はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!- 作:白澤建吾
緊張した面持ちから笑ったことによって力が抜けたのか気負わずに臨めるようになったようで安心した。
それからまたしばらく歩いて遠くに草の生い茂る水場が見える。
「あれだ、あのオアシスにいるらしい」
ハビエルが指で示した。
「
指でわっかを作ってオアシスを見てみる。
「あー、居ますね。この間のよりちょっと大きそうですがこの人数でなら大丈夫でしょう、武器もあるし」
この間は何も持ってきてなかった。
そのときのことを思い出して、今回は楽そうだと胸をなで下ろした。
ハビエルとヨンの先導で風下に回りこんで
池を中心として周りに低木や草が生い茂るオアシスを
フアンが矢をつがえ、全員が武器を抜き、すぐにカバーに入れるようにハビエルが大盾を構える。
低木の影から出てとびかかる瞬間に矢を放つ、そんな予定だった。
飛びかかる距離を稼ぐために静かに低木から出た瞬間、目の前にもう1頭の
先頭が急に止まったので後ろで止まりきれずにぶつかりその拍子に金具が当たりガチャリと金属音が鳴った。
けだるげにうっすらと目を開ける
丸くなって寝ていた
痛みに驚いた
「2頭いるとか聞いてませんが!」
「おう、おれも聞いてないわ」
「どうするんですか!」
「どうもこうもどっちかが全滅するまで戦うんだよ!」
「運が悪かったな」
「ほんとですよ! ヨンさんは私と手前のを、そっちはハビエルさんをリーダーにして対処してください! オケアノさんもそっちでお願いします!」
「
口々に文句をいいながら二手に分かれて
ホルヘが恨み言を呟いたルメルスというのは狩猟の幸運を与えてくれるのだが、賭け事に関してはいつも良い結果をもたらしてくれるとは限らないという祈る意味があるのか疑問が残る神らしい。
比較的大きい方を私たちが担当することにする。
強めの身体強化をかけて
「こちらで気をひくので良い感じにやってください!」
ヨンにそう叫ぶと戦斧を握り直していつでも振れるように構えた。
暑い乾燥地帯だとうまく
鳥部分に当たっても羽毛があるため奥まで刺ささりきっていないのか嫌そうにしても血がにじむことは無かった。
頭を伸ばしてつついてくるので頭を狙いやすいと思うかもしれないが、短剣と長さの変わらない
尻尾の蛇に近づくと巨大な頭が牙をむいて襲いかかってくるのを避けながら伸びきったところを狙って短剣を振り下ろす。
硬質な音がして表面から煌めきが舞い、剣が当たったところが鱗が白くなる。
魔法防御がかかっていたのか、私の短剣にかけられたシャープエッジが砕け、裸になった剣は鱗に傷を付けられても尻尾の蛇を落とすことが出来なかった。
私の武器と腕前では魔法で戦うしかなさそうだ。
「悪いな! 手入れしてなかった」
悪びれもせずにヨンが言う。それだけじゃあ無いのだけど、説明する暇はない。
「
試しにこっちの魔法を放ってみると 不可視の空気のゆがみが尻尾の蛇を襲う。
多少でもダメージが与えられればと思って放ったが気持ち悪そうに頭を振っただけだった。
では、鳥の方はどうだろうと逃げ回りながら体に向かって放ってみる。
こっちは一生懸命に戦っているつもりなのだが、蛇の方は威嚇の声をあげ私を気にしているのだが、鳥の方はまだあまりやる気になっていないようで、軽くつついてやればいいかといった感じで、近寄ったら頭を下げ
巨体というのはそれだけで優位性をもつのだと実感させられる。
近づく必要は無いのだけど、まったくもって近づけない。
疲れた振りとかしたら油断してくれないかななんて考え事をしながら走り回っていたら、穴に足を取られてバランスを崩した。
「わわ!」
遠くでヨンのリーダー! と叫ぶ声が聞こえた。
バランスを崩しながら振り向くと尻尾の蛇が襲いかかってくる所だった。
大きな口を開けて首を伸ばしてくる蛇の頭が私の左腕を捉えるギリギリのタイミングで引っ込めたと同時に咄嗟に振り回した短剣の腹が蛇の頭を横から捕らえた。
ガンと重い音がして反動で転び、走っていた勢いのままゴロゴロと転がり砂まみれになった。
慌てて飛び起きて剣を構えると、尻尾の蛇はぐったりと
剣といっても鉄の塊、切れ味は悪くても腹で叩けば脳を揺らして気絶させられるらしい。
とっさの出来事だったがいいように転んでくれて助かった。
今度は相当に怒っているようで足をバタバタと踏み鳴らして砂埃をあげながら頭を振り回してその怒りを表現している。
怒って暴れて私だけを執拗に追いかけてくる
衰弱する毒を持つ爪と石化
これが戦い慣れているというやつなのかもしれない。
毒がある足の爪ともかく、素早く突き出される
どうしても逃げ回りながらの戦いになってしまっている。
だが逃げ回りながらだと後ろの見えない所から襲ってくる石化
前の
大人の両手で一抱えもあるような太さの首が振り回される攻撃は、嘴の先端にさえ気をつけておけばいい今までと違って、距離を見誤ると丸太で殴られるようなおおざっぱで威力が高い攻撃となっている。
防戦というか、ひたすら必死に避け続けること数分、オケアノの
まだ息があるようで立ち上がろうとしたところをハビエルが大盾の端を持って頭に向かって大盾を振り下ろし、剣を持っている人はよってたかって体に剣を突き刺した。
土埃に薄汚れた羽毛が赤く染まっていく。
私と私の前にいる
もう1頭がとどめを刺され、血を流すのを見て怒りと驚きの声を上げハビエルを威嚇する。
血に汚れた盾を構えて受ける姿勢をとるが、こちらの
私から目を離した隙に
覚えたっきり1回も使ったことがない(気がする)魔法のことなだからか、すっかり存在を忘れていた。
火はだめ、氷は使えない、なるべく原型を残したい。そんな縛りがあるなら一番適している魔法は土の魔法だろうということをオケアノの
逃げ出すついでにつららの様な形をした岩の様な土で作られた弾丸を10本ほど出して伸びている尻尾の蛇に向かって1本放って
目一杯の力で射出した
跳ねる様に一瞬動いたあと痛みで目を覚ましたのか、
しばらくすると落ち着いたのか残った目と
殺意を込めて私をにらみつけてきた。
怒りに我を忘れた本体と尻尾の連携はバラバラになり、嘴を伸ばそうとすると蛇の頭が噛みつこうとするせいで伸ばした嘴が届かなくなり自分の尻尾に威嚇する始末。
これなら、と思い身内というか自分同士で喧嘩をし始めた
吸い込まれるように蛇の口に飛び込んだ
すでに下顎だけになった蛇を揺らして起こしてみるがごぼごぼと吹き出した血が砂に線を引くだけだった。
自身の分身とも相棒ともいえる尻尾の蛇の死を前にしてその犯人をにらみつける。
こいつだけは石化して砕いてしまわなくては気が済まない。と。