はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!- 作:白澤建吾
「魔法使いになったのですからローブは大事です」
「近接戦闘をするので足に絡まるようなローブは動きづらいのですが」
「あら、殿方に戦ってもらったらいいじゃないですか、きっとお似合いですよ」
「これ下には何も着ないのですかね?」
「着てしまうと暑いですから、下着だけだそうです」
下着姿になり、頭からすっぽりとローブを被ってフードを取る。
スースーしてなんか裸にコートの変態になった気持ちでニコレッタとリビングに行き朝食を取った。
足に絡みついて邪魔なのでスカートをつまむ様にローブの腿の辺りをつまんでバドーリャを降りる。
ローブ姿で歩くと下町の人たちが遠巻きにジロジロと見てくることに気づく。
ローブを着て歩いてはいけなかったのだろうか、だったらニコレッタが差し出してくるわけがないはずだし、と思い居心地の悪い思いをして街を抜け、地図にあった魔法ギルドの施設とやらに向かった。
身体強化を使って走るとローブが絡みついてくるので昔のアニメで見たおてんば姫のように腿の両脇を掴んで持ち上げて大股で走る。
ニコレッタがみたらきっとはしたないというに違いない。
1時間ほど、と言われた場所は身体強化を使って歩くと5分ほどで到着した。と思う。
指定された場所だと思った場所は子供くらいの大きさや中型犬くらいの大きさの岩転がってるくらいで、レンガで組まれた小さい小屋が荒野のど真ん中にぽつんと建てられていた。
日除けのために屋根の下に入り、本当にここでいいのかと、扉のない出入り口から顔を出してキョロキョロと見渡していると遠くに小走りでこちらへ向かってくるパンツルックのオケアノの姿が目に入った。
「あらあら、ずいぶん早くに来たのね、その格好じゃここまで歩いてくるの大変だったでしょう」
「うちの召使いが魔法使いならこの格好だというので大人しく着てきたのですが街の外に出る時はローブではないのですね」
「だって、走り辛いもの」
「すごく走りづらかったです」
ローブを掴んで走る真似をするとオケアノはふふっと笑ってお転婆ね、と感想をいって小屋の隅にあるテーブルに背負っていたリュックをおいた。
「気を取り直して、新しい魔法を覚えましょうか。若い魔法使いさん」
と、ウィンクをした。
「これはね、雷を落とす魔法なんだけど、9段階目にした方がいいんじゃないかとかそういう話があるくらい、8段階目の他の魔法と違う感じの魔法でね。建物の中だと発動しない広い場所が必要な魔法なの」
「難易度的には8段階目ってことですか?」
「そうなの、詠唱難易度は8段階目だけど、消費魔力は9段階目かもっと必要で唱えられるのもわたしとうちの人と、会長と、あと20人くらい」
「思ったよりいますね」
「そう思う? 何百人かいる中で23人だけなのよ、あなたで24人目、あ、でもその前に昨日できなかったことしてもらわなくちゃ」
「昨日? やり残したことありました?」
「
「わかりました」
そう言って手をかざして
「さすがね! 合格よ」
パチパチと手を叩いてほめてくれるオケアノ。
「逆に自分には使えて人にかけられないことってあるのですかね?」
「あんまりないけど、たまーにあるの。たまーに。そういう人は自分勝手だったり自分中心すぎてチームワークとか考えられない人だからあんまりね」
「そういうもんですか」
「あなたはそんなことないって思ってたけど、念のためね」
「はあ、そうですか」
「じゃあ、次の魔法を覚えましょうか」
「おねがいします」
「この魔法はちょっと音が大きいから心をしっかりもってね」
1歩前に出て手を広げ詠唱を開始する。
破壊と再生を司る
誉れ高い我が神よ! 宇宙の真理たる御身より出ずる力を我に貸し給え!
吠え猛る御身が力! 打ち据えるは我らが神敵!
汝が怒りの矢を給わらん!
詠唱を終えたオケアノは空に向かって人差し指をびっと突き上げ「
おおーと思わず声を上げてバチバチと放電する雲を見上げた。
きっと口をぽかんとあけて間抜けな顔をしていることだろうと思う。
「えいっ!」
オケアノが気合とともに指を振り下ろして少し離れた所にある岩に雷を落とした。
眼前が真っ白になるほどの光と頭をハンマーで殴られるような空気の衝撃、鼓膜が破れるかと思うほどの雷鳴が響いた。
チカチカした目が慣れて、やっと目の前が見えるようになると岩は粉々に砕けて地面が焼け焦げていた。
よろよろと屋根だけの小屋まで戻ってくるとふう、とため息をついた。
「術者の目と耳は大丈夫なんですか、これ?」
「全然大丈夫じゃないの」
「使えるんですか?」
「射程は長いし、威力はあるのよ」
困ったように頬に手を当てて答えた。
「敵も味方も行動不能になってしまいますね」
「さ、がんばって。あまり自分の近くに落としちゃだめよ」
視力を取り戻したオケアノが私の腰を押して促した。
目がくらむのはいやだなぁと思いながらやれやれと定位置に突くと詠唱を始める。
破壊と再生を司る
誉れ高い我が神よ! 宇宙の真理たる御身より出ずる力を我に貸し給え!
吠え猛る御身が力! 打ち据えるは我らが神敵!
汝が怒りに滅びの矢!
どこかで聞いた詠唱だな、と魔力の集まりを感じながら
確かに、
オケアノの様に人差し指をびっと突き上げると指し示した先に集まった不可視の魔力が飛んでいって雲になった。
「
あまり近いと怖いのでオケアノが落とした岩よりもっと遠くにある同じくらいの岩に向かって指を指した。
眼の前が真っ白になった瞬間、あ、目をつぶるのを忘れてた。と思い出したがすでに後の祭り。
稲光で眼の前は真っ白、轟音で耳はぐわんぐわんして聞こえず、衝撃で三半規管にもダメージがあったのか真っすぐ立っていられない。
くらくらしながらオケアノの元へ戻る。
「覚えるために後何回目が眩んだら覚えられますかね」
「1回でうまくいくなんてさすが
「なんですかそれ、初耳なんですが」
「ギルド長の会合があった時にあなたのところのギルド長さんが『我がギルドの北の爪は初陣で10体の
何を勝手なことをしてくれてるんだあいつ! それに北の爪?! 変なあだ名をつけないでもらいたい!
「へ、へ~。そうなんですか……」
平静を装って返事をしたがきっと私の表情は引きつっていただろう。
「北の爪なんて変な二つ名嫌よね。もう1人は南の爪ですって」
もう1人? 南の爪? イレーネ?
「なんで爪なんでしょうね? もうちょっとマシな感じにしてほしかったです」
「そうよね。あ、わたしは後ろを向いてるから
そういうと耳に何かをしてから屋根の下で後ろを向いて本を開いた。どうやら慣れっこらしい。
1人でどかんどかんと雷を落として数分、破壊と再生を司る
「やっぱり早いのね。認められてる子は早いわ」
そう言いながら耳栓を抜いてため息をついた。
「認められる?」
「不思議なものでね、破壊と再生を司る
「ここまで覚えられてこんな思いしてこの魔法だけ覚えられないんじゃ、そう思いたくなりますね」
「でしょ? そして、これで全9段階、すべての魔法を習得したと認めます! おめでとう~」
拍手をしながら魔法ギルドで覚えられる魔法すべて習得したことを祝ってくれた。
「ありがとうございます」
なぜか一緒に拍手してしまって嬉しそうにニコニコと拍手するオケアノとヘラヘラして拍手する私。
拍手を終わらせようと段々と弱くゆっくりにしていくとオケアノが人差し指をピッと立てた。
「そこで相談なのだけど」
「はあ」
「あなた、魔法ギルドに入らない?」