永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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急遽訳あって、明日投稿予定のものを投下します。理由は後書きにて。


新入生戦 トレセン学園 芝 1400m(短距離) 右

狭っ苦しいゲート内で、わたくしはゲートが開くのを待つ。

 

先ほどまで大声を出していた教官の声は、集中したわたくしの耳にはもはや聞こえない。

 

今日の退屈なゲート練習では感じられなかった、高揚感がわたくしの胸を満たし、昂らせる。手が震え顔が火照り、ずっと燻っていたものに火が灯る。

 

いつからだったでしょうか。レースに違和感を覚えてしまったのは。

わたくしはトゥインクルシリーズとは比べ物にならない小さな地元のアマチュアのレース大会や公道の違法レースしか出たことはない。それは他人から見れば滑稽極まりない井の中の蛙なのだろう。だがそこでは当然のように、必然のように勝利が転がり込んでくる。

 

わたくしは負けたことはない、負けそうと思ったこともない。苦戦もない。駆け引きもない。特別努力した覚えもない。走りたいように走れば、誰も彼もが蚊帳の外になる。

 

置き去りにしてしまう。影すら踏ませずに。

 

疑問、疑惑、疑心。勝って当然のように勝つことがわたくしの求めるものなのか。わたくしには誰も追いつけないのか。愛読するジャンプのように心を熱くするものがレースにはあるのか。

 

その答えを求めて、中央にやってきた甲斐があった。

 

 

隣のゲート内にいるだろうシンボリルドルフの呼吸する音が聞こえる。

 

わたくしは賭けレースまで持ち出し、挑発を繰り返してまで引きずり出した。ウマチョコ開封係に欲しいのは本当だが、それはもはや二の次ですわ。

 

こうして隣同士のゲートに入ればより鮮明に分かる。いや本当は出会った時から感じていたのかもしれませんわ。

 

思考から生温いコーラのような甘さが抜けていく。大差をつける?ずっと目を背けていた事実をゆっくりと咀嚼し、飲み込んでいく。ああ堪らないですわ。

 

わたくしは宇宙で1番ではなかった!

 

今隣にいるこいつは強い!わたくしが今まで競い合って来た誰よりも!そしておそらくはわたくしよりも!

 

ぶつけますわ!今持っているもの全てを!!

 

ガコン!

 

ゲートが開くと同時にウマ娘達が飛び出していく。いざ勝負!

 

 

 

--------

 

 

スタートは上々。

教官の声に合わせて速度を落とすウマ娘を尻目に、わたくしとシンボリルドルフは加速します。

異常を理解した教官が警告の為に吹いたホイッスルの音が少しずつ小さくなっていく。

最初の戸惑いはターフの感触だった。生まれてから初めてですわ。ここまで走りやすいターフは。

よく整備されていて、脚によくなじむ。蹴り足がいつもよりも調子よく回る。まさしく言葉通りの良バ場ですわ。

心の中でターフの整備員に喝采を送ってみた。いい仕事ですわ!花丸を差し上げますわ!

 

 

1つめのハロン棒が横を通り過ぎる。

 

差しを得意とするわたくしはシンボリルドルフの後ろにつけていた。

後ろから観察していると、シンボリルドルフのフォームは美しいの一言に尽きた。才能か、努力か、あるいは両方か。子供の頃からの訓練の賜物なのだろう。僅かにもブレることのない身体の軸からの蹴り足は、ターフを掴み、より効率的にに身体を前へ前へと運んでいるように見える。

 

それでも全力ではありませんわね。普通のウマ娘なら飛ばしているペースではありますが、シンボリルドルフにはまだまだ余裕がある、フォームを見れば分かる。より効率的に走ることを考えたフォームは僅かな疲労程度で効果的に成果を上げるでしょう。もし疲労度外視の走行になったこいつはどれだけ速いのだろうか見当もつきませんわ。

 

もちろんわたくしにもまだまだ余裕はありますが、それはレースの距離が短い為、スタミナ配分が楽だからですわ。距離が伸びれば伸びるだけ、降り積もった疲労の差が勝敗を分かちやすくなるでしょう。

 

実に楽しいレースですわ!やっぱりこいつ速いですわ!

 

わたくしはレース中でなければスキップし出しそうなほど上機嫌になった。

 

2つめのハロン棒がわたくしの後ろの方へと吹っ飛んでいく

 

 

直線での様子見は終わり。この区間の途中からコーナーへと入る。当初はコーナーもシンボリルドルフの後ろにつけ、最後の直線でぶっち切る予定でした。だが予想外の状況に参ってしまっていましたわ。

 

脚が回る。回りすぎている。ゲート練習で溜まりに溜まったストレスが消えていくのが楽しすぎる。明らかにオーバーペースに踏み込もうとしている。スパートに近い速度走ればいくら短距離でも流石にきつい。

 

わたくしの理性がいくらペースを落とすように言っても脚の奴が勝手に!掛かっているかもしれませんわね。

 

冷静になれ。ここは様子見。勝負所はもっと後ろ。差しは勝負所間違えたら勝てないって分かる?相手は自分より強いんだよ?のーみそすかすか?理性がんばれ♡理性がんばれ♡

 

自分の理性的な部分が反応を押し留めようと頑張っている。

 

 

あああぁうるせぇぇぇ!もう我慢できませんわぁぁぁあ!!!やればいいんでしょう!勝ちぁあいいんでしょう!!それなら文句ないんでしょう!!!

 

 

ミカドランサー、いきまーす!!とバカはそんな理性を投げ捨てる。

 

3つめのハロン棒を尻目にわたくしは外からシンボリルドルフを抜きにかかった。

 

 

 

-------

 

 

「あっ掛かった」

 

コーナー入り始めから一気に加速を始めた赤い流星の葦毛のウマ娘を見てアタシは即座に気がついた。

ゲート設備から飛び出した後、教官を振り切って走り出した3人のウマ娘は、こんな無茶をした割に最初は冷静にレースを運んでいた。

 

先頭はシンボリルドルフ。

綺麗に整ったフォームは、幼少の頃から訓練を受けているからだろう。明らかに他の新入生とはレベルが違う。

走り方から見て得意なのは先行だろう。他に誰も先頭に立つウマ娘がいない為か逃げの走りになっているが、ペースが崩れていない。この時点で正確な時計を持っているのだろう。

総じて言うなら末恐ろしいの一言に尽きる。

 

「あのシンザン会長のお気に入りの子、いい走りしてるわ・・・会長?」

 

返事がないのでアタシは横を向くと、シンザン会長は声を押し殺して笑っていた。暴走するように加速していった3人に気づいたとき吹き出してたけど、アンタいつまで笑っているんだ。

 

「ぷっ、くくく。わ、私もここまでのレベルとは思わなかったな。」

 

そりゃあそうでしょ。明らかに新入生のレベルじゃないもの。

 

シンザン会長の返事を待たずに視線を戻したアタシは、シンボリルドルフ以外の2人のウマ娘を観察する。

 

シンボリルドルフの後ろに張り付いていた赤い流星の葦毛のウマ娘。名前は・・・シンザン会長が知らないのをアタシが知るわけない。

 

ともかくその子は先ほどまでは新入生らしくなく冷静にレースを運んでいるように見えた。1番有利な場所につけていたのに、それを投げ捨ててコーナー侵入と同時に抜きにかかったのは減点ものだが。

しかしコーナーで外に流されずガンガン加速していくのは足腰の強さと体幹が優れているのだろう。見ていて気持ちがいい走りっぷりですらある。だがシンボリルドルフを突き放しにかかっているが、あれはゴールまでもたない。逆噴射する未来しか見えない。

 

シンボリルドルフのように磨き上げられてはいないが、彼女も荒けずりだがかなりの原石と言える。今回負けたとするならそれはレースに対する経験値の差だろう。磨き上げれば間違いなく強くなる。それこそトレセンでもトップクラスになれるだろう。

 

 

そして3人目は・・・小柄で青い髪のウマ娘だ。染めているのだろうか、青い髪に黄色の刺し色が入っている。

名前は赤い流星のウマ娘と同様に知らない。追い抜かれたシンボリルドルフから6バ身離れて走っているが、追い込みが得意なウマ娘なのだろうか。冷静に俯瞰するように前の2人を観察しているように見える。

 

それにしては走り方が妙だ。僅かな違和感とでも言うのか異質さを感じる。

 

「最後尾の彼女は未舗装レース出身だよ」

 

笑いを堪えることから復帰したシンザン会長の言葉に、レースから目線を外し思わず横を見てしまう。

 

「ラリーレースから?冗談でしょ?」

 

それは確かに明らかに異質だろう。トラックレースではなくラリーレース界隈からこちらに来るなんて滅多にあることではない。

日本ではウマ娘のトラックレースが主流であり、ラリーレースはあまり人気がないことも相まって、海外でレースすることが多い。しかもテレビ中継は滅多になく、せいぜいが雑誌の片隅に小さく記事になる程度なのだ。閉鎖的な環境も相まって、こっちにはほぼ選手が流れてこないのだ。

 

「あの走り方はどんな悪路にも対応できるように踏み込む技術だ。真上から踏みつけるように、そして後ろに向かって押す。未舗装でも脚を引っ掛けない為の走り方だよ」

 

「言葉にすると簡単だけど大変な高等技術さ。まぁ普通ならトラックレースでは通用しないんだけどね。」

 

どう見ても彼女普通じゃないなぁと呟くシンザン会長の言葉を聞いて、改めて青い髪のウマ娘を見る。

 

確かにそう言われれば納得できる点がいくつもある。俯瞰してみるのは障害物が多く、見通しの悪いラリーに対応する為。あの踏み足はぬかるんだ泥道や、見えづらいデコボコ道を踏破する為だろう。

 

「彼女は理事長が直接スカウトしに行ったという噂さ。あの怖ーい理事会が飛び級まで許可するなんて、よほどのものをもっているんだろう。閉鎖的なラリーレース界隈からあれほどの逸材を引っ張ってくるなんて後が怖いよ」

 

・・・・シンザン会長、彼女の名前は?

 

「ブルーインプ。まあ彼女は青い小悪魔なんて可愛らしいものじゃないとは思うけどね」

 

 

 

 

-------

 

 

コーナーを抜けて最終直線。後ろを振り返ったわたくしは冷や汗を流していた。

コーナーで脚をぶん回しぶっち切ったと思って振り返れば、シンボリルドルフと思ってたよりも近い。全然差がついていないのだ。

それになんか青いのが後ろから猛追してくる。貴方一体何者なんです!と叫び出したくなる気持ちが湧いてくる。

 

不味い不味い不味い!!

 

調子に乗って飛ばしすぎた。わたくしのアホ!バカ!アンポンタン!何やってんだ理性!どこ行ってたんだ!責任とって腹を切れ!

 

こ、このままでは脚が続かない。ひとまずどこかで息を・・・息をどこで入れればいいんですの!セーフティリードは全くない!

 

7つめのハロン棒はまだですの!・・・見えた!遠い!このままだと持たない!

 

一度抜かれてもでも息を入れないとスパートがかけれない!

一呼吸でいい、大丈夫わたくしの脚なら再加速できる!

 

息を入れるのを見計ったかのように、シンボリルドルフが外からわたくしを抜き去っていく。猛追していた青いのがわたくしのすぐ後ろにまできている。

 

「に が す かぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

二の矢発進!全身全霊!再加速であいつを差しますわ!

全身の血液が沸騰するような感覚がする。歯を食いしばる。目がチカチカする。絶対に逃がしませんわ!

あと少し、あと少しで届く!届く!届け!

 

ゴールのハロン棒は何処!だめだ今度は近すぎる!間に合いませんわ!

 

 

そしてわたくしの前を走るシンボリルドルフが、最初にハロン棒を通過した。

 

 

 

 

あぁぁぁ負けたましたわぁぁ!やだぁぁあ!!

 

 

 




あとがき

皆さん、メイショウドトウ可愛いですよね。そんな彼女がいまピックアップされてるんですよ!
皆さん当然回しましたよね?引けましたか?

僕はですねぇ・・・なんとぉ!引いちゃいましたぁ!(大本営発表)
いやぁ・・・引けなかった人には悪いけど、どうしてもいまここで報告したくて仕方がなくてね!本当に申し訳ない。

えっ?ドトウの声が聞きたい?しょうがないなぁ〜。

おーいドトウ!こっちおいでー!

どうしたのみんな待ってるよドトウ!恥ずかしがってないでおいでって!

紹介しますねこの子が う ち のメイショウドトウです!


「マスター、私はメイショウドトウではありません」


・・・・・・ぁぁぁあああああドトウだもん!おっぱいおっきいしドトウだもん!ドトウなんだもん!ぁぁぁぁあ!もうやだぁぁぁ!やだやだ小生やだ!引けないのやだ!


「・・・すいませんマスター・・・その、私では不足だったでしょうか・・・?」


・・・・ぁあああブルボンはほんと可愛いなぁぁぁぁあ!サイボーグ?こんなキュートなサイボーグがいる訳ないでしょ!SFチックな演出もかっこいいよ!いよっ天使!女神ウマ様!
スタイルよし!顔よし!性格良しでパーフェクトじゃねぇぇぇかぁぁあ!
みんな!すり抜けでも!こんな可愛いウマ娘が手に入っちまうなんてやっぱサイゲは神だな!これからもついていくぜ!
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