はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!-   作:白澤建吾

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砂漠を生きる生き物の倒し方

「こんなに可憐なのに魔法まで使えるなんて!」

 感激したエッジオが瞳を輝かせて私の手を取ろうとその魔手を伸ばしてくる。

 その手をひょいとかわしてエッジオを無視してリノとピエールフに聞いた。

「と、いうことで逃げていったのですが、どういうことでしょうかね?」

「氷の塊が落ちた所に飛び退いたと思ったんだろうな、あとはカオルがいう通り氷を食べて体温が下がるのを嫌がったんだと思う。あいつらは夜になると冷気で体が動かなくなるから巣に帰って朝を待つんだ」

「ははあ、やっぱり変温動物なんですね」

「地中を潜るためか目がないが歩いている足音を聞くために耳が良くて、どこからでもやってくる。たまに地上に顔を出して周りに生き物がいないか探すことがあるらしく、鼻はそれなりにいい」

「砂を泳いで地中から襲いかかる習性から砂鮫(アル・ベレオ)と呼ばれてるやつだね」

「倒すには破壊の魔石を買ってきて口の中に放り込んで爆発させるんだ」

「あいにく使い切ってしまって1個もないけどね」

「早く移動しないと夜明けにはここに戻ってきちまうぞ」

 エッジオとピエールフが教えてくれるのを聞いてどう戦ったらいいか考えていると、リオが移動の準備をしながら言うと、皆はっとして移動を開始した。

 

「怪我はなかった?」

 ジョアンナはリノに繋いで引っ張ってもらっているので徒歩移動になったイレーネと一緒に砂漠を進む。

「柔らかい砂地だからね、下から持ち上げられてちょっと転がっただけだよ」

「そう、ならいいけど、それより気になってるんだけど」

 声を潜めて私に耳打ちする。

「ルディとピエールフさんどうなってるの」

「ピエールフさんはルディに夢中なんだけどルディにはその気がないんだってさ、でも脈がないわけじゃなさそうだと見てる」

「あんなに周りが見えなくなってるピエールフは珍しいんだ、今までいい相手がいなかっただけだったんだな」

 エッジオがルディに絡むピエールフを暖かく見守りながら教えてくれた。

  

 ピエールフが剣を自慢し、ルディは湾曲した刃(シミター)を物珍しく観察しはじめ、まんまとピエールフの罠にハマっていく。

 砂に足を取られることなく踊るようにステップを踏み、(イ・ヘロ)が踊るように閃く刃に反射してつい見とれてしまうほどの腕前だった。

「ピエールフさんってもしかしてものすごく強くないですかね?」

「わかってるね、砂に足を取られない滑らかな足運びはあいつだけだな、どうしても踏み込みで足が沈み込んじまう」

 

 ルディはピエールフさんに手首を掴まれながらシミターを翻し、踏み込んで足を取られ、転びそうになるたびに支えてもらっていた。

「中々いいんじゃない?」

「そう見えるね」

「人の恋愛を見るのはほんっとにワクワクする」

 

「で、僕の相手はどっちがしてくれるのかな?」

「あそこにいるのがロペスっていうんだよ」

「知ってる知ってる。こっちがカオル嬢でこっちがイレーネ嬢だろ?」

「そうそう、あとはバドーリャに何人かいるから好きなのを見繕うといいよ」

「嬢って呼び方花売りみたいだからやめてくれる?」

「こんなに僕に興味持ってもらえないのは初めてだよ!」

「騒がれると寝れないんだが」

 リノさんに怒られて大人しく歩くことにした。

 

 私がまたがった剛力な竜(ポデラゴ)と手綱を持ったエッジオを先頭に熱き砂漠の風(サーリーオ)に乗ったリノさんと誇り高き竜(プーダレッゴ)が並び、その後ろにジョアンナに乗ったイレーネと縦隊を組み、魔法が使えること自体知られているので、後ろ向きに熱風(アレ・カエンテ)を吹かせながら夜通し歩いた。

「ねえ、カオルちゃん」

「言うの忘れてましたが、ちゃん呼ばわりは好きじゃないんですよ」

「それは呼び捨てでいいということかな? わかったよカオル」

 呆れるような、どっと疲れがのしかかってきたようなイレーネがいてくれれば少しはマシだったろうにと思いながら、無言でエッジオの足元に炎を飛ばして驚かせた。

「うおっ! ひどいよカオル……ち。 わあ!2度も燃やさなくてもいいじゃないか」

「カオルっちとか変なこと言うからだよ」

「舌に馴染んでしまったんだからしょうがないだろう?」

「馴染みがなくなるまで焼くしかないか」

「もう言わない! 言わない!」

 手を振って消してみせるとため息をついてみせた。

 消すのも別に手を振る必要はないのだけれど、その方がそれっぽく見えそうなのでそうした。

 

 まるで新月の夜の様に真っ暗な砂漠は星だけを頼りに進むらしい。

 光の帯をあっちこっちに広げたような夜空は星がありすぎてどの星がどうと説明されても区別がつかないくらい多い。

「あの星があっち側に沈むと日の出だよ」

 星の説明をしながら日の出までの目安も教えてくれた。

 月も街の明かりもない砂漠では星が多すぎて明日どころか目を離したらもうどの星だったか思い出せない。

 

「それにしてもカオルの魔法はすごいな、カオルの仲間はみんなそうなのかい?」

「私と、ロペスくらいなもんであとはそこそこだね」

「使えないじゃなくてそこそこがそんなにいるのか、すごいな」

 これは答えを間違った気がする。

 

「これはここだけの話にしてほしいんだけど、僕はバドーリャのハンター組織で将来を期待されててね、行く先が決まってないのなら是非来てくれないか?」

「私の一存だとなんともいえないけど、行く先は決まってるんだ」

「そうか、すっごく残念だよ」

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