はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!-   作:白澤建吾

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理解者がいるということはとても大事

 ザリザリと顔に張り付いた砂を擦り、お腹すいた。とつぶやくと

「歩きながら干し肉でごまかすしか無いな。食料もだんだん減ってきたしなるべく進んでおきたい」

 ロペスとリノさんが出発の準備を終えて言った。

 

 夜のうちになるべく進んで朝になったらパスタを茹でて、仮眠を取って夜になったらまた歩いて。

 リノさんの話では明日の夜中から明後日の夜の内にボーデュッカ砂漠を越えられるだろうという話だった。

 身体強化をかけると疲れ知らずで走れるせいかお腹もあまりすかなくなるのでこっそり使ってズルをして1晩。

 ルディとピエールフさんが仲よさげに話しながら私達から妙に距離を取ってというか、少し離れて先行して進む。

 昨日まであんなに仲良かったっけ……? と思ってイレーネの方を見るとにんまりして小さく指をさした。

 そういう楽しみ方は良くないよ、と苦笑いをしてしばらく歩くとルディとピエールフさんが昼の見張りをするから仮眠を取らせてもらうと言って誇り高き竜(プーダレッゴ)熱き砂漠の風(サーリーオ)にまたがって早々に寝てしまった。

 

 仮眠を取っている彼らの眠りを邪魔してはいけない、と熱風(アレ・カエンテ)で温まりつつ音を反対方向に流して風上にいてもらう。

「いやー、まさかしらない間に一緒に昼の見張りするだなんてね」

 ワクワクが抑えられないイレーネが囁いた。

「砂嵐で籠もってる間になにかあったんだろうねえ、なにかできる暇なんてなかったと思うんだけど」

 そこに関しては本当に不思議でピエールフさんはどうやってルディの防御を崩したのかちょっとだけ気になった。

 聞いても素直に教えてくれそうにはないけれど。

 

「ファラスの方だとあーいうのは良くないかもしれないが、バドーリャだと実は結構あるもんで、働き手が2倍になるからって言いながら一緒に暮らしていつのまにか誓いの腕輪を捧げて雄々しき力の神(ジーヴァス)聡明な智慧の神(ティーヴァス)の夫婦の神殿で夫婦になるわけよ」

「夫婦の誓いもファラスとは違うのね」

「ファラスではどうするの?」

「ファラスだとパーティでダンスをして、神父さん呼んで主神に誓ってまたパーティして、またダンスするの。最初のはダンスは夫婦で踊っちゃいけなくて、あとのダンスは夫婦でしか踊っちゃいけないの」

「イレーネみたいにダンスが嫌いだと2回つらい思いをしないといけないんだね」

「あら、嫌いだけど苦手なんて言った覚えはないんだけど」

「ほう? それなら僕と1曲踊っていただけると」

 そう言ってかしこまったように手を差し出すがイレーネには相手をされずに体調が良い時ねとあしらわれて次は私と踊ろうとしたが、私は踊れないので断った。

「それならちょうどいい、僕は初心者にダンスを教えるのが得意なんだ」

「それならそこで手本になるようにダンスをしながら歩いてくれると私としては嬉しいかな」

 私が適当にいうと、エッジオは喜んで、というや否や伴奏もなしで空気を相手にくるくると踊り始めた。

 大きく円を描いて優雅に踊るエッジオは不思議なことに歩くのと変わらない速度で進む。

 器用なもんだ。と関心しながら放置してイレーネと身体強化をしながら踏み込んだ時に砂に足を取られないようにするにはどうしたらいいか話しながら歩く。

 

 何度やってもやはりネックになるのはとっさの踏み込みとジャンプでの1箇所にかかる荷重だ、という結論に至るが解決方法は見えてこない。

 ピエールフさんほどじゃないというエッジオのダンスを見ながらあーだこーだいいながら試してみるが、足の裏を全部使える状況では足の裏を全部接地させて、そうじゃない時はつま先ではなく足の外周を使うとましになる、ということがわかっただけだった。

 あとは水をまいて砂を固めると少しマシになる。

 マシな程度なんだけども。

 

 残りの食料と踏破を考慮するとできれば少し急ぎたい。

「なあ、エッジオ」

「カオルに名前を呼んでもらえるとまるで乾いた砂地に天から降り注ぐ慈雨の様に僕の心を潤してくれるね」

「なんか誰にでも言ってそうだね?」

「あたしもそう思う」

 女性扱いされて落ち込んだり嫌な思いをすることが減った。

 実際の中身は違うし、いつか元の体に戻るんだということをイレーネだけはわかってくれてると思うといちいち腹を立てなくても良くなってきた。

 理解者は大事だ。

 

「急ぎたいから長脚種(グランターク)に乗って早足で朝まで走らせられる?」

「速度にもよるがそのくらいなら行けるだろう、何をするんだい?」

「一晩走る」

「そんな無茶な」

「慣れてるから大丈夫、ね」

「うん、あたしらには普通のことよ」

 

 エッジオと一緒にロペスとリノさんの所に行って走るから長脚種(グランターク)に乗ってくれ、と言いに行き、さっきと同じやり取りをしてリノさん達は騎乗の人となった。

 ルディはピエールフさんと一緒に乗ることにしたらしい、お熱い。

「なんか久々な感じだわ」

「あたし走れるかな」

「だめだったら長脚種(グランターク)に乗せてもらったらいいさ」

「いつでも相乗りしてくれても構わないよ」

 イレーネはエッジオにべえ! と舌を出して行きましょ! と駆け出した。

 ロペスにはイレーネと並走してもらい、私はイレーネの後ろについて走り出す。

 

 ちょっと走りづらそうにしながら軽い調子で跳ねるようにして走るイレーネとベタ足で蹴り出す力より腿を上げて走るロペス。

 私もロペスの様に地面をあまり蹴らずに走る。

 しばらく走ってみると、バタバタとかっこ悪く走るのは普通に走るより余計に体力と筋力を使うが全力疾走じゃないのでなんとかなりそう。

 無駄な運動も砂漠の夜の気温のお陰で体温が上がらずに済む。

 

 そうして何時間か走るといよいよ日の出の時間になり、見上げるほど大きな大岩がある所で休憩を取ることにした。

「ほんとに走りきったのか……」

「魔法って改めて見るととんでもないな……」

 リノさんとエッジオのぼやきを聞きながら軽く汗ばんだ額を拭い(アグーラ)で喉を潤した。

「やっぱり砂地は走りづらいね」

「いい運動になった」

 ロペスとイレーネは満足そうに笑って休憩の準備を始めるとルディとピエールフさんが長脚種(グランターク)から降りてきた。

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