IQを3にしてお読みください。
ツッコミ不在の恐怖よ。
IQを3にしてお読みください。
むかし、むかし、あるところに、おじいさんと、おばあさんがいました。
その老夫婦は、かつて聖剣エクスカリバーを抜いた勇者と聖女でした。
ある日、趣味の家庭菜園を見に、おばあさんが庭へ出るとびっくり。
山と見間違えるほどの巨大なカブが生えていたではありませんか。
見たところ、白くて、つるつるしていて、食べごろのおいしそうなカブです。
肝っ玉なことに定評のあるおばあさんは、このカブを抜くことにしました。
まず、おじいさんと共に、うんとこしょ、どっこいしょ、とカブを引っ張りました。
まだまだカブは抜けません。
次に、最近学園から王子をひっかけて戻ってきた孫娘を連れてきて、うんとこしょ、どっこいしょ、とカブを引っ張りました。
まだまだカブは抜けません。
今度は、家で飼っている番犬ケルベロスを連れてきました。
まだまだカブは抜けません。
さらに、今度の謝肉祭で食べる予定だった猫を連れてきました。
まだまだカブは抜けません。
おじいさんとおばあさんは藁にも縋る思いで、軒下に住んでいるネズミーマウスを連れてきました。
まだまだカブは抜けません。
おじいさんとおばあさんは困り果ててしまいました。
家にいるすべての生き物の力をもってしても、この巨大なカブは抜けません。
そこで、増援を呼ぶことにしました。
まず、孫娘の婚約者であるMrグレイト・マッスルを連れてきました。
おばあさんは、「孫と結婚したいならこのカブを抜く手伝いをしなさい」といいました。
Mrグレイト・マッスルは喜んでそれを手伝いました。
しかし、まだまだカブは抜けません。
今度はおじいさんたちの実の息子であるニート侍(ユーザーネーム)を連れてきました。
おばあさんは、「遺産欲しけりゃ、カブを抜け!」といいました。
ニート侍は喜んでそれを手伝いました。
しかし、まだまだカブは抜けません。
ニート侍は、「これじゃ絶対に抜けないよ。道具を使おう」といいました。
おじいさんとおばあさんはそれに賛成して、倉庫で埃をかぶっていたエクスカリバーを引っこ抜いて持ってきました。
エクスカリバーを振り、土をえぐろうとすると、エクスカリバーはおじいさんの本気に耐えられず、蒸発してしまいました。
これはいけないと孫娘は伝説の魔女が使ったといわれる杖を自室のベットの下から取ってきました。
シールとマジックで飾り付けられた杖を振り、土を水へ変化させようとするとカブが作り出した結界に阻まれ、手前の土が水になりました。
不味い、流される!と一同が思った瞬間、水が動き出し五人と三匹を優しく受け止め地面へ降ろし、竜の形になりました。
おばあさんは叫びました。
「あ、あれは!魔王を裏切り私たちのために死んでしまった水龍の英霊!」
竜はおばあさんたちの方へ向き直ると言いました。
「あのカブは魔王が死ぬ寸前に仕掛けた最後の呪い…次の魔王を生み出すためのいわば卵。
聖女たちよ…奴を地から切り離し、浄化するのだ!」
竜は言うと、おじいさんの後ろにつき一同に加護を与えました。
「おお…死してなお聖女に尽くすか…その覚悟、我が筋肉に引けを取らぬ輝き!何と美しい!」
「いいね、拙者イージーに飽きてきたところだったんだわ。魔王討伐RTAやってやろうじゃん」
「食前の運動をやろうと思っていたところじゃ」
「聖女の力、見せてやろうぞ」
「ニャーニャーウニャ―ニャニャー」
「グルルルル…メシ・・・メシ・・・」
「ハハッ、夢が欲しけりゃ命出せ!」
「行くわよ!みんな、力を貸して!」
「「「「「「マジカル☆聖女、いっくよー!」」」」」」
すると加護の力と心が合わさり、五人と三匹は何と覚醒したのです!
おじいさんは若き日夢に見た邪神に選ばれた者☨漆黒の聖騎士☨の姿に。
おばあさんは魔法少女に。
Mrグレイト・マッスルも魔法少女に。
ニート侍もツンデレ系魔法少女に。
孫娘もネズミーマウスもケルベロスも猫も魔法少女に。
覚醒したおじいさんたちに応えるようにカブも禍々しく光り出します。
『勇者達よ・・・積年の恨み、晴らさせてもらうぞ!』
「こいつ・・・脳内に直接!?」
若い姿になり口調の変わったおじいさんが驚きの声を上げました。
しかしそこは腐っても、というか老いても勇者。
瞬時に意識を切り替え、戦闘態勢になりました。
「いけっ、ばあさん!マジカルビーム!」
おじいさんの指示を受け、おばあさんはカブへビームを放ちますが、カブの張った結界は固く歯が立ちません。
続けてMrグレイト・マッスルとニート侍がカブへ蹴りを放ちます。
しかしまたしても結界に阻まれはじき返されてしまいました。
ニート侍は全力で固いものを蹴ったため骨が折れて使い物にならなくなってしまいました。
こんどは孫娘と動物三匹が炎を放ちます。
カブは全く焦げません。
ことごとくカブに返り討ちにされ、傷つき、倒れ伏した五人と三匹をカブは嘲笑いました。
『ふっふっふ…貴様らに我は抜けぬ…いざ世界の養分を吸い尽くし、我が安楽の地を作り出してやろうぞ!」
カブはそういうと、怪しげに強く光りはじめました。
おじいさんたちがもうだめか、と諦めかけたその時、孫娘が何かに気づきました。
視力3の孫娘にははっきりと見えたのです。そう、ちょうど抜いてくださいと書いてありそうな立派な葉を!
「おじいちゃん!あの丈夫そうな葉をもって、空へ全力で飛べばきっと抜けるんじゃないかしら!
あそこだけ結界がないし、加護を持ってる今なら、きっとできるわ!」
その言葉にはっとしたおじいさんたちは立ち上がりました。
「行くぞ!あの葉のもとへ!」
「「「「「「応!」」」」」」 「ニャー」「ワン!」
カブの攻撃をくぐり抜け、とうとう葉のもとへ着くと、おじいさんたちは一列になって葉を引っ張ります。
「「「「「「うんとこしょ!どっこいしょ!」」」」」」
カブは苦しそうにうめき声を上げました。
まだまだカブは抜けません。
「「「「「「うんとこしょ!どっこいしょ!」」」」」」
カブは精一杯抵抗します。
まだまだカブは抜けません。
「「「「「「うんとこしょ!どっこいしょ!」」」」」」
おじいさんたちが苦戦していると空から鳥がやってきて、手伝い始めました。
まだまだカブは抜けません。
「「「「「「うんとこしょ!どっこいしょ!」」」」」」
四回目、おじいさんたちと鳥が力を合わせて引っ張ると、地面が揺れ動き始めました。
そう、カブが抜け始めたのです。
カブは叫びました。
『やめろ、やめてくれ!私はまた、貴様らにやられるのか!』
悲痛な叫び声でした。
おじいさんたちは心を動かされそうになりましたが、何とかこらえて振り切るように叫びました。
「「「「「「うんとこしょ!どっこいしょ!」」」」」」
カブはとうとう、地面から抜けました。
ゆっくりと降ろされたカブからは、もう何も聞こえませんでした。
それからただの大きなカブになったそれをおじいさんたちは配って回りました。
手始めに王へ渡すと、王は喜び、孫娘とMrグレイト・マッスルの結婚式をその場で始めてしまいました。
次に城下町へ行き貧しい人々にカブを配って回りました。
するとカブに施していたカブ細工を見た町の職人から、ぜひ自分の店で働いてくれと言われ、ニート侍は定職に就きました。
まだまだ余っているカブを村の人々に渡すため、村を転々としていくと、ネズミ―マウスや猫、ケルベロスを欲しいという人が現れました。
おじいさんとおばあさんはもう年だから、と優しげなその青年に三匹を託しました。
おじいさんとおばあさんは自分たちで食べる分のカブをもって家へ帰りました。
おじいさんたちはそのカブを食べながら、この前の戦いで目覚めた戦いの快感を味わうため、二人で仲睦まじく魔物を血祭りにあげていったということです。
めでたし、めでた…し?
読み返して思いました。
今日は早く寝よう。