ドラゴンライダー〜唯一の邪龍乗りは世界最強を目指す〜   作:他鍋海狸

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第七話・春季、通学路にて

 中央総括国家マールは三つの大きな島があり、周辺にある無人島や小島を含めて国家とされている。この三つの島が中心となって、国家運営を行っている。

 三つの各島には学園が存在し、その一番上に学修院と呼ばれる組織が存在する。有り体に言ってしまえば監視役であり、学園のレベルを一定に保つ為に指示や指導を行っている。

 ミロアにあるのが、フェリスタ先生が学園長をされている、ラティス学園である。

 ラティス学園は主に、優秀な騎士や魔術師から、研究者まで幅広い優秀な人材の育成に取り組んでいる。

 

「だってさ、ゼノ」

『へぇ〜なんか凄すぎて想像つかないや。

 あのフェリスタが学園長って未だに信じられないな、普段はヘラヘラしてるのに』

 

 学園に向かう小道でゼノと雑談をする。

 先生から貰った資料を読みながら、改めて凄い学園という事を認識する。

 

「先生が強いのは知ってるだろ。

 便利な魔道具も用意できる人脈もあるし」

『人脈はありそうだね』

 

 こんな、たあいもない会話も学園の寮に入ってしまえばできなくなる。ゼノの声は俺以外に聞こえないので、俺とゼノの会話の様子は、誰かと話しているような独り言をひたすら言っているように見えるらしい。

 

「そこだけ、不便だよな」

『なんか言った?アベリオ』

「いや別に」

 

 貰い物を使っている身分で文句は言えない。

(自分で用意するしかないか…)

 考えながら歩いていると、小道から大通りに出る。外でゼノと喋る事は少なかったが、魔道具の仕様が分かってからは、なるべく人のいない道を選んで歩いている。

 

「やっぱり、制服を着てる人多いな」

 

 大通りの様子を見て呟く。

 マールの学園の生徒は制服が支給される。これは、知恵の島国(サピエンティア)の学校特有の文化であり、俺も初めて見た時は驚いた。

 

「学園のレベルを保証する必要があるからね、知恵の島国は。制服は、その保証と唯一性を出す役割があるね」

 

 と、フェリスタ先生が言っていた。

 思い出していると、後ろから声をかけられる。

 

「おはよう、アベリオくん」

「あ、おはようリズベットちゃん」

 

 リズベットは元気に挨拶する。あの襲撃の後は、会う機会が無かったので、少し心配はしていた。

 

「あの後襲撃とか来なかった?」

「うん、大丈夫よ。何も無かったわ、いつも通り」

「そっかなら良かった」

 

(まぁ、リズベットちゃんならまた来ても撃退するだろうけど)

 と、思う。それに、再び襲撃に来ても彼女には杖がある、この前のようにはならないはずだ。

 

「あれ、カペラちゃんは居ないの?」

 

 彼女が居るなら、てっきり妹であるカペラも一緒だと思っていたが見当たらない。

 

「カペラは一緒じゃないの、初等部の生徒の入学式は明日なの」

「そういう事か、なるほど」

 

 入学式には一斉に行われると思っていたので少しだけ意外だ。昔住んでいた村の学校は年齢関係なく一緒に行われていたので、ここも同じだと思っていた。

(やっぱり勝手が違うな)

 考えながら周囲を見る。

 辺りには自分たちの他に同じ制服を身につけた人が、沢山歩いている。流石、各国から優秀な人材を集めているだけはあり、生徒の数は多い。

 

「アベリオくんはどこの国出身なの?

 私は北の帝国なよ、まぁ、この島にいる時間の方が長いんだけどね」

「俺の出身は西の国。

 北の帝国は行ったことないな」

「私も西の国には行ったことないわ。

 どんな所なの?」

 

「どんな所なの?」と聞かれても返答に困る。

 数年前に西の国を離れてから、一度も戻っていないので、具体的に答えることができない。

 なので、「住みやすい所」と言う当たり障りのない回答をした。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「おお、ここが学園の学塔!」

 

 学園までの道のりは、リズベットとの会話しているとすぐに終わった。

 学園に着いても内部に入る事があったので、これといった感動は無い。が、学塔は来るのも入るのも初めてなので、興奮で声が上ずる。

 

『学塔』は学術研究塔と言い、学外活動塔、特別対応塔の学園を構成する三つの塔の一つであり、その名の通り学問や魔術の研究を行う場所である。

 

「アベリオくん、学塔でなんで感動してるの?試験の時入ったと思うけど」

「あ、俺は試験受けてないだ。だから、ここ来るの初めて」

「え!?アベリオくんって特別生徒なの?」

 

『特別生徒』、正式名称特別支援生徒、これは学園の教師や学園長の推薦で、優秀な生徒を試験無しで入学を認めるシステムである。天才や鬼才と呼ばれる人間が基本的には選ばれる。

 これは、フェリスタ先生に言ってもいいと言われたので、軽い気持ちで言ったのに、思いの外驚かれたので面を食らう。

 

「まぁ、珍しい学園長先生から聞いたけど、一定数居るって聞いたんだけど」

 

 何処でも特別扱いされている者は、怪訝にされてしまう。

 一戦闘を共にしただけの彼女に言うのは、流石に軽率過ぎたかと、思っていると、リズベットは言いずらそうに口を開く。

 

「アベリオくんが特別生徒なのは勿論驚いたけど……。

 あの、特別生徒の人って変わってる人多くて、普通に話せてびっくりしたの。

 だから、別に邪険に扱うことはしないよ」

「そうっか、じゃあ安心だ」

 

 少し心配したが、彼女の言葉を聞いて安心する。

 しかし、同時に彼女の発言に違和感も覚える。

 

「ちょっと待って、普通に話せるってどういう事?」

「あぁ、それはね……」

 

 困惑の色を示した彼女の声は……

 

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 突然の後方からの黄色い声に掻き消された。

 突然の出来事に目を見開いてる俺と対照的に、リズベットは慣れている様で、「またか……」と呆れた様子でため息をついている。

 

「やぁ、リズベット(はにー)気持ちの良い朝だね。どうしてこんなにも気持ちがいいんだろうか?

 あぁ、君が眩しいからか!!」

「えぇ、ダイアモンドくんおはようございます」

 

 わけのわからない挨拶に彼女は慣れた様子で対応する。

 

「いや、まるで僕らの入学式(かどで)を光の精霊が祝福しているようだね」

「アベリオくん、この人はグラデ・ラス・ダイアモンドくんよ」

「もしかして、彼女らに妬いているのかい?

 ハハハ、確かに俺は恋多き男だが、今は君しか見えてない、安心してくれたまえ!!」

「アベリオ・アイオライトです。よ、よろしく」

「式場はやはり南の海国がいいと思うんだが。楽園と呼ばれる国だ、僕と君に相応しい!

 まぁ、君と僕が揃えばどこだって、楽園(パラダイス)さ」

「え…………」

 

 挨拶を無視されて少しだけ傷つき、硬直する。

 そして、ブレスレットの中でゼノが爆笑している声が頭の中に響く。

 

「彼は特別生徒の一人よ。

 あ、挨拶しても聞こえてないから、フィーリングで話してるのよ彼」

「な、なるほど?」

「今日僕は式典で新入生代表の挨拶をするんだ。

 僕の勇姿をしっかりと目に焼き付けてくれよハニー。ハハハハハ」

 

 言いながら取り巻きの女の子と共に学塔に向かって歩いて行く。

 リズベットが呆れた様子で「やっと行ったわ」と呟き、前方の歩いている集団を見ている。俺は一言。

 

「嵐みたいな人だった……」

 

 と、呆けた顔で言ったらしい(ゼノ曰く)。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 学塔の入口に掲示板が置いてある。そこには、新入生のクラス振り分けられた書かれた紙が掲示してある。

 

「俺の名前あった、第六クラス。

 リズベットちゃんと同じクラスだ」

「ふふ、そうね。マークも一緒のクラスだし。

 友達が多くて良かった、今年は運が良かったわね」

「ハハ……そ、そうだね」

 

 事前にフェリスタ先生に言っていたので、気を利かせてくれたのか、本当の幸運なのかは判断に困るが、知り合いが多くて困る事はまず無いだろう。

 

「アベリオくんと一緒てことは、ダイアモンドくんとはクラス違うって事だし、本当に運がいいわ」

「え、そうなの?」

 

 隣で小さく拳を握って喜んでいるリズベットに質問をする。

 

「うん、特別生徒は一クラスに一人だから。

 去年特別生徒が一人辞めちゃって、その枠にアベリオくんが入ったんだと思う」

「へ〜、そんなシステムだったんだ。

 知らなかった」

 

 俺が感心していると、「本当に何も知らないのね」と、言いながらくすくすと笑っている。

 

「笑う必要無いだろ、君の博識に感心してるんだから」

 

 彼女は俺の様々な発言や行動で笑う。別段悪意があるわけでは無いのは分かるが、何となくムッとしてしまう。

 

「ごめんね、悪気は無いのよ。

 ただ、本当に何も知らないのが面白くってね、学園で初めて見るタイプだもの」

 

 確かに俺は何も知らない。

 四方の国の憧れであるこの学園の事を何も知らずに入学を果たす生徒は、彼女からすれば面白いのかもしれない。

 

「いいんだよ、これから勉強するんだから」

「そうしてくれると嬉しいわ。

 分からない事があったら聞いてね、教えられる範囲で教えてあげるわ」

「ありがとう、心強いよ。

 じゃあ、さっそくだけどひとついい?」

「何?」

 

 掲示板を見てずっと疑問だった事を彼女にぶつけてみようと思う。

 

 

「第六クラスの教室って、何処?」

 

 

 この質問により彼女とゼノに笑われたのは言うまでもない。

(しょうがないだろ!初めてなんだから!)と、心の中で叫びつつ、リズベットの案内により、第六クラスに足を進めた。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 クラスにはもう既に数人の生徒がおり、各々他愛のない雑談をしている。

 クラス自体は昔、村で通っていた学舎とあまり変わらないが、やはり全体的に施設設備が新しく大きい。白亜の壁には硝子で窓が作られていて、校庭と他の二塔の様子がよく見える。

 椅子に座っていた一人が此方に歩み寄ってくる。

 

「はよぉ〜リズ」

「マークもう来てたの早いわね」

「お前らが遅いんだよ、おはようアベリオ」

「おはよう、マーク。一緒のクラスで嬉しいよ」

「くぅ、恥ずかしい事言ってくれるぜ。

 まぁ、俺も悪気はしない」

 

 言いながら思い出したようにリズベットはマークに聞く。

 

「あれ?ミラは、まさか寝坊?」

「当たり。さすが親友だな、さっき伝令鳥が飛んできた」

「全く、ミラってば……」

 

 呆れてはいるが先程の彼とは違う笑みを纏っているので、明らかに感情が違う事が伝わってる。本当に仲が良いの事が伝わってる。

 そんな話をしていると、始業の鐘が鳴る。透き通るような高音が教室内に駆け巡り、一瞬騒然とした後に教室は静まり返る。

 俺も自分の名前が書かれたプレートが置いてある席に座る。

 

 静まり返った廊下から、数人の足音が聞こえる。

 カツカツと、小気味良いリズムで廊下の板を叩いているのがよく聞こえてくる。

 一人の足音が教室の前で止まったと思うと、教室の扉は音を立てながら開いた。

 

「え〜私が君たちの担当の教師になった、キャ二ース・アズライトである」

 

 自己紹介をしながら入ってきた教師に、クラス一同目を奪われる。

 

「本学園は歴史と教養ある学園である事を理解し、生徒である事を恥じぬ立ち振る舞いをして欲しい」

 

 威風堂々を語る口調と声質から歳を取っているように感じ、また、男性であることを示す。

 

「これから、集会場(ホール)で入学式参加、教室に戻り今後の説明を行い、本日は解散とする」

 

 一言一句無駄の無い説明は、残念な事にクラス全員の耳には入らないだろう。

 その理由は先生の容姿似合った。美男子でも貫禄のある男性でも、筋骨隆々でも無い。

 

 革の靴と礼服をビシッと着こなす各所からもふもふの藍色の体毛が見られ、片手には生徒名簿を持っている腕には肉球が見える。

 たれた耳、つぶらな瞳、左右に振るしっぽ。

 そう、俺たちのクラスの担任は……

 

「では皆さん、この一年を楽しい一年にしましょう」

 

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