永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
ブルーと一緒にふわふわのルドルフを見にリギルの練習に殴り込んだわたくしです。どうもご機嫌よう。
おハナちゃんトレーナーによる勧めでルドルフはトレーニングを切り上げることとなった。なんかうまく使われた気がしますがそれはそれ。
少し凹んでいるルドルフを引っ張るように3人で街へと繰り出す。服屋にシューズショップ、コスメショップにゲームセンター。学園の鉄板街巡りルートを周る。途中でクラスメイトと出会ったりもしました。
でも遊んでいてもルドルフは普段の調子ではありません。どこか上の空というかなんというか。合間合間で普段の調子ではなくなる。
でも聞き出す気にはならないんですわよねぇ。
「・・・・お前達は何も聞かないんだな」
ルドルフのことだから聞いたとしても誤魔化すとかはぐらかすに決まってますもの。無理矢理聞き出すのはわたくしあまり好きじゃないですし。
それにルドルフが何か悩んでるかもしれないってのはなんとなくわかりますけど、わたくしが考えつく解決方法なんてルドルフも考えついていると思いますし。
あっ悩んでたら言い出すまでは黙っていようってブルーが最初に言い出したんですけどね!
「それルドルフちゃんの前で言う?普通」
ブルーが荷物片手に呆れ顔で指摘してくる。別にいいじゃありませんの。そう言うスタンス美味しくていいと思いますわ。大人の女みたいですもの。
「美味しいから聞かないわけじゃないんだけどなぁ♡」
ですのでわたくしも今日は大人スタンスですの。あっ言いたくなったらなんでも聞きますわよ?わたくしはいつでも相談募集中ですわ。
ルドルフは悩んでいる様子。うーんでもなんというか・・・相談しようか悩んでいるというよりも、何を相談したらいいのか悩んでいる感じ?頭のいいルドルフが珍しいこともあるものですわ。
「・・・・」
でも悩んだ時に変に意固地になるのはわたくしも同じですもの。でもルドルフはわたくしのライバルなのだから、あんまりかっこ悪い所は見せないでほしいですわ。
「・・・ライバル、か」
そう呟いてルドルフは立ち尽くす。ええ、貴方はわたくしのライバル。何度も言っています通りですわ。
ルドルフは少し悩んだ後自分の財布から何かを取り出して私の前に差し出してくる。
おや随分と懐かしい物を持っていますのね。全く音沙汰がないので捨ててしまっているのかと思っていましたわ。
「ミカド。相談じゃないんだが一つ頼まれてくれないか?」
本当に珍しいブルーではなくわたくしをご指名とは。こういう時はルドルフはまずブルーに相談を入れるのがいつもの流れなのですが。それにそんなものまで使うだなんて。
「無茶を言っているのは分かる。私と走って欲しい」
差し出していたのは・・・『ミカドランサーちゃんがなんでもいうこと聞いてあげる券』だった。いや本当に懐かしい。ゲート練習の時の無許可レースの景品ですわね。
わたくしに勝った景品としてルドルフに渡した物。自作のゴム印まで準備して作った自信作。デフォルメされたわたくしが印刷されていますわ。
ブルーまでああこんなのあったなぁと懐かしんでいる。さてはブルー貴方の方は忘れてたでしょう。
でもルドルフ。一緒に走るくらいならこんなもの使わなくても全然引き受けますわよ?シワ一つついてないところを見ると、大事にとっておいたのはわかりますわ。勿体無いんじゃないんですの?
それにわたくしは貴方と走る時はいつだって本気ですわ。走った回数だって両手じゃ収まらないくらい走っているでしょう?
「・・・・いや違うんだ。お前と本気の勝負をしてみたいんだ」
あのシューズを履いたお前と。そう言ってルドルフは黙り込む。どうしようかとわたくしは悩む。
ルドルフから飛び出た意外な言葉を聞いて、わたくしは今までのルドルフとの勝負を振り返る。
なるほど確かに。ブレンボちゃんを実戦投入したのはあの模擬レースが初めてでしたわね。ブレンボちゃんを練習で履いているのは基本的におハナちゃんトレーナーとマンツーマンの時だけ。
おハナちゃんトレーナーは過保護なので、使いこなせるようになるまではチームメイト同士での競走すらさせてはくれませんでしたもの。
つまり、わたくしはブレンボちゃんを履いてルドルフと全力で闘ったことはない。
目の前のルドルフの顔を見る。決意の籠る整った顔、2つの綺麗な瞳。その瞳の奥には静かな、そして確かに何かが激っているように感じる。
ただわたくしと走りたいってだけでは・・・多分ないと思います。ですがわたくしと走る事がルドルフにとっては大切な事なのでしょう。こんなものまで持ち出したのですから。
でしたら返す答えは一つしかない。
いいでしょう受けて立ちます。負けても泣かないでくださいね。
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私は今日の出来事を振り返る。ミカドには詳細は話さずともレースの約束を取り付けた。ミカドは少し困惑していたようだが無理もない。私らしくないお願いだった。
東条トレーナーにはどうしたらそうなるんだと言って呆れられてしまったが、それで解決するのならと承諾してくれた。
レースと言っても人を集めるわけではない。私とミカドとの本気の勝負。あのシューズを履いた、今までのものとは違う本気の勝負ができる。
理由を聞かれなかったのは本当にありがたかった。こんなことミカド本人には恥ずかしくて言えない。ブルーが事前に釘を刺してくれたのもあるだろう。2人は本当に良い友人だ。
あの日のことを振り返る。私にとって忘れられない日。
あの模擬レース。ミカドは学園のトレーナー陣から少し距離を置かれるようになった。指導する立場になるかもしれないのなら当然だとも言える。
だが私たちは違う。学園のウマ娘であればあの場にいる事がどれほどの幸運なのか分かるはずだ。それがトレーナーと生徒の違いなのかもしれない。
あんな風に競い合えるのは本当に稀有な事なんだ。まるで魂と魂の削り合い。己の限界すら踏み越えて競い合える事は。
学園のスターウマ娘に果敢に立ち向かう姿。ミカドの普段よりも凛々しく猛々しく、命すらも燃やし尽くすと言わんばかりの勝負。
対するは学園のスターウマ娘ミスターシービー。圧倒的に格上でありながら2人はまるで宿命のライバルと言わんばかりの気迫だった。マルゼンスキー先輩すら端役に落とすあの走り。
結果的に順位こそ振るわなかったが、あの模擬レースを見たウマ娘は目を焼かれたに違いない。模擬レースではなく本番の・・・もっと大きな舞台で大勢の観客の前でないのが勿体無いくらいだった。
私の順位は振るわなかった。お前のレースが走っている間もずっと頭の中でぐるぐるしているんだ。そのせいで最後の詰めを見誤って二位になってしまった。
模擬レースが終わってもそれは消えなかった。どんどんその気持ちは強くなってどうしても消せない。ついには東条トレーナーに心配までかけてしまった。
眩しかった。
あそこにいたかった。
ああそうだとも。お前と走るシービー先輩のことが羨ましくて仕方がなかったんだ。
どうしてなんだミカド。お前はいつも私の事をライバルと言ってくれていたじゃないか。私には絶対負けないといつも言ってくれていたじゃないか。
お前に追いかけられるのは本当に楽しいんだ。いつだって全力で懸命で諦めない、そんなお前に追いかけられるのは、ライバルであることは私の誇りなんだ。
なのにどうしてシービー先輩なんだ。どうしてあそこにいるのが私じゃないんだ。
どうして・・・私と走るときよりも全力で、懸命な顔をしているんだ。なぜ私と走る時よりもずっと速いんだ?
なあ教えてくれミカド。私はお前のライバルとして相応しいのか?お前は本当に私の事をライバルと思ってくれているのか?
笑ってもいい。こんなチケットに頼ってまでお前とレースをしようとする私を。
だから・・・遠くへ行かないでくれ。お前のライバルは私なんだ。
皇帝陛下の独占欲が火を吹きます。まぁそろそろ引き裂く準備しないとね。
ルドルフにとって、ミカドちゃんのライバルという立ち位置はかなり内面のウエイトを占めています。恥ずかしくて言えないんですが。
内心メラメラというわけではないですが、自分より強くなったら興味を持たれなくなるんじゃないかと考えてます。そんなことないのにね。
ブルーはルドルフの内面になんとなくは気づいていました。ルドルフちゃんなんかシービー先輩のこと睨んでない?おーこわ。みたいな感じ。