はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!- 作:白澤建吾
岩山にいるイレーネに手を借りて引き上げてもらう。
「さすが魔法使いだな!」
エッジオとリノさんが迎えてくれた。
「いやあ、疲れちゃったね」
テントを広げたエッジオが「僕の作った日陰で休んでくれるといいよ」なんていうものだから皮肉っぽく「いい日陰だね」と答えて、宙に浮かせた
「様子は?」
「今のところは大丈夫そうだけど、持って明日の朝まで。しかも気温が下がる夜中は体温を下げないようにしないと2人とも持たないと思う」
「厳しいね」
「ロペス君、すまないがテントを持っててくれないか。
「ああ、わかった」
ロペスにテントの布を渡すと、リノさんは大岩から飛び降り、
ルディ達を冷やしながらリノさんが戻ってくるのを待つ。
「この暑さなのに目を覚まさないから水を飲ませられない」
エッジオが意識を失っているピエールフさんを抱きかかえてつぶやいた。
何もできずにただただ冷やして見守ること数分か、十数分か、リノさんがジョアンナと3頭の
「ピエールフ達の様子は?」
「変わらない」
「戻ってくる時に考えたんだが、
「リノ、お前はどうするんだ」
「おれは残ったほうとジョアンナを連れてあとから向かう」
「確かにそれなら最速だね」
「抱えられるならイレーネちゃんに抱えてもらった方がいいな、こんな時になんだが男と2人で砂漠に置いていかれるのも心細くなるだろう」
「そういうわけでできるかい? イレーネちゃん」
「まかせて!」
急いでルディを抱えて
振り向くとロペスが手を振って見送ってくれたが振り返すことができなかったので
改めて前を向き直し、抱きかかえたルディに覆いかぶさるようにして
時折揺れて痛むのかルディはうめき声を上げるが意識を取り戻すことはなく、浅い呼吸を繰り返していた。
傾いた日はもうすぐ日没になると知らせてくれる。
日が落ちると気温はマシになるが私は方角がわからなくなってしまうが、ベテランのエッジオについていく。
日が落ちてしばらく走ると、エッジオが手を上げてスピードを緩めた。
「すまない、
私達が乗る
冷やしているとは言え、荷物はエッジオの倍なのだから。
ルディを下に下ろしてここまで乗せてきてくれた
上がりすぎた体温は冷え込む砂漠の夜の中でもかけた水が湯気になって立ち上るほど。
イレーネも
「もう距離はそんなに無いから今日中なら水さえあればバドーリャにつけるはずだ」
ルディを
腕が痛むのか時折苦しそうに息を吐いた。
エッジオが
イライラと緊張が伝わるのか
「エッジオ!
「ああ、ああ。すまないね。落ち着かなくて」
エッジオが
「もう大丈夫だろう」
ルディを抱えて乗った
「エッジオ! あれが?」
「そう、バドーリャの灯りだ」
ゴールが見えると現金なものでなんだか元気がでてきて、それが伝わったのか
光に向かって誘引される虫のように豆粒のようなバドーリャに向かって無言で歩を進めた。
その甲斐もあってか程なくして砂漠が終わった。
線を引いた様に突然地面が固くなり、足と取られる砂ではなく、固く踏みしめられた荒野と言うような地面。
根を張ることができるので少ない水でも生きられる背の低い草木の姿がちらほらあった。
ここからならイレーネと2人でおんぶをして走っていったほうが早いんだけど、走ったら揺れちゃうし良くないかなんて話しをイレーネとしていると
「そうだね、早く着くのはいいけどあまり揺らされると体に負担が大きいから
エッジオがそう決めた。
そういえば、こんな所で思い出すなんてとてつもないほどに遅いのかもしれないけれど、
エッジオに聞こえないように小声で祈り、魔力を捧げる。
体をぐん!と後ろに持っていかれるような加速を見せて
「おおう!」
驚いて思わず声がでてしまったが、驚いたのはエッジオとイレーネも同じようだった。
イレーネは急に祝福するなんて!という目で私を非難し、エッジオは何が起こったかわからないが急げるならいいと切り替えたようだった。
「いいぞ!
バドーリャの灯りがだんだんと近づいてくるにつれ星の光の中でバドーリャという街のシルエットが見えてくる。
巨大な山の
しかし山の所々にも灯りが見え、中腹にも住む気になれば住めるのか、と感心した。
「カオル、目的地は……みえるかい? 山の真ん中よりちょっと上にあるあの灯り」
「ああ、ああ、見える見える」
「道が悪いからがんばってついてきてくれよ」