はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!-   作:白澤建吾

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フード付きマントと砂漠の入り口

 夕方までの暇つぶしにぼったくり商店のおじさんの受け売りの砂漠情報を披露し、日差しと寒さから身を守る方法について聞く。

 日差しなら雨除けになるポンチョを被って凍える風(グリエール・カエンテ)を使えば私は問題ないんだろうけど、ただのマントしかない人達はどうするのか、単純に興味があった。

 

「そういえば何も考えてなかったな、なあ?」

「夏の暑い時よりちょっと暑いくらいだろう?」

 ロペスとルディが軽く考えていることがよくわかった。

 

「昼は盾で卵が焼けるし、夜は水が氷るってさ。それくらい強い日差しだと日焼け通り越して火傷するから気をつけてね」

「どうやって!?」

「光より早い動きで避けるとか」

「影の速度は人間には無理だ」

「女将さんに聞いてみてね」

「また金がかかるのか……」

「嫌味!? あたしに対する嫌味なの!?」

 

「いや、あれはおれが行ってもぼったくられてただろうから誰が悪いとかなかった! イレーネとカオルは何も悪くない!」

「そうそう、だれが行っても同じだったんだから誰も悪くないよ!」

 

 ロペスとルディの必死の説得によってなんとかイレーネの行き場の無い憤りと自己嫌悪を慰めた。

 

 夕方、日が落ちかける前の頃。

 女将さんがやってきた。

「アールクドットのやつは今日で本国に帰るってスーシーから連絡がきたよ」

 スーシーはここで働いている嬢の1人でアールクドットの兵士の1人がお客さんなんだそうだ。

 アールクドットの兵士は交代制で、丸1日休みともなると、そこそこ高いお給金から長々と居座ることが多いらしい。

 楽で稼げると嬢達には評判で、下手に手柄を立てていなくなられるよりここに住んでくれたほうがありがたいという話を聞いた。

 

 もちろん身請けにはもっとお金持ちの方がいいので彼らはどこまで入れ込んでもいい夢をみているだけなのだけれども。

「さっき発って次の監督者は3日後にくるよ」

「ほう? そうか、じゃあスーシーにも分前をやってくれ」

 ロペスが銀貨を指で弾いて女将さんに渡した。

「若いくせにかっこつけてんじゃないよ」

 女将さんはニヤリと口角をあげ、空中で銀貨を受け取ると今からなら丁度砂漠を渡るにゃちょうどいい時間だよ、とラクダ屋へと案内を始めた。

 

 宿をでてオアシスを周回して水を汲みつつ反対側にあるラクダ屋に向かう。

「さっき話してた砂漠越えのお客さん連れてきたよ」

 扉をゴンゴンと拳でなぐって店主を呼び出す。

 なんだかわざと粗野な振る舞いをしているようで、なんだか余計な負担をかけてしまった気がして申し訳ない。

 

「お、来たか。こいつが貸し出すラクダのジョアンナだ。」

 ラクダと言って紹介された動物は知っているラクダとは似てるような似てないような不思議な代物だった

 毛が生えた恐竜の様なその動物は、ラクダのような瘤を背中に乗せてはいるが、その瘤も背中全体にできた瘤が羽のように左右に分かれて大きな荷台の様になっていた。

 

「知ってるラクダと違う」

 あまりにもかけ離れた姿に思わずつぶやくと

「これがターク(らくだ)だよ。荷台と屋根を付けるからちょっと待っとくれ」

 

「カオルの知ってるラクダってどんななの?」

 店の表に出て待っているとイレーネが質問してきたので地面に木の枝でラクダを書きながら説明する。

 画力が無いせいでターク(らくだ)と足の太さと瘤の違いくらいしか説明できなく、ふぅんと言ったっきりどこか散歩に出かけてしまった。

 

「絵は下手なんだな」

 店から出てきて私のラクダを見たルディが一言呟いてラクダ屋の待合所に入っていって私は思わずうなだれ、その様をロペスが見ていて笑いながら待合所に入っていった。

 

 気を取り直して立ち上がると思ったより長い間絶望に打ちひしがれていたらしく、ちょうどターク(らくだ)に荷台が乗ったところだった。

「さあ、出発しようか」

「ちょっとあんた! そんなの着てったらだめだよ! それ防水布だろう?」

「日除けもできて雨も防げますよ」

「砂漠じゃ熱でゴムが溶けて髪の毛がベタベタになって切るしかなくなっちまうよ、あんたの分も借りてきてあるからマントにしな」

 髪の毛が溶けたゴムでべとべとになってしまい丸刈りになる想像をして女将さんとフード付きマントとポンチョを交換した。

 カバンに仕舞っても熱でゴムが溶けるかもしれないから持って歩けないらしい。

 せっかく作ったのに残念だ。

 

 2mを超える高さにある荷台に荷物を放り投げて手綱をロペスに任せて砂漠へと向かった。

 盗賊や魔獣なんかに遭遇した場合、安全なところまでまっすぐ走って待機しているから方角を覚えておいて安全になったら迎えにいってあげる必要があるが、それでも迎えに来ない場合は勝手に帰ってくるから気にしなくていいそうだ。

 ターク(らくだ)のジョアンナは思ったより頭がいいらしい。

 

「じゃあ、女将! 世話になった!」

「お世話になりました。これ使ってください。魔力を込めるとほんのり光るので松明を持って歩かなくても良くなります」

 残りの報酬とラクダのレンタル料に私が掘った(イ・ヘロ)の魔石を渡して握手をすると、女将さんは1人ずつ抱きしめてまたおいで、と言って見送ってくれた。

 

 ロペスに手綱を惹かれたジョアンナを先頭に砂漠に向かって歩き始める。

「ちょっと布厚過ぎない? 砂漠なんでしょ?」

 イレーネがジョアンナと一緒に借りた厚手の布で作られたフード付きマントに文句を言っていた。

「夜にキャンプするならこのくらいだと心許ないね」

「何を言ってるんだ。夜は歩くんだ、聞いてなかったか。昼はらくだの幌を伸ばして屋根にして休む、夜は歩く。な? カオル」

「え? ごめん。私も聞いてこなかった」

「まあ、そういうことだ。これから夜通し歩いて日が昇り始めたらキャンプだ。体力が余ってたら休憩してから炎天下歩いてもいいそうだぞ」

「きゅ、休憩は大事だよ」

「そうそう」

 ロペスの嫌味をサラリと流し、砂漠の入り口に立った。

 

 乾燥地帯の砂漠の手前で雑草が点々と生えているのにたいして、線を引いたように草花が全く生えなくなる場所、そこが砂漠の始まりらしい。

 

 硬い地面に蹄が刺さる音をさせてジョアンナが行く。

 夕方でも少し汗ばむくらいの気温だが、湿度が異常に低いためにかいたそばから乾いていき、気化熱により籠もった熱が逃げていくので思ったより辛くはない。

 

 少し風が出ているので砂が舞い、袖で口を覆って言葉少なに夕暮れ時の砂漠を進む。

 橙色の夕日が沈み、紫色から藍色に移り変わり日が落ちる。

 日が落ちた直後は思ったより気温が下がらず、なんだこんなもんかと言い合いながらマントの前を開けてあるくといつのまにか気温も下がり肌寒くなってきた。

 

 星のあかりだけを頼りに進んでいくと、硬い砂の地面がだんだんとサラサラとした足が取られるような砂地になった。

(イ・ヘロ)! 目が慣れてきたからそのままにしてたけどやっぱり灯りがないと歩き辛いね」

 そう言って(イ・ヘロ)の灯りで足元を照らしたイレーネに習ってみんなで(イ・ヘロ)で足元を照らした。




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