永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
レースの余韻はヌカッと爽やか!
ミカドランサーは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の親友を負かさなければならぬと決意した。ミカドランサーのレース結果はわからぬ。ミカドランサーはただの学生である。悪戯をし、はしゃぎまわり走り回り友人と遊んで暮して来た。
けれども勝敗に対しては、人一倍に敏感であった。きょう放課後ミカドランサーは教室を出発し、野を越え山越え、少しばかりはなれた此このトレーナーの仕事場にやって来た。
「いやあの結果は君の責任だろう」
わたくしのトレーナーはそんな怒りを無情にもバッサリと切り落とした。情け容赦のない一撃ですわ。でも納得いきません。まるでわたくしがポカをやらかしたという風にいうのはやめてもらえますか!怒りのままトレーナーを詰問します。
「油断ではないが・・・最後ビビっていただろう?一瞬脚が鈍っていたぞ」
はぁ!?わたくしビビってないですが!!わたくしは完璧にしてやったり状態でしたわよ!全部が事前の作戦通りに運びましたし、わたくしの脚にはルドルフは絶対追いつかないってトレーナーが言ったんじゃないですか!
わたくしは違う違う話が違うと言いながらテーブルをバンバンと叩く。叩かれた衝撃が起きるたびにテーブルに置かれているキーボードや缶コーラが少し浮き上がる。
明らかにめんどくさそうな顔を隠さないトレーナーは、わたくしを無視して自分の仕事に戻る。ぐぬぬこのわたくしを無視してキーボードをガチャガチャしていい度胸ですわね!貴方にも罰が必要なようですわね。おりぉあ!!
腹の立ったわたくしはテーブルに乗っていたトレーナーの私物の缶コーラを強奪する。プルタブを勢いよくひねり一気に煽る。
ゴキュゴキュ!くどい甘さと炭酸の刺激が喉を焼く。むぐっ!あまりに勢いよく飲み過ぎた。むせ返りそう。
・・・あっやばいこれはあかんですわ。
そこから先のことはあまり言いたくはありません。ただ一つ言えることはその日のトレーニングは中止になったこと。トレーナーが結構マジで怒ったこと。そしてそのあとわたくしはキーボードの分解清掃をさせられたことです。
良い子のみんな!一気にコーラを飲んではダメですわ!ミカドランサーちゃんとの約束ですわよ!
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ということがありましたので、今日はトレーニングがお休みですの。トレーナーが今日はもう帰れって言って話を聞いてくれませんの。
「相変わらずだねぇ♡」
そんなわけで暇になったので、わたくしはブルーの練習を見学しにきたのです。刈り上げキャンディーの人の隣でのんびりと見学をしていました。頼めば快く見学を許してくれたのです。
本当はチームリギルに行っても良かったのですが、あそこは今忙しいですからね。おハナちゃんトレーナーは対応にてんてこまいですの。邪魔するわけにもいきませんし。
「あのレースの後からずっとあの調子だもんね。すごい宣伝効果だったんじゃないかな?」
ええ全くその通り。新入生の歓迎を兼ねたレースの前座という名目だったのに、前座とは思えない盛り上がりでしたからね。チームリギルの評判はまさにうなぎ上り。飛ぶ鳥を落とす勢いですわ。
新入生がトレセン学園で最初に見るレースがあんなものだなんてレース観ぶっ壊れますわね。チーム見学期間のことなんて知らない新入生が、それはもうひっきりなしに練習見学を申し込んでくるらしい。
新入生でもチームリギルのことは少し調べれば分かる。スターウマ娘のマルゼンスキー先輩が立ち上げ、シンボリ家スーパーホープのシンボリルドルフがいて、その上メンバーが最低3人欠員中。
一応公式戦には出てないですが、エキシビジョンレースで素晴らしい成績を叩き出している。その為新入生限定で知っているチームアンケートを取れば、スターウマ娘の所属するトップチームの次くらいの場所に、チームリギルがいるくらいですもの。
うわぁ改めて考えるとなんだあのチーム。そりぁあどう考えても勝ちウマですもの。乗りたがるのはわからなくもない。
わたくしとブルーの所には全然来ないですけどね!!
「うちにも来たよ。断ったけど♡」
えっなにそれ聞いてない!?じゃあ来てないのわたくしのところだけ?なんで!!
「トレーナーが何処にいるのか分からないからじゃないか?俺も阿部トレーナーの事は初めて聞いたぞ」
隣で話を聞いていた刈り上げキャンディートレーナー。ええと名前はたしか、そう!沖田ちゃん・・・だった筈!
「沖野トレーナーだよ」
そう。沖野トレーナー!わたくし名前を覚えるのは苦手なので許して欲しいですわ!
別に気にしてないさと軽く流してくれる。うーん人が出来ている。うちのトレーナーにも見習わせたいですわ。それにしてもうちのトレーナーをご存知で?
「ああ。今学期の初めに誰が何処に所属しているか書かれた資料がトレーナー全員に回されたからな。ミカドランサー、お前が何処に在籍しているのかはその前までは伏せられていたんだ」
結構騒ぎになったんだ、誰だ阿部トレーナーって知らないぞってな。そう言って沖野トレーナーは肩を竦める。うーんやっぱりトトロはレアキャラですのね。でも多分たづなさんあたりが絡んでそう。勘ですが。
トレーナーはトトロなので神出鬼没なのですわ。普段資料室から出ませんからね。もっと日の当たる場所に出ろってわたくしが言わなくてはならないかもしれませんわね。
とにかくうちのトレーナーの事はいいのですわ。それよりもブルーが見学を断る理由がよく分からないのが気になりましたの。新入生をラリーに勧誘しなかったんですの?
「したよ?でも反応芳しくなくて。ウマ娘のラリーなんてあるんですか?なんて言われたらさぁ」
ブルーはなんとなく凹んでいる気がする。ウマ娘ラリーは日本だとマイナー競技ですからね。わたくしもブルーが貸してくれたビデオ以外のレースは見たことありませんし、地上波放送もしてませんからね。
ああその時の光景が目に浮かぶようです。こいつはラリーとシューズの話題になるとやたらとぐいぐいくるし、なんか早口になるのです。きっと新入生は困惑したに違いありませんわ。
まだ見ぬ新入生さん、心の中で代わりに謝っておきます。ですがブルーはいい子なんです。変わり者でもありますが。
「今失礼なこと考えてなかった?」
なんのことでしょう?まぁまぁいいじゃありませんか!ラリー走ならわたくしが付き合いますし!今度また林道に遊びにいきましょう!ねっ?
「・・・分かったよ♡約束だよ?」
もちろん約束ですわ!なんなら指でも切ります?
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練習中に突然現れた訪問者は勢いよく手を振りながら去っていった。ブルーの練習の合間の息抜きとして以外にも色々分かったな。以前から本人から話は聞いてはいたが・・・いい友人を持ったな。
「まあね♡」
俺の言葉を聞いてブルーは少し楽しげに笑う。練習中にはあまり見せない表情だ。こいつは練習となると途端にストイックになるからな。
俺の担当であるブルーは練習中の集中力は大したものだが、気の抜き方がなっていない。最初はおハナさんからこの子は手はかからないとは言っていたがとんでもない。
確かにトレーニングスケジュールをきっちりと決めるおハナさんなら扱いやすいかもしれない。だが俺みたいに自由に練習をやらせると限界でぶっ倒れるまでやろうとする。
なにせブルーは徹頭徹尾ラリーのことしか考えてない。確かにラリーの土壌の無い国から外国に殴り込むわけだから、焦る気持ちは分からなくはない。それが悪いってわけではないんだが、どうにも考え方が尖っている気がする。
そんなブルーが明らかに気に入っているのがさっきのウマ娘・・・そんなに凄いのか?あのミカドランサーは。
「はっきり言って天才だよ。トラックで走るのが勿体無いくらい」
強い断言だな。ブルーがここまではっきりと言うとは。
・・・そうか。じゃあ俺達も負けるわけにはいかないな。よしっ!じゃあ練習再開するか!
「ならちゃんとメニューくらい組んで欲しいな♡」
そう言うなって。お前は基礎はしっかりと出来ているから今更口を出すこともない。俺にできる事は全力でサポートする事だけだ!
まぁ行き過ぎないように見張るくらいだけどな。俺の言葉を聞いてブルーはわかりやすくため息をつく。その反応は結構傷つくぞ。
そう思っていると唐突にブルーはこちらを向いてて問いかけてくる。
「沖野ちゃんはさ♡わたしがラリーなら行くことに反対しないよね?なんで?」
ブルーにしては珍しい質問だな。うーんそうだな確かにここに残って欲しい気持ちがないわけじゃない。残ってくれたらドリームトロフィーにすらいける才能はあると思うからな。
でも叶えたい夢があるなら、俺はお前のトレーナーとして最後の最後まで応援し続けるって決めたんだよ。なるんだろ?ラリーチャンピオンに。
「・・・そっか。じゃあ行ってくるよトレーナー。ちゃんとタイムは測ってね」
そう言って俺の愛バは背を向けてダートグラウンドへと向かって駆け出していった。
俺の勘違いかもしれないが、その背中は普段よりも少し嬉しそうだった気がする。
ブルーもそろそろ掘り下げます。ブルーはラリーへの情熱を理解してくれる人に懐きます。夢を肯定してくれると倍率ドンッ!
なんせ入学前は周りは敵だらけになると思っていたくらいですからね。なのでブルーちゃんは最近ほんわかしています。なんというかあったかふわふわ。