はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!-   作:白澤建吾

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休憩と救援

 ハビエルの盾に苦労している砂狼(アル・ロッブ)に対して攻撃を仕掛けようとすると怪我をしているとはいえ、仲間の2頭が動くのでお互いに手が出せないでいる。

「リーダー、押し返すから好きにやってくれ」

 ハビエルは盾を握り直し、砂狼(アル・ロッブ)の爪に合わせて走り出した。

 ガン! と爪が盾に当たり、下から掬うように押し上げていく。

 体重差も体格差もある押しつぶされるはずの人間が潰されないどころか、押し返してくる。

 困惑した砂狼(アル・ロッブ)は後ろに飛び退くと改めて襲いかかるために後ろ足に力を入れた。

 

「いまだ!」

 ハビエルの合図で傷を付けていない魔石を全力で投げる。

 今度はコントロールよくまっすぐに砂狼(アル・ロッブ)の頭に突き刺さった。

 激しい爆発音をさせて砂狼(アル・ロッブ)の頭部が真っ黒に焼け崩れ倒れた。

 向こう側の最後の1頭をフアンと一緒に片付けたヨンが前衛に加わった。

 

 不利を悟って逃げるかと思ったが闘争心は衰えないようで唸りを上げ私達の周りをゆっくりと回って隙を伺う。

 頭数が多いときであればいいが、すでに6対2。

 1頭を大盾が捉え、もう1頭を高い攻撃力の戦斧と矢が狙う。

 もう私は必要ないかな、とエッジオに気を配って近くに立つ。

 傷つけた魔石を転がして砂狼(アル・ロッブ)の気がそれた隙にフアンが矢を放つと後ろ足に突き刺さり動きが鈍くなり、ヨンがその隙を見逃さない。

 雄叫びを上げながら躍り出ると砂狼(アル・ロッブ)の首を両手に持った戦斧を振り下ろし骨ごと切断した。

 最後に1頭残った砂狼(アル・ロッブ)は流石に不利を悟ったか、じりじりと後ずさると脱兎のごとく逃げだした。

 

「死ぬかと思ったーーー!」

 座り込んだヨンとホルヘにハビエルが怒鳴る。

「おい、気を抜くな!」

「僕ぁ、カオルがいるから心配してなかったけどね」

 そういうエッジオは目に見えて膝が笑っているけど、見なかったことにしてあげよう。

 ヘススとフアンは周囲を警戒して逃走がフェイントでないことを確認してから武器を収めた。

 

「助かった。お前さんがいなかったら死んでた」

 ハビエルがぼそりとつぶやく。

「役に立ててなにより」

 ふふん、と口の端で少し笑って見上げるとハビエルはやれやれと言った顔で肩をすくめて見せた。

「少し休んだら他のやつらの様子を見に行きましょうか」

「そうだな」

 

 エッジオに話しかけようと思ったらエッジオは砂狼(アル・ロッブ)の皮を剥いだり荷物の整理の仕事に忙しく働いていたので、近くの木に寄りかかってハビエル達を観察した。

 フアンも参加したそうにしていたが、矢の回収と使えるか品定めをして、だめなら矢じりを回収するので参加は見送りらしい。

 

 車座になってサイコロを転がして遊び始め、気になったので気になって近づいてみると、ホルヘがちらっと私の方を見たがすぐにサイコロに視線を戻し、ゲームを続けた。

 

 2個のサイコロを転がして銅貨を中央に投げて次の人。

 どういうルールだろうと観察しているとゾロ目出ない時は中央に銅貨を投げて、ゾロ目が出たら中央においた銅貨を総取りするらしい。

 面白いのだろうか。

 3周くらい回した頃ハビエルがそろそろ行くぞ、と立ち上がる。

「勝ってるから早めに切り上げやがった!」

 ホルヘが文句を言いながら出立の準備をする。

 

「おれらの判断のせいで全滅する所だった、恩に着る」

 ハビエルと先頭を歩き、ペドロの班の方に向かっているとハビエルが改めて礼を言ってきた。

「大所帯で固まってたっていう理由がわかりました」

「だが、気が緩んでいたようだ。いつもはもっと少なくて、お前さん方の力を見ようとして分けたせいで全滅する所だった」

「危なかったですね」

「だが力は本物以上だった。これからもよろしく頼む」

 

 しばらく歩いた頃、遠くで叫び声が聞こえる。

「ベルニの声だ、急ぐぞ!」

 ペドロの班の1人、ベルニの声らしい。

 重い装備で屈んで走り続けるのは難しいので早足になり、急いで駆けつける。

 駆けつけてみると8頭の砂狼(アル・ロッブ)に囲まれ、1人は倒れ、2頭の砂狼(アル・ロッブ)が血まみれで転がっている光景だった。

 

「大丈夫か!」

「助かる、ベルニがやられた!」

荷運び屋(ポーター)! そいつを頼む!」

 ヨンがエッジオを守る体勢を取りながらエッジオは急いで倒れるベルニに駆けつける。

 腰に付けた飲み薬(ポーション)入れを開け瓶を取り出すとベルニを抱き起こし飲み薬(ポーション)を飲ませた。

 

 8頭の砂狼(アル・ロッブ)をまとめて相手にするのはこちらの人数が多くても見なければいけない箇所が多すぎるのでペドロの班と私の班で背中合わせになり、砂狼(アル・ロッブ)を分断する形で群れの中に入り込む。

 エッジオは邪魔にならないように班の間にベルニを引きずってくる。

 後ろの方でボンボンと魔石が破裂する音がして爆発の熱風と砂狼(アル・ロッブ)の悲鳴が聞こえてエッジオは生きた心地がしなかった。

 

 魔石に傷をつけて放り投げるフアンと全力投球で爆発させる私の援護をはさみながらハビエルが大盾で視界を塞ぎ、ヨンの戦斧が影から襲いかかる。

 ホルヘとヘススはエッジオとベルニを守るために内側で待機する。

 

 魔石を砂狼(アル・ロッブ)の1頭に叩きつけ、倒れる仲間を見て驚いた隙にヨンが飛び出し雄叫びを上げながら1頭を屠る。

 ヨンが戦斧を振り切って無防備になった隙を砂狼(アル・ロッブ)は見逃さずがら空きになった背を狙って噛みつく瞬間、ホルヘの「後ろだ!」という声に反応して戦斧を手放して転がり、私が投げる魔石を警戒する。

 襲いかかる動きを見せる砂狼(アル・ロッブ)に魔石を投げる振りをしてみると横に飛び退った。

 何度かフェイントをかけてみると途中からフェイントを見抜くようになってしまい、投げつけると避けられてしまい、砂狼(アル・ロッブ)がいた所を通り過ぎて爆発した。

 その隙にヨンが戦斧を取りに行こうとすると今度はそちらで威嚇の声を上げ妨害をする。

 

 フアンの投げる傷をつけた魔石の爆発タイミングも、うっすら光るからかなんとなく読まれてしまっている気がする。

 一瞬止まった隙に魔石を投げる。

「おい! そこはだめだ!」

 ヨンが慌てた声をあげるが、魔石はすでに私の手を離れてしまっている。

 軽やかにぴょんと飛び退いく砂狼(アル・ロッブ)

 砂狼(アル・ロッブ)の頭を狙ったため、元いた場所から少し向こう

にはヨンが手放した戦斧が転がっていた。

 幸いなことに戦斧に直撃はしなかったが爆発で弾かれた戦斧はハビエルの盾にものすごい音を立ててぶつかり、柄が折れて修理が必要になってしまった。

「ご、ごめん」

「いや、いいんだ」

 後で修理代だけでも出そう。

 

 攻撃力が一番高いヨンの武器が私のせいで使い物にならなくなってしまったのでヨンは戦力外になってしまい、ヘススとホルヘが前にでざる負えなくなった。

 彼らは体格がよくないので片手剣と盾では重量を支えきることができるか心配なのだが、もしかしたら加護のおかげで耐えきれるのかもしれない。

 ハビエルの脇に私が立って2人で1頭に当たり、フアンは弓で2頭の動きを監視し、ヘススとホルヘが2人で1頭に当たる。

 身体強化を強めて右手で剣を構え、魔石の袋に左手を入れ、5、6個まとめて握り壊れない程度に力を込めて傷をつける。

 1、2、3と数えて魔石をまとめて放り投げる。

 散発的に放り投げられるだけだった魔石に慣れていた砂狼(アル・ロッブ)はまとめて降ってくる魔石にぎょっとして体を堅め、フアンが矢を放つ。

 防御姿勢を取るように伏せて縮こまり目を閉じ、爆発に耐える。

 爆発の土煙の中からあちこち焦げて肩や体に矢が刺さってはいるが、戦意はまったく喪失していないようにみえる。

 

 1体が相手だとハビエルの出番はあまりない。

 しょうがないので私が前に出てたまにフアンに援護してもらう。

 牽制に魔石を砂狼(アル・ロッブ)の死角に放り投げ、聞かれないように爆発に合わせて龍鱗(コン・カーラ)鋭刃(アス・パーダ)をかける。

 なんか久々だなあ、と思いながら1対1で砂狼(アル・ロッブ)と向かい合う。

  

 ゆっくりと歩きながら品定めしているのか、しばらく私を観察した後、唸り声を上げながら身を低くしてかまえた。

 来る、と思わず身を固くする。

 砂狼(アル・ロッブ)にしてみれば、集団で畳み掛けてくればどうにでもなろうものを、なぜか1人で前に出てくるチビの相手はどうやっても負けることがないだろう。

 頭でも喉でも腹でも、どこを狙っても一噛みで仕留めてしまえばいい。

 こいつを殺して1人ずつ殺していって適当に減らして逃げればいいだろう。

 

 砂狼(アル・ロッブ)は人間が反応できない速度で、人間が耐えられない重さで押しつぶすのがいつもの必勝法である。

 身を低くして襲いかかる体勢になる。

 

 剣の修行をしていない私にまっすぐ襲ってくる砂狼(アル・ロッブ)相手に咄嗟にできることは、突きくらいしかできそうなことが思いつかない。

 上段にかまえておけば、届く前に振り下ろしさえすればいいし、避けられても切り返すこともできるはずだ。

 そう思って右足を引き、半身になって剣を構えた。

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