生きているなら呪霊だって殺してみせるし、誰であろうと救ってみせる   作:皐月の王

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乙骨憂太の声優がシンジ君と一緒と知って驚いた人です!聞いたらイメージ通りで凄かった


原作前
望まれた才女


「生まれたのか!土御門家相伝の"術式"と"眼"持つ者が!」

 

男は喜んでいた。今から数えて百何十年ぶりに生まれた相伝の術式を持つ人物。

 

「これで土御門家は……我らが引き継いできた歴史が再び動き始め、誇りを引き継がせるのだ」

 

土御門、安倍晴明の子孫たちはこれで事態が好転する。過去の栄華がまた戻る、呪術界にまた君臨出来ると今は形骸化した家は、その子に(いの)った

 

数世代ぶりに"術式"と"眼"を引き継いで産まれた孫を己が思惑と欲望のために……

 

 

―――――――――――

 

"術式"と"眼"を相伝した子が産まれて十三年が経った。その子は今、本家を継ぐ為に厳しい修練に励んで……

 

(こんなのに何の意味があるんだろう……はぁ、つまらない)

 

いるとは言いがたかった。厳しい修練は行っているが、意味を見いだせず、家を継ぐという事には無頓着であった。それでも手は抜かず、早朝からの体術鍛錬を行ない今まさに終わりの時間を終えようとしていた。朝四時から六時半までの二時間半を鍛錬を終え、肩で息をしながら呼吸を整えている最中だ。

 

「今日はここまでです、彩華お嬢様。タオルです、これで汗を拭いてください」

 

「ありがとうございます。では、私は少し休ませて貰います」

 

土御門彩華(つちみかどあやか)。土御門家の"術式"と"眼"の両方を持って生まれた少女であり、次の土御門家の当主候補である。毎日の鍛錬に追われ、期待を寄せられ、嫌になりそうな日々を送っている。呪力量は歴代土御門家当主の中でも上位に君臨するほどの物を持っている才能がある側の人間である。しかし、それは期待が更に重くなるのと同義である、家を継ぐことに興味が無い彼女にとっては鬱陶しいと思うのは日常である。そんな彩華は自室に戻り寝転がる。

 

「はぁ……朝弱いのに無理やり起こしてくれて……」

 

早朝からの鍛錬は何年経とうとも彩華にとっては辛いものだ。彼女は低血圧であり、朝が弱く、冬は一段と弱くなる。しかし、そんなもの知ったことないと毎日鍛錬を強いられる。その甲斐があって呪術師としての腕前はかなりのものになっているが……

 

「こっちは……普通の生活がしたいのに」

 

ふと漏れる本音。学校へ行く度に最近の話題や放課後の話や部活の話、どれもこれも彩華にとっては羨ましいと思える光景だ。普通への憧れ、実家の期待と圧力にため息しか出ない。

 

「何が両方持って生まれた希望の子だよ。こんな眼、欲しくも無いのに」

 

"浄眼" 土御門家相伝の"眼の力"であり、人の意識や呪力等を視覚化することが出来る眼である。ただし、五条家の"六眼"のように、術式を見破る力は無いし、呪力を視覚化と言っても一定以上の呪力が無いと視認することが出来ないと"六眼"の劣化のような目の力だ。ないよりマシと言われたらそれまでなのだが。

 

「私は家の歴史も、当主様の思いもどうでもいいのに」

 

だけど演じなければならない。それが今の彩華の生きる道である。別に彩華は呪術が嫌いな訳では無い。家の押しつけが嫌いなのだ。

 

彩華は身体を起こして、風呂場に足を運ぶ。鍛錬の汗を拭った程度では満足出来ないため汗を流しに風呂場に足を運んだ。これ以上遅くなれば、朝食を食べずに行かないと行けなくなる。

 

それは避けたいと言う気持ちで手早く済ませる。髪を洗い、身体を洗い、鏡を見る。肩まで伸びた綺麗な黒髪、青と黒が混ざった瞳が鏡に映っていた。

 

「……はぁ、とりあえず早く出よ」

 

鏡を見て溜息をつき、身体や髪を拭き、下着を着用し、制服に袖を通して、髪を再度乾かすためにドライヤーをかけて整えてから居間に行く。時刻は七時半、朝食が並べられていて家族が座っていた。

 

「来たか、彩華。修練に励んでいるようで何よりだ」

 

「何れは土御門家の当主となるのはお前だ。努努それを忘れることなく、なお一層励めよ」

 

「私も貴女が成長すれば肩の荷がおりまするの。頑張ってくださいね彩華さん」

 

「はい、お父様、お母様、当主様」

 

彩華は深々と頭を下げて朝食を摂り始める。

 

(浄眼でどんなことを考えているかなんて見たくもない)

 

おおよその考えている事は十数年も一緒なら分かるというもの。この家の中では猫をかぶるしかない。そうしている間にも薄味の料理が並ぶ。美味しいという言葉は思い浮かぶが、彩華にとっては薄味は好きじゃないのだ。慣れ親しんだ味といえばそうなのだが、彩華は薄味より少し濃いめの方が好きなのだ。食べ終わり、世話人が作ってくれたお弁当を鞄の中に入れ靴を履く。

 

「彩華お嬢様、車の準備ができております。お乗り下さい」

 

「ありがとうございます、いつも助かります」

 

女性の世話人が車のドアを開けて乗れるようにしてくれている。そして車は家を出て学校に向かう。彩華は外の景色を眺める。ちらほら呪霊も視界に映るが、見過ごしてもいいほどのものである。気にすることないと溜息をつきをつく。

 

「彩華お嬢様、今宵お勤めがあります。下校時間になりましたらお迎えに上がります」

 

「……呪術高専の人達の仕事のはずでは?無理やり……という訳では無いですよね?」

 

「はい、向こうからの依頼でございます。人手が少ないためにです」

 

彩華は運転席の方を見向きをせずに小さく「分かりました」と答えた。

 

京都の中学校の近くに車を停めさせ、彩華はそこから歩いていく。この時、この時間だけは彩華は呪術と自分を切り離すことが出来る時間である。それは同時に、彩華の騒がしい日常の幕開けを告げるものでもある。

 

「おっはよー!彩ちゃん!」

 

「うおっわっ!?朱桜(すおう)!?危ないでしょ!?急に抱きついてきたら!!!」

 

彩華に抱きついてきたのは小学校からの同級生である朱桜と言う少女である。友達が少ない彩華の、胸を張って友人と言える人物である。

 

「ねぇねぇ!昨日のテレビ見た?」

 

「見たかったんだけどね……お父さんもお母さんも見せてくれないんだよね。ほら、私の家厳しいからね」

 

「そう言えばそうだね……すっごい厳しいもんね……」

 

思い出したのか震えている朱桜。苦笑いをする彩華。ここでは彩華は猫をかぶる必要性はあまり無い。自分が自分で入れる数少ない場なのだ。

 

そんなこんなで時間が過ぎ、昼休みに入る。彩華と朱桜は教室でお弁当を食べていた。おかず交換が行われ、朱桜から貰った卵焼きを美味しそうに食べいる彩華。

 

「それでなんだけど、彩華。今日、肝試しに行かない?」

 

「肝試し?何でまた急に?」

 

朱桜が頬をかきながら言う。

 

「実は美香ちゃんたちが肝試しに彩華ちゃんを誘おうと言い出してね。一度でもいいから一緒に遊びたいらしいの」

 

彩華は思わず固まる。遊びたいと言うのは分かった。しかし、それでなぜ肝試しなのだろうかと

 

「何で肝試しかと言うとね」

 

「心読まないで?」

 

「元々肝試しに行く予定だったんだけど、ほら、彩ちゃんって他の人とほとんど話さないじゃん?」

 

グサッ!

 

悪気の無い言葉が彩華の心に突き刺さる。彩華は高嶺の花として居る。それだけだけなら、彩華の人柄を知れば一定数の友人はできるはず何だが……。ある日不良に絡まれている生徒を助けるために、その不良を完膚無きまで叩きのめしてしまった。そのため憧れられている反面、畏れられても居る。この出来事で家から怒られたのは言うまでもない。

 

「ど、どうせ私には朱桜以外の友達なんて居ませんよーだ」

 

「わっ!ごめん!そういうつもりじゃなくて!」

 

身振り手振りで朱桜は彩華を励ます。彩華は嘘泣きをして見せたが、話の先を促す。

 

「それで、話の続きは?」

 

「うん、それでせっかくだから誘ってみようとなったの。でも、家の事で忙しいよね?習い事大変そうだもんね」

 

「……うん、そうだね。それはそれとして、何処に行くつもりなの?その肝試し」

 

彩華は肝試しの場所を聞いてみる。朱桜は町外れにある廃病院だと教えてくれた。

 

「美香ちゃんたち霊感あるらしいよ、私も霊感あればなぁ」

 

「見てみたいの?」

 

「怖いもの見たさかな!」

 

「何それ……」

 

二人は笑いながら昼休みを過ごす。放課後になると彩華はまた明日と別れを告げて、家の車に乗り込む。乗り込むと同時に笑顔は失せ、凛とした表情になる。

 

家に帰るまで一言も漏らさず帰るまでがいつも通りなのだが

 

「今回のお勤めの場所は何処かしら?」

 

「……珍しいですね、お嬢様が自らお聞きするのは」

 

運転手の世話人は驚いたように言うが、彩華は気にすることなく

 

「いえ、気になっていたので。教えくださいますか?」

 

「申し訳ございません。私も今日がその日だとしか伺っておりません。御当主様からお聞きください」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

彩華は会話を打ち切りながらも言い知れぬ不安に煽られていた。こんなにも胸騒ぎするのは初めてではなかろうかと言うくらいに。

 

そして自宅に着き、自室に荷物を下ろして着替える。どうせ夕食を食べたらお勤めだろうからと。呪具の短刀を二本持ち、動きやすい和服に着替える。黒を基調とし、所々紺色が入った和服だ。

 

そして、夕食を食べ終え、当主にお勤めの場所を聞く。それを聞いた彩華は顔を青くした

 

「い、今なんと申しましたか……今回のお勤めの場所は……」

 

「聞こえぬかったのか?町外れにある廃病院と言ったのだ。高専からの依頼でな。手が足りぬらしい、恐らく呪霊がいるだろうが、今のお前にはいい相手かもしれぬ。廃病院の呪霊を祓って来い。その位容易いだろう?」

 

廃病院の呪霊と言うのは珍しくなく、高専が巡回して呪霊を溜らないように祓っているが、今回の廃病院はまだそれが行われていない。未知数ということだ。そんな所に彩華の友人が肝試しに行くと聞いている。彩華の体温は奪われるように感じると共に、

 

「っ―――!!!」

 

部屋を飛び出した。すぐさま靴を履き、外で待つ世話人のところに向かいながら

 

「車出して早く!」

 

「お勤めですk―――」

 

「いいから早く出して!!!」

 

普段見られない形相、必死な様子を見て世話人はエンジンをかけ、車を直ぐに出す準備を整える。

 

「お勤めの場所は……」

 

「分かるでしょ!急いでよ!!!」

 

「承知しました……!」

 

車は彩華の叫びに応じるように家を飛び出し廃病院に向かう。

 

「お願い……無事でいて……朱桜、みんな…!」

 

祈るように呟いて




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