はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!-   作:白澤建吾

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昼の砂漠と凍える風

 思わず出てきてしまったが出ずにいたほうがよかったか、と改めて思い直しテントに潜り込み凍える風(グリエール・カエンテ)でテントの中を冷やしながら改めて寝ようとした。

 

 心地よい冷風を浴びながら意識が遠ざかり始めると凍える風(グリエール・カエンテ)が弱まり外からむわっとした熱気が吹き込んでくる。

 それで目が覚め凍える風(グリエール・カエンテ)を強め、という繰り返しで中々根付くことができなかった。

 

 そんなことを繰り返しながらなんとか寝ることができ、目が覚めた時にはテントの中に涼しい風が吹き、寝苦しさを感じることがなく起きることができた。

「これずっとやってるの意外ときついね」

 早く起きたらしいルディが凍える風(グリエール・カエンテ)でテント内を冷やしてくれていたのだ。

「なんでまた」

「カオルが寝ながら凍える風(グリエール・カエンテ)使ってるのみていい考えだと思ってやってみたんだけどね。寝ながらなんて無理だったよ」

「そうなんだ、気持ちよく寝れたよ」

 ありがとう、というと練習のついでだから。と言ってそっぽを向いて照れていた。

 

 照れ屋め、と思いながら周りを見渡すとロペスはいるのだけどイレーネがいなかった。

 イレーネは?と聞くと外だよ、とのことで表に出てみると、傾きかけていた太陽のすべての生き物を焼き殺そうとする日光は煮殺す程度に和らいでいた。

 

 イレーネの姿が見つからずギラギラと照りつける太陽に手で日陰を作って見回してみるが見つからない。

 辺りを歩き回るにしても見える範囲は不毛の地。

 捜索範囲を2mくらい広げてみてもやはりおらず、これは砂に飲み込まれたか! と自分に冗談を言った所であと1箇所、見ていないところを思い出してジョアンナの頭の布をぴら、とめくってみるとジョアンナに抱きついて凍える風(グリエール・カエンテ)を出したまま寝ているイレーネを見つけた。

 

「器用だな」

 イレーネを見なかったことにして布を掛け直すと、テントの入り口に座っておやつに、と持ってきた白パンをかじって小腹を満たす。

 柔らかかった白パンは乾燥した空気と熱でカッチカチのパッサパサになっていて、もっと早く食べていればと思わずにいられなかった。

「おれももらっていいかな」

 ルディがいうのでしょうがないな、というふりをして半分にちぎったパンを放り投げた。

「乾いてて硬い」

「まさかたった1日でこんなになっちゃうだなんてな、がっかりよ、もう」

 干し肉を取り出してナイフで半分にしてルディに放り投げ、自分の分の干し肉に水分を与える。

 ロペスとイレーネが起きるのを待って夕飯の準備をする。

 今日もショートパスタ。

 積載量に限界がある個人の旅なのでせいぜい根菜と乾燥野菜くらいしかもってこれなかったので具もほぼ前と同じ。

 

 鍋に水を張って乾燥野菜のタタンプという紫色の毒々しいトマトの様なものとじゃがいもを1口サイズに切って茹でてからパスタを放り込む。

 紫色のねっとりというよりねっちょりとしたソースが絡んだパスタはいつみてもグロテスクで食欲をそそる色はしていないのだけど、ここで育った彼らにはやはり食欲をそそる色らしい。

 

 テントの中で日差しを避けながらパスタを食べ、日が落ちるのを待ってからキャンプを片付けて移動を開始する。

  

 イレーネは手綱を杖代わりに半ばぶら下がるようにしながら歩き辛い砂地でリハビリをしながら歩き、疲れたらジョアンナの背に乗り居眠りしつつ行く。

 ジョアンナはイレーネにまかせておけるので身体強化をかけてジョアンナを中心に少し広めに広がって異変はないか警戒しながら歩いた。

  

 真っ暗であるき辛いので足元を照らすのだけど、砂漠では少しの光でも遠くから見えてしまうので(フェゴ)(イ・ヘロ)を同時に使用して(フェゴ)の明るさで照らしているように偽装する。

 遠くから見れば(フェゴ)か松明か区別はつかない。

 

 広大な砂漠を僅かな灯りで歩く幻想的な光景と、あまりの寒さで耳と鼻が取れそうになる異国情緒を味わっていると脚長でスリムな2本足で歩くターク(らくだ)に乗った男が3人、松明を持ってこちらにやってくるのが見えた。

「おにいさんたち、水が余ってたらわけてくれないか」

 フードを外して水を分けてくれという男は浅黒く、口ひげが立派な男だった。

 

「その割になんだか元気そうだが?」

 ロペスが剣に手をかけながら対応する。

「そんなに警戒しないでくれ、確かにまだ元気だが水が尽きたままじゃボーデュレアにもバドーリャにもいけやしないんだ、できるなら目的地が一緒なら途中まででいいから同行させてくれないか」

 ロペスは私達と目線を合わせて頷くといいだろう、と言って話しかけてきた男に革袋に入った水を1袋投げて渡した。

  

「水ももらえる上に魔法の光もあるパーティに同行できるとはありがたい」

 3人の男達は脚長でスリムなターク(らくだ)から降りると残りの2人もフードを外し、交代で水を飲み改めてロペスに礼を言った。

「私はリノ、こっちがエッジオ、そっちがピエールフだ。砂の上だから挨拶は簡易でゆるしてほしい」

 リノはそういうと右手を頭の上でぐるぐる回してから前屈を2回繰り返すと、続いてエッジオとピエールフが真似をする。

 奇妙な儀式が始まりそうな様だった。

 エッジオもピエールフもリノと同じく浅黒く、ひげを蓄えている辺り大人の男はひげを生やすという文化なのだろうか。 

 

「おれはロペス、こっちがルディでそっちの女性がカオル、らくだに乗ってるのがイレーネだ」

 ルディとイレーネが軽く手を上げたので、向こうのマネしなくていいのか、と思いつつ軽く手を上げた。

 

「イレーネ嬢はタークと相性がいいようだな、どうだい?こっちの長脚種(グランターク)に乗ってみないか?」

 挨拶もそうそうにイレーネにちょっかいだそうとしているのかしきりに自分のタークに乗ってみないか誘ってくる。

 

「あたしはこの子で十分、カオルを誘ってあげて頂戴」

 イレーネがジョアンナの首に抱きついて断る。

 私を出汁にするのは止めてもらいたい。

 イレーネに断られたリノをみたエッジオが嬉しそうに私のところに長脚種(グランターク)を連れてきて声をかけてきた。

「君はカオルだったね、どうだい? 一緒に乗ってみないか?」

「まあ、いいけど」

「君がいればもう松明もいらないか。降りる時に火を分けてくれな」

 私の頭の上で輝く(フェゴ)(イ・ヘロ)を見て砂に松明を突き刺し消火した。

 火が消えた松明を長脚種(グランターク)の鞍に吊るし、私の足を鐙にかけさせると一気に持ち上げ長脚種(グランターク)に乗せてくれた。

 別に補助してくれなくても身体強化があるのでジャンプして乗ったっていいんだけど。

 と心の中でつぶやいた。

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