はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!-   作:白澤建吾

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部下という名の反対勢力

 ぞろぞろと大勢で歩く人はあまりいないのか、総勢9人の集団はジロジロと見られながら街を抜け荒野に出る。

「ここから向こうの方にいくと砂漠に飲み込まれた森に着くんだが砂狼(アル・ロッブ)はそういう森を根城にしててな、数が増えると家畜を狙ったりキャラバンを狙ったりするんだわ」

「数が増えるってどのくらいの数になるんですか?」

 狼の群れってどういうものなのか……。

「普通の群れは少ないとペアで2頭、ちょっと増えて親兄弟で6頭。稀に群れ同士がくっついて30頭くらいになることもあるって話だったがそうなると次第に派閥ができて群れがわかれるそうだ」

 

「6頭だとそんなのに何人もぞろぞろ行く必要あるんですか?」

 今私達が合流すると25人にもなる。

 そのくらい人員の導入が必要なのかとロペスが疑問に思うのも当然だと思う。

 いくら顔合わせをしたいからと言ってもだ。

 

「でかくて統率が取れてる魔獣だからな?」

「狼っていうから犬みたいなもんだと思ってました」

「そういうことだから目についたのは片っ端から狩ることになるが、皮は欲しいそうだ。肉はまずいから期待するなよ」

「狩るだけじゃなくて皮も綺麗にというと、今行ってる人たちで足りるんですか?」

「基本的にはぐれを狙うからギリギリというところだな、盾がうまく働けば2頭くらいは。ベテランがいるから大丈夫だと思うが……。もちろん数が思ったより多ければ難しいが」

「運次第っていうのも困ったもんですね」

「発見できるかどうかもわからんからな」

 

 草がまばらに生える荒野を歩いて目的地に向かう。

 私達だけであれば走っていけばいいのだけど、ペドロの部下は魔法が使えない上に畳ほどの大きさの鉄板を担いでいる人がいるのだ。

 あの屋台の鉄板にしか見えない鉄の板は盾らしい。

 どうみても鉄板焼きの鉄板に取手を付けただけにしか見えないが盾だと。

 あの盾が鉄板にしか見えないポイントが縁がちょっと立ち上がっていて、具材が落ちないようになっているあの縁の様に見えるのだ。

 そして、油でも塗っている様にぬらぬらと艶があるのが盾という名前に違和感を覚えさせる。

 

 ルイスさんを先頭にロペス、私、イレーネ、そしてペドロとその部下たち5人。

 2時間ほど歩くと遠くに砂漠と森が見える。

 あれが目的地なんだろう。

 近づいていくと不思議な光景が目に入ってきた。

「なんだあれは……、砂漠なのに木が生えている……」

 砂漠の端に背の高い木が無数に生えて森になっていて、まるで砂漠に飲み込まれている最中の森のように見え、ロペスが驚きの声を上げた。

 向かって右には広大な砂漠が広がり、左側にはこれまた広大な荒れ地が広がり地平線が見える。

 

「初めて見ると驚くよな、あの森を奥の方、見てる方向でいうと左に行くと段々と砂地から土に変わるんだがそうすると砂漠に生える木じゃない普通の木になるんだ。あ、キャンプする時は砂漠から離れた方の地面が固くなってる辺りでな。森に入ると視界が悪いから危ない」

 ルイスさんが砂漠と反対側に指差して説明をするがどうやら砂漠にしか生えない木という物があるそうだ。

「水なくても木って育つんですかね……」

「さあなあ。それよりもう少しいけば合流できるはずだ」

 どうやら興味はないらしい。

 

 少し汗ばむ位の気温の中、ジリジリと照りつける太陽に頭に布を巻くよりフードがほしいと思った。

 それからまたしばらく歩くと遠くに人影が見える。

 今が一番暑い時間帯なので休憩をしているのだろうか。

 少し急ぎ足で彼らのもとへついてみると足音に気づいた彼らは勢いよく立ち上がりルイスさんに挨拶をした。

 中にはエッジオとリノさんも混ざっていて見知った顔を見つけてつい手でも振ろうかと思ったがこっちに気づいてくれなかったのでやめた。

「ああ、楽にしてていい。今日は増援のついでに新しく入ったこいつらに案内をと思ってな。左からロペス、ペドロ、イレーネ、カオルだ」

 呼ばれた順番に挨拶でもするのかと思ったらみんな頷くか特にリアクションを取ることもなく、私も名乗りそびれて軽く手を上げて答える。

 そして1班、と呼ばれた中にエッジオもいて、ハビエル、ヨン、フアン、ヘスス、ホルヘという男たちが私の部下になるということだった。

 次に2班、イレーネの部下、3班ロペスの部下と続き

「チームになって慣れないうちは色々やりづらいだろうということで今回だけおれがリーダーに指示をだすが自分の判断で変えても構わない。

 メンバーはリーダーのいうことを聞いて動いてくれ、じゃあしばらく休憩とする」

 そういうとドカッと座り込み(アグーラ)を出して飲む。

 

 私たちはそれぞれ自分の部下だという人たちの元にいき簡単に挨拶をするとエッジオに声をかける。

 見た目の年齢が年上ばかりなのでいうことを聞いてくれるか心配。

「見知った顔がいてくれてよかったよ」

「僕としてはなんともいえないな」

 困ったような笑顔でリーダーになるんだから毅然として見せてくれよと私にだけ聞こえるように囁いた。

「急に来て女子供がリーダーってどういうことだ」

 ハビエルという大盾を持った大柄な男が文句をいう。

「ですよね、とはいえそういうことなのでよろしくおねがいします」

「嬢ちゃん、あんたは何ができるんだ?」

「なんでもしますよ」

「後ろから口だけ出すのはなんでもするとはいわねえんだがな?」

「ほんとになんでもしてくれるならお得じゃねえか」

 たしか、ヨンというハビエルにも負けないくらい大柄な男が口を挟んでくる。

「どっかの巫女がそんなことするって話があったな」

「そのために命晒すなんざごめんだわ、それなら戦えそうな坊主どもの方がましじゃねえか」

 

 全然言うことを聞いてくれる雰囲気でない彼らは好き勝手言ってくれる。

 困ってしまってルイスさんの方をみるとニヤニヤしながら私達の方をみていた。

 イレーネも私と同じ様な状態だし、ロペスも小僧のいうことなんざ聞けるか女のほうがましだったなどと言われ、ペドロの所も同じ様な感じ。

 そうは言ってもイレーネは冷たい目で、ロペスとペドロは割りと怒りを感じさせる表情で自分の部下になるであろう男たちを見ていて、いつ処分してもおかしくない。

 しょうがないので文句を言いにルイスさんの所に行く。

「どういう状態ですかこれ」

「軍じゃないから上官の命令は絶対って話じゃないもんな。口だけでわからせられるならいいが、怪我はさせるなよ。あとあの大盾は壊すなよ」

 ええ……。と途方にくれそうになっていると、遠くからだれかが叫びながら走ってくる。

 

 走ってきたのは今日ギルドの事務員らしく、少し仕立ての良さそうな生地のブラウスとベストにスラックスの様な格好の女性だった。

 女の人1人でこんなところまできて大丈夫なのだろうか?

「……スさん! ルイスさん!」

「もう来たか。いい運動になったな」

「もう! 仕事があるんだから逃げないでください!」

「今日はほら、新人に仕事をおしえてやらないとな」

「団員を喧嘩させるのが仕事なもんですか!」

「最初はほら、色々あるもんだろう? すぐに収まって仲良くなるさ」

「せっかく入ってくれた新人がやめちゃったらどうするんですかもう!」

「大丈夫、こいつらは何人束にしたって負けないしギルドを辞めることもないさ。そういうことだから仲良くな」

 身体強化くらいならしてもいい、と小声で告げると今来たばかりの女の人と一緒に帰っていった。

 

 しょうがないのでロペス達を呼んで今ルイスさんから言われたことを伝える。

「平民は獣みたいなもんなんだな」

「躾けないとね」

「そういう言い方はよくないよ」

「相変わらずカオルは真面目だな、と思ったがカオルも平民か。すまんな」

 ロペスは反省のない顔で身体強化を使うと口を開いた。

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