永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
たづなさんがおこだよ!
昨日の深夜に図書室の前で理事長秘書からの小言を聞かされていた時の事だ。いきなり彼女は暗闇の方向を向いたのかと思えば、あっという間に走り去っていった。何事かとは思ってはいたが・・・
なんでも昨日の深夜に不審者が入り込んでいたらしい。詳しい情報が回ってはきていないが、まんまと逃げ切られたらしい。
思わず感心する。トレセン学園の警備隊から逃げ切るなんてなかなかの手練れだ。不審者が学生なら警備隊からスカウトを申し込むかもしれないな。
私は珍しく資料室以外の場所にいた。基本的にあまり昼は外には出歩かないので忌々しい日の光が眩しい。あの理事長秘書から直々に呼び出しをくらったのだ。断るのなら引きずってでもという気概を感じたので、渋々呼び出された場所へと向かう。
そんなわけで私は学園の隅、通称鳥籠とも言われている袋小路に来ている。そこにいるのは私と理事長秘書、それと昨日の警備責任者である警備隊隊長だ。
「それで・・・どうなんですか?」
理事長秘書はたいそうご立腹だ。昨日逃げ切られたのが余程悔しいらしい。この理事長秘書は普段の生徒に対する優しい態度に反して、とんでもなく負けず嫌いなのだ。
この呼び出しから逃げきれなかった私は、逃げきれた侵入者が羨ましいくらいである。そんなことを言ってはより不機嫌になるだけなので、私は黙って壁にくっきりと残った足跡から、跳躍の軌跡をチョークのラインで繋ぐ。
私は当日にこの場にはいなかったが、こうすることであの夜に何があったのかは大体推察できる。前職の設備なら使われたシューズの種類まで特定はできたが、今持ってきているノートパソコンでは無理だ。
それからノートパソコンから監視カメラの映像が保管されているサーバーにアクセスし、解析をかける。
顔自体は目出し帽で隠されてはいる。だが私ならこれだけの情報があれば身長、体重、手や足、ストライドの長さ、侵入者のあらかたの情報を割り出せる。
私には学生の個人情報データベースのあるサーバーにアクセスできる権限はないので、そこからは私の仕事ではない。
これだけの事をする学生がいるとは思えない。恐らく外から来たスパイ目的で雇われたウマ娘なのではないか。
「まあそうだろうな。学生の悪ふざけにしては度を超えている」
私の言葉に警備隊隊長は同意の言葉をあげる。理事長秘書と違いかなり冷静だ。あくまでも仕事として同行してくれているのはかなりありがたい。
それにサーバーや資料の入ったパソコンに手をつけられた痕跡はなかったそうだ。であれば向こうとしても失敗と言えるだろう。ここは痛み分けという事でいいのではないだろうか?
「・・・・いいから早くしてください」
理事長秘書が急かしてくる。個人的な感情の為に私の仕事を増やさないで欲しいとは思うが、その帽子の下がどうなってるか考えると怖いので黙って仕事をする。
さっき私は警備隊隊長に企業スパイと言ったが本心は別だ。恐らくは学生の誰かが昨日の侵入者だろうと私は推察する。私も前職で企業に勤めていたからわかる。わざわざ直接乗り込むなんて今時の企業スパイはしない。
まぁトレセン学園のサーバーには私が一枚噛んでいるからな。私がここに来る前の杜撰なセキュリティならともかく、今はガードが硬くて侵入は困難なのは間違いはない。
直接乗り込んでアクセス経路を作ろうとも、サーバールームの場所はごく一部のものしか知らないし、どのデータラックにどの情報があるかなんて、恐らく私しか把握していない。
直接乗り込むなんてことをするなら、アクセス権限を持つ者に金を握らせた方が早くて確実だ、私がスパイならそうする。まあそんなことはしないが。
30分もすればあらかたの情報は出揃っていく・・・がまだ2人には話さない。その前にやる事がある。
どうせこの2人には私が何をしているかはわからないのだ。こっそりと学生の個人情報データベースにアクセスする。私にはサーバーにアクセスする権限がないだけで、アクセスできないわけじゃない。サーバーのバックドアから侵入しデータを検索する。
データベースで検索する・・・1件ヒット。名前はミカドランサー。ほぅジュニア級なのか。クラシック級の中でもそれなりにできる方でもおかしくはない実力だと思ってはいたが、これはかなり予想外だ。
横でプンスカしている理事長秘書に渡すデータから、このデータベースで検索されるのだろう数値をギリギリ外れる数値を狙って改竄する。
この侵入者のデータからは、ミカドランサーにたどり着くことはできないように。
昨日の小言を切り上げさせたお礼代わり、あとはここに無理やり呼びつけた理事長秘書への意趣返しだ。デブをこんな所まで呼びつけて仕事をさせるのはよくない。
感謝しろよと思いながら、私はサーバーログを抹消しデータベースを後にする。そして何食わぬ顔で侵入者の情報の入ったUSBメモリを理事長秘書に手渡した。
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わたくしの華麗なる逃亡劇はなんとか勝つ事ができました。いやぁ警備員さんとたづなさんは強敵でしたわね!危うく捕まってお説教でしたわ!
特にたづなさん。あの人めちゃくちゃ速くてマジでビビりましたわ。全力で飛ばしても全然振り切れないなんて・・・途中から振り切るのではなく、あえてギリギリの距離で躱す方向に変更して正解でしたわ。
でもわたくしこれまで鬼ごっこで負けた事がないので。ようはタッチされなければいいのですわ。タッチされそうになったら加減速で幻惑すれば良いということですわね!
でも袋小路に追い込まれたと気づいた時、本当にやばいと思いました。ですがさすがわたくし、なんとか起死回生の一発逆転のアイデアを思いつきましたわ。
特に最後の回転壁登りは自分でも無我夢中でもう一度やれと言われても難しいでしょう。ああ本当にあの漫画読んでてよかったありがとう先生!
それにしても警備員さんたち学生相手にガチすぎません?なんかめちゃくちゃ本気で追っかけ回されたのですけど。もっと手心とかないのでしょうか。
ウマ娘の警備員があれほど沢山いたのも誤算でしたわ。もしかしたら昨晩の騒ぎで警備のルートとか変更されたかもしれませんわね。
夜中のお散歩コースがなくなってしまったのは悲しいですが、これは仕方がない。当分は夜間に外出するのは控えましょう。夜の学園の自販機で一服するのが楽しかったのですが。
まあそんなこんなで次の日、学園のクラスのみんなを集めて、わたくしは発表を行う。
わたくしは一つ咳払い。息を吸い込み発言する。
厳正なる調査の結果・・・トトロはぁ!いませんでしたぁ!!
わたくしの言葉を聞いてクラスはやっぱりという空気になった。ええい!もっと盛り上がりなさい!学園七不思議は嘘っぱちとわかったんですわよ!
「いや最初からいないと思ってたし♡」
「全くだ。いるわけないだろう」
わっかんないじゃないですか!もしいたらどうするのですか!非のないところに噂は立たないというじゃないですか!
「それを言うなら火のない所に煙は立たないだな」
・・・・・そうとも言いますわねルドルフ!
それにしてもトレセン学園七不思議って変なのばっかりですわよね。トトロ以外に何がありましたっけ?噂好きのバトラーなら知っていますか?
知ってるよーと言うバトラーの言葉にわたくしは先を促す。聞いているとなんというか学校ごとに特色があるのですね。地元の学校は歴代校長の肖像画が泣くとか、動く人体模型とかでしたけど。
バトラーの一押し七不思議はトレセン学園にニンジャが出没するという七不思議らしい。変な話題が盛り上がりますのねぇ。
それにしてもニンジャ・・・なんでニンジャなんですの?
たづな「貴方が何処の誰だか知りませんが、私から逃げ切れると思いますか?捕まえますよ・・・必ず」
これは掛かっていますね。初めての敗北感にたづなさんブチギレですわよ!
あのまま袋小路に追い込まず、愚直に追い回していればたづなさんが捕まえていました。明らかな格下相手にスマートに勝とうとした結果、ミカドちゃんに盤面ごとひっくり返されました。
回転壁上りはエア・ギアからオマージュしました。普通に壁を駆け上ってもよかったんですが・・・その方が、かっこいいからだ!
ブッチャvsイッキが戦った時のブッチャが校舎の壁を駆け上った時のやつを参考にしました。Spinning Wallride Overbank 1800 BUCCA Specialとかいうクソ長い名前の一度しか使われない技です。両手を広げてコマのように回りながら垂直の壁を登る技です。
初期のエア・ギアは本当に面白いよ。