End Of The GATE ーBio Organic Weaponー 作:食卓の英雄
追記:作中で年代は示されてなかったんですね…。これは失態
――20XX年、8月某日。後に『銀座事件』と呼ばれるそれは、日本において戦後最大の死者数を更新した慎ましい事件だ。
銀座に突如出現した『門』より訪れた異世界からの侵略者。鎧を纏った人間や絵物語の様なモンスター達の軍勢により、抵抗する術を持たない、数多くの一般市民が犠牲となった。
多少の時間はかかったが、警察や自衛隊の尽力により敵軍勢は壊滅。兵の1割を捕虜とし、この事件は終息を迎えた。
その後、門の向こうに広がる世界(特地と命名される)に膨大な資源が存在する可能性を知った日本政府は自衛隊を派遣。大規模な陣を築き上げ、門の奪還に動いた特地軍と交戦。技術レベルの違いにより、ほぼ一方的な殺戮に近い形で撃退に成功した。
一先ずの安全が確保され、特地調査の為の部隊が編成されている頃。都内某所、捕虜となった特地民が収容されているこの場にて、2人の男が話し合っていた。
「それで?何だ、捕虜が怯えてるだって?」
「はい、それも異常なまでに…」
相談を持ちかけられた男は、部下である青年の言葉を聞き、タバコを吹かす。
「アホか、そりゃあ当然だろうよ。言葉も分からない、いつでも自分たちを殺せる様な奴らに捕まっちまってんだからよぉ。日本が捕虜を殺さないからって向こうのお国がそうとは限らんだろ。そんなこと、誰だって、小学生だって分かるさ。さっさと仕事に戻れ」
「いえ、自分は過去に他国の捕虜、安全性の確認もならない場を見たことがありますが、彼らはその、何というか…違うんです」
オドオドと、何か探しものでもしているかのように言葉を捻り出す青年に、「はあ…」とため息をつく。
「………言ってみろ」
「はっ!銀座事件の資料映像を拝見した所、彼らはその…恐慌している様な顔つきでした。既に傷を負っている兵士や、翼の欠けた龍もおり、汚れだってただの行軍では説明が付かないほどでして…」
「成程ねぇ…。お前の考えは分かった。…だがそれもこちらへ攻め入る前に何らかの軍隊、或いはあの豚頭みたいな生物にでも出くわしたんじゃあ無いのか?向こうの事情や勢力圏が分からない以上、詳しい事は言えんが、あり得ん話じゃない。そうだろ?」
口から紫煙を吹き出し、些か心配し過ぎな部下を宥める様に言う。そう言われると、青年も何も言えず「失礼しました」と言い残して退室した。
退室した直後、青年は再び答えの出ない問答を繰り返す。
(確かに、葉山さんの言うとおりに、俺の杞憂かも知れない。こちらの常識がどれほど通じるかどうか…。だが、あれは…あの顔は、死に怯えるだけじゃあないはずだ。…それに、民間人が撮影した資料。門から出てきてすぐの兵士の顔には色濃い恐怖が染み付いていた)
コツコツと響く硬質な足音は鳴り止まない。
(敵地のど真ん中に来たと思ったから?いや、それは侵攻してきた事から、向こうも分かっている筈…。そして、何故、一般市民だとみるや安心した顔を見せた…?……ダメだ、分からない)
相手から見れば、こちらの人間が戦闘能力を持たないとは分からないのでは…?第一、自衛隊が到着後、死者が出る戦場においても、攻撃方法以外で動揺しなかった兵士達がその程度で恐れるのだろうか…?これではまるで…理屈の通じる相手と出会った事に安堵している様な……。
「いや、やっぱり考えすぎか?……俺の悪い癖だ」
未だ燻る不安を無理矢理飲み込み、調査結果を待ち遠しく思う。願わくば、この違和感が杞憂である事を信じて――。
時を同じくして、特地――帝国領土某所。
ろくに整備されていない道なき道をゆく複数の影。彼らはみな一様に自衛隊の迷彩服に身を通し、防弾ガラスのヘルメットを着用していた。
『おいカメレオン。何故こんな辺鄙な場所へ逸れる』
『まあ待てフロッグ、主要な道や付近の街へは近づけないのは分かってるだろ?』
しかし、彼らの口から紡がれる言語は日本語ではない。
『バカにしてんのかフォックス!そんくらい知ってる!ジャパンの軍隊が調査に乗り出すからだろ!?』
『そうだ。奴らによると、明日明後日には偵察部隊が派遣されるらしい。俺達が見つかったら物量差で押し潰される』
『ああ、正直あの監視の中潜り込めたのだって奇跡だ。裏切り者に感謝するんだな』
彼らは、ある人物の手引きにより、日本に入国し、自衛隊に紛れて特地へと潜入したのである。最も、これを手引きした者は別件でしょっぴかれているが、まだ気づかれる様子は無い。
特地調査部隊等と銘をうってはいるが、その実国籍もバラバラの雇われの傭兵集団である。この部隊の派遣に関わっていない国の人間を混ぜることで、撹乱し責任逃れをなす為だ。
『…にしても、装備はもうちっとどうにかならなかったのかねぇ?』
『我慢しろ。我々の主武装があるに越したことはないが、潜入の為だ』
彼らの装備は、一部装甲は改造されているが、銃火器は特地に派遣されている自衛隊の個人携行火器である64式小銃だ。その分、持ち込んだ弾薬は多いが、不満を解消する程ではなかった様だ。
『…待て、集落らしきものが見えてきた。音は控えろ』
『『『了解』』』
叢の影から双眼鏡を除き、その集落の様子を伺う。火器を持ち込んでるとはいえ、友好的な関係を築き、極めて平和的な手段を用いて、利権を手に入れる事が目的である。
『……ハズレか。こりゃ廃村だ』
チームのリーダーたる人物が呟く。パッと見は、まるで何もない集落かの様に思えるが、よく見れば道に木桶や農具が散乱し、開け放たれたままの扉には、赤黒いナニカが付着している。
『気を付けろ。何かから逃げた跡はあるが、血痕を確認した。周囲に敵性体の可能性アリ』
『ギンザの時みたいなクリーチャーか?』
『…いや、分からん。野盗や身内のいざこざの線も考えられるが、どちらにせよ友好的とは言い難い』
フロッグが神妙な顔つきで尋ねるが、それすらも曖昧だ。ここは異世界。現地での常識も、イレギュラーも、基礎が無ければ判断も推測も出来やしない。
『班を二つに分ける。リザード、スネイク、サラマンダー、ニュートは周囲の警戒。後は俺と共に集落の調査だ』
『了解』
陣形を保ちながら、慎重に歩を進める。集落の中央付近まで移動したが、それまでに動く気配はない。寂れた雰囲気を醸し出す集落は、明るい時間帯であっても中々不気味に映ることだろう。
外から見たとおり、田舎の農村と言った様子で、厩の様な建物も確認できた。
近くの家へ入ると、どうやら準備する暇も無いまま逃げたらしく、作りかけの料理や荷物等がそのままに残っている。
『これは…ハーブか?現地特有のものかもしれん。回収しておけ』
『はっ』
幾つかの家宅を捜索するが、食料や日用品以外は中々見かけない。一応、こちらの人体に有害かの調査は必要だが、向こうの兵士の体構造は人と変わりない。心配するほどのものでもないだろう。
『メモ紙すらないか…となると、識字率は期待したほどでもないか…』
『リーダー、ヒューラーもこっちでよかったのか?』
『今の奴はフロッグだ。どうした、お前が口を挟むとは珍しい』
『…アイツの性格を知らない訳じゃないでしょう。アイツ、手に入れたモンとかは報告しないし、何より現地民とトラブルになる可能性がある。アイツに言っても「そうなったらバレない様に始末するから大丈夫だ」とか吹聴していやがった』
憤る部下を尻目に、リーダーと呼ばれた彼は淡々と答える。
『安心しろ。奴は平時にこそ問題を起こすが分別がつかないガキじゃない。だがまあ、その心配も無用だ。むしろ収穫が少ないであろうここだからこそ、奴をこっちに移した訳だからな…』
丁度その頃、フロッグとアリゲーターのネームを持つ彼らは、少し奥に建つ、他よりも幾分か立派な建物へと踏み入った。
『この家だけ造りが違うな…村長とかそういうタイプの家か?もし俺がここの長だったらこんなダサい改築なんてしないね。でっけぇワンルームに必要なモンは揃えて、そう、3階建てがいいかな?庭も作ってそこで虎なんて飼うのも良いかもしれねぇ、娯楽設備やらコレクションルームも拵えてだな…』
『フロッグ!任務中だぞ!』
『はいはい分かってるよアリゲーター。ただのジョークだろジョーク。そんなんで一々ピリピリカリカリしてるからオマエはまだチェリーのまんまなんだよ』
『なっ!?お前、言わせておけば』
生真面目と軽薄。そこだけを見ればこの二人の相性は良くないようにも見えるが、お互い仕事には全力を尽くすもので、その点に関しては認め合っていた。
ガタンッ
故にだろう。顔を赤くして怒るアリゲーターと、その反応を笑い飛ばすフロッグの顔が一転。先程までの雰囲気が嘘の様に消え、真面目な顔つきで頷く。
『おい、誰かいるのか?』
携帯していた64式小銃のセーフティを解除し、物音のした方向へと向ける。
『おい、返事をしろ!撃ち殺されてぇのか!』
『待てフロッグ!何かも分からんうちにやるんじゃない!』
アリゲーターが宥めるも、フロッグは進んでいく。
『おい!答えやがれ!』
『ああクソッ、先走るな』
突入した先、乾燥し固められた地面に藁が敷き詰められ、木の柵で囲われた内には、白い羽根が散りばめられている。ここは鶏小屋らしい。
「コケッ」
『何だ鶏か…』
耳に届いた間抜けな鳴き声に銃を下げた。が、その後ろ、柱の裏から一人の人物が現れる。その人物はこちらを見ると、フラフラと覚束ない足取りで向かってくる。
『おい、止まれ!』
『フロッグ!交渉が先だ!俺が相手するからお前はリーダーに連絡しろ』
そう言うと、アリゲーターはナイフ片手に警戒しながらも、身振り手振りを交えながら意思疎通を計る。
『〈あー、テステス。リーダー、第一村人を発見した。アリゲーターが交渉中、外見上はホモ・サピエンスと相違ナシ。服装は質素だが所謂貧民とかとは『ぬおぁ!?』っアリゲーター!〉』
悲鳴が上がり、顔を上げればアリゲーターの両腕に男がしがみつき、腕を抑えたままマウントを取るかのように押し倒していた。その男の顔は明らかに正気では無い。血走った目は虚ろで、カチカチと歯を噛み合わせて意味のないうめき声を上げ、唾液を撒き散らしている。
『クソッ、何しやがるテメェ!』
即座に蹴り飛ばし、左胸に4発。倒れた対象を中心に赤い液体が零れ出る。
『おい!何で殺した!』
『お前が襲われてたからだろ!正当防衛ってヤツだ!』
『だが!……いや、いい。悪かった。一人くらいどうって事無いよな…』
少し弱気になり過ぎてたか、と心中でため息をつくと、無線からリーダーの声がする。
〈おい、何があった!応答しろ!〉
『〈あー、こちらフロッグ。現地民と接触したが、相手は錯乱状態に陥り、こちらに襲いかかってきたのでこれを射殺した〉』
〈そうか、念の為病原菌を持ち込んでいないか確認する。探索は切り上げだ。合流するぞ〉
『〈了解〉』
『おい、聞いてただろアリゲーター。集合の…後ろだっ!』
アリゲーターは咄嗟に顔を庇い、カメレオンは急いで引き金に手をかけるも、唸り声を上げながら飛びかかった男はそのまま露出している腕部へと噛み付いた。
『ぐあっ…!糞っ、離せ!』
噛まれた左腕がミチミチと嫌な音を立てて血を吹き出す中、ナイフで滅多刺しにする。口が離れた所を蹴り飛ばし、倒れた所を止めとばかりに頭に発砲。
『ハァ、ハア……やったか?』
今度こそ、男は完全に沈黙し、そこには凄惨な死体が出来上がっていた。
『このイカレ野郎が!クソッ、肉まで持ってかれた!』
アリゲーターの顔には脂汗が浮かび、筋繊維の見える赤ピンクの腕に布を巻き付けている。
『何なんだコイツ、明らかに普通じゃない。俺は確かに心臓に4発撃った。それだけじゃなく、ナイフで刺しても怯みもしない。…こんなの、まるで―――』
――死体が動いている様だ。
その日、自衛隊は、特地調査のため1部隊12名から成る偵察隊6個、深部偵察部隊の創設が決まった。
ゲートなのに原作キャラが一回も出ないのは許して
B.O.W.しか出さないとは言ったが、B.O.W.から感染させられた場合は普通にイレギュラーミュータントになります