永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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花火を見る時は静かにしましょうね。


流れ星は人の夢。美しくて儚くて

マルゼンスキー先輩に案内されて訪れた花火の穴場は、花火会場から少し離れた廃ビルの屋上だった。ここに来たのはわたくし達だけではなく、先着している人もいてその全員がウマ娘だった。

 

でも廃ビルという割に掃除が行き届いてるし手すりも錆びてませんわね。なんというかしっかりと手入れがされているような気がする。屋上の鍵も空いていたし簡単に入ることができたしたわ。

 

ここ入って大丈夫なんですの?さっき立ち入り禁止の看板がありましたけど。

 

「ここはね花火を見るトレセン学園の生徒のために、商店街の人がこの日だけ空けてくれている場所なのよ。」

 

だから地元の人でも知らない人が多いし、立ち入り禁止の看板もその為にあるの。とマルゼンスキー先輩が言う。でもわたくし達初耳ですわね。

 

「商店街の善意でやってもらってることだし、大っぴらに言うことでもないから。先輩から後輩に語り継いでる暗黙の了解のようなものかしら」

 

へぇー。どおりで周りもウマ娘しかいないわけですのね。そう思いながら手すりに体重を預ける。手入れの行き届いた手すりは錆が全くなく、ここを管理している人の心情が窺い知れた。うーんわたくし達って本当に大事にされてますのね。

 

善意でやってもらってるということは、金銭のやり取りはないのでしょう。でもここまでしてもらっては、わたくしも何か恩返しの一つでもやらなければならないような気がしてくる。

 

ルドルフも同じ気持ちらしく少し嬉しそうな顔をしている。ブルーは・・・なんですのその顔。

 

「なんでもないよ♡」

 

ふーんまぁいいですけど。貴方もしっかり感謝するんですわよ。ここは特等席みたいなものですのよ。

 

はーい♡と言うブルー。本当にわかっているのですか貴方?

  

 

-----

 

 

しばらくすると花火特有の風切音のような口笛のような音が聞こえてきた。

 

風切音から少し経って破裂音と共に空が少し明るくなる。

 

 

 

パンッ!!

 

 

先ほどまで何もなかった夜空には大輪の花が描かれ瞬いている。その話は夜空を傘のように覆い尽くし、そして一瞬後に火花が流れる滴のように夜空に消えていった。

 

 

「綺麗・・・」

 

ブルーが思わず声を漏らす。ええ、わたくしも本当にそう思いますわ。

 

普段はお堅いルドルフも、捻くれたブルーも、気さくな先輩も花火に見とれてしまっている。

 

そうして何度も花火が上がるたび息を呑みそうになる。なぜでしょうか。花火なんて毎年のように見ているはずなのに、今年のは特別輝いて見えますわ。

 

 

何度も何度も瞬いては、消えていく。赤や緑の色とりどりの花が空に咲き、キラキラとした火花が、時間をかけて残滓と余韻だけを残しては夜空に溶けていく。

 

 

何度も、何度も。

 

 

そうして花火を見上げながらしばらく経って、唐突にルドルフが口を開く。   

 

「聞いてほしいことがあるんだ」

 

ルドルフの声は何処か緊張しているようにすら思えるほど硬かった。わたくしは黙ってルドルフに話の続きを促す。

 

「私には叶えたい夢があるんだ」

 

・・・・。

 

「全てのウマ娘が幸福に生きられる、そんな世界を作りたい。」

 

・・・貴方、意外と青臭い夢を持ってますのね。

 

「親族の皆はそんなこと無理だと言うけれど。それでも私は、私は・・・」

 

でもすごくいい夢だと思いますわ!

 

「そうかな・・・」

 

そうですとも!

 

分かってますわ。わたくしは応援しますわ。親友ですもの当然でしょう。その夢はきっと叶いますわ。

 

ルドルフは照れ臭そうにしている。ここまでまっすぐ応援されるとは思わなかったのでしょうか?でもわたくしに勝った事のある貴方は、そのくらいでっかい夢を持ってる方がいいですわ。だからその夢は胸を張っていい夢ですわ。

 

ブルーも今ばかりは茶化さずにわたくしのようにまっすぐと夢を応援すると言っていますわ。普段の捻くれも今日ばかりはお休みですのね。

 

マルゼンスキー先輩に至っては、ちょっと目元が潤んでいるような気がする。感動したとかではなく、なんというか情緒が振り切ってしまっているかのようですわ。なんでも相談してねとルドルフに言っている。

 

ルドルフ。貴方は気づいてないかもしれませんが、みんな貴方のことが大好きですのよ?わたくし達も、クラスメイトも。きっと学園中が貴方の夢を応援してくれますわ。

 

 

「ありがとう、みんな」 

 

 

ルドルフは嬉しそうにはにかむように微笑んだ。花火の閃光で僅かに照らされたその顔に、不覚ながら少し見惚れてしまいましたわ。

 

それきり、ルドルフは花火を見ながら喋らない。

 

それに倣いわたくし達も黙り込んでしまう。

 

花火の風切音と、弾ける音が聞こえる。

 

みんなで静かに空を見上げ花火を見る。今日この日の光景を、きっとわたくしは死ぬまで忘れませんわ。

 

瞬く間に消えてしまう、夜空に煌く星のような花火を記憶に焼きつけるように。

 

わたくしは風を切りながら夜空に向かって昇る、一筋の流れ星にただ願う。

 

彼女の青臭くって純粋で、誰よりも優しい夢が。

 

きっといつか叶いますようにと。

 

 

 




今日はあとがきはないです。静かに花火の余韻を楽しみましょう。

どうしても観たい方は活動履歴に上げてます。
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