永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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やっとトトロを出せます。性格が悪い超絶優秀な奴です。

それに合わせて一話もちょっと変えました。振り返ると好青年的で誰だお前ってなったので。おめぇはもっと拗らせ人間なんだよ・・・


魔法使いというには、腹回りあたりが最近気になる男

自販機の光が馬鹿でかい巨体で塞がれていた。横にも縦にも大きいトトロみたいな男が小銭を取り出しコーラを買っていた。

 

取り出し口から缶コーラを引っ張り出したトトロは振り返ってこちらに気がつく。眼鏡越しの睨みつけるかのような視線がわたくしを貫く。

 

「この時間帯は学生は寮に押し込められているんじゃなかったか?」

 

わたくしは直感的に察した。あっこの人多分性格悪いですわ。今のわたくしの格好を見て、もうすこしまともな声のかけ方はないのでしょうか。

 

なんというかわたくしは八つ当たりにも近い感情を感じましたわ。イライラして攻撃的に返事を返す。

 

わたくしがどこにいようが、貴方には関係ないでしょう?

 

「大人に対してそういう言い方は感心しないな、ミカドランサー」

 

名乗った覚えもないのにこの人はわたくしの名前を呼ぶ。なぜ知っているのかはどうでもいいが、妙な居心地の悪さがわたくしの中にはあった。

 

・・・わたくしを知っていますのね。それで?

 

「はっきり言って私は面倒は嫌いなんだが、このまま君を置いておく方が面倒になりそうだ」

 

ついてこいと言ってトトロはのしのしと歩いていく。わたくしはその後を黙ってついて行った。

 

------

 

たどり着いたのは図書館の資料室と呼ばれている場所の、そのさらに奥。学園な生徒からは開かずの間と言った方がわかりやすいだろう。

 

図書館の木製の扉とは全く違う、指を引っ掛ける場所すらない開け方のわからない金属でできた扉らしきもの。

 

トトロの人は出入り口にあるカードリーダーに、キーカードを差し込む。空気が抜けるような音を立ててスライドし扉が開く。これは・・・学園にこんな場所がありましたのね。

 

図書室とは全く違う趣なんてかけらもない、まるで病院の通路のようなビニールの床材。真っ白で生活感のかけらもない無機質な通路をわたくしはついていく。

 

通路の中にある一室。恐らくトトロの人の仕事をする場所なのだろう。

 

中には窓は一切なく、壁に向かって大きな机が置かれている。その上にパソコンモニターが複数設置されている。隅には体重で歪んだ仮眠用のベッド

 

「いいか?私が触っていいと言ったもの以外には触るな。例えその机に置かれているこのコーラの空き缶でもだ」

 

トトロはその空き缶をゴミ箱に放り込みつつ、今自販機から買ってきた新しい缶コーラを開ける。プシュと炭酸の噴き出す音が聞こえ、それを勢いよく口に運ぶ。抑え気味にケポと小さくゲップをしてから問いかけてきた。

 

「それで何があった?」

 

あまりに不躾な質問にわたくしはなんと返事をすればいいのかわかりませんでした。ただ今日会ったばかりの相手に相談するのも躊躇ってしまい、ひとまずお茶を濁すことにした。

 

・・・何もありませんわ。

 

「おおかた走りがうまくいかないとかだろう。ここの学生が考えそうなことだ」

 

大当たりだった。喋ったこともない相手にズバズバと言い当てられるのは不思議な気分だった。観念してわたくしはポツポツと事情を話し始める。

 

本当にお気に入りでずっと大切にしていたシューズを始めて履いた事。でも新しいシューズを履いてから調子が良くないこと。わたくしには・・・・このシューズを履く資格がなかったと気付いてしまったこと。

 

わたくしの言葉を聞いて、トトロの人は心底呆れかえったようにため息をつく。

 

「馬鹿かお前は。シューズを履くのに資格だの何だのが必要なわけあるか。このロマンチストめ。走りがうまくいかないのはお前が間違って走っているだけだ」

 

一瞬何を言っているのかわからなかった。だが理解した瞬間ブチギレそうになりました。貴方に何がわかると理不尽に掴みかかりそうになったが、トトロの人が真剣な様子で手をこちらに伸ばしてきて、怒るタイミングを失ってしまいました。

 

「そのシューズ、見せてみろ」

 

わたくしはソフトケースからブレンボちゃんを取り出して、トトロの人に手渡す。ブレンボちゃんを手に取ったトトロはまじまじとそのシューズを見る。

 

「また派手なシューズだ。既製品じゃないな。日本製でもないか?・・・こんな真っ赤で恥ずかしいシューズ。多分イタリア製あたりじゃないか?」

  

はーマジでキレそう。

 

イタリア出身のブレンボちゃんですわ。わたくしの宝物なので恥ずかしいと言うのはやめてくれますか?この赤いのがいいのですから。

 

「シューズのことは門下外だがこれは・・・なるほど面白いなこれは、実にイタリア野郎の考えそうなことだ」

 

面白い?ブレンボちゃんはなにか特殊な構造でもしているのですか?

 

「外からはわからないが、このシューズはヒール部がかなり高い」

 

そうするとどうなるんですの?何か走りに影響がありますの?

 

「わからないか?背筋が伸びてスタイルが良く見える」

 

もしかしてなんですが、さっきからわたくしをからかってます?喧嘩なら買いますわよ。

 

「まぁ冗談だ。だがこれを履いて走ろうと思ったら相当前傾姿勢になるな・・・普段履いている方の靴を見せてみろ」

 

わたくしから普段履きのシューズまで要求してきたので、今履いている靴を脱いで渡す。そちらのシューズも靴の裏からソールを一通り見回したトトロの人。

 

「これは・・・ラリーストスタイルか?すり減り方からして、走るとき足裏全体叩きつけるように使っているだろ。このシューズでそのスタイルをやるなら足首をもっと柔軟に使うか、股関節の可動域を広げるしかないな。ちょっと待っていろ。たしかデータが・・・これだ見てみろ」

 

そう言ってパソコンをいじり出したトトロの人は、一番大きなモニターにマネキンのように見えるウマ娘を表示する。恐らく走る際のモーションを解析したものだろう。マウスの矢印が画面の中でスローモーションで走るウマ娘の太腿を指差す。

 

「わかるか?コイツを履くには膝近くにある可動域の軸をもっと上に持ってくる必要がある。要は腿をもっと上げて走ることだ。あと可動域を広げるために毎日柔軟をしろ」

 

またキーボードをガチャガチャといじり出したかと思えば、今度は2人にモニターのウマ娘がカーブを曲がるかのように身体を捻って動いている。片方は安定感があるように見え、もう片方は何処か危なげですわ。

 

「まだあるぞ。かかとの高いシューズのせいで重心が上がっているからコーナーを曲がる際は少し体を落とすことだ。這う気持ちで走れ」

 

次に表示されたのは恐らく下り坂を下る2人のウマ娘。減速の際にかかる力を表示しているのか、身体全体が起き上がっている方は足回り全体が真っ赤に表示されている。

 

逆に今にも前に転びそうなほど前傾姿勢な方は関節部がオレンジで、その他の部位ほぼ全体が青色だった。

 

「下り坂で減速するのは、今までのシューズよりも前傾姿勢になるのにビビって無意識でブレーキをかけているからだ。前傾姿勢を下り坂で維持すると転げ落ちそうになるだろうが、常に前に飛び降りる気持ちで走れ。それがこのシューズの正しい履き方だ」

 

「総じて言うなら、このシューズはデビュー前の新人が履きこなせるものじゃない。身体への負担も大きいだろう。大人しく本格化するまでは別のを履くことだな・・・おい聞いてるか?」

 

あっはい。

 

ですが・・・なるほど・・・ふふふふふありがとうございます!トトロの人!わたくしは賢いので、要はそれができるようになれば履きこなせると言うことでしょう?!

 

問題点さえ分かればこっちのもの!ああ、ブレンボちゃんの声が聞こえるようですわ!僕をもっと履きこなしてと言っていますわ!

 

「悩みが解決してよかったですね」

 

ええその通りですわ!このわたくしがメソメソするなんて!ミカドランサーにとって一生の不覚。さっそく今から練習しに行き・・・ん?

 

「こんばんはミカドランサーさん?この時間帯は生徒はみんな寮にいるはずなのですが」

 

こ、こんばんはですわ・・・たづなさん。

 

 

--------

 

 

私は夜間警備員を呼んだはずだったのだが、部屋に現れたのは青筋を浮かべた理事長秘書だった。そしてそんな理事長秘書によってあの学生は連れ去られた。

 

それにしてもえらく喋りすぎたな。私らしくもない。飲みかけのコーラ缶を傾けて、残りを口の中に流し込む。げぽ。

 

それにしてもイタリア製のブレンボか。シューズは国産のものくらいしか触ったことはなかったが、イタリア人にも馬鹿な奴はいるものだ。

 

明らかに既製品の普通のシューズを履いてきた者には対応できないだろう。シューズを履く、その為だけにフォームを変えるくらいしなくてはならない。

 

癖は間違いなく付く。付くからこそ速く走れるとも言える。あれを作った職人は恐らくレースはともかく、速く走る方法を相当熟知している。常道からは外れているだろうが、アプローチとしては悪くない。

 

あのシューズの一番の問題点は横方向の移動だ。カーブの際にはフォームを崩して減速するか、そのままの速度で曲がるしかない。カーブになれば高速域で減速せずに曲がりきる技術がなければ、ラインは大きく膨らむだろう。

 

前に駆けるのではなく落ちていく程の前傾姿勢。死すら恐れない胆力と、郡を抜いたセンスが必要になるとんでもないピーキー仕様だ。

 

確かに速く走れるだろうが、半端な奴が使えば下手すれば転んで死にかねない。まさに自殺志願者かスリルジャンキーが履くようなものだ。

 

ミカドランサーにはシューズに履く資格なんて必要ないといったが、あのシューズからはガチガチに詰められた職人の狂気じみたなにかを感じた。限界まで使いこなして走ってみろ、でなければ死ね。まさしくそう言わんばかりだった。

 

ミカドランサーにそれができるとは思えない。胆力やセンスはどうかは知らないが、クラシック級程度の実力では到底無理だ。

 

ただもしもあのシューズを履きこなせるとしたら、彼女は新しいサンプルになるかもしれない。'ラインの乙女'の強化データに使えるかもしれない。

 

そうなるとアレが必要になるかもしれないな。たしか担当は東条トレーナーだったか。担当にかなり過保護らしいから採用されるかは微妙なところだが・・・。

 

もしミカドランサーが上手くいきそうなら、アレがそれとなく彼女の手に渡るようにしておこう。アレがあればミカドランサーは世界とも戦えるようになるだろう。

 

たしかこの棚に・・・おかしいな何処へ行った?まいったなぁ。

 




ミカドちゃんが凹んでいるのを引っ張るかすごい悩みましたが・・・やっぱりいつものミカドちゃんが1番!

トトロの会心のファインプレーが光りますね。いい仕事をしています。

ブレンボちゃんは・・・そうじゃねぇ!もっと上手く走れこの下手くそ!とおこだったので力を貸してくれなかったと思ってください。なのでトトロが言うことも、店長が言うことも当たっているんです。

トトロはもっとテク磨けよお前下手くそなんだよと言い。店長はシューズの声にもっと耳を傾けるんだよ?と言っていたんです。もっと言い方はないのか・・・まぁ近いうちに完堕ちさせます。

止める気がない相手には、より良い解決案を具体的に教える。そういう人にわたしはなりたい。
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