End Of The GATE ーBio Organic Weaponー   作:食卓の英雄

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先に言っておくとタイトル詐欺です。


彼らは如何にしてそこへ至ったか

 その日、伊丹耀司は思い出した。仕事に駆られる恐怖を、上層部の命令の屈辱を。

 

(あー、帰りたくねぇ……)

 

 この気怠けな彼の名は伊丹耀司。陸上自衛隊二等陸尉。銀座事件において多数の民間人を救った事により、「二重橋の英雄」と呼ばれている人物。

 此度の特地調査の為に派遣された、深部偵察部隊の第3偵察隊隊長で、彼の率いる第3偵察隊は、人々との交流に重きを置いていた。

 

 実際、特地における初めての調査でも付近の住民と友好的な接触を取れており、彼らの先導する後ろに続くのは炎龍の出現により避難している難民達だ。

 

 その他、炎龍に壊滅状態にされたエルフの里の唯一の生き残り、テュカ・ルナ・マルソーやコダ村に住む魔法使い、レレイ・ラ・レレーナ。そして特地で信仰されている神に仕えている亜神であるロゥリィ・マーキュリーらは自衛隊員の中でも特に印象に残っているだろう。

 

 つい先程、炎龍と呼ばれる未確認飛行生物に遭遇し、これと応戦。避難民の4分の1犠牲を失いながらも、パンツァーファウストにより左腕を奪い炎龍を撤退させた。その後は、住民の幾つかが別れ、その他は行く宛も無い為にそのまま自衛隊駐屯地へと向かう事となった。現在はその小休止という所だ。

 

「伊丹隊長?どうかしたんですか」

 

 小さく漏れたため息に気づいたのか、同じ第3偵察隊の部下である倉田武雄三曹が声をかける。

 

「いや〜、向こうに着いた事を考えるとどうにもな」

 

 苦笑交じりに伊丹が応えた。何の事かと頭を捻れば、難民達の受け入れに関したやり取りが思い出される。受け入れの許可を取らないまま、続けようとする無線すら切断して聞かないフリ。それは当然、無視できるものではない。

 

『どうかした?』

「あー、いや、えっと……これか。『大丈夫だ、問題ない』」

「いやそれ大丈夫じゃないッスから」

 

 特地の言語で話しかけるレレイにたじろぎながらも、何とか意思を伝える事に成功する。コクン、と頷いた事に一事は安堵したが、彼女の手には紙らしき物とインクが握られていた。

 

 何をするのか見ていると、何やら家やヒト、そしてドラゴンの絵や自衛隊と思われる意匠を書き連ねている。

 

「何だこれ」

「家と…ドラゴン?」

 

 意図が読めず首を傾げていると、家には柵や人が描き足され、家にはバツマークをつけ、人の集団は矢印で自衛隊を指し示す。

 

「あ…!これは今の状況って事か!」

「おお、確かに!」

 

 恐らく、家は村、人は難民達を表しているのだろう。納得はしたが、何故それを?という疑問符が湧いた頃に、今まで書かれた村から幾ばくか離れた箇所へ多くの家が描かれ始める。

 今までの進路から見ると、かなりルートを逸れており、周辺の村からも一際離れていた為、気づかなかったのだろう。

 

『恐らく、逃げてない』

「ええと、逃げる、いない…『逃げてない』か!」

「えー、流石に今のこの状況じゃ無理ですよ」

 

 まさかの情報に目を剥くが、今更進路変更しようものなら避難民の内何割かは脱落してしまうだろう。それに、レレイの書いた図を見る限り、炎龍の飛び去った方向に位置していた。

 

「隊長」

「…まあ、祈るしかないか」

 

 深い傷を負わせた為、無視する可能性もあるが、それ以上に、怒り狂った炎龍により殺戮される事も考えられる。

 

 だが、今行くわけにはいかない。後味の悪さを残しながらも、車を進めることしか出来なかった。

 

 

☣☣☣

 

 

「無事だったか!」

「へ?」

 

 駐屯地へと帰ってきた際に掛けられた言葉は、非難とは程遠い物で、呆けたような声が喉から漏れた。最も、背後の避難民の姿を見るやそれは怒号に変わったのだが…。

 

 

「えー、人道上の配慮から避難民の受け入れを許可する。伊丹二尉は避難民の保護観察を行うように……との事だ」

「え、俺がすか?」

「ああ…それと、狭間陸将がお呼びだ。これは深部偵察部隊全員は強制参加となっている。断ることは出来ない」

「へ?え?」

 

 トントン囃子に進む話に彼らの脳はついていけない。そもそも、難民のくだりすらあまりに簡単に終わらせている。さらには全偵察隊の招集。疲弊した体を引きずる様にしながらも、言われるがままに移動する事となった。

 

「伊丹二尉は、今回の招集について何か知ってるんですか?」

 

 移動中、黒川が話しかけるが、生憎と今着いたばかりで予測すら立てられない。

 

「もしかして難民を連れてきたのが…」

「いや、話聞いた感じだとそっちはあんまりじゃねぇかな?案外すんなりと話通ったし。……俺が面倒見る事になったけど」

「それはしょうがないのでは?」

 

 富田は訝しんだ。

 結局それらしい答えは出なかったが、それも着けば分かると、それほど追求はしなかった。

 

「よう、伊丹」

「柳田二尉…」

 

 その途中、伊丹の目の前に見知った影が現れる。柳田は伊丹達第3偵察隊を見かけると、何か納得がいったとばかりに鼻を鳴らした。

 

「お前さん、ワザとだろ」

「何がです?」

「惚けるなって。定時連絡だけは欠かさなかったお前が、ドラゴンとの戦い以降突然の通信不良。避難民を放り出せと言われると思ったんだろ?」

 

 言葉尻こそ疑わしげだが、明らかに確信している様な姿勢だ。

 

「いやぁ、こっちは異世界だし、電離層とか磁気嵐のせいじゃあないですかね…。あ、ここだ。んじゃあ、失礼しますね!」

 

 作り笑いを見せながら逃げる様に扉の先に姿を消す。他の連々も軽く会釈してから伊丹に続いた。

 そしてこの後、柳田が盛大に悪態をついたのは言うまでもないだろう。

 

 

「伊丹、よく来たな」

 

 部屋内に入ると、狭間陸将から声をかけられる。(呼んだのはアンタでしょうに…)等と心の中でぼやきつつも敬礼。第3偵察隊にと指定された席に着く。

 既に第2偵察隊と第6偵察隊のメンバーや、一部幹部は集合しており、待たされていた彼らの視線が厳しいものとなる。

 

「あはは……」

 

 どうやら簡易的ながらも防音工事は整っており、何やら大事な話だと言うことは分かった。

 

「よし、揃ったか。始めよう」

 

 狭間陸将が声を掛け、一人の自衛官を連れ添って壇上に上がる。記憶が正しければ、あれは何処かの一等陸佐では無かっただろうか。

 しかし、肝心を話し出す前に、この場に招集された自衛官の大半は頭上に疑問符を浮かべていた。

 

「申し訳ありません。質問を宜しいでしょうか?」

 

 手を上げたのは、伊丹達の中では一番ベテランの桑原惣一郎。許可を取り、皆が思っているだろう質問を投げかける。

 

「はっ…先程狭間陸将はこの場に全員が揃ったと仰られましたが、第1、第4第5偵察隊が居ないのは何故でしょうか。私共が受けた指令では、深部偵察部隊は全員が参加との事でしたが…」

 

 そう、明らかに数が足りないのだ。先述の通り、この場には6部隊からなる深部偵察部隊の内半数しかいない。この部隊を集めたいのなら、最初から全偵察隊とは言わないだろう。

 

「皆が抱えているであろう質問をありがとう。桑原陸曹。それが今回の話に関係するのだよ。勿論説明する。…他に質問は?」

「いえ、ありません」

 

 そう言った事で、先程の動揺は鎮まった。それとは別の懸念が上がるが、黙って次の言葉を待つ。

 

「まず、貴官らの未知の領域の調査という指令、ご苦労だった。これまでとは逸脱した地だが、こうして無事に成果を挙げられたことを誇りに思う」

 

 曰く、第2偵察隊は特地特有の植物サンプルの確保、第6偵察隊は新たな簡易前線拠点の設立。我らが第3偵察隊は言わずもがなだ。

 

 しかし、それが本題ではないのは明らかだ。それだけならば、こんな場を設ける必要も無い。険しい顔のまま、狭間陸将の言は続く。

 

「そこで、先の質問にあった、貴官らを除く偵察隊の所在だが――」

 

 

―――三部隊、共に消息を絶っている。

 

 

 強張った顔から発せられた言葉は彼らの肝を潰すには充分たるものだった。

 




時間が無いので後書きはありません!なんか考えたら書くかも
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