永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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もし昨日の話を読んでない方は1話戻ってください。投稿しない詐欺をしたのは・・・申し訳ない。


天衣無縫

突然訪ねてきたシービー先輩からの唐突な参加エントリー要望。まだ受付には間に合うので、シービー先輩をエントリー候補に加えておく。

 

その際わたくし達と一緒に走っていたマルゼンスキー先輩に声をかけたシービー先輩はにこやかだった・・・少なくとも表面上は。

 

ええ、雰囲気的に遊びで走りますとかそういう感じでもなさそうです。模擬レースに滅多に出ないマルゼンスキー先輩を確実に狙って来てます。明らかにリベンジ目当てですの。

 

ミスターシービー先輩にとっては感謝祭エキシビジョンレースのリベンジマッチですもの。雪辱を晴らすには絶好の機会ですからね。わたくしが同じ立場なら参加するでしょう。

 

いやこれどうしますの。流石に相手が悪すぎますわ。ど、どうしましょう。おハナちゃんトレーナーなんとかなりませんか?

 

「諦めなさい。流石に無理よ」

 

そんなぁ!わたくしの勝ち目はないんですか!

 

「逆に聞くけどあると思う?芝のマイルにはマルゼンスキーも出るのよ?」

 

ああ・・・一番前にやべー奴。そして一番後ろにもやべー奴がいる。やばい一気に冷静になってしまった。実力者を集めるのは望むところですが、流石にキツすぎる。ケツにツララをぶち込まれた気分ですわ。

 

逃げるマルゼンスキー先輩を捕まえられる場所で、なおかつシービー先輩に追い回される。間に挟まれたウマ娘が可哀想。この場合わたくしのことです。

 

しかもお二方以外も実力者揃いなのです。おハナちゃんトレーナーと立てていた作戦を、根本から変えないと惨敗することになる。マルゼンスキー先輩という隠れ蓑に紛れる作戦でしたのに。

 

最初の作戦は差しではなく追い込みで勝負することでした。先頭に立ってペースを握ることになるマルゼンスキー先輩とずっと走っているわたくしであれば、周りがどのくらいの距離で仕掛けるのかを何となくは分かる。

 

レース経験の未熟なわたくしでは、明らかに読み合いや駆け引きでは勝てない。わたくしの加速力と最高速を武器に戦うには、仕掛け時まで息を潜めて潰されないようにする状況が必要でした。

 

ですので最後尾から大外をぶち抜く算段でした。マルゼンスキー先輩を警戒して前にばかり意識が向くはずなので、わたくしは自由に走れる。

 

わたくしの身体能力は他の参加者に引けを取らない、いえ凌駕しているというおハナちゃんトレーナーの言葉を信じるなら、薄いけれど勝機のある作戦・・・だったのですが。

 

それがシービー先輩の参戦で破綻した。この作戦はわたくしが無名で恐れられていないから成立するのです。追い込みで知られたシービー先輩に対抗する為に、レースの参加者はあれこれするでしょう。

 

それがそっくりそのままこちらに引っ被る。シービー先輩に対する警戒網がわたくしにも引っかかるからだ。前を塞がれたら沈むしかない。

 

わたくしは2人のトップスターに蹴散らされる哀れなモブへと転落した。

 

と、思いますか?まだわたくしは諦めません。

 

プランBはありますか?ええありますとも。

 

---------

 

 

模擬レース開催当日。見学に多くの人が押しかける中、わたくしは芝を様子を確かめるように何度か走った。バ場はかなりいいので問題なし。

 

少し寒いが何度か走ったおかげで体は温まってきた。体を動かしながら先程までのみんなの様子を思い出す。

 

わたくしは開催の立案者として、先程宣戦布告のようなものをした。最初はチームがなくなったという状況に同情的だった先輩達も今はちがう。

 

少しばかり挑発を込めた発言に、参加者の気迫はうなぎ上り。勝つ為ならば普通は盛り下がっている方が都合が良いのですけど、今回は違う。

 

これが勝ちへの布石。マークされている方がまだましなのです。シービー先輩の参戦によりプランAは破綻した。ええ、ですのでプランBです。突貫工事の行き当たりばったりですが勝ちの目はなくはない。ゼロではないくらいですが。

 

直前まで目立たないように振る舞えなくなるのなら、逆に目立ってしまえばいい。戦意を削げないのなら、逆に高めてしまえばいい。

 

マルゼンスキー先輩とシービー先輩以外にマークしなくてはならない相手をもっと増やしてしまえばいい。わたくしのマークも入るかもしれないが、それは仕方がない。

 

みんな戦意が向上している。より油断ならない相手になったが全員それは同じ。互いが互いをマークすれば必ずレースは混迷する。リスクはありますが状況を荒らしてしまえばいい。

 

おそらく互いに牽制しあい、目まぐるしく状況は変化する筈。その最中に・・・わたくしが出し抜いてみせる。駆け引きをせずに一刀両断しかない。

 

重要なのはタイミング。できなければ最下位でもおかしくないが、もとより勝率なんてないに等しい勝負。やる価値はある。

 

ただ問題はシービー先輩だ。マルゼンスキー先輩とは真逆。何をしてくるかわからない怖さがある。・・・そこは見極めるしかない。このレース中に。

 

シービー先輩は自らの流れを作れる一流のウマ娘ですの。何度もビデオを見ていたのでよく知っています。おそらくはマルゼンスキー先輩の作った流れを断ち切るシービー先輩という構図になるはず。

 

そのシービー先輩の流れに乗れるかどうか。そして最後に出し抜けるかどうかが問題になる。絶対何かを仕掛けてくるはずですもの。少なくともマルゼンスキー先輩を差し切れる場所にいるはず。

 

まぁようはシービー先輩を前からではなく後ろから徹底マークして、ラインをなぞりながら最後に差し切るだけですわ。道がわからなければシービー先輩に教えてもらいましょう。

 

あの追い込みで知られたシービー先輩を、後ろから差すってもう頭がおかしいですわね。ミスターシービー先輩のタブー破りを破る。名付けてタブー破り破り大作戦。

 

おハナちゃんトレーナーに言ったら呆れられましたもの。なんで一番薄い所へ行くんだと目元を押さえていましたが、わたくしは結構いい作戦だと思いますわよ?

 

幸いなことにシービー先輩はこちらを警戒していませんわ。ただ一点、シービー先輩はマルゼンスキー先輩の背中を見つめている。狙うべき標的を定めるかのように。

 

・・・腹立たしい話ですわ。こっちは敵とすら思われていませんのね。ですがあの人にはそういうことが許される。それほどの強さ。尊敬する先輩であろうと今日は負けられない。

 

出し抜いてやりますわ必ず。

 

それにわたくしにはこの子がいる。思わず足元を見る。赤く輝くブレンボちゃんが上機嫌で今すぐにも走りたいと言い出しそう。

 

おハナちゃんを何度も何度も説得してなんとか使用許可をもぎ取った。ブレンボちゃんのデビュー戦ですもの。かっこ悪い走りは出来ませんわ。

 

わたくしのゲートインの順番が回ってくる。ゲートの前で深呼吸一回。すぅー、はぁー・・・。

 

 

よし!勝つのはわたくしですわ!

 

そう強く念じて、わたくしはゲートに入っていった。




次回レース。

ミカドランサーはいつでもいけます!でも説明は負けフラグなんだよなぁ・・・
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