ドラゴンライダー〜唯一の邪龍乗りは世界最強を目指す〜 作:他鍋海狸
害獣区域から戻り、街をぶらぶらと散歩する。
マールの街は、レンガの橙と白亜の白を基調とした美しい街並みだ。
(綺麗すぎるだろ、この国)
歩きながら、綺麗すぎる街並みに違和感を感じる。
俺がマールに来たのはほんの数週間であり、それまでは荒野とか樹海とか人があまり来ない場所に住んでいたので、綺麗すぎるマールはなんというか落ち着かない。
「まぁ、慣れるしかないか」
ため息を吐くように呟く。
この国に住むのに何も知らないので、ここ数日は街の散策をしている。
マールは島国であり、今居るのは学園があるミロス島だ。観光地であり、資源が豊富なここの場所は、年間を通して多くの人で賑わっている。
[ぐうぅぅ]
腹虫が鳴く。
「お腹減ったな……」
時間を確認するとお昼の少し前だ。
そう言えば、朝ごはんを食べ損ね、学園の方を散策していたのでご飯を食べる所が無かった。
流石にお腹減ってしまう。観光地で行き倒れな考えたくもない。
「飯食いに行くかぁ〜」
次の行き先を定め足を進めた。
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「お兄さん!いいモノそってるよ!」
「お姉さん、お綺麗ですね。
このアクセサリーなんてお似合いですよ」
「そこの貴方!恋人のプレゼントなんていかがですか」
「美味くてやすいよ!買った買った」
道の各所から男女入り交じった活気ある声が響く。
「おぉ〜!
賑わってるなぁ」
色とりどりのテントやシートの間を大量の人が通り、活気がある。流石は観光地と言った所だ。
(なんか美味しいものないかなぁ〜)
いたる所から美味しそうな匂いが漂う。
なんやかんや忙しく市場に来る機会が全くなかったので、目に見えて観光地なミロス島を見るのは初めてで、テンションが上がる。
(折角来たんだ、名物料理とか食いたいな)
市場の中を散策していると、泣いている金髪女の子と困っている露店おじさんが見えた。
「うぅ〜!
お、おねぇ……じゃ…ん!」
「あ〜もう、泣くなよ嬢ちゃん」
「だっで!お、おねぇ…じゃんが居ない……」
どうやらお姉さんとハグれてしまった女の子が泣いているようだ。年齢は低く、4か5つ位に見える。
(あの時の俺みたいだな。よし!)
「大丈夫ですか?」
昔の自分と重ね、声をかける。
「誰だよあんちゃん。
この子の知り合いか?」
「あ、いえ。でも、困ってるみたいだったので」
「困ってるよ、迷子っぽいんだけど、全然泣き止まねぇーんだよな」
「うぅ……おねぇちゃん……」
女の子はまだ泣いている。
涙を拭い過ぎたのか、目の下が赤くなっている。
市場のど真ん中で子どもを泣き止ませるのは、流石に迷惑なので、おじさんのテントに入れてもらう。
女の子の目線まで腰を下ろし、ゆっくりと話しかける。
「どうしたの?お姉ちゃんとはぐれちゃったの?」
「うぅ……」
女の子は泣いていて答えてはくれない。
こんな時は、話したくなるまで待つしかない。
「大丈夫だよ、怒ったりしないから。
落ち着いて、ゆっくりでいいよ」
言いながら深呼吸のポーズをしてみる。
少し待つと、女の子は俺のポーズを真似しながら、ゆっくりとだが、呼吸を整えていく。
「落ち着いた?」
「……うん」
「よし、自分で落ち着けて偉いね。
お姉さんと、はぐれちゃった?」
「う、うん。か、買い物来たんだけど……は、はぐれちゃった……うぅぅ」
事情を話した女の子はまた泣き出しそうになる。
「あぁあ!大丈夫だよ、寂しかったんだね。
きっとお姉さんも探してるよ、大丈夫、迎えに来てくれるよ」
「……本当に?」
「本当ほんと、迎えに来てくれるよ」
「分かった!」
なんとかこうにか、女の子を泣き止ませる事ができた。しかし、この人通りの多い時間にお姉さんを探しに行くのは、入れ違いが怖い。
なので、少しの間この店で待たせて貰うことになった。
おじさんに待ってもいいか聞くと
「まぁ、しゃーねぇな。ほおり出すのは可哀想だしな」
と、承諾を得る事ができた。
「あんちゃん、嬢ちゃん。飯食ってないだろ、どうせだったら飯食ってけよ」
先程からいい匂いはしていたが、やはりおじさんの露店は食べ物屋だったらしい。
「お腹減ったけど、お金持ってない……」
女の子が残念そうに言う。
「大丈夫だよ、僕が奢ってあげる!
好きな物食べていいよ」
といい胸を叩く。
まぁ、お金を持っていても流石に払わせる気にはならない。
「いいの!?
じゃあねぇ〜ロッケがいい!」
と、女の子は俺の手のひら程の大きさの揚げ物を選ぶ。
「じゃあ、僕もそれを下さい」
「はいよ!
2個で200G(ガット)だけど、一つまけといけやるよ」
「ありがとうございます」
「おじさんありがとう〜」
お金を渡してロッケを受け取る。
『ガット(G)』はマール国の通過であるが、各国の何処でも使えるので、実質的な共通通貨になっている。勿論、国の独自の通貨も存在し、独自の通貨のみ通用する場合もあり、これだけ持っていればよい訳では無い。
銅貨一枚1百G、銀貨一枚1千G、金貨一枚1万Gが主なレートだ。
他にも銅貨の下に半銅貨(10G)があるが、大抵は銅貨と銀貨を持っていればなんとかなる。実際なった。
「美味しいね、お兄ちゃん」
「そうだね、初めて食べたけど結構美味しいもんだね」
衣がサクサクして美味しく、中には野菜のペーストと肉が入っている。
「やっぱりあんちゃん観光客か」
露店おじさんが「やっぱりか」のような顔で言う。
「まぁ、観光客とは違いますけど、ミロスに来たのは最近です」
「観光客じゃねぇなら、学園生か。
まぁ、どっちでもいいけどよ。珍しくねぇんだ、迷子はな、大抵は近くの奴が何とかするが、自分から声をかけてくるお人好しは初めて見たぞ」
「お人好しなんて、そんな褒めなくても」
「いや、褒めてないぞ。
皮肉だよ皮肉」
俺の反応に呆れたように答える。
「俺も昔迷子の時に助けて貰った事があって、だから、俺も助けたいなって、思ったんです」
「はぁ〜奇特だな、あんちゃん」
「お兄ちゃん、凄い!私も迷子助けたい」
心底どうでも良さそうなおじさんと対照的に女の子は目を輝かせている。
こんな事を言われるのは、初めてで擽ったいが悪い気はしない。
「おじさんも相当お人好しだと思いますけど。
だって、オマケしてくれたし、ここで待たせてくれたじゃないですか」
「阿呆、俺は金貰っただろ、商売だ商売」
「私はね!カペラっていうの、お兄ちゃんのお名前は?」
「うん?俺の名前…は……」
名前を言いかけた時後方から女性の声が響く。
「カペラ!やっと見つけた!」
「あ!お姉ちゃん!」
カペラは椅子から飛び降り、声の方に向かって走っていく。
声の方を見ると、カペラと同じ金色の髪を伸ばした少女が立っていた。
飛び込んできたカペラを、キャッチして「良かった、探したのよ」と、心から安心した様子で頭を撫でている。
大きな瞳から覗く薄緑色の瞳、端正な顔立ち、美少女と呼ばれる部類の人間であることはすぐに分かる。
「お姉ちゃん、あのおじさんとお兄ちゃんが一緒に待ってくれたの!」
「あ!そ、そうなんですか?
迷惑をかけてしまって、すみません。私の不注意ではぐれてしまって……」
カペラの言葉を聞き、俺とベスタに謝ってくる。
「いえいえ、大丈夫ですよ。
良かったですね、妹さんと会えて」
「はい、本当に良かったです。私は昔から住んでいますが、妹は最近来たばかりで……」
と、疲れを露わにする。探し回って走り回ったのだろう、汗をかいている。
「私はリズベット・アース・ガルド、学園の高等部生です。
宜しければお名前を伺っても?」
「あ、俺はアベリオ・アイオライトって言います。
あの、高等部の何年生ですか?俺は今年入学するんです」
「あ!じゃあ、同い年ですね、私は初等部からの生徒ですけど」
妙なこともあるものだと思う。
まぁ、入学前から知り合いができるのは悪い事ではない気がする。
「あの、アベリオさん。
お礼がしたいのですが……」
「お礼ですか?ありがたいですが、お気持ちだけ受け取っておきます」
「妹の恩人を無下に扱えません!
お願いします、お礼をさせて下さい」
「そ、そうですか……」
かなりの圧力で詰められる。
女の子に詰め寄られるのは、かなりの破壊力がある。別に俺がやりたくてやっただけであって、お礼を受けるようなこともない気がする。
僕が渋っていると、おじさんが声をかける。
「受け取っとけ、折角なんだから」
「あの、貴方にもお礼をしたいのですが」
「あ、俺はいいよ、仕事があるんだ。
これから、よしなにしてくれるのが、一番のお礼だよ」
「な、なるほど、分かりました」
納得度は低いようだが、了承したようだ。
「じゃあ、有難く受けさせてもらいますね」
俺が応えると、リズベットはの表情ははぁと、明るくなる。
「では、今からでも」
「はい、それでいいで……
ごめんなさい、今何時ですか?」
「あ、え?時間ですか?
先程、14刻になったと思いますが」
「え?じゅ、じゅう、14刻?
やばい……!」
完全に大佐との約束を忘れていた。
「ご、ごめんなさい!
先約をすっかり忘れていました!其方を優先したいので、今日はごめんなさい」
「そ、そうですか。
ではいつ頃なら」
走り出す体制に入ろうとした俺は、急停止し「明日の12刻に市場の入口に居ます!」と、だけ言い残し再度走り出した。
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「ハァハァハァ……
ご、ごめんなさい、アルマさん!た、大佐怒ってますか?」
「いえ、別に怒ってはいらっしゃらないわ。
逆に面白がってたわよ、『アベリオが遅刻なんて明日は天変地異だ』と、ニヤニヤしていたわ」
良かった、いつもの大佐だ。
長い廊下を歩きながら、大佐の助手のアルマ・ランバーさんと話す。
琥珀色の瞳とブルーの纏められた髪の毛がトレードマークのクールな女性だ。
これで俺と同い年なんて信じられない。
「着きました」
大きな扉の前につき、アルマさんがノックする、大佐の「入っていいよ」を合図に入室する。
「やぁ、アベリオ。
遅刻とは珍しいね」
豪華な椅子に腰掛けた男性が話しかけてくる。
「実は迷子の子を助けていたら遅くなってしまい、すみません大佐」
「ハハ、実に君らしい。
あと、私は既に大佐では無い。新しい称号は伝えているよね」
「つい癖で……。
存じていますよ、
「うむ、それでいいんだ、アベリオ」
俺の言葉に学園長は、大変満足そうな笑みを浮かべた。