永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
野菜むきむき地獄は終わった。美味しいニンジンコロッケというご褒美はありましたが、それはそれ。これはこれ。
野菜むきが終わったと言っても、今日の放課後も学園のお手伝いの予定が入っている。今日は別の作業だそうですが、なにをやらされるのやら。
そんなこんなであっという間に月曜日ですわ。今日から本格的に授業が始まるのですが、授業前の話題はもっぱらこの前のレースのこととなりました。
シンボリルドルフ、ブルーインプ。そしてこのわたくしミカドランサーは、興味津々なクラスメイト達に囲まれることとなる。まるでヒーローみたいな扱いですわね。ていうか多すぎません?これ隣のクラスからも来てるでしょ。
主な話題はなぜレースをしたのかとか、綺麗な走り方だったねーとか、罰則でなにをさせられてるとかそういう話ですわ。
もみくちゃにされながらも、忘れないうちにすべきことを済ませておかなければ。
シンボリルドルフ。これを渡しておきますわ。
わたくしの手に握られた紙切れを受け取ったシンボリルドルフはなんだこれはという顔をしている。見てわかりませんの?これは『ミカドランサーちゃんがなんでいうこと聞いてあげる券』ですわ。
削って作った消しゴム印で紙切れに押印してある。左側にわたくしをデフォルメしたキャラクターまで入った力作ですわ。
なんでも一ついうことを聞くということを賭けにしたので、昨晩の内に作っておいたのだ。わたくしは約束を守るウマ娘なので!
賭けの精算の話をしていると、唐突にブルーインプがわたくしに向かって両手を差し出してきた。一体なんですの?
「ん♡」
いや、ん♡じゃわかりませんわ。何がしたいのですか?
「ん〜3着のミカドちゃんは、わたしにもその券を渡すべきじゃないかなって♡」
は、はぁ!?何言ってますの!わたくし負けてませんし!よしんばシンボリルドルフに負けてたとしても、貴方には勝ちましたし!わたくしは2着ですわ!
「え。わたしが前だったよ?覚えてないの〜♡」
のーみそすかすかでちゅね〜♡ですって!こ、このクソガキ・・・飛び級で入ってきたのなら貴方は年下でしょう!年上をバ鹿にしてますわ!もう許しませんわ!バトラー!!
な〜に〜?と間延びした声で返事をするクラスメイト。彼女はこの前のレースでわたくしが耳打ちしてゴール判定をして貰ったウマ娘ですわ。名前はたしかメ・・・メなんとかバトラーだったので、わたくしのクラスではバトラーと呼ばれている。
ともかく!バトラー、勝ったのはわたくしですわよね!ねっ!
わたくしが肩を掴んで彼女を問いただすと、彼女は申し訳ない顔をした。えっ同着にしか見えなかった?ウッソでしょ。そんなはずありませんわ!誰か、誰か見てた人はいませんの!
周りに聞いてみても答えは得られない。同着という人もいれば、わたくしが勝った。ブルーインプが勝ったと言う子もいる。これでは勝敗が決められませんわ。どうしましょう。
話し合いでは決着がつかない。同着でいいんじゃないかというクラスメイトの声もありますが、白黒付けなくてはわたくしは納得できない。仕方ない・・・じゃんけんですわ!
実力差がなければ、勝敗を分かつのはもはや己の運のみ!
わたくしの豪運を持って貴方には引導を渡してやりますわ!
そう宣言したわたくしにブルーインプは目をぱちくりさせる。
「ん〜どうしよっかな・・・うん、いいよ♡」
ニコニコしながら了承するブルーインプ。貴方に年上に対する礼儀というものをたっぷりわからせますわ。覚悟しなさい。
「あっ、そうだ先に言っておくね」
なんですの。今更怖気付きましたか?それとも何を出すか宣言ですか?上等ですわ。わたくしはグーを出しますので!
「わたし、じゃんけんで負けたことないから♡」
・・・・へっ?
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ブルーインプには勝てませんでしたわ・・・・
一本目は敗北。ごねにごねて五本勝負に持ち込めば惨めに全敗・・・どうなってますの運営!運が偏ってませんか!
5連敗して崩れ落ちたわたくしを、ブルーインプが嬉しそうに耳元で煽ってくる。
ざ〜こ♡ざーこ♡幸運すかすか♡敗北者♡年下の女の子に凄んで惨めに敗北♡恥ずかし〜♡
ぐぬぬ、ぐぬぬぬぬぬぬ・・・
わたくしが悔しさのあまり歯軋りをするのを見て、青いあんちくしょうは恍惚の表情を浮かべている。ニマニマしてるんじゃないですわ!
ちくしょおぉぉ!と雄叫びをあげながら、ノートの切れっ端に消しゴム印を押し、それを押し付けるように渡す。
これで勝ったと思うなよ!今日はちょっと調子が悪かっただけですわ!覚えてなさい!
そう言ってドアを蹴破る勢いで教室から飛び出す。そして授業の為に教室へと向かっていた教員に見つかる。5分後にはわたくしは廊下に立たされていた。
なんでこうなるんですの!うわーん!!もうじゃんけんはこりごりですわー!
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あいつは本当になんなんだ。私は隣の空っぽの机を横目で見ながら考える。空っぽの机に座っているはずだった所有者の名前はミカドランサー。机の所有者は今は廊下に立たされており、教室には黒板の叩くチョークの音だけが響いている。
今考えているのは彼女との関係について。今まで自分の周りにはいなかったタイプだ。ああいうタイプとの交流には経験がない。
びゃーびゃー泣き喚いたりして、どうしようもないほど子供っぽいのに、なぜか事態の中心にいるのだ。あのレースも、今朝のクラスメイトの様子も。彼女を中心に人が集まり物事が大きく動く。彼女は3人で問題を起こしたと思っているがそれは違う。物事の中心の彼女に、たまたま私が近かっただけだ。
本当に私には理解不能なのだ。好きとか嫌いとか、利益か不利益か判断する前に懐に飛び込まれた。そもそも友人なのかどうなのかも私には判断がつかない。
普段はどうしようもない愚か者に見えるはずなのに、時折り私の胸の内を熱くすることを言う。彼女の言葉は不思議な強い熱があるのだ。思わずやけどしそうなほどに。
ただ一つ言えることは、あの熱に巻き込まさまれるとろくなことにならない。あのレースにしてもそうだ。常に己が正しい規範であるべきと心がけていたのに、あんな安い挑発にのってしまった。初日から不良と呼ばれたらどうしてくれるんだ。全く。
ふぅ、と小さくため息をつく。黒板に目を戻し、書き出された教師の文章をノートに書き写す。
ーーー私には夢がある。必ず叶えると己自身に誓った夢だ。
『ウマ娘の誰もが幸福に生きられる世界を』
私は、シンボリルドルフは皇帝にならねばならない。皆に不可能な夢だと言われた大望の為に。己の全てをかけても、辿り着けるか分からないほど遠くにあるものの為に。
その為に彼女が必要ならば私は受け入れるだろう。そうでないのならば私は・・・・・どうすればいいのだろうか。
思わず先程受け取った紙切れを手で弄ぶ。紙には『ミカドランサーちゃんがなんでいうこと聞いてあげる券』と書いてある。
なんでも、なんでもか・・・
彼女に自分の夢を話してみようか。笑われたらすごく、嫌だけど・・・
いや、彼女は笑わないような気がする。不思議とそう信じたくなる。
私の心はまだ分からないが、彼女は私のことを友人と思ってくれている。そんな気がするから。
なんでも叶えてくれるなら5000兆ジュエルください。
ドトウを引けないので、石が怒涛の勢いで減っていくんです。・・・ふふふ
『ミカドランサーちゃんがなんでいうこと聞いてあげる券』
このアイテムが実はキーアイテムとなり、シナリオ分岐に関わってくることは、作者を含めまだ誰も知らないのであった。