永遠なる皇帝とストイックモンスターメスガキが、主人公を大岡裁きするお話 作:ぐっちSKG
新入生入学式が終わって少し経ったある日。わたくしはクラスの黒板の前で教壇に立っていました。ずらりと椅子に座って並んだクラスメイト達。その思いは一つになっていた。
わたくしの腕には議長!!と書かれた腕章が付けられている。ええ!今日の緊急会議の進行役という大役をわたくしが任されたのです!普段はルドルフがやるのですが今日はわたくし。
えー本日お集まりの皆さん。今日集まってもらった議題はこちらです。
わたくしが合図を送ると、横に立っていたバトラーが勢いよく黒板に字を書いていく。カッカッと黒板をチョークで叩く音が教室に響き渡る。1分もしないうちに黒板にはある言葉が記されました。
'ルドルフモテすぎ問題'
デカデカと書かれたその文字を見て皆は神妙な顔をした。下らない議題と思われるかもしれませんが、ちょっとまずいことになっているのです。ですので皆の意見を聞きたいのです。
取り敢えず議題を書いた後は問題点を書き上げたプリントを配る。配り終えるまでの時間を利用して、わたくしはまるで扇動家になったような気持ちで話す。
そうやって少しずつ教室のボルテージを上げていく。ノリノリで付き合ってくれるクラスメイトには感謝ですわ。
隅で腕を組んでいた1人が手をあげるが、わたくしはそれを無視して話を続ける。議長のわたくしが許可しない発言は認められない。
さあ話を続けましょう!取り敢えず状況の整理をしますわ!
バトラーが必死こいて黒板に必要な情報を書き写す中、さっきから隅でずっと手をあげている1人が、痺れを切らせて苛立った表情でわたくしの直ぐそばまで寄ってくる。
そして彼女はわたくしにアームロックを仕掛ける。ぁぁあ痛い痛い!タンマ!ちょっと待って!があああ!
「議長。発言しても宜しいかな?」
ルドルフはアームロックを掛けているとは思えない程丁寧な口調で許可を求めてきた。
---------
「こういう議題なら私のいない所でやってくれないか?」
アームロックからわたくしを解放したルドルフから最もな意見が出る。ですがちゃんと訳がありますのよ。
「・・・言ってみろ」
その方が面白そうだとみんなの多数決で決まりましたの。ですのでわたくしのせいではない。おわかり?
わたくしは腕を組みながらはっきりと自分の意見を述べる。ルドルフには残念でしょうが、多数決という実に民主制溢れる方法で決まったのですからしょうがないんですの。つまりわたくしは悪くない!
「ちなみにお前はどっちに入れた?」
勿論ルドルフも参加すべきだと票を入れましたわよ!あー!ストップストップ!暴力反対!
ルドルフが指をコキコキと鳴らし出したので急いでストップをかける。このままだとスーパー折檻タイムに突入してしまいます!
だってしょうがないじゃないですか!この問題はわたくし達だけではどうしようもないんですもの!貴方だってわかっているでしょう!!
そう、この数日で表面化してきた問題。ルドルフファンクラブが暴徒と化している。いや暴徒になりかけていると言っていい。
新入生歓迎という名目で行ったレース。そこで劇的な走りをしたルドルフ。その結果としてルドルフはデビュー前でありながら新入生の憧れの先輩というポジションを手に入れた。
そこまでは良かった。同期としても目標にされているルドルフが後輩から評価されているのはわたくしにとっても鼻が高い。問題はその後の事です。
ルドルフの所属するチームリギルに、それはもう大量に新入生の見学希望の声が上がっている。断っても断っても溢れてくる声。
そのうち収まるだろうと思っていたのにそんな気配が全然ないのです。疑問に思ったわたくし達がシンザン会長に許可を取って調査をしてみると、どうも既存のルドルフファンクラブとは違う別のファンクラブを新入生が立ち上げたらしい。
なんでこんな短期間にもう一つファンクラブができているんだとか、二つあるのは面倒だからさっさと併合しろとか思わなくはありませんが、取り敢えずルドルフってば実はとんでもないタラシマンだった事実に驚きですわ。
旧ルドルフファンクラブの言い分としては、新ルドルフファンクラブは今まで築き上げた秩序を脅かす外来種のようなものです。イエスルドルフ・ノータッチがモットーなので遠くから見守るスタイルでした。
せいぜいがルドルフが写った写真や、練習を遠くから見てかっこいいなぁと言うくらい。つまり後方理解者づらをしているのです。わたくしが写真を流しているのがこちら。
そして新ルドルフファンクラブはどうにかしてルドルフに近づこうとする急進派です。あの手この手で気に入られようとしているのはもう草生えますわ。
露骨にアピールしたり、物を贈ったりするわけですね。あと勝手に見学に来てキャーキャー言っているのはこっちです。わたくしへの引き抜き工作までしています。やり手の新入生でもいるのでしょうか?
その二つが競い合うように内容がエスカレートしてきているのですね。旧ルドルフファンクラブも方針転換してもっと積極的になるべきなのではとの意見すら出てきている。やーんルドルフてばモテモテですわね。
いやそれくらいなら微笑ましくていいのですが、わたくしが問題視しているのはそこではありません。問題なのは差し入れの手作り弁当です。
手作り弁当の差し入れとか少女漫画の中の出来事だと思っていましたけど。ルドルフ・・・貴方は今日お弁当何個もらいました?
「・・・・4個だ」
ルドルフは自分でお弁当作るタイプなので、それも合わせて今日だけでお弁当を5つ食べてる訳ですわね。しかもきっちり食べて感謝の手紙まで書いてるんですわよね?
自分のファンを無碍にしないのは美徳ですが、このままだと確実にデブりますわよ。ファンサービスも程々にしなさいな。
わたくしの言葉を聞いて、ルドルフは頭を抱えながらだったらどうすればいいんだと落ち込んでいる。悩むのなら普通に断ればいいのに・・・。
いやルドルフの事ですから、1度受け取ったら後はなし崩しですわね。今更迷惑だからやめてくれとは・・・言えないでしょうねぇ。やーいルドルフのヘタレー。
まあつまり要約すると新ルドルフファンクラブの手段を選ばないグイグイっぷりに、厳格な独自のルールを持つ旧ルドルフファンクラブがぶちぎれているのです。
互いに離反者が出たりして、それはもうバチバチにいがみ合っているので学園の秩序的な意味でまずい。まるでアサシン教団とテンプル騎士団めいていますわ。自由か秩序か・・・もう戦争まったなしです。
そしてこのままだとルドルフの体重がやばい。今は大した事はありませんが、5月中頃の一斉健康診断で体重とか測るんですわよ?ルドルフが体重を気にするタイプかは知りませんが、増えているとしたらそれは多分脂肪ですわ。
現状腹が出てるとかはないのですが・・・ルドルフが食べ過ぎているせいで、練習が効率的に行えないとおハナちゃんトレーナーから聞かされてはもはや見過ごす訳にはいきません。
だからこそこれはこのクラスの死活問題なのです。同期の一番星とされているルドルフが太ってノロマになったら、わたくし達はどんな顔をすればいいのでしょう。わたくし達の目標が体重管理もできないウマ娘だなんて冗談じゃありませんわよ。
ですのでクラスの皆さん。何か意見があればどんどん出して下さいね。
落ち込むルドルフを尻目にわたくし達は意見を交換し合うことになった。ああそれとルドルフは後で体重計に乗って下さいね。保健室からパク・・・借りてきましたので。
---------
会議は踊る、されど進まずとは誰が言ったのでしょう。兎にも角にも面白いこと重点主義者の多いわたくし達のクラスメイトによる議会は混沌の一途を辿ることになりました。
普通に断ればいいのにとか、走って脂肪を燃やすんだよ!とか、お弁当をみんなで食べる?とか、ルドルフが太ったら面白そうだよねとか、潰して食べればカロリーはゼロとかそんな意見が飛び交う。
その後はクラスメイトが嫌がるルドルフを無理やり体重計に乗せたり、わたくしがルドルフがヘタレなのが悪いと黒板にデカデカと書き込んでヘッドロックをくらったり、ブルーがルドルフのお腹に手を当てて何ヶ月かな♡といって吊し上げられたりしました。
とにかく意見は出揃った感があるので取り敢えず情報を纏めてシンザン会長に報告に行くことにする。わたくし1人です。
ルドルフは教室に置いてきました。そのくらいの慈悲の心はわたくしにもあるのです。憧れの人の前で赤っ恥なんてかわいそうですからね。
と言うわけでシンザン会長、これが報告書です。
「新学期早々の問題が彼女から出るとはね・・・」
シンザン会長は意外そうな顔をしながら受け取った報告書に目を通している。まぁルドルフは基本的に優等生ですからね。何かと問題を鎮圧する側ですし。なのでわたくしがきっちりとフォローを入れてあげないと!
シンザン会長・・・ええ予想外だったとは思いますが、ルドルフも悪気があったわけではないのです。わたくしの顔に免じて許してあげて欲しいのですわ。
「いや・・・一発目の問題行動は君だと思ってたんだけどね、予想が外れたなぁ」
えっなんで!わたくしは優等生なので問題なんてそうそう起こしませんわよ!
最近体調不良なのはルドルフの祟り説があります。だから明日は謎の奇病になっているかも。許せルドルフ・・・物語のための致し方のない犠牲なんだ。