ドラゴンライダー〜唯一の邪龍乗りは世界最強を目指す〜 作:他鍋海狸
前日の一幕から日は明け、約束の時刻まであと少しになる。
教室で今日使用する武器の手入れをしつつ、準備を進め、心を鎮める。既にクラスの人達は帰り、俺以外此処には誰も居ない。
「よし、行くか!」
『…………』
「拗ねるなよ、ゼノ。
お前出したら、俺が学園に居られなくなるんだ」
『分かってるよ、拗ねてないって』
ゼノあまりに幼稚な態度に笑ってしまう。今は俺たちしか居ないので、遠慮なく会話出来る。
緊張も解れ、覚悟も決まったので、教室の扉を開ける。
「アベリオくん」
「……わぁ!あ、アルマさん。ど、どうしたんですか?こんな所で」
扉を開けると、フェリスタ先生の秘書のアルマさんが立っていた。確か、フェリスタ先生がアルマさんを俺の監視係にすると言っていたが、昨日は姿を見なかった。
「私が離れている間に大変な事になっていますね」
「はい……。
すみません、ややこしい事にしてしまって」
先生によれば、フェリスタ先生は先生側、アルマさんは学生側で様々な工作をしてくれているようだ。
「いえ、仕事ですのでお気になさらず。
私も所用で学園に居ない間に発生した事例なので、事故です」
「そう言ってくれると、助かります。
それで、何か御用ですか?」
聞くと、背負っていたカバンから黒い箱を取り出し、差し出してくる。
「フェリスタ先生から、今回用の魔道具を渡すように言われました。あくまでも試合なので、殺傷力が高い現状の装備での参加は許さないそうです」
「分かりました。わざわざありがとうございます!」
アルマさんから、武器を受け取り箱から取り出す。完全に俺が使用している魔道具と同じだが、確かに剣の刀身はかなり軟質な素材に変わっており、切る事は出来ないだろう。
三つとも、性能が落ちているように感じる。
「他二名の武器も此方で用意している物を使用するので、公平性に欠けるようにはしていません」
武器の調子を見ている俺に構わず事務的に説明を続ける。
「それから、フェリスタ先生からの伝言です。
「守備は万全だ。安心して戦いたまえ」だそうです」
「っ!はい、分かりました。」
「あ、私からも一言いいあります。
後処理があるのでなるべく早く終わらして下さい。時間外勤務は好きでは無いので」
アルマさんはいつも通り過ぎて安心感で、笑ってしまった。
「善処します」
「ええ、是非ともそうしてください」
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「……来たな、アベリオ」
既に俺以外の二人は準備を終えており、俺を今か今かと待っていたらしい。キースくんが俺の名前を言いながら、ニヤリと笑う。
「遅れてごめん、もしかして待たせちゃった?」
「いいや、時間丁度だ。問題は無い」
周囲には決闘を今か今かと熱望する眼差しの観客達が大勢いる。リズベットやマークの姿も確認できた。
ダイヤモンド取り巻きの女の子達と、何やら話しているようで、此方には気が付いていない様だ。
「全く君のせいで大変な事になった」
「あ、アズライト先生」
ため息を吐きながら先生は僕の魔道具や教導本の確認する。問題は無かったようですぐに返してくれた。
「二人の武器の確認とルールは既済ませました、直ぐにでも始めたいのでルールを教えます」
「はい、よろしくお願いします」
「ルールは
「はい、理解しました。でも、その陣地ってのはありませんけど、別の場所にあるのですか?」
先生は俺の質問を聞くと、背を向け声色を変えず、さも当たり前のように「今から作ります」と、言い放った。
「
呪文と共に杖が振り上げられた。その途端、今までなんと変哲も無かった地面が隆起し、先生を中心とした正方形の陣地を成していく。
瞬間、外野の観客達がざわめく。その声が眼前に広がる光景の異様さを表している。
「各自陣地に上がってください」
先生の合図で三人は壇上に上がる。
「手を出しなさい」
言われるがまま手を差し出すと、青色の旗が渡される。どうやら、これが奪い合う旗のようだ。わたされた旗をズボンに付ける。
「学園長先生が魔術で結界を貼ります、生命体は通りますが魔術や弾丸等の攻撃性がある物は一切通りません、武器などは落ちるようになってはいますが」
話しながら、陣地の外にでる。出た瞬間、遠距離からの魔術が行使された感触がゼノにはあったようで、一人で驚いていた。
「では、可能な限り怪我の無いよに。始め」
先生の合図と共に全員が構える。
「
思考力よりも早く声が響いた。同時に閃光がキースくんに向かって走り爆発する。
「な、なんだあれは」
あまりの光景に思考と体がフリーズする。どうも、一直線に俺を攻撃する読みは外れたらしい。
薄れる煙の中から、ハァハァと息を上げながら何とか立っているキースくんを目視する。なんとか直撃は避けたようだ。
「存外しぶといな、まぁ、二撃目で終わりだが」
ダイヤモンドが再び杖を構えようとする。
(まずい!)直感し魔道具から武器を取り出す、既に動作を始めている状態を捉えるのは、銃では確実に間に合わない。
「ゼノ、身体強化」
『まっかせて!』
剣を取りだし投擲する。剣は回転しながら、ダイヤモンドに向かって一直線に向かっている、必中するのは誰の目から見ても明らかだった。だが、しかし
「危ないな、アベリオ・アイオライト。今彼を
「僕は光の精霊に愛されているからね。君の攻撃は当たらないさ」
「初めて見たよ、そういった魔術は」
「これは魔術じゃない魔法さ。しかしながら、学園や学会はこれを魔法と認めないがね」
「魔法!お前、魔法使いだったのか?」
「当然さ。おっと、ずるなんて言わないでくれよ。ルールは魔法禁止なんて一言も言ってないだろ?」
確かにそうだ。アズライト先生は、魔法を使ったら駄目とは言っていない。しかし、これは非常に不味い。
魔法が使える情報は無い。更に、俺の知っている魔法の知識何てものは皆無に等しい。
『まって、アベリオ、奴の口車には乗らないでよ。
あれは魔法じゃない』
ゼノが言う。
「そうなのか?」
『どっちかと言うと
声に反応して回避行動をとる。既の所で避ける事はでき、光線は結界に激突し大きな音を立てて消える。
「虚像って何?是の」
『分身みたいなものだよ。偽りの姿で本体を隠す魔術。まぁ、あいつはそれを無意識にやってるのが恐ろしい所なんだけど』
「無意識に?そんな事できるのか?」
銃を取り出しながら、聞き返す。
『やってると言うか、精霊達にやらせてるねあいつは、言った通り本当に精霊に愛されているタイプなんだよ。
初めて会った時は分からなかったけど、今はわかるよ、魔素の塊がよく見えるよ』
「って事は対処法はアレだね」
『昨日のリズベットの話が早速役立ちそうだ』
「あぁ!後で感謝しないとな」
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前日・図書室
「精霊って本当にいるの?リズベットちゃん」
「えぇ、居るらしいわよ。私はまだ見た事ないけど」
魔術の本をペラペラとめくりながら、精霊の項目を見つけたので聞いている。どうやら、存在はしているらしい。
「精霊は魔素の塊が知性持った生き物なの。でも、誰でも精霊と会話できるわけじゃないの、特別な人間だけ
「そうなんだね、不思議な生き物なんだね精霊」
「ええ、でも、弱点があるわよ」
彼女の言葉を聞いた俺は顔を上げる。
「それはね、
「炎?意外とシンプルなんだね。なんで?」
「炎は人間の発展の象徴なの。精霊は自然に系統して自然の中で消滅する不変と円環の生物なの。だから変化と発展の象徴の炎が苦手なのよ」
「なるほど、まぁ、分かったような分からないような。でも、炎が苦手って事は分かったよ」
俺の疑問が解消されたことを喜んでいるのか、リズベットは優しい笑みを浮かべている。もう一度顔を落とし、呟く。
「妖精人かぁ、会ってみたいな」
「ふふふ、それは無理よ」
彼女の以外な言葉に虚をつかれ、目を丸める。
「確かに亜種族(人間以外の人種)は全然居ないけど、アズライト先生みたいに意外なところで会えるかもよ!」
「妖精人は今世界に一人しか居ないの。しかも、凄い人だから会うのはとっても難しいのよ」
「うーんじゃあ、仕方ないか」
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昨日会話を思います、精霊は炎が苦手だ。今までの俺なら知っていても対処が出来なかったが。
(だけど今は……)腰に着けてある教導本を触る。今は火の基礎魔術が使用できる。タイミンを見計らえば、一撃を入れることもできるかもしれない。
俺は銃を構え打ち放つ。
当然だが、当たらない。再度装填し続け様に打つ。これもはずれる。
「何発打ってもこの僕には当たらないぞ、アベリオ・アイオライト」
一連の流れを見て、闇雲に弾丸を消費していると考えたのか、ダイヤモンドは嘲る様に言う。
しかし、俺は無視して弾丸を放つ。
「
俺は光の線を避ける。確かに、速度も早く威力も高い。しかし、杖の指す方に一直線で発射される単調な魔術を避ける事は難しくはなかった。
「
ダイヤモンドは魔術を連発するが、一向に俺には当たらない。あまりに命中しない俺に腹を立てたのか、口を開く。
「逃げてばかりでは、勝負にならない。正々堂々かかってきたまえ」
「勝つ為の戦略だ。ルールは破ってないぞ」
「っちぃ、なら、一撃で仕留めてあげるよ。
アベリオ・アイオライト」
業を煮やしたダイヤモンドは、連発を中断し杖を掲げ別の呪文の詠唱する。
(今だ!)心の中で叫び、一気に距離を詰める。
「
ダイヤモンドの放った魔術は光の衝撃波のようなものだった。最小限の動きで回避したので、多少かすってしまったが知ったことでは無い。
俺とダイヤモンドも距離が魔術の射程内になった時、俺は教導本を取り出し、詠唱を開始する。
「我が手に魔素あり、炎魔の加護をここに来たれり」
教導本が燃えるように熱い。
「この詠唱、まさかお前!」
「形は無く、素材も無い、ただ我が身の魔素を燃やせ、爆ぜろ、朱くあれ」
「
詠唱の完了と共に教導本から、火が生成される。火自体は焚き火程度の小規模なほのうで、全く攻撃向きではない。
「
しかし、ダイヤモンドは周囲を光に包む防御魔術を展開する、俺は飛び退き後方に避ける。
ダイヤモンドは、俺の攻撃を防いだように見えたが、既に手遅れであり、ダイヤモンドは頭を押え苦しそうに唸る、彼の虚像がぶれ始める。
「やってくれたな、アベリオ・アイオライト。
精霊達が怖がって逃げてしまったでは無いか」
「どうでもいいよ、そんな事。
それより、俺は君の実態がお目にかかれて嬉しい限りさ」
俺の言葉で彼は不敵に笑う。
「僕の実態をそこまでお望みかい?
人気者は辛いね」
「はぁ?そんな訳ないだろ」
想像の斜め上を行く返答が帰ってきた。やはり、かなりズレている。
「これで、やっと攻撃が当たるんだ。嬉しくて堪らないね、俺は」
「中々の戦闘狂だね、君は」
「勝ちに執着するのは当然だよ。俺は勝負で負けられないんでね、特に今日は」
俺は言葉を発しながら銃を構え、引き金を引いた。