永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
おハナちゃんトレーナーのトレーナールームから飛び出した次の日、教室でルドルフとブルーを集めてトトロに接触大作戦会議をしようとしました。
「悪いがその相談には乗れない」
「ミカドちゃんごめんね♡」
これ根回しされてますわ。おハナちゃん相変わらず手が早すぎる・・・。前々から思っていましたが、あの人仕事が早すぎませんか?ぐぬぬ。
よく考えたら困ったときにはルドルフに泣きつくのはいつものこと。おハナちゃんには行動パターンがバレていますから最初に抑えるとしたらそこですけど!
し、親友とトレーナーどっちを優先しますの?!ほらわたくしでしょ?そうでしょう!?ねっ?ねっ?
おねだりしても駄々をこねても床を転げ回っても、2人とも首を縦には振りそうもない。これは・・・かなりまずいですわ!いきなり王手飛車取りになったみたいな状況に、わたくしはかなり焦る。
床にうつ伏せになりながら考える。たづなさん説得の作戦には協力者が必要不可欠なのです。ルドルフとブルーに手伝ってもらおうと思っていましたが、当てが外れてしまいました。
結構危ない橋を渡りますし阿吽の呼吸が必要になる。その上では2人はうってつけでしたが、別の協力者を集める必要がありますわ。
ううむ。そうなればプランを変更しなくては・・・。最悪1人でもできるかなぁ。
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皆さんは知っていますか?考えをまとめるときは歩きながら考えるといいそうです。というわけでわたくしは放課後学園をぐるぐる歩きながら妙案が浮かぶのを待っていました。
たづなさんを釣るには・・・ニンジャくらいしか思いつきませんわ。でも昨日のおハナちゃんの話を聞く限り、それを交渉のカードにしてもうまくいきそうにない。
だってたづなさんは学園の生徒を本当に大切にしていますもの。危険には近づかせないようにする。たとえ自分の事情を飲み込んでも。
わたくしが諦めるのが1番早いのでしょうが、どうしても納得がいかない。昨日のおハナちゃんの話はいまいちピンとこないのです。
トトロは何人ものウマ娘を潰してなんとも思わない・・・違う。わたくしの勘ですが何かを絶対に違う気がする。大きな見落としというか、勘違いがあるような気がします。
トトロは・・・多分そういうことはしない人だと思います。わたくしは直接話したんです。たづなさんとここまで意見が真っ二つに分かれるなんて極端すぎる。
それにたづなさんがトトロを個人的に嫌いだとしても、あまりに極端すぎます。たづなさんは分別をつけられる人・・・だと思いますし。だとしたらどうして?
うーんわかりませんわね。そもそも情報ソースが少なすぎます。たづなさん経由の情報しかないじゃないですか。別口の情報が欲しい。他に知っている人はいないのでしょうか。
ですがトトロについての聞き込みはもう結構な数をしましたが、誰も知りませんでした。学園の事情に詳しい先輩に聞いてもわかりません。
八方塞がりとはまさにこのこと。いっそ資料室のドアをこじ開けましょうか?バールは無理そうなので、プラズマ切断機でももってこないとあのドアは無理そうですが。
そういえば用務員室にプラズマ切断機がありましたわね。・・・いや通風口から侵入すればいいのでは?わたくし冴えてる!
「あそこには映画みたいに人が通れるダクトはありませんよ」
えー。ナカトミビルみたいにはいきませんのね。わたくしがっかり・・・ん?
「こんにちはミカドさん。今少しお時間よろしいですか?」
アッ・・・たづなさん。
そんなわけでたづなさんに誘われて学食のカフェへ。なんだか変な気分ですわ。カップのドリンクをたづなさんにおごって貰いましたわ。
というよりもたづなさん仕事中なのではないのですか?こうしてたづなさんとおしゃべり・・・ん?これもしかしてデートなのでは?
「そういう色っぽい話はないですよ?それに理事長には許可は取ってます」
わたくしの対面へと座るたづなさんの顔は真剣そのもの。まぁあれでしょう。トトロの件ですわね。
「ええ私も腹を括りました。東条トレーナーからあの人の事情は聞いていますよね?私が止める理由も」
どうやらたづなさんから直々に釘を刺しに来たらしい。絶対に止めるという固い意志を感じる。というよりもここまでまっすぐに来るとは思ってなかった。ならこっちも真っ向から迎え撃たなくては。
ですがその前に一つ確認しなくてはならないことがある。
たづなさん、一つ聞いていいですか?
たづなさんははいどうぞと言ってわたくしの言葉を促す。おハナちゃんトレーナーから聞いてからずっと感じていた違和感。
トトロの人が有能だけど危険だということには納得しました。ですが理事長はどうしてそんな人を学園に招いたのですか?
わたくしは理事長とは直接話したことはないですが、やよいちゃんから話は聞いています。その話の限りではそういう危険なものは出来る限り生徒には近づけないタイプの人ですわ。
いくら有能でも、本当に危険であればトレーナー職でなくても学園に勤務をさせない筈。なのになぜトトロの人は学園にいるのですか?
「・・・理事長はあの男が改心していると思っています。最初はここでもトレーナー職をあてがおうとしていました」
私はそうは思いませんがと言って、たづなさんは手に持っていたカップに口をつける。
わたくしは・・・理事長の意見に賛成です。わたくしはあの人がそこまで悪い人には見えませんでした。
カップを傾ける手を止めてわたくしを見るたづなさん。自分なりに考えた結論。トトロはそういう風には見えなかった。
もし、わたくしもたづなさんも正しいのだとすれば、たづなさんはトトロの人の過去を見て、わたくしは今のトトロを見ているのかもしれない。
会ったのは一度だけですし、わたくしはトトロの名前も知りません。初対面でもあの人は性格は悪いとは思いました。でも本当によくしてくれた。
わたくしが今ブレンボちゃんを履けるのはあの人の力がなくては無理だった、少なくともそれは確か。あの人に感謝していますし、極悪人みたいにはとても見えなかった。
たづなさんがトトロの人を信用できない事も、わたくしを思ってくれているのもなんとなくわかります。
でもわたくしはあの人はウマ娘を思える人だと感じました。企業チームの頃は知りませんが、今は違うかもしれません。ですのでそれを確かめる為に会わせては貰えませんか?
わたくしは妥協をしません。貴方が妥協してくださいと言って、わたくしは頭を下げる。
トレーナーはトトロじゃないとだめなわけじゃない。きっと探せばわたくしに合うトレーナーは見つかるかもしれない。でもこの件に妥協すれば、延々としこりになりそうな気がする。後悔・・・ではないでしょうが納得できない以上ずっと心の整理がつかない。
本人に断られたら・・・ダメならすっぱり諦めます。本当に悪い人ならもう近付きません。でもたづなさんが間違えていたら、それを認めてください。
わたくしは頭を下げている以上、視界はテーブルしか見えない。たづなさんがどんな顔をしているのかはわからない。
しばしの沈黙のあと、たづなさんはため息をついた。そしてたづなさんが立ち会うという条件付きで了承を得ることができた。
難産だよ、本当に。
でもねミカドちゃんの直感は正しいし、たづなさんも間違えてはいない。