永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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RUN!RUN!RUN!


The Escape Killers

深夜のトレセン学園。本来ならば生徒も職員もいないはずの時間帯。いるのは残業のしすぎで怒られる粗忽者と、熱心な警備員。あとはわたくしのような侵入者くらい。

 

「侵入者があっちに逃げたぞ!追え!」

 

そんな深夜のトレセン学園をわたくしは駆ける!駆ける!うわぁぁぁぁあ!

 

さっきから追ってくる人の数がどんどん数が増えていますの!どういうことですの!

 

チラリと後ろを見る。わぁたづなさんこんばんは。追ってきてたのはたづなさんだったのですね。うふふ・・・・おかしいでしょ!なんで理事長秘書のたづなさんがここまで速いんですか!

 

ウマ娘のわたくしよりも速いとかふざけるな!この緑色!美人秘書!チート人間!

 

 

周りから足音が聞こえる、その気になればすぐにでも捕まえられるのに、明らかに遊ばれている気がする。疲れさせてから捕まえるつもりでしょうか?

 

ていうか!警備員って人間だけじゃないのですか!なんでウマ娘の警備員がこんなにいますの!話が違いますわよ!

 

少なくともわたくしの情報では、ウマ娘の警備員がいるという噂があるのは知っていたのですが、こんなにいるとは聞いてませんわよ!

 

昼間はみんな歩いて渡る歩道の曲がり角を、全力のカミソリカーブで曲がる。ええいたづなさんが振り切れない!他のウマ娘はともかく、たづなさんがぴったりとマークしてきますわ!なんとか捕まえようとする手を躱していますがこれきっつい!

 

何度かの攻防の末、ガクンとたづなさんが減速する。振り切りましたか?スタミナが切れたのでしょうか?・・・・あっやばいこの先袋小路ですわ!えっもしかして誘導された?嘘でしょ詰みですわ!

 

 

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私は個人でとあるウマ娘を追いかけているしがない記者だ。そのウマ娘の経歴を辿っていると、ある奇妙な噂をたどり着いた。その噂に関わりがあるであろうある人物に取材を申し込んだ。

 

 

 

日本ウマ娘トレーニングセンター学園

特殊夜間警備隊 隊長

 

現在の名前は本人の希望により匿名とする。

 

通称 フクロウの警備隊長

 

 

 

だが彼女には世間にもう少し知られているもう一つの名前がある。

 

かつては中央トレセン学園に学生として所属。トゥインクルシリーズでは重賞をいくつか。G1で掲示板に乗ったことすらある。変幻自在のスタイルにより、数々の名選手を討ち取った叩き上げのエース。

 

実力を発揮できればG1をいくつかは取れていたかもしれない。だがそうはならなかったウマ娘。

 

G1ウマ娘という名声こそ得られなかったがその確かな実力を買われ、現在はトレセン学園の特殊夜間警備員の隊長として、その腕・・・いや脚を奮っている。

 

中央トレセン学園は良くも悪くも話題になる。不審者の侵入も珍しいことではない。深夜に邪な考えを持って侵入しようとするものの後が絶えない。

 

マスコミ。熱狂的ファン。迷惑系YouTuber。そしてトレセン学園を嫌う者etcetc

 

警備員とは名ばかり。より近い表現をするならば武装した騎兵隊と言ってもいい。そしてこの事実は一般生徒にはあまり知られていない。

 

トレセン学園に侵入した不審者の確保。それが今の彼女の走る理由。

 

わたしはそんな彼女への接触を試みて成功した。わたしと彼女しかいない小さなレストランの個室で、彼女はおもむろに語り出した。

 

 

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あの日のことはよく覚えている。

 

その日の夜は待機所に詰めていたんだ、巡回班が帰ってくるまでの間、仲間内でカードで遊んでいた。

 

そうしていると呼び出しがあった。これは別に珍しいことじゃない。深夜のトレセン学園に侵入しようとする馬鹿なんて珍しくもない。

 

学園はそこらかしこに監視カメラがあるんだ。大抵の間抜けな不審者なら出入り口付近で補足できる。気取られないように囲んでしまえばどうとでもなる。

 

生徒ならカメラで場所を確認しながら適当に回らせる。身元を照会し自主的に帰るのなら寮長へ連絡。帰らないなら私たちの出番になる。

 

でもその日は違った。最初は監視カメラを見ていた奴を叱責したが、あれは気づかなくてもしょうがない。明らかに事前にカメラの場所を入念に下調べしていた。まるで学園内に唐突に現れたかのようだったよ。

 

だけどその侵入者はもう終わり。いくら下調べしようがこういうのは気取られたら終わりなんだ。とりあえず私たちは呼び出しをされたから無線機と装備を持って現場に向かった。

 

だけど向かう途中から嫌な予感がし始めたんだ。無線が鳴り止まない。それどころかどんどん騒がしくなっていった。その時の私は思ったさ。何をてこずっているんだ、相手はたったの1人なのにってね。

 

まぁ少し現場が混乱しているだけ。私たちは捕縛にかけてはプロフェッショナルなんだ。着く頃にはもう終わっているだろうとは思っていた。

 

だけど現場に到着して冗談かと思ったよ。侵入者はまだ走り回っていた。一緒に駆けつけた仲間も同じ反応だったよ。私はそいつを一目見て悟ったさ。こいつはとっ捕まえるのは相当難儀だってね。

 

その侵入者はおそらくはクラシック級のウマ娘程度の実力はあった。目出し帽で顔を隠してはいたが、走り方、速度、加速力、コーナーの曲がり方から間違いはない。でもそれは問題じゃない。

 

名前は言えないが私たちの先輩が苦戦していたんだ。ああ見えてあの人は学園の誰よりも速いし、捕物の腕前に関しても確かなんだ。夜中にふざけて入り込んだG1ウマ娘も容易く捕まえたことがある。

 

走っているウマ娘を捕まえるっていうのは言葉にする以上に難しい。相手の呼吸や癖を呼んで、怪我をさせないように減速させて押さえ込む技術がいるんだ。レースとはまた違ったセンスが必要になる。

 

速さでは先輩の方が圧倒的に上。それをその侵入者はギリギリの距離でいなしている。手を伸ばした瞬間加速したり曲がったり、わざと体勢を崩して躊躇わせたり。こんなことができるとしたら、先輩が呼吸や思考を読まれているということだ。

 

私たちが捕獲のプロだからこそわかる。あれをやられると手で捕まえるのは無理だ。捕まる方も捕まえる方も・・・怪我を覚悟しなくちゃいけない。

 

だから先輩は追いかけながらこちらに目配せしてハンドサインを送ってきた。そのサインを見て私は侵入者を目を凝らして観察した。走り方、癖、スタミナ残量、どう攻めればどう動くのか。こと細やかに。

 

そして私たちはプランを切り替えた。チームで連携して侵入者を捕獲ポイントまで追い立てることにした。

 

トレセン学園の外壁沿いには意図的に設けられた袋小路があるんだ。走るウマ娘を追い込む狩場。そこに誘導をすることにした。背よりもずっと高い壁に囲われたそこ。その場所はそいつにとってのまさにデッドエンドになる場所だった。

 

侵入者は追撃を躱す技術からは信じられないくらいあっさりと誘導された。その時は拍子抜けしたくらいだよ。一回で成功するとは思ってなかったから。その時は私の見立てに間違いはなかったって感じたさ。

 

だけどその不審者は減速を一切しないまま袋小路の奥に向かって疾走していった。そこからはもう奥に抜け道はないとはっきりとわかるはずなのに。

 

普通ならばもう詰み。大人しく減速するしかないデッドエンドの袋小路、でもあいつはその奥に向かって壁をぶち壊さんとさんばかりに加速していった。

 

警備隊の誰が叫んでいたのをよく覚えてる。侵入者が逃げられないように、壁の高さは手を伸ばしても全く届かない。しかも手が引っかかる場所なんてない。踏み台にできるものもない。

 

ウマ娘の身体能力といえど一息に飛び越えるのは無理な高さ。それにあの加速している状態だと奥の壁にぶつかって潰れたトマトみたいになる。

 

一瞬後に訪れるであろう惨劇に他のチーム員が目を背ける。だが目を背けなかった私だけが見たんだ。

 

あの不審者は全速力の勢いで側面の壁面沿いに身を寄せたのかと思えば、体を捻りながら飛び上がった。

 

身体は回転しながら、そいつは垂直にそびえ立つ壁に"立った"。しかもその捻り回転に両腕を振り回し勢いを乗せることで、その場でぐるりと身体が回転する。

 

こう・・・わかるかな?要はコマみたいに回転したんだよ。後で聞いたんだが回転することで重心を体の外に引っこ抜いたらしい。又聴きだから詳しくは知らないんだが。

 

そいつは加速しきっていた慣性の力と、飛び上がった際の上向きの力。そして回転しながら側面の壁を何度も蹴り上げることで壁を駆け上がるかのように加速していった。

 

その力が合わさることで、そいつはそり立つ側面の壁を駆け上っていく。そしてその身体が一番奥の行き止まりのところにたどり着いたときには、既に身体は壁の上より高い所だった。

 

そしてその不審者は壁の向こう側に落ちるように私たちの視界から消えた。壁の向こうは学園の外。見事に逃げられてしまった。

 

 

「あれは不審者じゃない・・・」

 

 

誰ががポツリと溢した。でも全員内心では同じ意見だったさ。

 

今でも信じられないさ。でも私は見たんだ。誰に言っても信じてはもらえないトレセン学園七不思議そのひとつ。

 

 

「本当だったんだ・・・トレセン学園のウマ娘には、ニンジャが紛れ込んでいる!」

 

 

警備員連中は当時はその話題で持ちきりだったさ。記者さん貴方はこんなバ鹿げた話を信じるかい?

 

 

 

 

 




ミカドちゃんは鬼ごっこにて最強。はっきりわかりますね。

というわけで変則レース回終わりです。捕まってたら・・・あんなこと(お説教)やこんなこと(罰則)されてましたね。

エースコンバットZEROのインタビューをオマージュしています。我ながらやりたい放題だなぁ。

たづなさんから逃げ切りましたが、これはたづなさんが怪我させないようにしていたからです。あと地面が硬いからね本気では走れません。その上ミカドちゃんは、おっ?いま捕まえたらわたくし転んじゃいますわよ?と挑発しまくっていました。でもターフの競争なら瞬殺されます。

逃げ切られたたづなさん。めっちゃ悔しくて自分の冷蔵庫のビールを全部飲み切った後、追加でコンビニに買いに行きました。そして翌日寝坊する。
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