はるけき世界の英雄譚-召喚されたら女になってんですけど元の体どこですか!- 作:白澤建吾
少し時間は戻る。
オケアノが居る側のチームでは、ハビエルが先頭に立ち
そして、尻尾の蛇の意識を散らすためにホルヘとヘススが喚きながら牙の範囲ギリギリの所で剣を振り回した。
本来であれば正面の攻撃担当で長槍を持った戦士が2~3人必要なのだが、それはオケアノの魔法を代替にする。
カオルのかけた祝福によりいつもより動きが見え、重い盾を自由に盾を動かすことができる。
ハビエルは自分がとんでもなく強くなった気がして喜びと驚きで高揚した。
突き出された嘴を盾を自在に操って受け止め跳ね返す。
自由にならず腹立たしいのか叫び声をあげながら足を踏み鳴らして感情を吐き出した。
手甲で盾を殴りガンガンと音を立てて挑発を繰り返す。
「おら! 来いよ!」
口々に喚きたてて
しばらくするとオケアノの「下がって!」という声が聞こえ、大盾を振り回してけん制してからオケアノの脇に下がる。
その時、フアンは体勢を崩すため足に向かって矢を放ち痛みに寄よって意識を足に向けた。
同時に「
「今だ!」
盾を捨て剣を抜き放ち
ヘスス達は盾を捨てたハビエルを見てそれぞれ目の前にある
びくんと体が跳ね、首と尻尾の蛇をめちゃくちゃに振り回すと力が抜けて大人しくなった。
刃についた血を血振るいで飛ばして鞘に納めるのを見てホルヘが歓喜の声を上げ死んだ
ハビエルはやれやれ、まだ終わってないんだがと思いながらもう1頭の
オケアノが使った大魔法と比べると、あんな小さい土で出来た杭の様な物で倒せるのかと思う様な物を宙に浮かべて走り回っているカオルの姿をとらえた。
その代わりオケアノと違って動き回っても使えるようだ。
土の杭の大きさは彼女の肘から指先までくらい。
彼女の周りにふわふわと浮かび、彼女が走ると合わせてついていくようだ。
いつかあーいう魔法を使ってみたいものだ、と大盾を構えた自分の周りに土の杭を浮か防御と同時に反撃をするのを想像した。
相手の攻撃を盾で受け止めて土の矢で攻撃する。理想的な戦い方に思えて自分の目標はあれにしよう。と決めた。
完全に気を抜いていたと気づいて気を取り直して介入の機会を探る。
気を取り直してカオルを見ると、
接近戦ができないから引っかき回すしか無いのだろう。
踏み潰そうとする足の下を走り抜け、土の杭を飛ばし、いくつかはその体に突き刺さっているようだが、致命傷になりそうな土の杭は
宙に浮かせた土の杭の最後の1本を打ち終わると好機とみた
展開した
戦っていた時間はそんなに長くなかったが、脱力したようにペタリと座り込むと指を2本立てる変なサインを見せたが意味がわからなかったのでまたリーダーが変なことしてるな、と無視した。
ハビエルとカオルは疲れただろうと役目を免除され、休憩を取る。
ヨンはやっと出番が出てきたので張り切って解体用に使っている大ぶりのナイフを取り出してカオルが倒した
力仕事なのでオケアノも役に立たないと休憩を取らされ、カオルをねぎらうために近寄ってきた。
「すごかったわねえ、わたしもできるようになるかしら」
「魔力量自体あるんですからコツをつかんだらすぐですよ」
そう答えると魔力操作の練習をし始め、ハビエルはあれだけやってもまだ余裕があるのかとぎょっとした顔で見た。
「やっぱり魔法使いが1人いるだけでも難易度が変わるな」
魔力を出したり動かしたりするオケアノを見て、ハビエルはしみじみとつぶやいた。
魔力は使っていないのでいい機会だとハビエルも訓練をはじめ、すぐに枯渇させ回復を待って再度訓練をするといった作業を繰り返した。
2頭の
大型の個体が2頭なので全部持って帰れないだろうがエッジオの
「リーダー! 来てくれ!」
「カオルちゃーん!」
「嬢ちゃん! 仕事だぞー」
私の仕事はもう終わったというのは勘違いだったようだ。
無駄に走り回ったけだるい体に気合をいれて立ち上がる。
「ぃよっこいしょ!」
「カオルちゃん年寄りっぽい」
オケアノがからかってくるのに「走り疲れたんですよ」と返事をして呼ばれた
「どうしました」
「これよ」
そう言って見せられたのは2頭の
はあ、と気のない返事をすると
「疲れてるところ悪いが、処理を頼む」
悪いと思っていないのがわかる態度でヨンが言った。
「まあ、ちょっと走っただけですから疲れてませんよ」
ふふん、と余裕さをアピールして返事をした。
「そっちが終わったら次はこっちをお願いするよ」
そういうエッジオの声に軽く手を挙げて答え、
そんな彼らを無視して次は切り分けた肉の前に立ち、
まだ日が高くないとはいえ、気温が高いおかげで凍らせるのにてこずったが時間をかけてなんとか凍らせることができた。
おいていかなければいけない肉が出そうだったが実家が商家だというホルヘがそんなもったいない真似ができるかと反対された。
とはいえ、個々の積載量も限界だし往復することも難しいと考えていたが結局
改めて全員に祝福を与えることによって総積載量を増やして解決した。
祝福をそんな使いかたして怒られはしないだろうか。
「全員無事で全部持って帰って捨てる部分がでないっていうのは気分がいいな」
柄の長い戦斧を担いだ上に
とはいえ、急いで帰っても2日はかかる上に夏の日差しの中を歩くのでは早々に溶けて悪くなってしまう。
これはオケアノにも呪文を教えて手分けをしながら凍らせながら移動することで解決することにした。
制御が利かないだけで魔力量には問題が無いからだ。
その役目を果たすため、私とオケアノは肉を担ぐ役目を免除された。
「肉が冷たくて涼しいからいくらでも歩けそうだ」
ホルヘがごきげんに凍った肉をぺちぺちと叩きながら歩く。
ベタベタ触ると溶けてしまうのでやめてもらいたい。
少し歩くごとに表面が溶けてくると「おい、リーダー」とか「オケアノのねえさん、すまねえ」と声がかけられすべての肉を凍らせ直す。
私の扱いについても疑問が大分残るが抗議をしても改めてもらえないだろうと半ば諦めている。
身体強化をかけた移動のおかげで1日半ほどの時間でバドーリャに戻ってくることができた。
大量の肉を担いだむくつけき男たちが街の人にジロジロ見られながらバドーリャを練り歩く。
大急ぎでギルド
大型の
食べてみたかったのでオケアノと私はもも肉の一部を切り取って買い取らせてもらった。
量が多いので精算と分配は後日支払われるということで解散になった。
ヨンにヘスス、そしてホルヘは今日もらった賞金で豪遊するつもりだったらしくぶーたれながら帰って行った。
「お茶でもして帰りたかったけど砂埃まみれだからやめとくね」
切り分けた肉を油紙で包んだ物を受け取ってギルドを出て行った。
しばらく1人で私の分の肉を待って油紙に包まれた茶色い包みを受け取って自宅に帰る。
「おかえりなさいませ、今回はずいぶん長いことかかりましたね」
「そうなんですよ、遠かったですからね」
肉の包みを受け取るとお辞儀をしてキッチンの方に向かった。
そのまま肉の下ごしらえでもするのかと思い、荷物を置きに自室に向かおうとすると柱の陰からひょっこりとニコレッタがひょっこりと顔を出した。
「砂とかゴミとか落ちるので汚れを落とすまで歩き回らないでください」
そんなに汚いのかとちょっとショックを受けながら近くにあった椅子を引き寄せ、腰掛けてニコレッタが呼ぶのを待った。
鞄を足下に置いて身じろぎもせずに待っているとニコレッタの呼ぶ声がする。
はーい、と返事をして洗い場に行く。
「さ、服を脱いでください」
下着姿で石けん水を泡立ててもこもこさせた桶に手を突っ込んだニコレッタが居た。
「脱いだ服は後で洗うのでそちらの桶におねがいします」
ジャバジャバと泡立て続けるニコレッタが言った。
ニコレッタの死角の部屋の隅でこそこそと服を脱いでニコレッタの後ろに立つ。
まっすぐ立つのが心許なくなぜか肩が内側に入ってしまう。
「恥ずかしがらずに任せてください。というかそろそろ慣れてくださいカオル様」
「いやあ、そう言われても……」
泡を両手に持って立ち上がると問答無用で私の頭の上に乗せた。
「やっぱり泡立ちませんね!」
次々と石けん水をかけられ茶色い水がしたたる。
「すすぎは自分でお願いできますか?」
驚いて悲鳴を上げるがニコレッタは全く動じることが無く体を布でゴシゴシと洗う。
くすぐったくてクネクネすると「動かないでください!」と怒られてしまうが止まらないものは怒られても止められない。
この体はくすぐったがりすぎる。
元の体はもう少し鈍感だったのだが。
意地になりなんとしてもやりきるつもりのニコレッタと暴れる私。
2人とも息も絶え絶えになりながらなんとかすすぎ終わった。
「今度から私が自分でやりたいです」
へたり込んだニコレッタは疲れ切って大きく頷いて俯いた。
元の体に戻りたい、改めてその思いを強くした。