永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
いやぁたづなさんは強敵でしたね!トレーナーナイスアシストでしたわ。危うく捕まって地下懲罰房送りにされるところでしたわ!
噂によるとトレセン学園の地下には秘密の空間があるらしいのです。排水路とか緊急避難口とか防空壕の名残があるとの話ですが、わたくしは地下牢があって問題児を押し込こまれていると思います。眉唾な話ですけどね!
たづなさんとの一騎打ち勝負の翌日の放課後、わたくしはトレーナーの仕事場へと足を運んでいました。昨晩の勝負の後はそのまま部屋に帰ってそのまま寝ろという計画でしたからね。
なので勝負以降会うのは初めてなのです。本当にナイスなアシストでしたわ。今度ウマチョコを進呈しましょう。
たづなさんとの勝負で付けていた覆面の下には、実はマイクがついてましたの。コード式の引き延ばせる小型のやつです。マイクはトレーナーと直通で、わたくしの会話は全てトレーナーも聞いていた。
『ニンジャ』『きたない』この二つの合言葉を聞いたらトレーナーが一時的に照明を落とすという計画でした。最終手段の一つでしたが上手くいってよかった。
「できれば使いたくはなかったんだがな。おかげで昨日からメンテナンス業者が大勢出入りしている」
そんなこと知りませんわ!大人の都合は子供のわたくしにはわかりま痛い痛い。
「私も配電盤のチェックで出ずっぱりなんだ。勝手にいじったとバレたら君は退学だぞ。私もクビだ」
トレーナーはさらりと恐ろしい事を言う。えー!そんなに危ない橋渡ったんですの!?そんなこと一言も言わなかったじゃないですか!
「バレないから問題ない、きちんと手は打っているさ。鑑識を呼ばれても構わないくらいだ」
当分ガードマンが増えることになったがな、しばらく夜間に出歩くなよと言ってトレーナーはわたくしに釘を刺してくる。
昨日の今日で出歩いたら今度こそお縄ですからね!わかりましたわ!
「本当にわかっているのか?まあいい、昨日は理事長秘書が想像以上に速くて驚いたぞ。ここまでお膳立てしたんだからきちんと収穫はあったんだろうな?」
トレーナーの言葉にサムズアップして返す。もっちろん!わたくしはパワーアップしてきましたわ!今ならルドルフともやり合える気がしますわ!
「それはよかった。では今後のトレーニングメニューを渡すぞ」
ええ!打倒ルドルフのスペシャルメニューですわね!ばっちこいですわ!なんだってやってやりますとも!
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ペラ・・・・・ペラ・・・・・。
ペラ・・・・・ペラ・・・・・。
おかしい。こんなはずではない。何かトレーニングメニューを間違えているのではないですか。
トレーナーから渡されたメニューには練習・・・と言えないものが記されていた。お勉強8割、残りも軽く走るだけ。明らかにわたくし向きではないメニューでした。
『流石に昨日の今日でハードなトレーニングをすると壊れかねない。最低1週間は休養に当てる、その間にこのリストのものを読んで勉強しておけ」
トレーナーに渡されたメニュー表にはレース戦術の本や、走法についての論文が記されていた。全てこの図書館内にあるそうなので自分で探せと言ってわたくしは部屋から追い出された。
なのでわたくしは図書室の椅子に座って本を片手に論文を読み進めているのです。ジャンプ以外の本を読むのは教科書以外では久しぶり。頭が痛くなってきたかもしれないですわ。
おや何やら目線を感じる。目線の先を辿ると・・・あらルドルフご機嫌よう。練習はお休みですか?
わたくしの目線の先には図書室の出入り口で荷物を落として立ち尽くすルドルフ。何やら様子がおかしい。一体どうしたのでしょうか?
取り落とした荷物もそのままに、ルドルフはこちらに駆け寄ってわたくしの両肩を掴む。そのままわたくしを揺さぶる。
「ど、どうしたんだミカド!お前がそんな・・・論文だなんて!一体どうしてしまったんだ!私のせいなのか!!」
がっくんがっくん!あわあわ!ゆ、ゆすらないで!首が首が!
「私が追い詰めてしまったからか!ち、違うんだ!私はそんなつもりじゃ・・・!」
う、うるさーい!さっきから好き勝手言い放題失礼ですわよ!!わたくしが勉強していて何かおかしいですか?!それにここは図書室ですわよ!静かにしなさい!
動揺のあまり大声を出すルドルフを叱り飛ばす。ですがわたくしの話を聞いているのか聞いていないのか・・・多分聞いてませんわね!ええい司書さんからも何とか言ってやってください!
騒ぎを聞きつけてやってきた司書さんに助けを求める。ニッコリとした笑みを浮かべた司書さんによって、二人仲良く司書に摘み出された。
そんなわけで学園のベンチでだべりながらわたくしは本だけでも読むことにする。横に座るルドルフはションボリルドルフになってしまっている。
「すまない・・・」
ええその通りです。図書室今日はもう使えないじゃないですか。なんとか本は持ち出せましたが論文は持ち出し禁止なのに!今日のノルマが明日のノルマに上乗せされてしまったじゃないですか!
あまりしょんぼりルドルフを責めても仕方がないので、わたくしは話題を変えることにする。全くとんだ困ったちゃんですわね!
で、ルドルフは図書室に何しにきたのですか?わたくしは色々あって今はハードな練習は出来ないのです。貴方もそうなのですか?
「私は東条トレーナーに勧められたレース理論の本を借りにきたんだが・・・今日は諦めることにする」
貴方もレースの為の本なんですわね。今のままでも十分強いのにこれ以上の知識がいるのですか?
「当然だ。知識は常に更新してこそ役に立つものだからな」
ふーん。そういうものなんですのね。
「ああ、そういうものなんだ」
・・・・・・。
なんとなく会話が途切れた。ルドルフはなんともない顔をしているくせに、忙しなく目線をキョロキョロさせている。
ルドルフが珍しくまごついているのは面白いのですね。聞きたいことがあればさっさと聞けばいいのに。
しょうがない助け舟を出してあげましょうか。何を考えているのかはさっぱりわかりませんが、何を聞きたいのかはわかります。ええ今日のわたくしは賢いミカドちゃんなので。
おおかたわたくし達のレースについてでしょう。あの宣戦布告以来、ルドルフに避けられているわけではないのですが、妙にレースの話題をしたがらない。そのくせばっちり練習している。
ルドルフはレースの準備は出来ていますの?しっかりと練習してないとあっけなくわたくしが勝ちますわよ。
私の問いかけを聞いてルドルフは少しホッとしたような顔をしながらも返事をしてくる。やっぱり聞きあぐねていましたのね。
「私は大丈夫だ。お前こそどうなんだ?」
バッチリですわ。今までと同じだと思っていると足元を掬いますので。しっかりと備えておいてくださいね。
バチバチとわたくし達の視線がぶつかり合い、火花を飛ばす。ルドルフがわたくしをライバルとして見ているのが嬉しい。
ああルドルフそれと一つ言っておきますわ。
「なんだ?」
貴方が勝負を持ちかけたと言っても、何も後ろめたく思う必要はありませんわ。この勝負はわたくしにとっても楽しみで仕方がないのです。
わたくしは当日を楽しみにしておきますので。貴方もわたくしに叩き潰されるのを楽しみにしておきなさい。
もうちょっとでこの章はおしまいです。ラストレースまでもう少し。