永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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ルドルフの言葉遣いはよくわからない。クソ寒いギャグはありません。四文字熟語を多用しないのは、どうせミカドちゃんにはわからないと気を使っています。

チェス回、皆さん楽しんでもらえてますか?これは実験のようなものなんです。ヒカルの碁みたいにチェスを知らなくてもチェスを楽しめる文章を作る為なんです。


GHOST IN THE 'CHESS'

アンパン先輩のクラスに乗り込んで10分も経ったでしょうか。わたくしは先輩に舐めた口を聞いたという事で折檻を受けていました。

 

アンパン先輩は大人しそうで小柄なのでの黒鹿毛のお人形さんみたいな見た目をしています。そして顔もいいのですが、彼女は声がものすごい綺麗なのですわ。声だけを切り抜いた音声データを売った奴を取り締まったことがありますもの。

 

その容姿の良さの反面、その実結構な過激派なのですわ。本人の人望もかなりあり、バンダナ先輩とも仲がいい。

 

取り敢えず両手に水の入ったバケツを持ったまま、アンパン先輩に尋ねる。

 

先輩が七不思議のチェスマスターについて知っているとの事なので、わたくし達が調査に来ましたの。というわけで知っていることがあればキリキリ話してくださいね!

 

アンパン先輩は腕を組んだまま難しい顔をしていますわ。そしてアンパン先輩は上級生の1人に合図を送る。すっとわたくしの頭の上に水の入ったバケツが置かれる。あわわ溢れる溢れますわ!

 

「なるほど・・・でも教えるというわけにはいきませんね」

 

アンパン先輩はそういうと鞄の中から折り畳みのチェス盤を取り出す。ルドルフのものよりも少し安っぽさはありますが、かなり年季が入っていますわね。お気に入りなのでしょうか?

 

「簡単な賭けですよ勝てたら教えます。どうです受けますか?」

 

無表情で賭けを持ちかけてくるアンパン先輩。ルドルフは少し悩んだ後、対局の為にアンパン先輩の向かい側に座ろうとしますが、わたくしはそれを止める。

 

ブルーに頼んで頭の上のバケツを下ろしてもらう。確かにチェス愛好会部長となれば相当打てるのでしょうね!わたくしはルドルフにはチェスで負け続きですが、わたくしのチェス戦闘力も急成長を遂げていますの!

 

ルドルフ、わたくしにやらせてください。ここらでお遊びはいい加減にしろってとこを見せてあげますわ。

 

それに今日はなんかわたくし良いところがなさそうなので、今のうちに白星を上げておきたいのです。

 

さぁアンパン先輩覚悟してください!ブラックミカド軍団で捻り潰して差し上げますわ!

 

 

--------

 

なんでなんですのぉぉぉ!!という呻き声を上げながらミカドが地面を突っ伏している。何故か自信満々で席に座ったのかと思えば10分もしないうちにあっけなく返り討ちにあっていた。

 

チェス愛好会部長というのは名ばかりではなく、このアンパサンド先輩・・・かなり打てる。少なくとも今日昨日チェスを覚えたばかりのミカドでは相手にならないだろう。もはや机の上にあるチェス盤は戦場ではなく屠殺場と言ってもよかった。

 

ブルーに目をやると首を横に振り、ミカドを慰める為に彼女のそばへと行く。半泣きになりながらミカドはブルーにしがみ付いている。

 

私はそれを見ながらアンパサンド先輩の対面へと座る。アンパサンド先輩はミカドを見ながら呟く。

 

「とても愉快なお友達。それで今度は貴方が敵討ち?」

 

ええ先輩。胸を借りるつもりでとはいいません。勝たせてもらいます。

 

アンパサンド先輩は黙ってチェスの駒を並べ直す。その顔は無表情であり一見怒っているかのようにすら見える。だだその瞳だけがメラメラと燃えている。

 

私にはわかる、この人は根っからのチェスマニアだ。ほんの僅かな情報すらも渡さないという意気込みを感じる。

 

先程のミカドとの闘いから、かなり油断ならない腕前を持っているのは間違いない。誰かに教えるのも悪くはないが、本気で打てるのは久しぶりだ。実に楽しみだ。

 

互いに挨拶をして打ち始める。私の白色の駒と先輩の黒色の駒が交互に動く。

 

定石通りに私がセンターのポーンを進める。対する先輩は少し変わり種の進め方。確か英国のチェスマスターが開発したオープニング。

 

序盤は待ち時間もなく順調に進んでいく。前線は膠着状態で激しい取り合いの予感はしない。その間に互いに着実に陣を築いていく。

 

現状は5.6手先を考える深い読み合いではなく、仕掛け時を間違わないセンスを問われる状態。だがおそらくは向こうが先に仕掛けるだろう。私は相手が仕掛けるまでは待ちを好み、この先輩は恐らく烈火のような攻めが好きなのだ。

 

ほらきた。前線のポーンを挟んでビショップが攻め込んできた。その後ろにはクイーンがいつでも飛びだせる体制だ。

 

私はキャスリングをして守りを固め、そしてナイトを前線の後ろへと送る。向こうの狙いはこちらのクイーンと予想する。ここへと置けばかなり攻めづらい筈だ。

 

「やりますね・・・」

 

ポツリと先輩が称賛の声を溢す。だけどそれはこちらの言葉でもある。やはりこの先輩は凄腕だ、まだ中盤にも入っていないがおおよその技量は把握できる。

 

実力はほぼ同格。ただ違いがあるならばこの人は本来深い読み合いからの殴り合いを好む。私が今まで戦った中で一番強かったおばあさま、その人とは全く違ううち筋。

 

確かおばあさまは言っていたな、こういう手合いはクイーンを暴れさせるのが好きだと。逆に言えばクイーンを抑えて盤面をおとなしくさせておけばいい。

 

もしくはクイーン同士を交換してでも討ち取れと。その状況を嫌がって自陣を崩すことすらあると。

 

そこが将棋とは違うところでもある。将棋は取ること、取られる事のリスクがチェスよりも軽いのだ。チェスは失った駒は二度と手には戻ってこない。選択肢が少ないだけに状況へのリカバリーが効かない。

 

この選択肢は駒を増やす事ができる将棋と違い、開始以降増えることはないのだ。駒の数とは自分が取る事が出来る選択肢の数を表している。

 

チェスの本質は、1つの駒でどれだけ相手の選択肢を取れるかのゲームなのだ。

 

責める側としては強力な駒で敵陣を荒らしまわりたい筈。たとえ討ち取られたとしても、より広く、より多く、より深く傷を残すために。

 

それに対して私は自陣を整える。より堅牢に、より頑丈に。より複雑に。これでは攻め込むリスクとリターンは釣り合わないぞ。どうする先輩?

 

「貴方は・・・あの子と違って可愛くない後輩」

 

まるで年上と打ってるみたいと苦虫を噛んだような声をしながら、でも盤面からは一切目を逸らさずに先輩は言う。無表情ながら顔は少し赤い。先輩の脳内では自軍の駒が8×8のマス目を縦横無尽に飛び回っているのだろう。

 

先輩はとても可愛いと思います。真っ直ぐで打っていて凄く楽しいです。

 

ピタリと手を止め、先輩はまじまじと困惑したようにこちらを見る。しばらく見つめ合うと先輩は深くため息をつく。先輩のわざとらしい無表情は崩れ、素の表情が顔を出す。相変わらず表情には乏しいが、少しだけ変わった、良い方へと。

 

先輩は盤面に目を戻すと、その右手の指先で黒いクイーンを掴む。そして私の陣へと一気呵成と言わんばかりに飛び込んできた。

 

そこからはもはや殴り合いだった。自軍に飛び込んで来た先輩の黒いクイーンを討ち取ったかと思えば、今度は黒いナイトが敵討ちと言わんばかりに暴れ出し、もはや盤面にはしっちゃかめっちゃか。

 

首の皮一枚で先輩の猛攻を凌ぎつつ、しかしあと一歩のところまで私は追い詰められる。自軍の陣地はもはや猛攻に晒されたせいで半壊状態。敵陣は兵力を攻撃に振りすぎたせいで向こうも陣地は穴だらけでめちゃくちゃ。

 

決してスマートとは言えない混沌とした盤面。だが楽しくて仕方がない。先輩ももはや表情は取り繕いはしない。一手一手がのたびに一喜一憂し、互いの駒が命を持ったかのようにマス目の上を駆け回る。

 

私も次の一手に考えを巡らすのが楽しくて仕方がない。もはや賭けは頭から吹き飛んでいた。さあ私のルークが貴方の王を討ち取りに飛び込むぞ!さあさあどう返す?是非私に魅せてくれ先輩!

 

うっ!と声を上げる先輩。だがもはやキングを逃すことしかできない。でも先輩もわかっている筈。そっちは死地だ。

 

私の白いナイトがあと詰めで飛び込む。先輩の手は止まり、盤面をゆっくりと見回す。まるで噛み締めるように。

 

そうやって一通り見て満足したのか、先輩は対面に座る私に向かって頭を下げた。

 

「参りました」

 

私は頭を下げて、ありがとうございましたと返した。

 

--------

 

「そういえば賭けをしていたんだ。忘れてた」

 

先輩は激戦を見学していたギャラリーを追い払い、チェス盤を片付けた後でそう言った。

 

久しぶりに本気で打てて楽しかったと無表情ながら尻尾は上機嫌な先輩は、私達にならと快く教えてくれた。誰にも言わない、広めないと言う条件付きではあったけれど。

 

「七不思議の一つ'幽霊のチェスマスター'は実在する。少なくとも私は'彼女'とチェスを打った事がある」

 

「貴方達が想像しているものとは違うかもしれないし、私も良くは知らないけど・・・。だけど私は、貴方には'彼女'と会う資格があるし、会うべきだとも思う」

 

「けど会う為には条件がある。まず夜にしか会えない、そして場所はチェス愛好会の部室でなくてはならない。そして何よりもチェスが強くなくちゃいけない」

 

「日程は特に指定はない。'彼女'は夜ならいつでもそこにいる。実力は貴方なら大丈夫。'彼女'と遊んであげて」

 

そう言ってチェス愛好会の部室の場所を教えて、部室の鍵を渡してくる。私はそれを受け取りお礼を言う。

 

「お礼ならいい。でもよかったらまた打とう。次はこうはいかない」

 

・・・ええ!私も楽しみにしておきます。

 

 

 




ということで次回は七不思議を探しに行きます。調子は最高だ!夜の校舎へさあいこう!

ただ今回は許可を取りますので、追いかけっこはありません。このシンザン会長の印籠が目に入らぬか!となります。まあ付き添いで警備員はついてきますが。

アンパン先輩のキャラ付けのモデルはアーマードコアFAのリリウムです。何故かというとアンパサンドの母親の名前がアビエントだからです。リリウムの機体の名前がアンビエントだからね。

クイーンで攻め込むのが好きなのも、リリウムがBFFの新たなる女王と呼ばれているからです。あとサンシャイン牧場出身ですから。サンシャインといえばやっぱりGAマン!でもアンビエントはBFFなんだ・・・

今回のアンパン先輩、途中でルドルフに可愛いって言われたあたりで無表情の仮面をかぶるのをやめました。表情は分からづらいですが、まぁ最初は背景にゴゴゴゴゴという効果音かあったんです。

ルドルフはこの試合を全力で楽しんでいるのを見て、アンパン先輩も楽しもうと思ったんです。そもそも敵陣にクイーンを攻め込ませるのが好きなんで、わーいクイーンがんばえー!と言わんばかりに突っ込ませました。

幽霊のチェスマスターの事は彼女にとっては秘密なんです。それを知ろうとするならボコボコにしてやると最初は考えていました。

アンパン先輩は幽霊のチェスマスターとは友人ではありません。でも彼女に興味本位で近くのなら、その人はチェスが好きであって欲しいんです。そして好きでなくてはいけないんです。
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