永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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カワカミプリンセスは引けました。この子は引かねばならぬ。ミカドちゃんとキャラが被りませんようにと祈りながら引きました。




最強チームリギル解散?!

一体全体どーいうことですの!リギルがなくなるなんて何があったのですか!

 

わたくしの大きな言葉を聞いて、おハナちゃんトレーナーは頭痛を堪えるように頭を抑える。あっごめんなさい。

 

ブルーとルドルフによってわたくしは宥められる。わたくしは冷静ですわ。いつだって冷静。クールなのですから。

 

「・・・トレセン学園には、チームにスカウトする際の暗黙の了解があるの」

 

おハナちゃんトレーナーがポツポツと喋り始めた。いつものキリッとした様子ではない、弱り切ったかのような様子。

 

二日酔いなだけではない。梯子を外されて1番ショックなのはおハナちゃんトレーナー、そしてマルゼンスキー先輩なのですわ。

 

おハナちゃんトレーナーが言うには、スカウトは新人達のお披露目である模擬レース、それを見たトレーナー達が一斉に行うことになっている。

 

チーム見学等で内々定を出しているのも結構なグレーライン。本当はもっとこっそりとやらなくてはならないし、見つけた以上は指摘を出さなくてはならない。

 

そうわたくし達は目立ちすぎた。元々かなり才能があるわたくし達三人に、おハナちゃんトレーナーの的確な指示が合わさることで、もはや同期陣では指折りの実力がある。

 

まさしく勝利への快速チケットのようなものですもの。実績を積みたいトレーナーとしては喉から手が出るほど欲しいはず。

 

たづなさんの協力を得て既成事実の形でなんとかチームを作ろうとしたのも、普通にやればなんらかの妨害があると判断したからだそうです。

 

「さすがに嘆願書を出してくるとは思ってはいなかったわ・・・」

 

全員ではなくとも、少なくない数のトレーナー達からの抗議文と嘆願書が届いた以上、理事長も無視をすることはできなかったようです。

 

結果として、わたくし達3人を同じチームに在籍させるのはストップがかかってしまった。

 

チームリギルに在籍できるのは、たったの1人だけ・・・。いやこれでもかなり温情をかけてくれたのでしょう。おハナちゃんトレーナーへのペナルティはなかったそうです。

 

わたくし達は・・・まだいい。いやよくはないですが、いいのです。

 

1番心配なのはマルゼンスキー先輩のことです。このチームを結成するのを1番待ち望んでいたのはあの人ですので。

 

立役者にしてチームの旗頭。ずっと引っ張ってくれていた誰よりも優しいあの先輩。こんなのあんまりですわ。

 

そういえばマルゼンスキー先輩には、もう伝えたのですかおハナちゃんトレーナー?

 

「ええ、頭を冷やしてくると言って外に行ったわ。もう随分経つけど」

 

・・・なんだか嫌な予感がしますわ。マルゼンスキー先輩がどこへ行ったか聞いていますか?

 

おハナちゃんトレーナーは黙って横に首を振る。わたくしがブルーとルドルフを見ると、2人は黙って頷いた。

 

おハナちゃんトレーナーに一言断って、わたくし達はトレーナー室を飛び出す。わたくしの勘が正しければ、あの行き当たりばったりな先輩は相当お冠ですわ。

 

 

------

 

 

マルゼンスキー先輩が行きそうな場所は何処かと3人で廊下を走りながら意見を出し合う。

 

廊下を走るなと風紀委員には怒られそうですが、全力疾走ではないので許してください。緊急事態ですの。

 

おハナちゃんトレーナーは体調が悪いし、観察力が相当落ちているはずです。ショックを受けて弱っていますし気付かなくても無理はない。

 

いつものマルゼンスキー先輩ならチームの結成の危機となれば、まずわたくし達の所に来るはずです。来れなくても連絡はするはず!

 

間違いない!何かをしようとしている!

 

マルゼンスキー先輩はいつも優しいのは嘘ではない。ですがもう一つの側面はそんな優しさとは無縁なのです。

 

快楽主義的で刹那主義、スリルジャンキーで無鉄砲。きわめて非社会性の独自の価値観を持っています。わたくしにはわかります。わたくしもちょっと無鉄砲ですから。

 

あの真っ赤なスポーツカーでぶっ飛ぶくらいアクセルを踏み抜く先輩のことです。怒ったらブレーキなんて忘れるに決まってますわ!嘆願書出した人を殴りに行っても不思議じゃない!

 

とはいえ嘆願書の中身はわたくし達では知りようもありません。どこへ行きましたか!?

 

そこまで考えていると、ルドルフが急に曲がった!なんですの?!マルゼンスキー先輩がいましたか?

 

「生徒会室だ!カーテンが閉まっている!」

 

それが!どうかしましたの!

 

「この時間帯ならシンザン会長は必ず生徒会室にいる!昼間にカーテンを引くなら周りに見せたくないことがある時なんだ!」

 

シンザン会長のお手伝いを沢山していたルドルフの推理は、この状況でも冴えていた。わたくし達は大急ぎで生徒会の前に行くと、中から騒音と声がする!マルゼンスキー先輩の声だ!

 

ノックもなしに生徒会室に飛び込むと、壁際でシンザン会長に掴みかかるマルゼンスキー先輩と、それを止めようとするたづなさんが必死に後ろからマルゼンスキー先輩を引き離そうとしている!

 

スタァァァァプ!ストップストップですわそれはやばいやつです!うわぁぉぉあ!あわあわああ!

 

3人で勢いよく間に割り込む。だ、大事なくて何より。わたくしが飛び込む形となり、勢い余って身体を壁にしたたかに打ち付けたくらい。

 

ルドルフがシンザン会長を守るように間に立ち、わたくしとブルーがマルゼンスキー先輩を前から引き離す。たづなさんと力を合わせて反対の壁際まで押し付けるように追いやる。

 

あわわ!お、落ち着いて!落ち着いてくださいマルゼンスキー先輩!

 

「止まって先輩!お願いだから!止まれ!」

 

わたくしとブルーの必死の呼び掛けにも何も答えない。大型肉食獣のように歯をむき出しにして、耳が後ろに向いている。しかもいまだにシンザン会長に飛びかかろうとしている。

 

な、何がありましたの明らかに尋常な様子ではない。ていうよりわたくし達が来たことに気付いてない?・・・マルゼンスキー先輩!ごめんなさい!

 

勢いよく平手で頬をぶっ叩く。スパァンといい音が生徒会室に鳴り響く。マルゼンスキー先輩は痛みで正気に戻ったのか、一気に身体から力が抜ける。

 

は?え?とか言いながらわたくしを見て、ブルーを見て、ルドルフを見る。

 

よかったいつものマルゼンスキー先輩だ。

 

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ぐちゃぐちゃになってしまった生徒会室でわたくし達はとりあえずソファに座る。うーんいつもの感じもシックでいいのですが、こういうのも趣あると思いません?まるで学級崩壊したみたいで。

 

「君は本当に大物だなぁ。・・・ごめんね助かったよ」

 

呆れたようにしながらもお礼の言葉を言うシンザン会長。アザとか怪我はないようですが、掴みかかった時の影響か、制服のリボンと飾りが吹っ飛んでいる。制服もヨレヨレになっています。

 

おっそろしいことをしますのねマルゼンスキー先輩。先輩は不良生徒ですのね。お友達は大事にしないといけませんわよ。

 

「・・・すみませんでした」

 

床に正座しながらマルゼンスキー先輩は謝罪の言葉を述べる。耳も尻尾も萎れている。あとでおハナちゃんトレーナーにも報告しますので。たづなさんもありがとございました。

 

少し疲れたような笑みを浮かべるたづなさん。本当に間一髪でしたわ。先輩!しっかり反省してくださいね!

 

「・・・ハイ」

 

マルゼンスキー先輩を虐めるのも楽しいのですが、その・・本当にどうしてこうなったんですの?こんなの普通じゃありませんわ。あやうく暴力沙汰とか何があったんですの?

 

「・・・君たちは嘆願書のことは聞いてるよね。それを見せるように言ってきてね」

 

・・・。

 

「勿論だけど部外秘だから断ったさ。手元にもないしね。一応僕も目を通してはいたんだが・・・まあ後は想像に任せるよ」

 

なるほど、断ったシンザン会長から力づくで吐かせようとしましたのね。おおかた1人1人訪ねて撤回させるつもりだったのでしょう。うわぁ直情的過ぎる・・・。

 

わたくし達は全員でマルゼンスキー先輩を見る。いつもの調子は一切なく、マルゼンスキー先輩は哀れなほど小さくなっているように見えた。

 

わたくし達からはもう言うことはない。後はおハナちゃんトレーナーの仕事ですわ。シンザン会長、そのこんなことを言うのはあれなんですが・・・。

 

「いや参ったよ。今度実家の付き合いで社交ダンスがあってね」

 

は?

 

「マルゼンスキーにダンスの練習に付き合ってもらったんだけど、うっかり熱が入り過ぎてしまったようだ。生徒会室でこんなことするもんじゃないね」

 

はっはっはうっかりうっかりと笑うシンザン会長。

 

その意味を遅れて察したわたくし達は、揃って頭を下げた。

 

 

 

-------

 

 

とまあ1週間前はそのようなことがありまして、めでたしめでたし・・・というわけにはいきませんの。

 

 

突然の呼び出しながら態々集まっていただき、ありがとうございます皆様方達。どうしても協力してほしいことがあって・・・。

 

ええ、わたくしは怒っているわけではないのです。いえやっぱりすごく腹が立ちますけど。だってギリギリでお預けなんてひどい話でしょう?

 

ですがそれはそれ。これはこれ。

 

仕方のないことなのは理解しています。たとえ違法なのではなくても堂々と横紙破りをするのなら、止めなくてはならないのが大人なのでしょう。

 

わたくしの、わたくし達のチームリギルは結成する前に解散をしてしまいました。

 

しかしチーム自体の結成を止められたのではなく、学年トップスリーを一つのチームに集めるのはどうかという嘆願書が上がってきたそうです。

 

チームリギルがなくなるわけではありません。でもおハナちゃんトレーナーがリギルを立ち上げたとしても、それはきっと別のチームリギル。わたくしのチームリギルではないのです。

 

そのことに不満はあれど納得はしました。ですが状況確認の為に色々調べていたら、どうしても看過することのできない噂が聞こえてきたもので・・・

 

一体誰なんですかね?おハナちゃんトレーナーが、担当の才能頼りの二流トレーナーと噂を流したのは?

 

・・・・ええですので。幻となったチームリギルの一メンバーとしては、その噂は払拭しないといけませんの。

 

今日おハナちゃんトレーナーの能力の証明がてらに、盛大にわたくしのリギルの弔いを行おうと思います。ええそれはもう盛大に。

 

この模擬レースはその為のもの。後ろから撃つように噂を流しやがった誰かさん。嘆願書を書いた奴らと関係があるかは分かりませんが・・・・

 

とりあえずこのレースを開催したのはその為です。名付けて幻のリギル杯。いい名前でしょう?わたくしがかっこよく皆さんをボコボコにしてみようかと思いまして。

 

でもこういうの好きでしょう?はねっかえりの後輩からの可愛いおねだりですもの。面倒なことは走って解決するのがわたくし達らしいでしょう?

 

では皆さんレースにいたしましょう。きっと楽しいですわ。

 

ええ本当に怒ってませんわ。怒っていたら八つ当たりみたいじゃないですの。

 

 




くらえ冤罪剣!ミカドちゃんの八つ当たりが罪もないウマ娘を襲う!

普段飄々としてても、ウマ娘の魂は熱く燃えています。魂の熱さは時に肉体すら焼け焦します。割り込まないと結構やばいやつでした。シンザン会長もですが、マルゼンスキー先輩も。


あと一つだけいうのならば、ミカドちゃんもブチギレています。嘆願書はともかく、噂なんて使って後ろから撃ったことにです。刺すなら正面からが彼女のモットーなので、ミカドちゃんは殴り込むなら正面から行きます。
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