永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
中で話し合いをしていたたづなさんが出てきてキーカードを無言で差し出してくる。この部屋に来るために必要なキーカードらしい。
受け取ろうとすると、たづなさんがなかなか手を離さない。なんですの?と思いながらたづなさんの顔を見る。サッとわたくしは顔を逸らす。
いやこれたづなさんブチギレていますわ。美人が怒ると本当に怖い。何を言ったのですかトトロ。わたくしビビリそうですわ。いやビビってませんわ!
2、3度キーカードを引っ張ると渋々とたづなさんは手を離す。気まずくなってわたくしは受け取ったキーカードをまじまじと見る。
せきゅりてーくらす1?よくわかりませんがこれであのいけずな鋼鉄ドアを破壊せずとも中に入れるのですね。よかったプラズマ切断機でぶった斬られるドアはいなかったんですね。
「ミカドさん、今でも私は貴方があの男とトレーナー契約を結ぶのには反対です」
・・・でしょうね。いやその雰囲気でわかりますわ。怖いのであんまり怒らないで欲しいです。尻尾にピリピリきますわ。
「怒ってませんよ?」
た、たづなさん嘘が下手すぎる。ほら!スマイルスマイル!怒ったっていいことなんて1つもありませんわ!
「それと伝言です。準備があるので明日また放課後に来るようにだそうです」
えーそういうの自分で伝えません?トトロの人出不精ですわね。ドア一枚潜るだけですわよ?
「ええ、自分は忙しいので暇そうな奴に伝言を頼むそうです。私は・・・暇らしいので」
わぁお呪詛を吐くような声色ですわ。いやこれどうしましょう。マジでメンタルケアしないとストレスでハゲますわよ。帽子でわからないかもしれませんが。
そのあとベンチで缶ジュースを飲みながらたづなさんから愚痴を聞く。結構溜め込んでいるらしく、もう人のいない学園でよかったですわ。
それはもう大量にトトロの愚痴が飛び出る飛び出る。やれ人を見下してるとか、やれいつも小馬鹿にしてくるとか。
愚痴を聞いているとスッキリしたのか怒りはおさまったのでよかったですわ。
最後にたづなさんと連絡先を交換した。何かあったらすぐに連絡するようにと一言添えて。
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それから1週間後、わたくしはウッドチップコースで1人で練習していた。なんかぼっちみたいで嫌なので、適当な見つけた先輩と一緒にトレーニング。
『フォームが乱れてるぞ。もっとちゃんとしろ』
耳につけたイヤリング状の無線イヤホンからトトロの、いえトレーナーの声がします。
了承を取れた次の日の放課後、わたくしはあのトレーナーの仕事場を訪ねた。その時に渡されたものの一つだ。
改めて自己紹介をし契約書にサインを入れた。その時トトロの本名を初めて知った。
阿部いづるという名前らしい。本人は阿部トレーナーと呼べと言っていたが、わたくしはトトロと呼びたかったので拒否しました。
なんでトトロなんだと言っていたので、トレーナーがトレセン学園七不思議のトトロとして噂になっていると教えると頭を抱えていた。トトロは嫌だったのか最終的にトレーナーで落ち着きました。さらばトトロ、フォーエバー。
『心拍数が低い、もっとペースを上げろ』
はいはい!よっと!わたくしはペースを少し上げる。
トトロに渡されたものはイヤホン一つではない。それに加えてバンド状の測定機器を5つ。今はわたくしの首、両手首、両足首に装着されている。
前の職場から退職金としてかっぱらった試作品らしい。この5つを付けるだけで心拍数や走る際のフォームをリアルタイムでパソコンにデータを送ることができるらしい。
トレーナーに高そうと言ったら本当に高い。5つでブレンボちゃんの半分くらいの値段がするらしい。こんなものをよくかっぱらえましたね。
ではなぜこんなものを付けているのかというと、トレーナーは今も資料室の奥で仕事をしているからです。少なくとも仕事の引き継ぎができるまではこの調子らしい。
引き継ぎの人材がいつになるかわからないので、最悪ずっとこの調子かもしれない。まぁ企業チームはずっとこのやり方だったらしいので、不足はないそうです。
あとはグラウンドに設置された監視カメラでこっちの様子を時折見ているらしい。ハイテクなのかただ面倒を省いているのか判断が難しいところです。
なのではたから見ればわたくし1人で走っているだけに見えますわ。1人で大丈夫か心配そうに見ている上級生には心配ないと伝えておく。
それにたづなさんが時折様子を見に来ますからね。トレーナーが目を離してトレーニングをさせていると知った時はちょっと怒ってましたが・・・いえかなり怒っていました。
でもトレーナーに渡されたわたくしのトレーニングメニュー表示を見て、たづなさんは首を傾げていました。
わたくしのトレーニングメニューがとんでもないスパルタメニューかと思っていたら、案外そうでもないからだそうです。むしろかなり軽い。おハナちゃんトレーナーの方が厳しいくらい。
まあまだ1週間ですし、ならしみたいなものだからかもしれませんわね!どうトレーニングするかを今測っているのかもしれませんわ!
仕切りに首を傾げるたづなさんを尻目に、わたくしはクールダウンを行なう。なんていうかケアにかなりの時間を割いていますね。やっぱり噂なんてあてにならないものですわ。たづなさん。やっぱりわたくしの言った通りでしたわね!
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私はミカドさんと別れてから、その足でターフグラウンドへと向かう。
そこには稼働し始めたチームリギルが練習していた。こちらの都合により頭数が減ってしまったので、今シーズン限定で2人だけの特例チーム。マルゼンスキーさんとシンボリルドルフさんが併走トレーニングを行なっていた。
私はコースの脇でクリップボード片手に檄を飛ばしていた東条トレーナーの元へと向かう。
東条トレーナーはこちらに気づいた。2人に向かってそのままトレーニングを行うよう指示を出し、こちらに向かってくる。
「すいません無理を言ってしまって。それで・・・どんな調子でしたか?」
東条トレーナーはあの男と契約してしまったミカドランサーさんをずっと気にかけていた。あの男に騙されていないか気が気でなかったらしい。私が知り合いということで、様子を伺うようにお願いしてきた。
ええトレーナーは直接トレーニングを見ていませんが、ミカドランサーさんは普通の練習をしていましたよ。
先程記憶したトレーニングメニューを口頭で伝える。本来他チームへどんな練習をしているかを伝えるのは御法度だ。そういうスパイ行為は黙認はされども容認されはしない。
ですがわざわざ隠し立てする様な内容ではなかった。メニューを伝えると、やはり東条トレーナーも怪訝な顔つきになった。
「トレーニングの負荷としてはかなり軽いわね」
ええ、東条トレーナーから受け取ったデータは渡したので、どの程度負荷を掛ければいいかはわかるはずですが・・・。
以前調べた事と普段の態度からもっと壊れるようなハードなスパルタトレーニングを行わせるのかと思っていた。
普段の人物像と結びつかない軽すぎると言ってもいいトレーニングだった。怪我はしないかもしれないが、あのトレーニングではトゥインクルシリーズでは勝てない。東条トレーナーも同じ考えだったのか考え込んでいる。
「これ以上はただの勘ぐりになるわね。すいませんたづなさん。わざわざ調べてもらって」
いえ、私も無視することは出来ませんから。それと私は・・・もう一度あの男を洗い直してみます。
ミカドランサーさんは頭は良くないかもしれないが、かなり勘が鋭い。私が気がついていないことにも気がついているかもしれない。
ミカドランサーさんがあそこまで擁護に回ったのだ、無視することは出来ない。
もしかしたら私の知らない何かがあるのかもしれません。
トトロ「貴様の生体データを取りつつ、トレーニングをしてやろう!」
ミカドちゃんの生体データは内々に処理され、不特定多数によって個人が特定されることはありません。
またトトロの趣味、仕事、目的外の利用はいたしません。何卒ご協力お願いいたします。