条件で結ばれた非公式の契約を結んだ。

 

振り返ってバカ後輩ことミカドランサーを見る。必死に荷物を片付けてなんとか立ち上がったところだ。

 

あのトレーナーはなんだかんだ言いつつもこいつに対しては過保護と言っていい。壊さないように慎重にトレーニングを積んでいる。

 

確かに確実に強くなっているし、少なくともデビュー前にいていい実力じゃないのは間違いない。だがそれだけではシンボリルドルフには勝てない。だからこそコイツのトレーナーは条件を飲んだ。

 

俺様の役割はこいつの仮想敵と引率役。直接は見れないこいつのトレーナーに変わって色々と面倒を見てやること。たった1レースの為だけという条件でトレーニングメニューを組んでもらった。

 

マルゼンスキーに勝てるトレーニングメニューを組む。勝負のチャンスは一度きり。それが契約の内容であり、俺様のラストランになる。

 

マルゼンスキーが憎いわけじゃない。ただアイツの目が気に入らねぇんだ。アイツが私たちの顔を見たときに一瞬だけ出る、申し訳なさそうな目が心底気に入らない。

 

勝ってすまない?才能があってすまない?ふざけんなよクソ野郎。テメェがそんな表情すんなよ。

 

誇れよ胸を張ってくれよ。じゃねえと俺様達が惨めじゃねぇか。だから俺様は喰われるだけの雑魚じゃなくて・・・敵としてアイツの横っ面引っ叩いてやる。

 

後ろから俺様をえっちらおっちら追いかけてくる後輩。必死に追いかけてくるのを可愛く思うし、自分の同期が格上でそれに挑む事になるなんて何処かで聞いた話だ。

 

できれば追いつけなかった事を一生引きずるような生き方はして欲しくないし、俺様みたいに面倒な拗らせ方をして欲しくないとも思う。せいぜい反面教師にでもしてくれればいい。まあ無駄な心配かもしれないがな。

 

 




実のところ・・・バンダナ先輩は超活躍させるつもりです。オリキャラばっか活躍させるのはどうなのかとは思いつつもミカドちゃんはルドルフで手一杯だし、マルゼンスキー先輩の救済にはマルちゃん同期に頑張って貰わないと。
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