生きているなら呪霊だって殺してみせるし、誰であろうと救ってみせる   作:皐月の王

6 / 7
お久しぶりです。そしてお詫び申し上げます。当作品の主人公土御門彩華の名前の読みを彩華(さいか)から彩華(あやか)に変更致します。

申し訳ないです


その眼は穿つ

一件目の仕事が直ぐに終わり、捕まっていた人たちを救出した七海と彩華は次の場所に向かっていた。

 

疲労は無く、続けて二件目に赴いても大丈夫と判断しての移動である。七海と彩華は二件目についての資料に目を通していた。

 

「次は廃村の廃神社ですね」

 

「そのようですね。廃神社と言え数年前までは人が居たところです。ですが、呪霊が居る以上、祓うのが我々の仕事です。気を引き締めて行きましょう」

 

「はい!」

 

その廃神社が数年前までは神社として機能していたが、神主が引退して以降次の神主が就く事無く、廃れて行った神社である。そんな所には、肝試しや心霊スポット、恐怖の対象として見られることもあり、呪いが溜まる。ましてや、信仰されていたと言う過去のものになるとそれを祀っていたものがどう変生しているかと考えれば怖いものだ。手が空いている京都の他の呪術師では埒が明かないという事で、一級呪術師である七海に回ってきたというのだ。

 

「もうすぐ着きます。準備はいいですか?土御門さん」

 

「はい、大丈夫です」

 

麓で車は止まりそこからは徒歩となる。時間は夜の八時。満月が、夜の世界を照らし、夏の割には涼しい風が肌を撫でる。

 

廃村に繋がる道、木々が生い茂った視界の悪い道を歩く。満月の光もこの木々のカーテンの前には遮られて意味をなさない。

 

闇が支配する領域に踏み入れ歩く二人。五分程度歩くと話に上がっていた廃村に到着した。倒壊しかけの木材の住居だったものが点在していたり、草に侵食されたコンクリートの建物もある。そして、それらの影には低級の呪霊がなりを潜めて居た。が、彩華達を視認するや否や襲いかかってくる。

 

「『縫』」

 

襲ってきた呪霊を呪力の糸で拘束し、そのまま絞めあげて切り裂く。

 

「七海さん!」

 

「ええ、手早く祓い、本命まで走り抜けます」

 

低級と言えど数は多い。襲ってくる呪霊と襲ってこない呪霊が居るが、襲って来る呪霊はどれも三級以上の呪霊である。それを二人は一撃で薙ぎ払い、村の外れにある廃神社を目指す。

 

七海は鉈で、彩華は二本の短刀を用いて迫り来る呪霊を切り伏せる。ここまでは、一件目とそう大差は無い。強いて違う所を言うのであれば、

 

「鬱陶しい…なっ!」

 

悪態をつきながら呪霊を祓う彩華。先の廃ホテルは狭い代わりに、数はしれていたし、襲ってくる箇所の目星をつけれていたが、現在は開けた廃村で戦っている。四方八方から呪霊が襲ってくる。

 

少し走っても、すぐさま三〜四体が道を阻み邪魔をする。しかし、際限なく出てくる存在でも無い。廃神社に近づくに連れて襲いかかってくる呪霊は数を減らし、階段に差し掛かる時には阻む呪霊は居なくなっていた。

 

「呪霊が襲って来ない……?この先が今回の本命……それに恐れてこれ以上来ないという事?」

 

「それは分かりません。ですが……」

 

七海は階段の先を見据えて、息を深く吐きながら

 

「一筋縄では行かない可能性があります。土御門さんは後衛をお願いします」

 

「ですが、」

 

「大人で、子供である君を守る義務がある」

 

七海は眼鏡を上げて言う。彩華は静かに"はい"と返事して眼鏡をかけ直す。そして二人は階段を登る。

 

階段の踊り場に到達すると同時に、廃神社の境内から思わず警戒を強めてしまう程の呪力を感じ取る。

 

「…行きましょう」

 

七海は静かに言う。鉈を軽く持ち直し小さく息を吐く。彩華も自身の獲物を一度鞘に戻し、手の感触を確かめて、眼鏡に一度手をかける。

 

(……使わないに越したことはない。アレは……いや、考えない方がいいか)

 

だが、外す事はせずに七海に続いて階段を上がる。進む度に境内に存在する呪霊の呪力がよりはっきりとする。一件目の蜘蛛の呪霊なんて可愛いものだと、ただの呪霊じゃないというのが嫌でもわかると。そして境内に辿り着く。

 

「アレが今回最後の相手という訳ですね」

 

「ええ、そのようですね」

 

境内には龍にも蛇にも見える異形が存在していた。拝殿に巻き付き、彩華達を見下ろしていた。口からは黒紫の霧のようなものを吐いていた。それは場の空気を侵食している。"瘴気"と言い得ている

 

「アレを吸わない様に。詳細は不明ですが、危険なのは確かです」

 

「そうみたいですね……」

 

挟み撃ちの動きを互いに取り、タイミングを合わせたように七海と彩華は呪霊に切りかかる。七海の一撃は呪霊の肉体にダメージを確実に与えた。七海の術式【十劃呪法】は相手の長さを10で線分し、7:3の分割点を弱点と化し、そこに当てた攻撃は、全てクリティカルヒットとなるものである。切断には至らなかったが、手応えはそれなりにあり、呪霊の反応も七海の方を見ていた。彩華の攻撃もダメージを与えたには与えたが、七海程のダメージは与えていない。

 

(意外に硬いね……でも、この程度なら削れる)

 

呪霊は自身の爪を彩華と七海めがけて振り下ろすが、二人は回避をし、攻撃をする。七海は十劃呪法を彩華は刀圭呪術を用いて攻撃をする。手応えがあり、このまま押し切れると思っていたが……

 

(傷が……再生している……呪霊だから不思議は無いけど……それよりも……)

 

手応えはある。しかし、傷つけた所が別のところを攻撃する時には傷は塞がっており、攻めきれ無い状態が続いていた。だが、それは攻撃の速度を早めて術式を使えばどうにでもなる。しかしそれ以上に、彩華と七海が危惧しているのは

 

(傷をつけたところから、黒紫の霧が出てくる。このまま攻撃すると吸わずに何とかするのが難しくなる……!)

 

傷をつければつけるほど、黒紫の霧が支配力を強めて、二人は攻撃の手を緩めるしか無くなるのだ。

 

「先程より霧が濃くなりましたね。そちらは大丈夫ですか土御門さん」

 

「大丈夫です。ですが、このままだとあの呪霊を祓うのは……!」

 

「難しいですね。ですが、出来ない訳では無いです。短期間で仕留めましょう。これ以上時間をかける暇はありません」

 

サングラスをあげて武器を握り直し、彩華はもう一本の短刀を抜き構えて

 

「気を引き締め行きましょう」

 

「はい!」

 

呪霊は拝殿から体を下ろし境内に陣取る。放たれる呪力が強大なものと分かる。しかし、先程より距離的には攻撃は行いやすい。この瞬間に攻めきれないとこちらには勝ち目がない。二人は走り出し攻撃を仕掛ける。しかし、呪霊の方が先に動いた。

 

黒紫の霧が攻撃を仕掛ける前に周囲を渦巻く。それはただ漂うだけだったものが意志を持ったかのように渦巻き、迫り来る二人の退路を断つ。

 

しかし、この攻めで攻め落とすと決めている二人は祓う事に重きを置いている。この程度では止まらない。

 

「ここで祓います!引くことより攻める事に集中してください」

 

「勿論です!」

 

再び二人の攻撃が呪霊に届く。先程より凄まじい連携が呪霊を削る。呪霊を傷つければ黒紫の霧が吹き出すが、吸わないように息を止めて切りつける。このままいけば攻め落とせる。と確信めいたものが芽生えた直後……

 

 

 

 

 

 

 

 

突如風景が変わった。黒紫の霧が支配する神社へと変貌する。廃神社ではなく立派な神社が鎮座し、その空間に呪霊と七海と彩華の存在がある。いや、呪霊一体と呪術師二人しか存在しないのだ。そして、この状況を瞬時に理解する七海。

 

「使えたのですか……領域展開」

 

そう、ここはさっきまで戦っていた呪霊の領域内である。呪霊は黒紫の霧を展開し時間を稼ぎ、猛攻を耐えて領域展開を発動した。呪霊の力が領域内の必中に乗り効果が現れ出す。

 

「っ!?カフッ!?」

 

まずは彩華にその効果が現れた。口の中が鉄の味に染まり、思わず口を抑えるが抑えきれず手から零れる。それは赤黒い鉄の臭いがする……血であった。さらに、

 

「土御門さん!くっ!」

 

七海には別の症状が出る。七海には激しい頭痛と眩暈が襲う。両方をその場で釘付けにするには十分な効力であり、十分なスキを生じさせる。

 

呪霊は大きな体を使い二人を薙ぎ払う。二人は呪力で体を守るが、そんなのお構い無しの一撃はまともに入りダメージを受ける。

 

「ぐっ!」

 

「っ!」

 

領域を展開された時点でこの手の戦いは敗色濃厚。対策と言えば、呪力で攻撃を受ける、領域外へ脱出する、自身も領域を展開すると手段はある。"呪力で攻撃を受ける"は既に実行済みであり、そのためまだあの程度で抑えが聞いている。"自身も領域を展開する"は、七海は領域展開は出来ないし、彩華も領域展開は今は未完成故に出来ない。"領域外へ脱出する"と言うのは、領域は閉じ込める事に特化した結界術としての側面を持つ。そのため内側から壁を壊す事は基本的には不可能であり、また、領域内と外では体積が異なる為、領域の縁を発見する事が困難であり対策とは言えない。領域に入った時点で死がほぼ確定する。

 

薙ぎ払われた彩華は地面を転がり倒れ伏す。彩華は両手を付いて、前を見る。吐血をしたことで気分は最悪である。しかし、さらに気分が下がるのと同時に目元を触り気づく。

 

(眼鏡……外れたか……)

 

目の前に広がるは、死の世界。しばらくぶりの脆き世界である。自然と口元が綻んだ。どんな時でも眼は変わらない。地面には"死"の線と点を映し出す。

 

「ハッハハ……!良いよ……」

 

少し笑い少女はゆらりと立ち上がる。短刀を持ち、青白く輝く目で領域を見据えている。

 

「土御門さん?」

 

七海は片膝を着いた状態で驚いた表情を浮かべている。眼の変化もそうだが、纏う雰囲気が変化したことに驚いているのだ。別人と錯覚してしまったからである。だが、その程度の驚きは、次の瞬間起こった出来事で消え去る。彩華は眼を見開き地面の"死"の極点めがけて

 

「……壊れろ」

 

短刀が突き立てられる。そこを中心に領域に罅が入っていき。領域は音を立て崩れ落ちた……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。