永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
「そんなことを言っても生姜がないんだから、しょうがないだろう」
「そうそう、生姜湯でポカポカになってお正月を迎えたかったんだけどしょうがないよ。大人しく厚着をして神社に初詣に行こうよ♡」
でもでもこんなに寒いと、初詣といえどもお外になんてもう出たくありませんわ!
年越しをあと数時間に控えた夕食をルドルフの部屋で食べる。ルドルフのルームメイトは帰京しているらしい。年越しは特例で頼み込めば寮の跨いでの移動も許される。
豪勢な蟹を使った鍋。いつもの3人は仲良くおしゃべり。だが突然無言になり互いの様子を伺う。その様子は真剣みに溢れており、先ほどまで楽しくお喋りをしていたとは思えなかった。
一瞬の間が空き、普段の仲のいい調子に戻る。
それにしても今日は冷えますのー!。雪でも降り出しそうですわ!
「確かにな・・・でもこうやって蟹をつつきながら雪を見るのも悪くないんじゃないか?」
「でも蟹ってわたし苦手だな、爪のところとか食べづらいし。わたしざーっと素早く食べたい。ミカドちゃん代わりに剥いてよ♡」
やーですわ!わたくしは自分の蟹でいっぱいいっぱいですの!1人一杯なんですから自分で剥きなさい!
はーい♡といってブルーは蟹をほじり始める・・・2人ともなかなかやりますわね。ここまで手こずるとは思いませんでした。
「それにしても蟹のいいダシが出ているな。鍋会を言い出した私としては、北海道の親戚に頼んでよかったよ」
「確かにいい蟹だよね。お礼に何かお返しに送った方がいいかな。例えばミカドちゃんのクソださいNYラブTシャツとか」
はぁぁあ!わたくしのTシャツはダサくないですわよ!
「アウト」
「アウト♡」
ああああ!しまったぁぁぁ!
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わたくし達が何をしているか、もし賢明なウマ娘がこの場にいれば理解できるでしょう。
わたくし達はこの年の瀬にお上品にクソの投げ合い・・・もとい即興クソ駄洒落を互いに投げ合うという、スペシャルでこの上なく不毛なゲームをしていました。
年の瀬に何やってんだとか、くだらねぇことやってないで紅白見ろという意見は却下します。これはこれで楽しいですし。それにだってほら・・・
「しょうがないな、あとでみんなで神社へいこう・・・か。ふふっ」
ルドルフがとても楽しそうですからね。今はブルーの駄洒落が思ってたよりツボに入っているようです。
なんでこんなことになったのかと言えば、みんなで蟹鍋の材料を買い出しに行った時、ルドルフが野菜コーナーで空っぽになった生姜の棚を見てこう言ったからだ。
「生姜がないなんて、しょうがない・・・」
その言葉をすぐそばで聞きつけたブルーによって、散々からかわれたルドルフはむくれてしまい、わたくしが仕方なく仲裁に入ったわけです。
そうしていろいろあって駄洒落バトルとなり、こうしてクソ駄洒落を投げ合うこととなった。ルドルフが1人でいう駄洒落はつまらないですが、まあみんなで言いあえばそれなりに楽しい催しにはなります。
もちろん罰ゲームもきっちりと準備しています。あとでみかんを食べる時の剥き係として酷使されるのです。ふふふ、誰がわたくしのみかんを剥くことになるのでしょうかね?と言っていたのが懐かしい。
ルドルフが机に置いてあった油性ペンで、わたくしの手に×を1つ足す。まるで縫いキズのように×が並んだわたくしの手が憎い。ブルーがニヤニヤしながら横からブルーがあと1つ♡あと1つ♡と囃立てる。やっかましいですわ!
ルドルフは1つ。ブルーは2つ。そしてわたくしは4つ。ぐぬぬ。思っていたよりもブルーの頭の回転が早い。ルドルフは言わずもがな。わたくしは1人で劣勢へと追いやられていました。
ですが・・・わたくしはコツをつかんできました!ここから逆転してみせる!貴方達みかんを剥く準備は出来ていますか!じゃあ行きますわよ!勝負!
というのがご飯前での話ですの。蟹雑炊を食べ終えてみんなでだべりながら、わたくし達はみかんを食べています。手でみかんを揉んだら甘くなるって本当なんですかね。もみもみ。
「ミカド、みかんを追加だ」
はい。よく揉んだみかんを剥きますわ。
「わたしのは筋まできっちりとってね♡」
むきむきしますわ。綺麗にしますわ。
信じられないがわたくしが・・・負けた?何かの間違いではないのですか?
ラスト1マッチとなってからのことはよく覚えていない。ですがきっと・・・とんでもない激戦だったのでしょう。互いの知恵と叡智がぶつかり合う決死の闘い。ああ、かくも駄洒落道は険しいものなのですね。
「瞬殺だったよ♡」
ブルー喧しいですわ。・・・そろそろいい時間ですわね。
ルドルフ。本当にお皿を洗うの任せてもいいんですの?わたくしお皿くらい洗いますわよ?
「いやいいさ。お皿を洗うのは結構好きなんだ」
変わってますのねぇ。わたくしなら毎日は絶対できませんわ。じゃあブルー帰りますわよ。大晦日だから少し長くいても大目に見てもらえますが、さすがに長居しすぎると叩き出されますわ。
じゃあルドルフ!明日また会いましょう!また来年もよろしくお願いしますわ!
「ああこちらこそ。また来年に」
「うん。来年もよろしくね♡」
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次の日新年の挨拶を済ませたわたくし達は、初詣へとトレセン学園からは少し離れた神社を訪れた。
本殿へと続く急勾配の石階段にびっちりと人が並んでいます。この階段はトレセン学園では地獄の上り階段と言われ、トレーニングに活用するウマ娘もいるそうです。
普段は寂れているのに、こんな時だけ人がごった返していますわ。穴場かと思っていたのに予想が外れましたわね。いや、他の神社ならもっと混んでいるのでしょう。
トップチームは車まで出して、ウマ娘の聖地とも言えるご利益のありそうな神社へと向かうことがあるそうです。ですがわたくしはこっちの方が好きですの。
ここはわたくしがたまに自主練習している場所である。いやわたくしだけではない。この急勾配の石階段には、トレセン学園の生徒の血と汗が染み込んでいる。勝つため願掛けするならこっちの方がご利益がありそうでしょう?
どのくらいくらい並んだでしょうか、最初は遥か遠くにあった鳥居がすぐ目の前。一礼してから鳥居の端を通り境内へと入る。人はごった返してはいますが、何処か神聖な雰囲気へと変わる。少し背筋が伸びる。
とりあえず手水舎で手と口を清める。そしてご神前に進んだら会釈。わたくし達は賽銭箱に・・・決死の思いで500円玉を落とす。最近金欠なのでこれが精一杯ですわ。
鈴緒を揺らし、ガラガラと本坪鈴を鳴らして二礼二拍手一礼 。そして3人並んで手を合わせる。
三女神様ではないので、レースにご利益があるかはわかりませんが祈っておきましょう。神様そこにおられるのならどうかお聞き下さい。
わたくしはトレセン学園に所属しているミカドランサーと申します。昨年はおかげさまで健康に過ごすことができ、そしてこうして無事新年を迎えることができました。
そう心の中で告げてから一息置く。願い事をしにきたのではない。わたくしは決意表明に来たのだ。
神様、はっきり言って無謀なのはわかってはいます。
ですがどうか、あのいけずなたづなさんに勝つところを見ていてください。
次回エピローグ。波乱の新章まであと少し。
この駄洒落合戦の真ん中にエアグルーヴを投げ込みたい。