永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
レッツ!オンステージ!
「副隊長・・・私たち何やってるんですかね。私たち今日は休みだったはずだったハズっすけど」
ええい分かっている!だがこれも隊長から任された仕事の一つなのだ!愚痴なら今度の飲み会で嫌というほど聞いてやるから!
私たち特殊夜間警備隊はトレセン学園の警備を一任されている。普段は夜間の警備のみだが、感謝祭や学園で問題が起こった際は昼間でも仕事が回ってくる。
私たちのような優秀なウマ娘のみが集められ、基本はスカウトされることでしか勤務できない。学園に対して悪意を持つ悪漢を叩き伏せるのが任務だ。
給料も悪くないし、福利厚生も行き届いていてやりがいもある。夜間業務なので合わないものはすぐ辞めるが、私は苦痛に思ったことはない。
唯一の難点は出会いがないくらいだろう。人間の警備員もいることはいるが、荒事ができるとはとても思えない定年近いお年寄りばかり。
私たちが委任されるまで、長年勤めている方ばかりで学園との繋がりも深い。私も現役時代には何度かお世話になった。面倒な仕事を率先して引き受けてくれる、皆が尊敬する人ではあるがそういう目では見れない。
「隊長恨むっすよ。今日デートだったのに・・・」
こらっボーッとするな!仕事中だぞ!デートならまた今度すればいいだろう!
分かったのか分かっていないのか、へーいと返事をする後輩。畜生なんでこんなのに彼氏がいるんだ!私にはいないのに!胸か!胸が原因か!このやろう削いでやろうか!
それもこれも全部あいつのせいだ。あの目の前で呑気にベンチに座ってコンポタ缶を飲んでいるあいつ!たしかミカドランサーとかいう問題児。こちらに気づいた様子もなくコンポタ缶をコンコンして中身を出そうとしている。
ふふふふ・・・最近話題の学園の問題児め。尻尾を出した瞬間、現行犯で引っ捕らえて学園に引き渡してやる!覚悟しろ!
そう思ってその問題児を見ていると、問題児はいきなり立ち上がり、コンポタの空き缶を勢いよくぶん投げた。空き缶のポイ捨ては感心しないなと私は顔を顰めた。
だからだろう、その問題児が空き缶を豪快にポイ捨てをしている様子に夢中になっていた私は、背後から近づいてきた問題児の仲間達だと思われる者たちに気付かなかった。
そいつはカボチャのマスクを被った4人組のウマ娘で、私に勢いよくタイヤを被せた。胴体と手がタイヤの中心に嵌まり込み、身動きが一瞬で封じられる。
横で慌てている後輩も同じようにタイヤを嵌め込まれ身動きが取れないようだ。私たち2人はカボチャどもに、手慣れた動きでタイヤの上から手と足をロープで縛り上げられる。
最後に猿轡を噛まされ荷物のように運ばれる。私たちはミカドランサーがぶん投げたコンポタ缶が、吸い込まれるようにゴミ箱に入るのを見ていることしかできなかった。
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というわけで!フィナーレ!オンステージですわ!
メインホールにはカボチャを被ったわたくし含め200名近いカボチャマスクのウマ娘と、拘束された15人程度の追跡者たちが捕まっていた。
15人の中には学園でよく見る教員から、見たことのないウマ娘とかもいますわね。この場に200人近いカボチャマスクがいることに絶望顔になっていますわ。
まさかこんなに協力者がいるとは思わなかったですか?ふふふわたくしも思いませんでした。バンダナ先輩の影響力ってすげーですわね。軽く呼びかけて普通こんなに集まります?この学園にこんなに問題児がいたとはわたくしびっくり。
それにしてもふふふふ。無様に捕まった追跡者を見ていると・・・全ての作戦が完璧に噛み合い完全勝利!いい気持ちですわ!さあさあ捕まった以上どうなるかは分かっていますわね?
「くっ!私たちを捕まえてどうするつもりだ!」
テンプレ的反応を返してくれるわたくしを尾行していた夜間警備のウマ娘がこちらを睨み付ける。ありがとうございます。その反応が見たかったのです。
「無駄だ!すぐに仲間が応援に駆けつける。大人しく私たちを解放しろ!」
・・・・あの、テンプレ過ぎてわたくし反応に困るのですが。もしかして前世は女騎士さんとかですか?わたくし達はオークでもゴブリンでも山賊でもないので、酷いことはしませんわよ?
「くっ、このような辱めを・・・貴様ぁもがもか!!」
あまりにもうるさいので、もう一度猿轡を噛ませ直す。なんかセンシティブな問題に発展しそうですが、もうわたくし知らない。横の同僚っぽい方も呆れ顔ですわよ?そしてなんとか仕切り直す。こほん!
わたくしは意図的に話し方を変える。より高圧的に偉大な革命家のように。そしてわたくしから私になる。特に意味はありません、気分の問題ですわ。
縛り上げられた15人、そして学園中に聞こえるようにスマホ越しにも話す。アプリによって音質をいじられたわたくしの声が、別働隊によってジャックされた放送室のスマホに繋がり、学園中に放送される。
さあ聞くがいい。我々の声を!勝鬨を!息を大きく吸い勝者の要求を学園に叩きつける!
『私の名前はジャック・O!我々は不当な扱いを受けたハロウィンのために立ち上がった有志のカボチャマスクである。今年のハロウィンにおける仮装禁止は我々の誇りをいたく傷つけた!』
『その抗議と学園への反省を促す為に、我々は抗議活動を行うことにした!要求は2つ!』
『1つ目、今後の学園内のハロウィン仮装に対する一切の規制を行わないこと!』
『これは仮装は学園の学生にとっての伝統であり、たとえ誰であろうとも犯すことの出来ない聖域であるからだ!』
『2つ目、ハロウィンの日には学食でパンプキンパイを食べられるようにすること!』
『これは私が食べたいからだ!』
『以上2つを要求する。この要求が叶えられない場合、今年だけではなく来年以降も我々の活動は続くこととなる!』
『以上!では諸君ご機嫌よう!』
そう言って通話を切る。あまり長々と話すと放送室をジャックした別働隊が捕まってしまいますからね。要求は簡潔にとのこと。ルドルフは本当に賢いですわね。
さてと最後の締めとして、ハロウィンのダンスを踊りましょう!別働隊の退出する前の最後の仕事として放送室にラジカセを置いてくれたハズです。
ほらスピーカーから音楽がかかり出しましたわ!さあ皆!レッツダンス!
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その年の10月31日、ハロウィンのトレセン学園では大きな事件が起こった。学生と思われる200名近いカボチャマスクの集団が起こした大事件。それほどの数の参加者のいる大規模な騒動を起こしたのに、誰ひとりとして捕まえることができなかった。
彼らの活動により、その日の学園は引っ掻き回され一時的に機能が麻痺した。翌日には機能を回復した為、運営には大きな問題は出なかったがその影響は大きかった。
その事件の重要参考人として目をつけていた学生の1人はいたが、この事件はあまりにも規模が大きく用意周到で、その学生ではそこまでの計画は立てられないだろう。学園の教員達の意見は全会一致でそうまとまった。
犯人はおそらく別人、もしくは優秀な黒幕が後ろにいたことは間違いない。だがもう追うことはできない。なぜならその後の彼らの行方を知るものはいない。まるで幻のように掻き消えてしまったからだ。
学園中に隠されていたカボチャのマスクなどの黒幕の証拠に結びつきそうなものは、いつのまにか全て回収されて処分されたのだろう。いくつか学園側が事前に回収したものも含めて全て消えてしまった。おそらく学園側に内通者がいたのだろう。
残っているのは誰かが匿名で動画サイトに投稿した、トレセン学園のメインホールで踊る200名近いカボチャマスクのダンス動画。そして引っ掻き回された学園側の証言のみである。
ただ2つだけだけ言えることがある。それはその日から今日に至るまで、トレセン学園では一度たりともハロウィンの仮装禁止令は出てはいないということ。
そしてその年以降のハロウィンには、学食でパンプキンパイが食べられるということだけだ。
というわけで動乱のカボチャ内乱はおしまいです。
ミカドちゃん大勝利回でした。彼女が反省を促されることはありませんでした。やらかしを期待していた人はすまねぇ。今回も彼女は逃げ切りました。
だってルドルフ参謀に据えたらこうなってしまうんだ・・・今回の作戦はルドルフが大体のことを考えました。予定と違うとすればミカドちゃんがパンプキンパイを要求したことくらいでしょう。
本来ルドルフはこういう問題行為は嫌がるのですが、ミカドちゃん含めクラスのみんな勉強すごい頑張ってたし、その見返りがお通夜みたいな雰囲気なのは嫌だったんです。クラスメイトが怒っていたなら協力はしませんでした。宥めはしますが。
クラス担任はみんながハロウィンの為に頑張っていたのは知っていますが、クラスにプリントを届けにきた時のすまなそうな顔をしていました。
ルドルフはクラス担任よりもっと上の立場の職員が、明らかに補修者が少ないのを見て狙い撃ちしてきたと判断したんですね。
ですので犯人が分からないようにして、クラス担任には迷惑が行かないようにしたんです。踊る役をクラスメイトに任せなかったのはその為です。
まぁルドルフも少しやり過ぎたとは思っています。ルナやり過ぎちゃった!でも禁止令ならもっと早く言えよとは思ってます。実はシンザン会長も尾を引く結果にしないという条件で裏から協力していました。マルゼンスキー先輩もカボチャを被って踊っていました。