永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
開 幕 だ よ !!
チームリギルの地獄のトレーニングは見学期間の2週間という話でした。
ですがわたくしたちは見学者・・・ではなく、現状は正規のチームメイトということになっています。ですので2週間という制限はかかりません。
まぁトレセン学園では青田買いなんて大っぴらにできる話ではないので、練習場は使えません。ただ外部に漏れない場所で座学や最新のトレーニングプログラムとかの勉強はできますの。
でも今日話し合っているのは他でもない感謝祭の話ですわ!なんせあと1週間で感謝祭なのですから!
「各種書類申請、及びに設備什器手配の確認」
ヨシッ!
「牛肉と調味料等の手配と保管、調理道具の調達及び手順の確認」
ヨシッ!!
「釣銭手配及びに看板とPOPの確認」
ヨシッ!!!
「・・・・売り子用のTシャツとエプロン及びにサービスの確認」
まだ確認してないですがなんとなくヨシッ!!!!
完璧ですわ。とりあえず全部ヨシッ!!
「なあミカド。そのヨシッ!ていう掛け声は要るのか?」
チェックシートを挟んだクリップボードから視線を上げつつ、ルドルフが尋ねてくる。
要りますわ。これを言って確認すれば間違いありませんもの!
「うーん、なんかミカドちゃんが言うと不安だよね。後でしっかり確認したのにどうして・・・って言いそう♡」
流石にそれはありませんわよ。おハナちゃんトレーナーや委員会に必要なものしっかり確認しましたもの!間違うはずありませんわ。指差し確認もしましたし。
不安だなぁとぼやくブルーを無視しながら、マルゼンスキー先輩に報告する。先輩!とりあえず全部ヨシッ!です。
マルゼンスキー先輩はその言葉を聞いて両手でぐっとサムズアップする。
「オッケー!これで感謝祭の準備はチョベリグね!おハナちゃん、用意できてる?」
「ええ、これでいいのよね」
そうやって手渡されたのはお揃いのTシャツとエプロン。マルゼンスキー先輩の要望により、お揃いのTシャツとエプロンが支給された。
Tシャツは汚れが目立たない半袖黒Tシャツ。エプロンはシンプルなデニム生地のもの。これでどう見ても一般売り子ウマ娘ですわ。
Tシャツには何故かチョベリグって書いてますが・・・デニムのエプロンに隠れてしまうので外からは見えませんわね。エプロンの方にはチームリギルと書いてありますわね。
おそらく前者はマルゼンスキー先輩。後者はおハナちゃんトレーナーがデザインしたのでしょう。
もはや・・・万全ですわ!もうなにも怖くないですわ!
ああ早く感謝祭にならないでしょうか!
わたくしたちの用意した炭火焼き牛串をもって感謝祭で大儲けですわ!
---------
ということがあったのです。いやぁ今思えばあの頃のわたくしは若かったのでしょう。
今日は感謝祭当日、わたくし達は学園の屋外スペースで牛串焼きのテントを開いていました。店には新生チームリギルとか未来のスターチームと書かれた看板。
この野外スペースにはわたくし達以外にも多くの学生がテントが立てていますわ。頑張ればちょっとした小金持ちくらいにはなれるらしいのでみなさん気合いが入ってますわね。
おハナちゃんトレーナーがそれとなく流した噂により普通の新生チームよりは注目されてはいるでしょう。まぁそもそもこの牛肉はマルゼンスキー先輩の地元から取り寄せましたとデカデカと看板に書いていますが。
大型の炭火コンロの上では、事前に仕込んで冷凍しておいた牛串が並べられ、焼けたお肉からは脂が滴りパチパチと音を立てていますわ。ちょっとだけお高いですが味は保証します。
目の前でお肉がジュージュー!!ああ醤油ベースの特注たれ!炭火で焼けていい匂い。そのまま食べてもよし。ご飯があればもっとよし!ビールはわたくし飲めませんが多分よし!!うふふ。
「ミカドッ!12本追加だ!」
う、うわぁぁぁぁ!もうおっつきませんわぁぉあ!
舐めていた!舐めていましたわ!凄まじいペースでストックが無くなりますわ!ブルー!どうして!早く帰ってきてください!冷凍庫から追加の牛串を早く持って帰ってきてぇぇえ!もうないの!クーラーボックスの中の牛串がもうないの!
ルドルフは会計で忙しくて、マルゼンスキー先輩も今いませんの!助けて!焼き役がわたくししかいませんの!手が足りませんわ!こんなの感謝地獄ですわ!
感謝祭の朝方はまだまだ人が少なくて余裕が有りました。感謝祭のオープニングセレモニーとエキシビジョンレース等のイベントがグラウンドであります。マルゼンスキー先輩やシンザン会長、ミスターシービー先輩含め学園のスター達が出るので来園者はそっちに流れていました。
ですがお昼時になると午前のイベントも終わり。空き時間になった選手も来園者もスタッフもレースグラウンドからゾロゾロと出てきていました。まるで人の濁流のようですわね!なんて言っていたのが懐かしい!
そんな腹の空かした人もウマ娘もこの野外スペースに近づくと、焼けた醤油タレにソース、油の香りとかを嗅ぐわけですわね。すぐに大行列ができていますわ。
マルゼンスキー先輩の新生チームという噂をおハナちゃんに流してもらいましたが、ここまで!ここまで人が集まりますか?!
いや、他の店もすごい並んでいますわ!この野外スペース人が密ですわ。ノーディスタンス!レッドアラート!
なんかもうえらいこっちゃですわ。人手!人手が欲しい!適当に見つけたクラスメイトを捕まえて働かせる。ほら!バトラー手が止まっていますわよ!
ひーん!と言いながらも働かされるバトラーには申し訳ないです。後でバイト代あげるので手伝って!お昼時だけでもいいのでお願い!!
「だだいま!串の追加持ってきたよ!」
ブ、ブルー!貴方おっそいですわ!なにやってましたの!見捨てられたかと思いましたわ!早く焼くの手伝ってください!
「倉庫から余ってた炭火コンロと炭の追加を頂いてきたよ♡」
よくやりましたわ親友!さすがとしか言えませんわ!さあ早くセッティングを!今の台数じゃ回しきれませんの!
手際良くブルーが新しい炭火コンロを準備をしていく。要領のいい友人を持つとありがたいですわ。焼き役が1人増えてこれでなんとか・・・
「さらに24本追加だ!急いでくれ!」
なりませんわ!それでも足りない!うわぁぁん!!誰か助けて!!
---------
お昼のピークを過ぎれば人は落ち着いてくる。わたくし達は疲労困憊ですわ!ていうかマルゼンスキー先輩来ないんですけど!どういうことですの言い出しっぺ!
でもとりあえずなんとかなりそうになったのでバトラーにはバイト代と牛串3本を渡して身柄を解放する。またしんどくなったら呼びますわね。
バイト代を手にしながらも、えーやだーというバトラーを見送りながらわたくしは串を焼く。快く手伝ってくれて嬉しい限りですわ。なんて頼りになるクラスメイトなのでしょう。
「彼女はいつも・・・不憫だな」
「・・・そうだね」
ルドルフ、ブルー。あれは彼女に課せられた宿命のようなものです。わたくし達はそれを見守るしかないのですわ。何というかどんな無茶でも頼みやすい彼女が悪いのです。わたくしは悪くない。
すごい呆れた目でこちらを見てくる2人を知らんぷりしていると見知った顔が現れる。
「お前ら何やってんだ・・・」
あっ!バンダナ先輩と愉快な仲間たちですわ!牛串の香ばしい匂いに釣られてカモが釣れましたわ。
ほらバンダナ先輩!美味しい牛串ですわよ!1人20本くらい貴方達なら食べられるでしょう!?売り上げに貢献してくださいな!
バンダナ先輩は看板を見て嫌そうな顔をしている。ははぁさてはマルゼンスキー先輩の地元の牛ってところが気に入りませんのね。この前マルゼンスキー先輩に負けたことを根に持ってますわね。
でもわたくしは諦めませんわ。このいけずな先輩には押し売りしてでも買わせますわ。
先輩先輩。マルゼンスキー先輩の地元、つまりルーツである名産の牛を食べる・・・このことの意味がわかりますか?
「いきなりどうした?」
いきなりの話題転換にバンダナ先輩は戸惑っている。ふふふ。こっからですわ!
つまりマルゼンスキー先輩を喰う、そんなゲン担ぎになるということですの。そう!オスマン帝国を打ち破った記念に、オスマン帝国のシンボルである三日月を模したクロワッサンを食べたオーストリアのようなものですわ!
「いやそうはならないだろ」
チィ!!説得失敗ですわ!やーだー買って欲しいですわ先輩!お金がいるんですの!ブレンボちゃんを買いたいんですの!
「ああだから店を開いてるのか。そっちを最初に言えよ。なら1本だけな」
えー!これ美味しいですわよ!もっと買いません?買わない?そうですか。まぁいいですわ、まいどありー♪
そう言ってバンダナ先輩は1本分の代金を手渡してくる。バンダナ先輩に続いて愉快な仲間たちも各自で何本を買っていく。
「美味かったら宣伝しといてやるよ」
そう言ってバンダナ先輩達は牛串をくわえながら、手をひらひらさせて何処かへと言ってしまった。
「お前の口からオスマン帝国なんて言葉が出てくるとは思わなかったぞ」
失礼ですわねルドルフ!この前歴史の授業でやったでしょう。・・・まぁわたくしパンの話しか覚えてないのですが。その時はお腹が空いていたので。
バンダナ先輩「えっ?!なにこれうっま!」