生きているなら呪霊だって殺してみせるし、誰であろうと救ってみせる   作:皐月の王

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もうすぐ原作の時間軸に行けるぞー


死を見て目覚める

「……」

 

彩華は自ら喉を刺した。それにより、屋上で自身の血の海に横たわり死を待つだけになった。否、もう、死の瀬戸際だ。思い返すことも無く、ただ途切れそうな意識の中、賭けに出ていた。

 

「う……そ……そんな……彩ちゃん……」

 

「――――彩華さん?」

 

彩華の自害を目の前で見た二人は、体の熱が抜けて行くのを感じ、目の前の光景を受け入れきれないでいた。それだけではなく、朱桜の心は砕ける寸前まで追い詰められていた。小学校からの付き合いのある友人、親友と言っても差し支えの無い友人が……目の前で自分達の為に命を絶った。

 

自分が死に追いやった。自分が足を引っ張り、助けるために死んでしまった。その事実が、目の前の光景が朱桜を蝕んでいく。

 

「わ……私の……せいだ……そんな……いやだよぉ…ねぇ、彩ちゃん……起きてよ……」

 

「イイ顔ダナァ……絶望二沈ンダイイ顔ダ……」

 

呪霊は二人を取り込むのを途中で止めながら、死体を近くで見せつけるように移動している。

 

「貴方趣味が悪いわよ!友達の死を見せつけるなんて!!!」

 

美香は自身を取り込もうとする呪霊に向かって叫ぶ。自身に迫る死の恐怖より、友人を絶望させようとする、友人の親友の死を辱める。それに対する怒りの方が勝ったのだ。しかし、何も持たない人間。いくら呪霊に対して吠えようとも何も変わらない。いや、刺激してしまうだけだった。

 

「イクラ吠エヨウトモ変ワラン。貴様ラヲトリコンデ、糧二シヨウ……ソウカ、マダチカクニイルノカ」

 

呪霊は何かに気づいたのか、二人を解放する。

 

「何のつもりよ……!」

 

解放された二人の体は、噛み付かれたことにより、呪われていた。軽い呪いではなく、確実に蝕み脅かす呪いである。そんな状態で解放されても、逃げ遂せるとは到底思えない。しかし、どんな思惑があろうとも、この期を逃す事は許されないと美香は思った。自分達の為に命を絶った恩人に報いるためにも。

 

「早く逃げるわよ!」

 

朱桜を無理矢理立たせてその場を去る。朱桜の様子はもう折れかけてる。もしかしたらこれから先立ち直れるか分からないような様子でもあった。そんな朱桜に

 

「今はここから生き延びる!!!彩華さんの思いを無駄にしない為にも!今ここで私達が死ねば、あの人の死は無駄になるわよ!そんなの1番しては行けないことよ!!!」

 

美香は大きな声で言う。美香だって辛い気持ちでいっぱいである。傷や目の前で起こった悲劇、自分が肝試しに行こうなんて言わなければ起こらなかった事柄ばかりだ。だからこそ、彩華の思いを、朱桜を死なす訳にも自分が諦めるわけにもいかないのだ。

 

その言葉を聞いた朱桜は大粒の涙を流しながら、逃げるために足を動かす。

 

「ごめん……ごめんない……!彩ちゃん…!絶対に逃げ切るから……!」

 

「ええ!そうよ!私達は逃げないと行けないのよ!」

 

この場だけでもいい、少しの時間だけでもいいと美香は心の中で思った。生きる活力、逃げるための気力さえ戻れば……。

 

必死に逃げる。幸いなことに道中、呪霊と遭遇することは無かった。それもそのはず、屋上行くまでに、彩華が祓っていたのだから、帰りは安全に帰れるというものだ。

 

何とか廃病院の出口に辿り着き、脱出することにはできた。しかし、まだ少しの森を抜けなければならない。それでも、二人は肩を貸しながら確実に廃病院から離れて行っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――しかし、絶望はそう容易く覆ることは無い――――――

 

「……嘘……」

 

「あっ……あああ……!!そんな!いや!いやぁああああ!!!」

 

屋上の呪霊が地上に居て、先に逃げた二人の少女を………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

暗い暗い空間。ただの暗い空間では無く、水で満たされているような感覚に陥るような感覚。

 

感じるはずのない感覚。そんな中でただただ沈んでいく感覚に支配される。

 

(失敗した……?どうだろう……分かんないや……暗いし、寒いし、力が入らないし……寂しいなぁ……けど)

 

そんな思いを抱きながら沈んでいく。しかし、このまま終わりにしていいのかと自分に聞く。

 

体は動かず、感覚も消え失せた中で少女は、

 

(失敗で……終われない……何のために部の悪い賭けに出た?必ず何とかするため……だから全力で挑んでるんでしょ!!)

 

呪術師の成長曲線は必ずしも緩やかでは無い。彩華は死の際で掴む……呪力の核心を。呪力は負の力、肉体を強化することは出来ても再生することは無い。しかし、その負の力同士をかけ合わすことが出来たらどうなるだろう。

 

負の力と負の力を掛け合わせれば正の力へとなる。しかし、言うは易しで行うのは至難の業を反転術式と言う。それ故にそれをできる人物は限られている。少し前の彩華も出来ないでいた。理屈で分かっていても成功した試しなんて今まで一度もなかった。しかし、死の際で呪力の核心を掴むことが出来た今なら……反転術式を使う事が出来る―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……耳に入るのは水が落ちる音。そして冷たいと感じる体。

 

「……雨……降っているんだ……」

 

反転術式で傷を治すことが出来た彩華は立ち上がる。体は雨に打たれて冷えていて、服は水を吸い重くなっている。それだけではない、出血の影響なのか頭が必要以上に重く痛く感じ、視界は可笑しくなっていた。

 

「何?……この、線と点は……?」

 

見る度に頭が痛み、気分がとても悪く感じた。先程まで感じていた感覚と似ているとも思った。それと同時に大きな呪力を感じ取った。それは地上から発せられていた。

 

「……行かないと」

 

彩華は自身の首を刺した短刀を手に持ち屋上を後にして、地上に向かう。線と点は廃病院の至る所にあり、それは自分の手にも見えた。見る度に、気分が悪くなり、頭が痛くなる。しかし、気にもとめず歩き続け、入口に辿り着き扉から出る。

 

(皆は無事に帰れて……いるといいな……)

 

雨に打たれながら一歩一歩進む。そして大きな呪力を放つ正体の所に辿り着く。

 

「ウソだろ、お前自分で首を刺して死んだはずじゃ?」

 

先程の片言の言葉ではなく、饒舌な喋りで呪霊が言葉を話す。

 

「死にぞこなったってか?なら、キッチリオレの養分にしてやるよ。お前が守りたかった奴らも、今四人目を取り込んでいる最中だがな!」

 

呪霊が体全体を彩華の方に向けると、朱桜の下半身、両腕まで取り込まれていた。外に出ているのは、上半身だけである。

 

「……他の三人は?」

 

「もう取り込み済みだぜ。おかげで、力も増したし、こんなにも饒舌に話せるようになったぜ?ヒーヒャッハハハハ!!!」

 

呪霊は高笑いをする。

 

「泣き叫んで恐怖に怯えて、最っ高に最っ高にヨカッタゼ?」

 

「う……え?彩ちゃん……?」

 

気がついたのか取り込まれそうになっている朱桜が顔を上げる。そして目の前に立つ彩華を見て

 

「そっか……迎えに来たんだ……もうすぐそっちに……」

 

「……私はお化けじゃないよ、朱桜」

 

「え?」

 

朱桜は彩華をまじまじと見る。服装は血で汚れているが、五体満足で立っていた。

 

「よか……た……生きていて……良かったよぉ……!」

 

朱桜は泣きながら喜んだ。彩華の生存を、生きていたことに涙が溢れて止まらなくなっていた。

 

「今助けるから、少し我慢してて」

 

短刀を構えて呪霊と対峙する。

 

「オレに為す術もの無かったオマエが何を言って……!?」

 

次の瞬間には彩華は呪霊に肉薄し、呪霊の腕を短刀で切り落とした。

 

「なすすべ無かったって……誰が、誰に?」

 

軽やかに着地して、穏やかで凛とした声で彩華は質問する。

 

(何だこいつっ!さっきと別人じゃねえか!!)

 

呪霊は攻撃するが、短刀で切り払われ、彩華に攻撃が届かない。

 

「ふっ!」

 

呪力を纏った拳が呪霊に突き刺さる。

 

「アッアアアアアア!!!」

 

それと同時に朱桜が悲鳴を上げる。彩華は手を止め距離を置き

 

「何をしたの?」

 

「なあに、オレがコイツを取り込んでいる時は、コイツにもオレと感覚を共有できるようにできるんでな。そうさせてもらったんだよ」

 

"そうすれば、抵抗出来ないだろ?"と呪霊は嗤う。

 

「オレを祓うという事がどういう事かわかっているんだよなァ!?」

 

「……」

 

彩華は黙り呪霊と朱桜を見据える。相も変わらず視界には黒い線と点が呪霊と朱桜にも見える。頭を振りながらどうするかを考えようとした時

 

「彩ちゃん……お願い……もう、終わりにして……!」

 

泣きながらに朱桜はそう言った。取り込まれている時にも痛みがあり、目の前での三人の死、生きていたとはいえ親友の自害まで見た朱桜。さらにまた、自分が利用されて彩華を危険に晒すと言うのが我慢できなかった。それに、自分が助からないと言うのが何となく理解していた。

 

「朱桜……」

 

彩華は目を瞑り、短刀を地面に落とす。それを見て呪霊はニヤリと笑う。先と一緒なら、これでこの術師も取り込めると、殺せると思った。

 

「分かればいいんだよ呪術――――」

 

しかし、彩華が告げるのは―――

 

「私の術式は《刀圭呪術(とうけいじゅじゅつ)》」

 

目を開き睨みつける。その目は青白く輝いていた。

 

(何だ……あの眼は……お、オレが恐れているというのか……!?)

 

彩華は理解し始めていた。今の自分に見えているモノが何なのか……。それ故に、気分が悪くなるし、頭が割れそうになるのにも理解を示せた。

 

「医術を元とした術式。医術になぞられた特性を持つ……縫い付ける事も、切る事も……」

 

「術式開示……!本気か!?」

 

手をゆっくりと呪霊に向ける。眼を見開き手を動かす。そして……

 

「まだ、生きているのなら……絶対に救ってみせる。私は……もう、迷わない。"刀圭呪術"『切除(セツジョ)』」

 

斬撃が呪霊に襲いかかる。このまま切り刻めば朱桜は痛みに耐えかねて死ぬだろう。しかし、『切除』とは切って除くの意がある。文字通り、呪霊から朱桜を綺麗に切り除いたのだ。傷つけることなく。

 

「なっ!何故だ!何故俺だけに!?」

 

(この眼……頭痛くなるし、気分が悪くなるけど、この線はそういう事なんだ……)

 

彩華は解放された朱桜を抱き留めて言う。

 

「終わりだよ、祓われて(殺されて)無へ堕ちろ呪霊。お前に相応しい最期だ……『(セツ)』」

 

再び斬撃が呪霊を襲い今度こそ祓らわれる。断末魔を上げることを許さず祓った。しかし、まだ終わらない。

 

「彩……ちゃん……」

 

呪霊に襲われて満身創痍の朱桜が居る。いつ死んでもおかしくない状態、いつ消えてもおかしくない命の灯火。だが、まだ生きている。

 

「大丈夫、今の私なら。心配しなくていいよ。今日の事は悪い夢だったんだ。もう、夢の終わりだよ」

 

「う……ん……」

 

彩華が優しく言うと朱桜は眠りに着く。彩華は反転術式を使用し朱桜の体を治した。そして雨が降りしきる空を見て

 

「……三人も……しょう……ちくしょう……!」

 

独り、雨に打たれながら誰にも聞かれることも誰にも見られることも無く涙を流した。

 

 

 

 




《刀圭呪術》
医術の医術を元にした術式。平安から現在にかけての医術の進化で出来ることが増えている術式。
イメージとしてはトラファルガー見たいなことも出来る。

斬撃で敵を切り裂く『切』

縫合、固定、拘束、移動に使える『縫』が今現在使える技



領域展開に関しましては、大絶賛考え中であります!
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