永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
しっとりが割りかし好評で嬉しいです。
ルドルフとの勝負は日程こそ決まっていないが、確約ということで話は落ち着きましたわ。ルドルフは今からでも良いと言っていましたが、わたくしが待ったをかけました。
本気での勝負と言うのであればそれに相応しい舞台とコンディションというものがありますからね。日程は後で詰めるとして、トレーナーと今後のトレーニングメニューについて相談しなくてはならない。
取り敢えずわたくしは資料室の奥、トトロの住処ことトレーナーの仕事場へとやってきたのです。というわけでトレーナー!トレーニングメニューの調整をお願いします!
「君は本当にバ鹿だな」
はぁ!?わたくしの何処がバ鹿なんですか!きちんと報告したし、日程だって調整が効くようにしてきたんですわよ!ものすごい賢いじゃないですか!
「それは当たり前だ。報告する前に勝負を受けるかどうか相談するという考えには及ばなかったのか?」
相談はする意味がありませんからね。絶対に受ける事はもう決まっていますので。するしないの話をするのはもう通り過ぎてますのよ。
深々とため息をついたトレーナーはもう諦めムードが漂っていた。わたくしと組むのならこれから先もこういう事はたくさんあると思うので、早く慣れてくださいね。
で、実際のところわたくしはルドルフに勝てますかね?最近は勝ち星があまりないのですが・・・。
レースに出走する頭数が増えるほどルドルフの走りは手がつけられなくなるのです。いやもう本当に。おハナちゃんトレーナー仕込みのあの走りは本当に手がつけられない。
ルドルフはチェスの盤面のようにレースをコントロールしているのですわ。自分以外を掛からせて加速させたり、威圧して減速させたりとまさに変幻自在。わたくしとかいつも前を塞がれて加速を潰されますし。
そのせいでルドルフ込みのジュニア級同士のレースでは、ルドルフをいかにいなすかが問題になっている。一回同期達が複数人で囲んで封じ込めた事があったそうですが、最後に互いに出し抜こうと注意が切れた瞬間抜け出され、あっという間に突き放された。
「はっきりと言うが普通なら無理だ。そうだな・・・10人立て以上なら間違いなく負ける」
10人・・・つまりわたくしとルドルフを除く8人で囲んでわたくしがボコられるわけですか。でもシービー先輩との叩き合いではわたくし結構良い走りができたと思いますわ。
あれをもう一度すれば、たとえルドルフに塞がれようがお構いなしで突き放せるのでは?自分でいうのはなんですがあの走りならクラシック級でも問題ないと思うのですけど。
「できるのならな。あんな走りはあまり当てにするな」
むっ!そこまでいうのなら根拠を言ってもらえますか!あれがわたくしの実力でないかのような言い方は納得できませんわ!
「安定して出せるのが実力というのなら、あれは実力じゃない。あんな出来すぎた結果を勘定に入れるのはバ鹿のすることだ。自身の限界点を超えていた自覚はあるだろう。今走ってあの走りができると思うか?」
ぐぬぬぬ。確かにあの後走っても、あの時の感覚のようには行かないんですわ。でもあの時の走りを身につければ勝てるのですね!賢いわたくしは理解しましたわ!
そういうとトレーナーは小馬鹿にしたような表情になる。失礼な。
「言葉で言うのは簡単だがそうも行かない。ああいうのは起こそうと思ってもなかなか起こせるものじゃない。だがそれでもあの時の走りをものにしなければ惨敗するだろう」
その前にまずはこれを見てみろと言ってトレーナーはパソコンを操作する。モニターにはレース場を真上から見たようなコースの画像が表示される。
「私はシンボリルドルフの事はあまり知らないが、あの模擬レースのビデオは見た。はっきり言って君との相性は最悪だ」
こちらを振り返る事もせずにキーボードをタイプしながら画面に情報を追加していく。いやタイプはえーですわね。わたくしとか人差し指でしか押せないのですが。
「シンボリルドルフは基本的に相手に気持ちよく走らせない、そしてあの身体能力。戦い方も勝ち方も選べる器用なタイプだ。同時期でデビューするウマ娘にとっては悪夢そのものと言っても良い」
「ミスターシービーはその逆。相手を妨害するよりも自分が気持ちよく走る事を考える。つまり君と同じ不器用なタイプだ。こういう真逆のタイプの2人が同じくらいの実力となって走ると・・・こうなる」
パソコンの画面ではミスターシービー先輩とルドルフを表した矢印。そして6つの無色の矢印。画面の中のコースのように見えるフィールドを並んでいる。これは?
「簡易型のAIレースシミュレーションだ。奥行きも何もない2D仕様だが割と正確だし変化が分かり易い。私が趣味で作った」
な、なるほどスゲーですわね貴方。で、どう見るんですの?数字がいっぱいあって何処を見れば良いのかわかりませんわ。
「待っていろ。マスクデータを消して動かしてやる・・・どうだこれでわかるか?」
先ほどよりもすっきりとした画面。先頭の少し後ろを走るルドルフの矢印がコースを前進しながら、前後右左へと細かく動いている。その度に無色の矢印が僅かに動き、その後方にいるミスターシービー先輩の矢印が前進しようとするのを潰している。
「シンボリルドルフの走りをAIに学習させた結果がこれだ。正確なデータじゃないから誤差は大きいがこれでわかるだろう?ミスターシービーだけじゃない。シンボリルドルフを相手にするのなら、後ろにいるウマ娘は圧倒的に不利なんだ」
勝ちの目があるとしたら逃げくらいだ。と言ってトレーナーは押し黙る。
わたくしも思わず黙り込む。あまり想像したくはないが・・・もしかしてルドルフってシービー先輩すら倒せるんですか!?
「今は無理だ。シンボリルドルフはまだ未完成だからな。だが東条トレーナーなら対決する時までにはきっちり勝てるように仕上げてくるだろう。将来大舞台でミスターシービーとシンボリルドルフが競い合うなら、シンボリルドルフが勝つ方に私は賭けてもいい」
順調に強くなれば敵なしの強さを手に入れる筈なんだ。そう言ってトレーナーはため息をつく。嘘でしょう・・・わたくしルドルフの後ろを走るんですが!そんな!なんかいい作戦はないんですか?!
「相手が当日腹を下している事を祈れ。それにシンボリルドルフは、相手の走り方を知っている分だけ有利になる。ここまで聞いてどう思う?」
うわぁわたくしめっちゃ知られてますわ。トレーナーこれわたくしの勝ち目はありますの?このままじゃ普通にボコられて終わりそうなんですが。
「言っただろう普通にやればない。少人数或いは一対一ならまだ勝ちの目は十分にある」
うーんつまりレースの巧さを競い合えば負けるという事ですのね。しっかりとしたレースでそこまで少人数でありますかね?できれば・・・そう!人が大勢見ているようなのが良いのですが。
「贅沢だな君は。だが公式のレースは向こうも流石に待てないだろう。4月の半ばにあるファン感謝祭は・・・それも無理だな。もうメンバーは決まっているし、少人数ではない」
うーん。でしたらもう普通に模擬レース開くしかないのですかね。残念ですわわたくしは観客がいる方が楽しいタイプなので。
「それはおいおい考えるとしよう。だがこれで正攻法では無理だと分かっただろう?まぁどちらにせよまず君を強化しなくては話にならない」
それはそうですが。もう絶望的な話しかしないのでてっきり強化しても無駄とか言い出すのかと思いましたわ。
「強化と言ってものんびりしている時間がない。あの時の走りを限定的にでも引き出せるようになる以外にないだろう。かなり強引になるが圧倒的格上の仮想敵と本気のレースでもするしかない。そこで掴めないなら何もできずに負けるだけだ」
「つまりだ限界値を上げるのではなく、闘争心で一時的に限界点を超える方法を身につけろ。一度だけでな」
君は本番に強い方らしいから行けるだろう?とトレーナーははちゃめちゃなプランを提示してくる。
無茶苦茶ですわ!それって殆ど一発勝負じゃないですか!一度と言わず何度かチャレンジできないんですか?!
「闘争心で限界を一時的に超えるのはウマ娘なら珍しい事じゃない。だが何度もすれば身体がぶっ壊れる。それでもいいのなら構わないが」
ぐぬぬそれに格上の仮想敵・・・ミスターシービー先輩並みなんて流石に早々いませんわよ。マルゼンスキー先輩はいま休養中ですし。
うーん正直ジュニアじゃ相手にならないですわね。クラシック級でも上澄でもないと厳しい。でもシニアは受けてくれないでしょうね。
でも前の模擬レースはマルゼンスキー先輩という釣り餌がありましたけど、デビュー前のウマ娘の調整という名目では受けてはくれないでしょうね。
当てウマ役なんて面白くもないでしょうし。知り合いの中で相当強いバンダナ先輩もアンパン先輩も自分のレースの調整中ですし。
・・・いや!いますわ1人。絶対のってくるタイプの人が!あの人なら一度だけなら間違いなく釣れる!そして間違いなく強いと思います。
わたくしはトレーナーに向き合い、わたくしの妙案について話す。
いい仮想敵候補がいますわ。トレーナーは七不思議のニンジャを知っていますか?
ショック療法の当て馬役に選ばれたたづなさん。これよりデスタムーアを倒す前にダークドレアムに挑むくらい無謀溢れるチャレンジが始まります。
あとミルドラースとデスタムーア区別つかなくない?僕はつかない。