永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話   作:ぐっちSKG

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それは幻術だ。それも幻術だ。幻術ばっかりだ。

でも新衣装ルドルフは幻術ではないです。イエェェェェイ!


超ニンジャ大戦杯 トレセン学園 2000m(中距離) 右

深夜のトレセン学園。たづなさんを先頭にそのすぐ後ろをわたくし、そしてその後ろをゾロゾロと夜間警備隊が続く。

 

そうして辿り着いたターフグラウンド。本来この時間は消灯されているはずだが、ライトは点いたままになっている。

 

 

 

「走る前に一つお願いがあるんです」

 

たづなさんがこちらの目を真っ直ぐ見つめながら睨みつけてくる。

 

『なんだたづな=サン』

 

「私が勝ったらその覆面を外してもらいます」

 

おっとそれは困りますわ今は顔バレNGですので。トレーナーからも顔がバレそうになったらなんとか誤魔化せと言われてますし。なんとか取り繕わなくては。

 

『覆面の下には別に面白いものはないぞ?』

 

「悔しそうにしている貴方の顔が見たいからですよ」

 

『・・・・悪趣味だな。嫌だと言ったらどうなる』

 

「どちらにせよ外すことになりますよ?この状況で逃げられると思いますか?取り押さえて無理やり剥ぎ取るだけです」

 

うわぁこれ無理ですわね。勝つ以外にわたくしが生き残るすべは無さそうです。バレたらもしかして退学かなぁやだなぁ。

 

『厳しいが逃げるのは不可能ではないだろう。何事もやりようはある』

 

「無理ですよ。この状況からはシンザン会長だって逃げられっこありません」

 

まぁ勝てばいいのですわね!

 

『大層な自信だ。だが勝つのはワタシだ』

 

「いいえ、貴方は負けるんです」

 

だって勝つのは私ですから。そう言ってたづなさんは笑みを浮かべた。それは笑顔というには余りにも攻撃的なものだった。

 

---------

 

ターフグラウンドに2人並んで立つ。ゲートはない。夜間警備隊の1人が合図を送り。それに合わせて走り出す。

 

真横に立つたづなさんを見る。レース前なのに身体に硬さは一切見られない、明らかに緊張慣れしている。やはり只者ではないですわね。気配でわかります。

 

マルゼンスキー先輩やミスターシービー先輩、シンザン会長のような・・・ただ単に足が速いだけではたどり着けない、大一番の勝負に勝つ者だけがもつ怖さを纏っている。最近ルドルフもこの気配出してくるんですわよねぇ。

 

夜間警備隊の1人が手を振り上げ、スタートの合図を送ろうとする。私もたづなさんも僅かに身体を下げていつでも走り出せる状態になる。

 

でもルドルフに追いつく為に・・・今日貴方を踏み台にさせて貰います。たづなさんには申し訳ないですが———

 

手が振り下ろされ、2人一斉に飛び出す。

 

———わたくしが勝ちをいただきですわ!!

 

 

 

 

スタート直後わたくしはたづなさんの後ろにつく。たづなさんを風除けにして機を窺うつもりです。

 

たづなさんはマルゼンスキー先輩のような滑らかなスタート。そしてゆっくりと加速していく。

 

向こうも様子見のつもりなのでしょう。先程の戦意からすると静かな立ち上がり。淀みのない滑らかな加速。わたくしのドッカン加速とは全く違う。

 

すぐ後ろを走っていての感想はすっげぇとしか言いようがない。まるで教科書に出てきそうな美しさすら感じるフォーム。あれだけ速いのもこれを見れば納得できる。

 

見るものを納得させる強さという点では文句なしですわ。ずっと見ていたいくらい綺麗ですわねぇ。ビデオカメラ持ってこればよかった。

 

しかし闘争心を駆り立てるかと言えばそうでもない。こう・・・何というか劇的ではないのです。シービー先輩の代わりという点ではダメですわね。削り合う感じではない。

 

まいりましたわね。芸術品相手では燃えないんですわよね。こうもっと派手にギラギラしてくれないと。

 

おっと少し離されてしまいましたわ。縮めないと・・・ん?ちょっと待ってなんかペース早くないですかこれ?

 

たづなさん?おーいたづなさん?速くないですか?ねぇちょっとどこまで加速しますの?掛かってる感じでもないですわよね?どうかしたんでしょうか?

 

全体的にハイペースと言っていいレース展開。いやちょっと待て。何かがおかしいような。

 

わたくしはペースを上げて再びすぐ後ろに付く。が、そのペースで走っているとまた直ぐに離されそうになる。

 

たづなさんは加速していく。ゆっくりと延々と終わりなく。

 

4本目のハロン棒が後ろへと通り過ぎていく。もうすぐ半分経過ですが、まだわたくしの闘争心に火がつかない。こうなんでしょうか?やる気スイッチボタンの周りを撫で回しているかのような・・・変な感じ。

 

緊張感が切れたわけではない。よーいスタートと言われないので始められないようなもどかしさ。

 

たづなさんは本当にゆっくりと加速していく。ハイペースといってもいい状態。それすらも踏み越えてさらにその先へ。

 

5本目のハロン棒を通り過ぎる。半分経過。

 

わたくしの火はまだ付かない。ええいどうなってますの?!いつもは勝負時と分かった時にはこう!ガツンとくるのに!直感でわかるのに!強い相手なら直ぐに分かるのに!

 

たづなさんは本当に強いはずなのに全然わからない。速さも文句なしの筈なのに、直ぐ後ろについている筈なのに!

 

余りにも滑らかな加速を見せるたづなさんを見ていると、なんか酔いそうになってきた。自分のスタミナ残量も速さも分からなくなってきた。

 

勝負所がわからない。分かるのは何かを致命的に間違えている事だけ。手遅れになる寸前なのに・・・。でもわからない。

 

・・・・もしかしてわたくしが躊躇っている?なんで?

 

頭の中がぐるぐるしてきた。ペース大丈夫でしょうか?スタミナは持つのでしょうか?ぐるぐるぐるぐる。

 

ええいわたくしらしくない!こうなったら荒療治ですわ!

 

一度ペースを大きく落としてたづなさんの後ろから離れる。酔ったような感覚がなくなりスッキリとする。一体なんなんですか!たづなさんは幻術でも使っているのですか!

 

少し離された状態でわたくしは腹が立ってたづなさんを睨み付ける様に見る。熱くなっていた頭がクールダウンして冷静になったのかより広く観察できるようになる。

 

たづなさんのフォームは相も変わらずは綺麗で滑らからで・・・。

 

そしてある事実に気がついた。離れる事で初めて気がついた事実に。それに気がついた瞬間わたくしの喉からヒュッと息を飲む声が聞こえた。してやられた!

 

滑らかな継ぎ目のないゆっくりとした加速。それは幻覚だった。こうして一対一で離れて見ているからなんとか分かる。

 

美しさすら感じるフォームに隠蔽された罠。おハナちゃんトレーナーに散々教えられたのに!何度もビデオを見せられたのに!

 

フォームは一定なのに速度が一定ではない。後ろについた者を絡めとる為の毒のイバラ。速度を惑わし距離感を狂わせ、勝負所を見誤らせる。繊細さを大胆さを要求される超上級テクニックと言ってもいい。

 

たづなさんの幻惑によりわたくしは撹乱されていた!たづなさんはあの速度、あの至近距離でビデオよりも上手くやってのけたのですか!?どんな胆力してますの!

 

7本目のハロン棒を通り過ぎる。わたくしが幻惑に気づいたことを察知したのか、たづなさんは猛烈に加速をして突き放しにかかる。わたくしも追いかけるように加速をする。

 

速度の乗り切ったたづなさんと、一度減速し速度を落としたわたくしの違い。でも加速力はわたくしに分がある。

 

ならわたくしならすぐに追いつく。半ハロンもかからずにわたくしはトップスピードに持っていける!

 

炸裂音を出すほどの踏み込み。あっという間にトップスピードに乗せて、離されなくなる。

 

そしてわたくしは2度目の息を飲むことになる。こっちはもう限界速度域なのに再びジリジリと離される。ようやっとわたくしは理解した。

 

最高速度域が違いすぎる。たづなさんはこちらのトップスピードよりもさらに先へと踏み込んでいく。

 

ゴールに到達する前に勝負は決した。わたくしの負けだ。

 

わたくしが・・・負ける?こんなにもあっけなく?

 

・・・嫌だ!

 

嫌だ嫌だ!そんなのは嫌だ!まだわたくしは何も掴んでいない!ルドルフが待っているんですの!ルドルフの願いに答えないと!

 

あのルドルフがわたくしを頼ったんですのよ!答えなくて何が親友ですか!何がライバルですか!気合を入れなさい!

 

先ほどまで燻っていた闘志はこれ以上ないほど燃えている。こいつを使います!精神で限界を乗り越える!

 

極限状態の最中、身体の中でがちりと音がした。今までよりも大きな炸裂音が鳴り響き、わたくしの視界は白く閉ざされた。

 

それは真っ白な閃光だった。いや稲光と言ってもいい。雷鳴の如く響くソレはわたくしの前を走る誰か。

 

走ることに夢中なわたくしは確認する余裕すらない。だがそれはたづなさんではないことは分かった。

 

誰でしょう。誰かが一緒に走っている。3人目の誰か。

 

・・・ああ貴方でしたのね。ふふ、幻術なんてまるで本物のニンジャみたい。

 

絶対に負けたくない仮想敵としてこれ以上相応しい相手はいないでしょう。そうでしょうルドルフ。

 

すいませんたづなさん。当てウマになってもらったみたいで。これから彼女と競り合いますので、そこを開けてもらっていいですか?

 

ジリジリと差は詰まっていく。たづなさんは驚いた顔で振り返るがもうどうでもいい。

 

賽は投げられました。後は身体に委ねるだけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------

 

最後の2ハロンまでは私の思う通りに事は進んだ。

 

スタートして後ろのすぐそこにわざと着かせた。意趣返しのつもりだった。前回の追いかけっこで後ろに着いて、私が振り回された気分を返してやろうと思っていました。

 

中盤まで面白いくらい振り回すことができた。思った通り走る能力に比べて明らかに実戦経験が少ない。簡単に幻惑できた。

 

途中ウマニンジャさんが息を入れる為か減速するまで、全く気がついた様子がなかった。距離が離れることでやっと気がついたので、速度を引き上げて一気に振り切ってやろうとペースを上げた。

 

ウマニンジャさんも凄まじい加速で追いすがってきたがもう遅い。私はもうトップスピード。現役時代を含めて追いつけた人は1人もいない。速さなら誰にも負けない自信がある。

 

勝った。完勝と言ってもいい。残り2ハロン何も起きずに、この速度を維持すれば大差勝ち。

 

そう2ハロン。たった400m。

 

前を向いていたので何が起こったのかわからなかった。後ろで・・・唐突に何かが起こった。その時炸裂音や雷鳴の様な騒音を聞いた様な気がする。突然威圧感が溢れ出した。

 

後ろからの威圧感のせいで、まるで車に追いかけ回されている様な心地。振り返るとこちらはトップスピードなのに僅かに差が詰まっていた。

 

ウマニンジャさんの覆面をから覗く瞳を見て、私は冷や汗すらかいた。

 

あんなに2ハロンを長く感じた事はない。ゴールはまだかと思いながら走ったのは初めて。

 

だが勝ったのは私だった。結果を見れば6バ身差、快勝と言ってもいい結果。ゴール地点で待っていた夜間警備隊に讃えるように出迎えられる。

 

夜間警備隊がウマニンジャさんをそのまま取り押さえようとしたので私は止める。そして目の前で疲れ果てているウマニンジャさんに話しかける。

 

私の勝ちですね。

 

『ああ・・・・オヌシの勝ちだったな』

 

ウマニンジャさんはまるで負けたことに今気づいた様な妙な言い回しをする。走るのに夢中で気がついていなかったのでしょうか?

 

ええその通りです。さあ約束ですよ。その覆面を外してください。

 

最初はウマニンジャさんが腹立たしくて仕方がなかった。覆面を剥いで悔しそうな顔を見て、溜飲を下げるつもりだった。今はその気持ちは一切ない。

 

私が打ち負かしたとはいえ尊敬に値する結果を見せてくれた。ただ強敵と讃えあいたい。私の中にはその一心しかない。

 

倒れ込んで息を整えてながらウマニンジャさんは、気怠げにあぐらの体制になる。ウマニンジャさんは何かに思いを馳せるかのように上を向いだ状態で私に語りかけてくる。

 

『たづな=サン。ワタシが覆面を脱ぐ前に一つ言っておかねばならぬ事がある。このレースはあまりにもフェアではない。オヌシはそう思わぬか?』

 

フェアではない?正々堂々と戦って私は勝って、貴方は負けました。それに何か不服でもあるのですか?

 

『いやそういう意味ではない。ワタシはこのレースで望んでいた多くのものを手に入れた。だが・・・それに比べてオヌシはどうだ?』

 

・・・・・。

 

『オヌシが手に入れたのはちっぽけな勝利と、優越感のみであろう。ワタシばかりが得をするのは不公平というものだ。違わぬか?』

 

それは違うと言いたかった。私は得難い物を得たと思う。まだ整理はつかないがこの勝負は素晴らしいものだった。でもなんとなく口には出しづらい。ぶっきらぼうな言い回しになってしまう。

 

貴方はさっきから一体何が言いたいんですか?全く話が見えないのですが。

 

『いやなに、人の良いオヌシには何か礼をせねばならぬとワタシは考えている。うむそうだなオヌシには一つ、大事なことを教えておこう。それはだな・・・』

 

長々と真上を見上げながら独白しているウマニンジャさん。そして今気がついた。待ってこの人は・・・目を瞑っている!一体なにを?!

 

 

 

『ニンジャとはきたないものなのだ』

 

 

 

目の前のウマニンジャがそう喋った瞬間、ターフグラウンドを照らしていたライト、いやグラウンドの外の電灯も含めて全てが一斉に消灯し、あたりは暗闇に包まれた。

 

ウマニンジャさんは暗闇の中、私に向かって何かを投げる。暗くて見えないが何か軽いものだ。私の身体にパサリと当たり地面に落ちる。

 

唐突に訪れた暗闇に私も警備隊の皆さんも反応する事ができない。目が慣れるまでは全くなにも見る事ができない!真っ暗闇の中私たちは混乱の坩堝にあった。

 

「一体なんなんだ!」「くそっ!なにも見えない!」「暗い!」「全員落ち着け!ライトは持っているはずだろう!早く点けろ!」「ニンジャが逃げたぞ!」「捕まえた!」「バ鹿!それは私だ!」

 

何かを投げた後脱兎の如く逃走したを開始したであろうウマニンジャさんが、遠くへと駆けていく音を聴くことしかできない。なんとか追いかけようとするが、なにも見えない状態では追いかける事ができない!

 

目を瞑っていたのはこの為?!目を暗闇に慣らしていたのか!やられた!

 

 

待て!!逃げるなァァ!!卑怯者ぉォォォオ!!!

 

 

警備隊が懐中電灯を取り出してあたりを照らすまでの間、私は返事の帰ってこない暗闇に向かって吠えることしかできない。

 

残っていたのは、私の足元の脱ぎ捨てられた覆面だけだった。




ミカドとトトロ「「してやったりだぜぇぇぇえ!!」」

たづなさん「やっぱりあの人嫌い!」

ニンジャバトルこれにておしまい。ミカドちゃんはルドルフの幻影を見て競り合いしてました。イマジナリーライバルとしてルドルフを召喚したわけです。ミカドちゃんはやべー薬でもしてるのかな?

まぁほら固有能力的な奴です。岩砕いたり宇宙飛び回ったり、ストゼロ飲んだりする子もいますからね。このくらいへーきへーき。
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