ドラゴンライダー〜唯一の邪龍乗りは世界最強を目指す〜   作:他鍋海狸

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第五話・食事の誘い

「こんなもんかなぁ……」

 

 カペラちゃんを助け、フェリスタ先生と久しぶりの会話を楽しんだあと、俺は宿に戻り一日を終えた。

 今日は、リズベットさんとカペラちゃんに会う約束をしている。なので、慣れない服を選や鏡の前で髪のセットをしている。

 

「ゼノはどう思う?」

 

 相棒であり、今の唯一の家族であるゼノに聞く。向こう側から、此方は見えているはずなので、今の状況も見えているはずだ。

 

『別になんでもいいよ、服装なんてさ。

 不潔じゃなかったら、なんでもいいでしょ』

「まぁ、そうなんだけどさ」

 

 貴族である、という前情報を知ってしまっているためか、緊張してしまう。

 よく考えると、何をするかも決まっていない。

 

『デートじゃないだから。

 気楽に行こうよ、アベリオ』

「でもさ、最低限はしないとダメだろ」

『アベリオと僕じゃあ、一般人の最低限なんて分かんないじゃん』

「……確かに」

 

 ゼノに言われて黙る。

 俺とゼノは長い事二人だけで暮らしていたので、お洒落とか流行りには疎い。なので、普通の人と最低限の基準が違う。

 

「言われたらなんでも良くなってきた」

『それはそれでどうかと思うよ』

「めんどくさいなぁ」

 

 悪態をつきながら、鏡とのにらめっこを終え出発する準備をする。

 今日は雨が降っているから、雨具を持っていかなければならない。

 

 

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 時間より少し早く待ち合わせ場所に着く。

 今日は雨なので、人通りも少ないが、流石は観光地、雨具をみにつけた多くの人とすれ違う。

 

(もうちょっとで時間かな)

 

 市場(バザー)の前の時刻盤を確認し、針がもう少しで12刻を示そうとしているのを確認する。

 

「あ!お兄ちゃん居たよ!」

 

 道の向こうから俺に向かって手を振る女の子を発見する。手を振るカペラちゃんは、もう片方の手でリズベットさんの手をしっかりと掴んでいる。

 

「丁度に来るようにしましたが、待たせましたか?」

「いえ、俺も丁度に来たところです」

「ねぇねぇ見て見て、このコート可愛いでしょ」

 

 言いながらカペラは、来ている雨具のコートを見せる。最近流行っているもので、雨の日に散歩していると時々見かける。

 

「可愛いね、買って貰ったの?」

「うん!お姉ちゃんに買って貰った。

 いいでしょ〜」

 

 自慢するカペラに呆れたようにリズベットさんは言う。

 

「カペラが一緒に行くと聞かなくて、ごめんなさいね」

「いえ、俺も大人数の方がいいですから」

「言っていただけると嬉しいです。

 今はお昼時ですし、お食事をしたいと思いまして」

「いいですね!

 まだ、お昼を食べ無かったので、食べたいです」

 

 今からお昼を食べる事が決まり、ここでの暮らしが一番長いリズベットさんが、おすすめのお店に連れて行ってくれることになった。

 

 

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「着きました、ここが私の行きつけのレストランです。」

「「「おぉ〜」」」

 

 俺とカペラが同時に驚く。どうやら、少女も初めて来たようだ。

 案内されたレストランは想像していた大通りにあるような高級なお店では無く、大通りから裏に入った人通りが少ない場所にある。

 外販はほかの建物と同様に、レンガ造りで上から白色の塗装がされているが、所々剥がれている場所もあり、年季を感じる。木製の看板には『フルーズ』と、店名が書かれている。

 

「クロさん空いてますか?」

 

 手馴れた様子で店の戸を開け、誰かの名前を叫ぶ。

 開かれた扉から見える店内は照明で照らされている。

 外観からの印象とは違い、中はかなり綺麗にされている。テーブル席とカウンター席があり、客はどうやら俺達以外居ないようだ。

 リズベットさんの声に反応して、カウンターの奥から女性が出てくる。

 

「はーい、空いてるよ。

 って、リズちゃんじゃないか」

 

 クロと呼ばれた女性は、慌てて近づいてくる。

 名前通りの黒い髪を纏め、キリッと細長めの目から紫色の瞳が覗く。

 

「今日は大人数だねぇ、初めましての人も居るね。

 さぁさ、中にお入り、好きな所に座っておくれ」

「ありがとうございます、クロさん」

 

 雨具を置き、店内に入りテーブル席に座る。

 すると、クロさんが戻ってきた。

 

「はい、これメニュー。あと、タオルね。

 風邪ひいたら大変だからね!」

「ありがとう〜おばさん!」

「こら!カペラ、失礼でしょ。

 ごめんなさい、クロさん妹が」

「いいよ、ほんとにおばさんなんだから!

 噂の妹さんかい?可愛いねぇ〜息子の昔を思い出すよ」

「おばさんも、気をつけてね」

「私も風邪をひかないように、気をつけるさ。

 優しいねぇ、カペラちゃんは、ハハハ」

 

 カペラの言葉を笑って一蹴する。

 

「で、そこのお兄さんは?もしかして、ボーイフレンド?」

「違いますよ、妹が迷子の時に助けて貰ったんです。

 今日来たのはそのお礼です」

 

 クロさんは「あ〜なるほど」と、言っているがニヤついているので、あまり信じてはいないようだ。

 

「初めて、アベリオ・アリオライトです」

「こりゃ、ご丁寧に。

 私はクロエ・アメジストこの店のオーナーだよ。クロって皆から呼ばれてるわ」

 

(なるほど、クロエだからクロさんなのか)オーナーの自己紹介で名前の意味を納得する。俺が勝手に納得していると、「アベリオくんも、クロって呼んでいいからね」と、言われたので、お言葉に甘えることにする。

 

「さぁ、せっかくの昼食だからね。

 腕によりをかけて作るよ、ご注文は?」

「あ、そうでしたね。

 カペラ、アベリオさんどうしますか?」

「えっと、初めてだからリズベットさんのおすすめでお願いします」

「分かりました。食べられないものとかありますか?」

 

 俺が「無いです」と答えるのと同時に、カペラちゃんが「甘い物食べたい」と、答えるとリズベットさんが注文する。

 

「じゃあ、すぐ出来るからちょっと待ってて」

 

 と言って、クロさんはカウンターの奥に入っていった。

 

「いい雰囲気のお店と思いませんか?」

 

 待ち時間、リズベットさんが話しかけてくる。

 

「明るい人ですね、クロさん。

 お店も隠れ家的な感じで好きですよ」

「料理も美味しいんですよ、安いですしね」

 

「あ!」っと、リズベットさんの顔が赤くなる。

 

「別に安いから、ここに来たわけじゃないんです!

 本当に、お礼とおすすめをしたいから来たんです」

「フフ……いえ、安い事は重要ですしね。

 あんまり高価過ぎても、俺が食べずらいですから」

「そう言って頂けると助かります……」

 

 俺の言葉に安心したのか、少しづつ顔色が落ち着いていく。フェリスタス先生の話では、優秀な生徒と聞いていたので、真面目でしっかりした人と思っていたが、割と人間味に溢れている感じの人なのかもしれない。

 

「あと、敬語やめませんか?

 俺達、同い年ですし」

「え、いいんですか?じゃあ、『さん』付けもやめてくださいね」

 

 俺の提案に交換条件を出して乗ってくる。正直、まだ『ちゃん』付けはキツい感じはあるが、仕方ない。

 

「分かった。

 改めてよろしく、リズベットちゃん」

「うん、よろしくねアベリオくん」

 

 改めて俺を見て、リズベットは話す。

 

 「カペラを助けてくれてありがとう、変な人に捕まってないか心配してたの。

 初めは男の人に囲まれてたからビックリしたけど、保護してくれたのが、貴方とおじさまで良かったわ」

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

 二人にお礼を言われて頬が赤くなる。改めて面と向かって、言われると恥ずかしくなる。

 

「俺がしたくてしたんだから」

「ねぇ、妹から聞いたんだけどアベリオくんも迷子の時に助けて貰ったのよね、どんな人なの?」

「う〜ん、変な奴だったな」

 

 白の事を思い出しながら話す。

 あいつは、龍にしては変な奴だった。

 

「優しくてどんな者も平等に見て、困った奴は必ず助けてた」

「まるで聖人ね」

「……あぁ、そうだね」

 

 含みを持った返答をしたので、それ以上追求されることは無かった。

 数分の待ち時間の間、学園やミロアの隠れた名所などの話で盛り上がった。

 

「どーぞ、ご注文の料理です」

 

 注文の料理を運んで来たのは、クロさんでは無く若い少年だった。

 

「マーク、お店の手伝い?偉いわね」

「そりゃどーも」

 

 少年は適当に返事を返す。会話からしてかなり仲が良いようだ。

 

「あ、アベリオくんに紹介するわ、マークよ。

 私達同い歳で、初等部から一緒なの」

「マークだ、よろしく。

 なんでリズと一緒にいるかは知らんけど、まぁ、仲良くしようぜ」

 

 マークが出してきた手を握り、握手しながら名を名乗る。

 

「アベリオ・アイオライトだ、よろしく」

「私はね、カペラだよ〜」

「おーよろしくな二人とも、せっかくの食事だゆっくりしていけよ」

 

 言いながら、奥に戻っていく。

 完全にマークが奥に消え、食事を始めた。

 

 

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 結果から言うと、大満足だった。

 料理はどれも美味しく、デザートまで食べていた。リズベットちゃんは、初めデザートは食べないと言っていたが、俺とカペラちゃんがあまりに美味しそうに食べるので、我慢できずに注文してしまった。

 一つ問題を挙げるとしたら会計の時だ。

 リズベットちゃんはお礼なのだから、全額払うと言ったが、流石に女の子に全額払わせる訳にはいけないので半分払うと言うと、それも断られてしまい、結局三分の一支払う事に決まった。

 

「美味しかったぁ、ありがとねリズベットちゃん」

「うんん、こちらこそ。

 でも、全額お支払いするのに」

 

 残念そうにリズベットは言う。

 

「ま、まぁ、俺も払わないと面子がね」

 

 会計の時のマークの「お前が払わないのかよ」見たいな視線がいたかったので、俺の為にも払わせて欲しかった。

 

「じゃあ、今日はありがとう、楽しかった」

「せっかくだから、送るよ」

 

 時間は1刻しか経っていないが、雨で薄暗く人通りも少ないので、見送りを提案する。

 

「え、いいよ、そこまでしてもらわなくても」

「え〜お兄ちゃんと一緒に帰りたいよ〜」

「カペラが言うなら……お願い」

「分かった、じゃあ、行こうか」

 

 と、俺はいい三人で雨の中の大通りを歩き出した。

 

 

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「凄い豪邸だ……!」

 

 二人の家は、観光地であるミロアのかなでも高級な住宅が並ぶ場所で、つまり一等地だ。その中に目的の家はあった。

 

(ほぼ城だろ……)と、思いながら見ていると、「ここまで、大丈夫だから」と、リズベットが言う。

 

「うん、今日は楽しかった。

 次は学園でだな」

「だね、同じクラスになれるといいね」

 

 と、言いながら笑いかけてくる。

 

「カペラちゃんも、バイバイ」

 

 俺がカペラにさよならを伝える。

 カペラは、俺達の方ではなく、前方を眺めている。前方には、黒いフードを着た背の高い人が歩いている。

 

「ねぇねぇ、お姉ちゃん」

 

 カペラちゃんが黒フードの人を指さし言う。

 

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「え?」

 

 俺もリズベットも、一瞬言葉の意味が理解できなかった。

 前方の黒いフードはどう見ても手ぶらだ、宝物が何か分からないが、隠している様には見えない。

 

 しかし、黒フードは歩くのをやめて、ブツブツを何かを呟く。距離が離れすぎて、何を言っているが聞こえない。

 

 次の瞬間。

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 短剣を持ち、カペラに向かって振り下ろそうとしていた。その手や少し見えた顔から男性だと推測する。俺はとっさに、ゼノに呼びかける。

 

「ゼノ身体強化は?」

『もうしてる』

 

 この短いやり取りだけで、充分であった。

 俺は全力で黒フードの男を蹴り飛ばした。

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