はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!- 作:白澤建吾
若く有望な新人ギルド員ことカオルの奮闘を小屋の陰から見てオケアノは思う。どうにかして加勢しなくては。と。
普通、
それに長期になるなら
塩水みたいなスープとカラッカラに焼き締めたパンを食べて耐えることが一人前のハンターになることなんだって偉そうにふんぞり返って言っていたのを思い出した。
その間にも
あの怪物を相手にするには囲んで叩けるくらいの人数をもって当たらないと死人が出たり石化の呪いを受けたりして全滅だってありえる、それを経った1人で立ち向かい渡り合っているのだ。(避けるたびに変な悲鳴をあげながらだけれども)
わたしが手を出すときはトドメか致命傷を狙える場合にだけ限らないとあの娘の頑張りを無駄にした上に犠牲まで出してしまうかもしれない。
声を殺し、祈るように
遠くから「わっ」や「うわっ」、「おわあ!」という年頃の娘があげる悲鳴ではない様な悲鳴を聞きながら今か今かと発動を待つ。
もう少し可愛く叫べないものかしら。
そのうち足が滑ったのか疲労によりミスをしたか、尻尾の蛇が大きく口を開けて襲いかかるのを両手で上下から挟み込んで強引に口を閉じると、首を振るのに合わせて吹き飛ばされバランスを崩した。
「危ない!」そう叫ぼうとしたとき、石化
あの娘が石になる瞬間なら
それで
これが最初で最後のチャンス、そう思って
「
わたしを守って戦ってくれていた娘が今にも襲われるというのに悠長に魔力の雲が集まっていく様子を見て、必要な時に使えないからここの魔法は嫌いなのよ! と心の中でこの魔法を作った昔の魔法使いを罵倒しながら見守り、もう少しという所で石化
もうだめ、途中でも良いから一か八か落とさないと! そう思って指を振り下ろそうとした時、硬質な物が割れる音がしてあの娘が変な悲鳴を上げて吹き飛ばされ、ゴロゴロと転がった。
何かが割れて驚いた
「いてててて」
吹き飛ばされた勢いを利用して転がりながら起き上がりながら
強めにかけた
オケアノは
魔力の雲が収縮し、雷が落ちる瞬間、
オケアノが避けられた! と次の魔法の準備をしようとした時、地面に落ちた雷があちこちでスパークしながら大地を濡らしていた水を伝って
これはオケアノも知らない効果で、雷は水を伝って広がるということ自体、水の少ないこの地域では知りようがないことだった。
分散してしまって致命傷にはならなかったが、すぐには動けない様子。
今のうちに止めを刺さなければ、そう思って走りながら
オケアノがカオルの方を見ると同じ様に詠唱をしていた。
全力疾走しながら詠唱したため、息が切れてしまってこんなに走ったのはいつぶりだろうと思いながら射程内で「
同時にカオルは「
感電によるショックから意識を取り戻した
頭の上と左右を抑えられ、自棄になったかカオルの方に向かって駆け出した瞬間、左右から
「だー! もう無理!」
そう叫んでローブが汚れるのも気にせず乾きかけの地面に大の字になって大きく伸びた。
オケアノも年甲斐もなく叫びだして喜びたいのをこらえてカオルの無事を確認する。
カオルが石化の呪いを受けたのなら固まる前に神殿に連れて行ってあげなくてはいけないからだ。
ボロボロのローブで横になっている姿はとてもじゃないが無傷には見えないが大きな怪我をしていたり、石化が始まっている様子も見えない。
恐る恐る様子を伺ってみると横になったまま首だけを回して言った。
「危なかったですね!」
危なかったのはあなた1人よ、そう心のなかでつぶやくとカオルの手を取って引き起こして一緒に休憩所に歩いた。
わたしは新たな英雄の誕生を見たのかもしれない、
短期間で普通の人間がこんなことできるはずがない。
きちんとした装備さえあれば
休憩所でオケアノはカオルのローブを脱がせて簡単に洗ってあげた。
どうせ人は来ないし、外に干しておけば乾くのにそう時間がかかるものではないだろう。
カオルはすみません、と言いながらローブを渡して下着姿のまま椅子にどかっと座り、空中に
オケアノはこの娘に羞恥心は無いのかしらとか、水を魔法で出したまではわかるのだけど、どうやって浮かせているのか教えてもらいたい、と思いながら今やるべきことをやるために
「
手刀を刃に変えると、
肉を取るなら首を落とすか、心臓を1撃で狙わなくてはだめね、とつぶやく。
きちんと処理をすれば高級食材として売れたのに少しもったいない気もするが、命には替えられない。
そう思いながら手早く解体し、体の奥にある魔石を取る。
羽の根本に刃を入れ、背中を割り、水で洗って奥に魔石が見える。
肉も骨もすべて捨てるつもりでいるので丁寧にしなくていいから楽でいい。
呪いの元になる魔力をたたえた握りこぶし3個分にもなろうという大きさの魔石を見つけ、ずるりと引き出した。
さすがに
両手で魔石を持ち上げて太陽に透かして輝きと透明度を確認する。
濁りはなく、傷付けずに倒せたのできっと良い値が付くはずだ。
こんなに充実した気持ちで戦利品を見るのは何年ぶりだろうか。
まだ駆け出しだった頃はどうにかして安全に狩りができないかと工夫をしたのに安全な環境に慣れるとまた昔の環境に戻りたいと思うのはなんてわがままな生き物なんだろうと我ながら呆れる。
安全な狩りも大事だけれど、持てる手段の中で何ができるか考えて強敵を倒すという狩りのなんと充実することか、魔法使いは後ろで構えて援護するものだなんて言ったのは一体だれだったか。
カオルに聞かせると「ほとんど隠れてたじゃないか!」と抗議されそうなことを考え、またハンターとして活動してみてもいいかもしれないとオケアノは新しい冒険に思いを馳せた。